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ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない  作者: 咲桜りおな
第二章 ルーファスの婚約者編
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スペーサー領へ

 ルーシーがラントス公爵家へ慌てた様子で馬車で乗り付けて来たのは翌日の朝だった。今からスペーサー辺境伯の領地へと向かうからわたしを迎えに来たのだと言う。ルーシーに言われるままとにかく数日分の着替えをメイドにトランクへと詰めさせ、ルーシーと共に馬車へと乗り込んだ。勿論ハウンドも別の馬車でルーシーの侍女と一緒に付いて来ている。


 この世界では通常の手紙は人間の手によって運ばれるのだが、緊急時には別の幾つかの方法が取られている。その中でも早馬を使っての書簡が一般的だが、それよりも緊急性を増す場合は魔法の伝書鳩が仕様されている。ルーシー曰く昨夜遅くにスペーサー領からの伝書鳩が届いたらしい。


「モデリーン、落ち着いて聞いてね。マーガットの馬車の事故の事……覚えてる?」

「ええ、覚えているわ」


 昨夜不安に感じていたあの事故の話がルーシーの口から出て少し動揺する。なんせゲームのシナリオが本来と変わり過ぎている現在、何が起きるか分からないとは思っていた。


「本当ならマーガレット一人が出かけた先で起きる事故なんだけど、どうやらルーファスが巻き込まれたらしいの」

「そんな……」

「あ、でも命に別状は無くて怪我もたいした事はないらしいから。そこは安心して」

「そうなのね……良かった」


 ホッと胸を撫でおろすが、それでは一体なにが起きているのだというのだろうか。


「ただ、ちょっと問題が起きていて……ルーファスが混乱しているらしいから私が呼ばれたのよ」

「混乱?」

「記憶がね……何故かモデリーンの事が分からない上に、ほら私達ループしているから余計に訳が分からなくなってるらしくて。とにかく私を呼ぶようにってルーファスが従者へ指示したみたい」

「…………」


 (わたしの事が分からないって、どういう事!? 部分的な記憶喪失とかってやつ?)


「事故で少し頭を打ったみたいだし記憶が無いのも一時的なものだとは思うんだけど……これから幸せになるって所で何やってるのよ、ルーファスってば」

「ねえ、ルーファスが事故に巻き込まれたのって元々を辿ればわたしのせいなんじゃ……本当ならルークが領地へと行ってる筈だった訳だし。ルークならまだ王都へ向かうのはまだ数日先だったわ」


 別にルークが極端にルーファスに劣っている訳ではないがループを重ねた結果、今回起きた領地での問題の解決方法も以前の記憶で把握していた可能性がある。だから最短で問題解決へと導き、王都へ帰る日が早まった事が今回の事故への巻き込まれを生んだかもしれない。


 (わたしを助ける為に王太子になったから……)


「モデリーンのせいじゃない、というかそれを言うなら私達皆の連帯責任でしょ? ループを始めたのは私達だし、むしろモデリーンはそれに巻き込まれた側じゃないの」

「ルーシー……」

「とにかく今は誰のせいとか考えても仕方ないわ。難しい事は向こうに到着してからの話よ」

「ええ」

「それと……多分ややこしくしてるのはマーガレットのせいもあると思う」

「?」


 マーガレット・スペーサーはルーシー達の従妹でスペーサー辺境伯の一人娘だ。ゲームではルークルートに入ると隠しキャラであるルーファスが出て来る。ここでルークルートとルーファスルートへの分岐となるのだがルーファスが隠しキャラである様に実はマーガレットも隠しキャラで、ルーファスルート限定の悪役令嬢として登場して来るのだ。


 わたしがルークの婚約者として対峙するのとは違い、マーガレットはヒロインと友情を育みながらも互いに恋のライバルとしてルーファスの婚約者の座を競い合う。ゲーム終了時にルーファスとの友好度よりもマーガレットとの友好度が高かった場合、ルーファスはバッドエンドとなりマーガレットとの友情エンドになってしまうので二人の友好度チェックは非常に注意が必要だったりする。


「なんかね~この騒動に便乗してマーガレットが勝手に自分がルーファスと恋仲だとか言い出してるらしいの。元々あの子はルーファスが好きだっただけに面倒だわ~」

「そ、それは……うーん……」


 マーガレットは決して悪い子ではない。ゲームでの印象でしか分からないが、ちゃんと貴族令嬢としての教養もあり友人も多く、気さくで明るい少女だ。設定として“悪役令嬢”とはなっているがそんな雰囲気は皆無だ。


 (モニラの時みたいに争い事はしたくないな……かと言って今更ルーファスを失うのは嫌だ)


「とにかくルーファスが思い出せばいいのよ、うん」

「そうね……」


 (さすがゲームの中の世界というか……次々と色んな事が起きてくれるわね。モニラの事が終わってもまだまだ気は抜けないって事なのかしら)


 スペーサー領への長い道中、ルーファスへの想いをはせながらわたし達は馬車に揺られているしかなかった。

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