襲われたモデリーン
――ズンッ!!
その衝撃は突然やって来た。王家の紋章入りの馬車に乗り、ルーシーと城への帰路。王都から城へと続く大きな一本道へ差し掛かかった時に大きな地響きと共に、車体が何かの衝撃を受けたのかガタガタと揺れた。同時に車外からは何者かと争う様な声や物音が湧き上がった。
「プリズムシャボン!!」
ルーシーが指先でサッと魔法陣を空中に描き、光輝く円形の膜でわたしとルーシーの身体を包んだ。簡易的なバリアーを張れる光魔法だ。そして窓から外を覗いたルーシーが慌てて振り向いて叫ぶ。
「そっちから外へ!! 早くっ!」
指示に従い急いで扉を開けて外へと飛び出ると、同じく飛び出て来たルーシーの手によってわたしは後方へと飛ばされた。その瞬間、乗っていた馬車の車体が炎に包まれる。
「お嬢様!!」
地面へと転げ落ちたわたしの元へ従者のハウンドが駆けつけて来た。幸いにもルーシーの魔法によって張られたバリアー効果で傷一つない。ルーシーの方を見ると彼女も無事な様子でこちらへと駆けて来た。
燃え盛る馬車の周りでは護衛についていた騎士達と破落戸風の者達が剣を交えて交戦している。
「とにかくここから離れましょう、私がお守り致します」
「ええ、お願い」
ハウンドと共にその場を離れようとするもそれは複数の覆面をした者達に阻まれてしまった。じりじりと間合いが詰められて行く。
「おりゃああああ!」
「……くっ!」
覆面からの先手で斬りこまれ、ハウンドは同時に複数人を相手にしながらもわたし達を背に守ってくれる。わたしの隣でもルーシーが新たな魔法陣を展開しつつ、背後から忍び寄って来ていた破落戸を光魔法で吹き飛ばした。
「目的は何ですの!? わたくしの命?」
命のやり取りの場に突然突き出され恐怖で震える手をギュッと握りしめ、わたしは精一杯強がって覆面男たちへと問いかける。展開的に今回は時期がとても早いが、狙われる理由はモニラの事しか心当たりがない。信じたくなかったけど、やはりモニラはわたしの命を狙っている……。
「さぁな、ただこの馬車ごと消せとの命令を受けただけなんでな。悪いが消えて貰うぜ」
前の生で賊に襲われ命を落とした記憶が一瞬蘇るが、このまま震えてやられるなんて嫌だ。ハウンドとルーシーを巻き込んでしまった事がとても辛い。なんとしても二人だけは助けなければ!!
「……ルーシー、ここはわたしとハウンドに任せて貴方は援軍を呼んで来て」
「何言ってるのよ、そんな事出来ない」
「ルーシーの光魔法なら姿を消して城まで行ける筈。このままじゃ三人とも助からないっ」
「だけどっ……」
暫し見つめ合い、グッと唇を結んだルーシーは素早く魔法陣を展開する。わたしもそれを確認すると闇魔法の魔法陣を指先で描き始める。
「ディサピア!」
ルーシーの身体を光が包み込み、その姿は見えなくなった。ルーシーが姿を消した事に少し動揺した様子の覆面たちは数人をルーシーの後を追わせ、残りは再びこちらへと攻撃を仕掛けて来た。わたしは人差し指と中指で魔法陣をスライドさせて覆面たちの足元で発動させた。




