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4-13

 前代未聞の作戦会議が終わり、海軍としては昼休憩後に部隊の編制をする予定だ。


 ガートルートは背筋を伸ばして、一兵たりとも失わずに戦う作戦について考えながら、まだ昼を過ぎたばかりの空の下を歩いて海辺まで出てきた。


 島を護る戦船の方法をいくつか考えて、想定の範囲を超えている戦にすっかり煮詰まってしまった。

 海風が心地よい。


 心地よい日差しも気持ちがいい。


 ガートルートは額に巻いた濃紺の布を取って短い黒髪を潮風にさらした。

 いくぶんか気分が晴れてくるような気がする。


 透明な緑と青のまじった水は、遠くを見るにつれ徐々に群青色になっている。大海原を船で駆り、海賊退治をするのがガートルートの子供のころからの夢だった。けれど、最近はそんなに単純な話でもなくなっている。


 海賊と戦うのではなく、人を護るために動くのだ。

「島を護るわけだからなぁ」


 ジェネラス海軍大将は海賊と戦うとき、本当に躊躇をしない。軍人のなかの軍人だ。防御するための戦とは……。いっそのこと船で島を取り囲んでしまおうか。


 ぼんやりと海を眺めていると、ようやく凪いだ気持ちになってきた。

 本当ならば両親に挨拶に行かなければならないのだが、ガートルートの両親はここから二日ばかり遠いところに住んでいる。


 せめて手紙を書かなければなぁと考える。

「ねぇ軍人さん! これ食べてみない?」


 ぼんやりと物思いにふけっていたガートルートはふいに声をかけられて驚いた。歩いている砂利の音も耳に入らなかったようだ。


 香ばしい匂いをさせた串焼きが目の前にある。

「いや……」

 と断ろうとした瞬間に、お腹が鳴った。


 そうだった、お昼なのに何も食べずにすっかり忘れていた。しかも休憩時間もだいぶ過ぎてしまっていた。戻りつつ昼を調達する時間がとれるか微妙なところだ。


「もらうよ」

 串焼きを買うと、ガートルートは大口を開けて串にある肉に歯を立てた。


「ね、軍人さん、私も一緒に食べていい? ようやくお昼なの」

 となりに腰をおろしたのは、栗色の髪をした娘だった。碧色の瞳が印象的だ。

「おう」


 無頓着にうなずくガートルートは、串焼きの野菜をほおばった。その姿を見て娘はくすりと笑った。


「いっぺんに食べたら喉が詰まらない?」


 瓶に入った真新しいジュースを手渡してくる。商品なのかもしれない。後で払おうと、ガートルートはそれもそのまま受け取った。さわやかな柑橘系だった。とてもうまい。


「旨いな。よかった、食べ損ねるところだった」

「だってさ、軍人さんってば、ずっとそこにいるんだもん」

 気にしてくれていたようだ。


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