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「なぁ、舞愛。本当に俺達、合格したんだよな」
いつもの河川敷。春の朝日に照らされてキラキラした川面に、立ち止まっているシルエットが二つ。
「そうだね。ちょっと信じられないけど。でも、きっとこれからがもっとずっと、大変だよね」
「あぁ」
「ねぇ、これからレースで何度もアタシと当たると思うけど、大丈夫?」
「俺達が望んだ結果だからな。やっていくしかないだろ。大体お前、裕子さんにいくら返さなきゃいけないんだよ」
「海斗ぉ〜、アタシそこまで頭回らなかったんだけどさぁ、アタシ達デビューするまで養成所暮らしはできるけど、ギャラ出ないじゃん。全部返すのにあと何年かかるんだろ……考えたくない〜っ!」
「……まぁ、受かんなくてずっとバイト暮らしになるよりゃ、良かったんじゃないか?」
「そうだけどさぁ〜」
「まっ、お前も世話になった人達に恩返しする為、って目標が出来て、良かったじゃんか」
「そうだね。チームのみんなも、次の試験には受かって来るかもしれないし。追い抜かれないように頑張らなきゃ」
「その調子なら、しばらくは大丈夫そうだ」
春の装いの私服姿の二人。空中競技場で記者会見を受けてきた後の帰り道で、どちらも少しだけ他所行きの格好。
片手を突き出す海斗。それに応じる舞愛。
「あっ、今日もみんな練習してるや。お〜い!」
チーム飛遊人のメンバーが川の上空を思い思いに飛び交っている。手を振る舞愛に、空から応じるメンバー達。