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狂った人(独り言)

作者: セラギネラ

 演劇部で活動をしているある日。その頃演劇部員に不祥事を起こす人が複数名いたのだが、友人からこんな言葉を刺された。

「演劇部って狂った人多いよね」

部長であった私は若干顔のシワを増やしつつも、頷いた。

その通りであると思った。友人の主張は間違っていない。

 しかし私は耳に言葉が詰まった。

狂った人。私はその言葉に重言(頭痛が痛い、あとで後悔する)に似たような響きを感じたのだ。人って狂ってないのかと。


 生態系というものがある。全ての“生き物”は“互いに”関わりあって地球上での活動を進めていく。例えば、動物─消費者が呼吸をするのに必要な酸素を光合成を行う植物─生産者が供給し、生物から作り出される二酸化炭素をもとに植物は光合成を行う。この循環。そして動物は他の生物を喰らう、一方他の動物に喰らわれることで一時的に天秤を崩しつつもその均衡を再び保ち進化を遂げていく。実によく考えられた(何が考えた訳でもないが)システムである。だが、必ずしも全ての場合にそうとは言えないが、そこにヒトが加わるだけで生物同士で自然と必要な物を与えあわせる回線が断ち切られ、線分のまま強制終了されてしまう時がある。

 そう、ヒトは生き物であるにも関わらず生態系のシステムを外から観察しているのである。さらに厄介なのが、そのシステムを玩具のように扱いながら眺める遊びを彼らは「生きる」と評している事である。

 近年、SDGs(Sustainable Development Goals)が掲げられている。しぜんに関わる目標としては「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」がある。

ここで、守るとは何だと私はどうしても思ってしまう。

 人間が存在しなかった世界線の生態系のシステムを申し訳無いが完璧な円として表す。この完璧な円が誕生した人間により楕円に変えられる。そしてまた完璧な円に修復しようというのがこの運動であると思う。が、分かるように、完璧な円は完璧な円として発現しなければ完璧な円にはならないのである。その筆記用具で完璧な円を描いてみよう。無理ならばコンパスを使ってみよう。それっぽい円が出来たことだろう。しかしそれでも完璧な円には程遠い。目と描いた図形の間に虫眼鏡を挟めばなおさら血液の巡った身体の限界を知る事が出来るだろう。

生物が他の生物の一員を破壊してみても一時的なものに過ぎずその均衡が保たれるというのは自明の事である。

人間は生態系を守ろう、と必死に生態系の形を変えようと試みるのだが完璧な円にはならず天秤は偏ったまま戻らない。

そう、人間が生態系のシステムに自然な形で関与する事は不可能なのである。自然を守る、生物多様性などといった言葉や概念を生み出している地点で、我々は我々が生態系の一員でない事を認めてしまっているのである。


 ではそんな生態系の補集合は、一体何なのか。

 私たちが生態系を狂わせていると生態系の一員様方に訴えられる時、私たちは首を横に振ることはできないはずだ。

人間は“狂”そのものではないか。生態系との直接的な関わりに収まる話では無い。多様な言語。直立二足歩行。道具の作成。

人類の特徴を挙げてみると、生態系に有り切れないものばかりだと不思議に思う。しかし私たちはそんな暗黙のルールを無視して生きている。狂っているのだ。

 よってあの演劇部員を狂っていると語る友人も、狂っている。というか演劇部員も、友人という概念さえも狂いの上に成り立っている。狂いを投げかけられてもその宛先が狂いなので、どうって事ないのだ。向こうがおきあがりこぼしのように偏っても均衡が保たれる生態系のシステムに属するのであれば、私たち人間は偏ったら自力で均衡に近い状態を目指すしかない狂ったシステムに属し属させ合おうではないか。

 こう長く語っている私もまた、狂っているに違いない。

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