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ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない  作者: 咲桜りおな
第二章 ルーファスの婚約者編
32/48

ヒューイとヒロイン

「あれ? モニラじゃねーか。ひっさし振りだな~」


 朝から王都の街へと来ていたモニラは、ここ数日ずっと探していた人物をやっと見つけて声を掛ける事に成功した。漆黒色の癖のない髪を真っ赤な紐で結い、安価なシャツとズボンを着こんだその人物はモニラを見るとニカッと八重歯を見せて笑顔を見せた。


「探したのよ、ヒューイ。肝心な時に全然会えないんだもの、困っちゃう」


 駆け足でヒューイの傍へと寄り、ぷくりと頬を膨らませて見せるモニラ。


「んん? 俺に用なのか?」

「そうよ、ヒューイにお願いがあって探してたんだから」

「……お願い、ねぇ」


 訝しげにモニラを見るヒューイは何かを察したのか興味なさげに頭をポリポリと掻いた。


「ちょっとここじゃ何だから、少し歩きましょ?」


 今居るのは街の中心部で人通りも多い。込み入った話をするには不釣り合いだ。ヒューイを促して人気のない方へと向かおうとするが、ヒューイがその場に立ったまま動こうとしてくれない。


「悪いけどさ、俺これから行くところあるんだよね」

「そんな事言わずにほんの少しでいいから、話し聞いてよヒューイ」

「ん~っ」


 明らかに面倒くさそうに顔を歪ませるヒューイにモニラは首を傾げそうになる。ヒューイが自分の話すら聞こうとしてくれないなんて、そんな事あるの!? 最近はルークの事で多忙だったからヒューイの事はほったらかしだったけど、それでもこんな対応あり得ない。


「どうせまた変な噂流せとか、誰か消したいとか碌でもない話だろ?」

「え……ま、まぁ……そうなんだけど……」

「モニラさ、俺の事なんだと思ってんの? 俺ばっかモニラの頼み聞いて、モニラはなーんにも俺に見返りくれないじゃん」

「デ、デートとかしてあげてるじゃない」

「それもう何年前の話だよ、ここ数年会ってもないじゃん。悪いけど俺、彼女居るんだよね~今日もこれからデートなんだ」

「はぁ!? なによそれ」


 いつの間にかヒューイの好感度が下がりまくっていただけでなく、彼女が出来ただなんて。そんな事ゲームには出て来なかった。なんなのよ、今回あっちもこっちも滅茶苦茶だわ!


「だからもう俺に会いに来ないでくれる?」

「ヒューイ!」


 それでもしつこく粘っているとモニラの耳元に顔を寄せたヒューイが周りに聞こえない様に囁く。


「あんましつこいと殺しちゃうよ?」

「ひっ!!」


 一瞬で背中がゾクリとした。ヒューイが冗談で言っていない事くらいモニラにも分かった。


「……それと、あんたの姉さんと新しい王太子さんにも変な事しない方が身の為だぜ?」

「え……」

「昔馴染みのよしみで忠告。ま、俺からの恩情だな」

「……」

「んじゃ、俺行くから」

 

 不気味な言葉だけを残してヒューイの姿はあっという間に人混みの中へと消えて行った。考えてもみなかった展開に呆然とするモニラ。


「おい、邪魔だ」

「ご、ごめんなさい」


 後ろから肩にぶつかられて少しよろめいた。通りのど真ん中に立っていたので通行を妨げていた事に気付き、慌てて端の方へと移動した。ヒューイと会う時はいつも庶民に見える様に地味な服を着ていたので誰もモニラが貴族の令嬢だとは気付いていない様子だ。


「どうしよう……ヒューイに頼めないとなると、自力で他を探さないといけない……」


 ヒューイにはモデリーンやルーファスへ何もするなとは言われたけど、このままじゃヒロインなのに幸せになれないじゃないか。そんなのは嫌だ。何とかして他の暗殺者を探して頼まなくては……。でもどうやって探せば良いのだろう。


 モニラは途方に暮れた――。

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