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ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない  作者: 咲桜りおな
第二章 ルーファスの婚約者編
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過去編 モニラ

 モニラが乙女ゲーム「Mon Amour(モナムール)~私の愛する人~」の世界に転生した事に気付いたのは三歳になった頃だった。大好きな姉の後を追いかけて小さな足でとたとたと走っていたら誤って階段から落ちてしまった。落ちたのは数段程度だったので怪我自体は大したことはなかった。けど、落ちたショックで自分の前世の記憶が蘇ったのだ。同じ様に急いで階段を降りていた時に足を踏み外して転落死した前世……実際には転落の途中までの記憶しかないけど状況を考える限り恐らくあの後自分は死んで、この世界へと転生したのだと思った。


 最初はやけに中世ヨーロッパっぽい世界だな、と思っていただけだった。昔好きで遊んでいたゲームみたいにキラキラと輝かしい世界。自分の姿もピンクの髪で見るからに美少女だ。大きな邸に住んでいて、二つ年上の姉はこれまた自分とはタイプは違うが誰が見ても美少女で、頭も良く自慢の姉。スマホや電子機器などなく前の世界よりは文明が遅れている為、多少不便だったり退屈ではあったりはするけど、それにも自然と慣れていった。


 何よりも嬉しかったのは毎日可愛いワンピースを着て、料理人の作る美味しいお菓子やメイドの淹れてくれるお茶を何の苦労もなく堪能出来るという事だ。あくせく働く必要なんてないし、使用人達からは「お嬢様」ともてはやされる。少ない賃金の為に必死に働いていた昔とは違ってなんて素晴らしい人生なんだろう、と歓喜した。


 そんな生活を満喫していたら姉に婚約者が出来た。自分も一緒にお城へ行ったが、そこで出会った王太子様を見て驚愕した。「Mon Amour(モナムール)~私の愛する人~」に出て来た攻略対象者の一人、ルーク王子そのままだったからだ。それが決定打となり、ここがあのゲームの中の世界なんだと認識出来た。よくよく見れば大好きな姉はそのゲームの悪役令嬢モデリーンだ。そして自分はヒロイン……。


 それから色々と調べてみたら王太子以外の攻略対象者もちゃんと存在している事が分かった。ゲーム開始は王立学園へ入学した所からなので、今はシナリオに影響が出ない様にと今まで通りに大人しく過ごしていく事にした。けど、姉の元へと婚約者として会いに来るルーク王子を見掛ける度に話したくてウズウズしてしまい、我慢が出来なくなった。


 だって前世での最推しが、自分の姉とは言え仲良くしている姿を見ているなんて嫌だったのだ。ルーク王子は画面越しで見てる時よりも何十倍もカッコよくて素敵で、大好きな気持ちが抑えられなくなった。どうせこの世界はヒロインである自分の為にある世界だ。もしこれでルーク王子の攻略がダメになったとしても、攻略対象者はまだ他にもいる。その時はゲーム開始まで待って他のキャラを攻略すればいい。


 そんな浅はかな考えで姉とルーク王子の間に横恋慕して入ってみたら、これが意外にも上手く行ってしまった。学園入学を待たずにルーク王子と恋仲になり毎日甘くて楽しい日々を送って、そのまま婚約……出来ると思ったら何故かルーク王子の卒業パーティでの婚約破棄イベントが起きなかった。王太子妃には姉が居座り、飾りとは言え邪魔でしかなかった。


 邪魔なら消しちゃえばいいじゃない、と攻略対象者の一人である暗殺者のヒューイ・バガナンスにお願いしてみたらアッサリと姉は事故死した。その後は王太子妃になるのを待っていたが、何故か夫になったルーク王子が急に姉の死を嘆き悲しみ出した。恋愛イベントは全部終わってしまったし、この後は普通に夫婦として暮らしていくだけの世界が何だかつまらなくなって来た。


 ゲームならリセットしてまた最初からやり直して遊べるのになぁ……なんて考えてたら、急に時が戻って三歳になっていた。最初は驚いたし亡くなった筈の姉も普通に生きてるしで戸惑ったりもしたけど、そんな事にもすぐに慣れた。


「なんだ、リセット出来るじゃん」


 自分以外が以前と変わらない生活を再び送っているのを見て、なんだか可笑しくて笑ってしまった。ゲームのシナリオが終わって暫くしたからきっとリセットしたんだ。じゃあ何回もルーク王子と恋愛が楽しめるって事よね。飽きたら他のキャラとのイベントも楽しんだっていい訳だし。


 そんな感じでルーク王子との恋愛を何回か楽しんでいたら、今回に限ってイレギュラーな事が色々と起こった。婚姻後に貰える筈の愛の証の指輪――それを何故か婚約直後の姉が指に嵌めているのだ。それどころかルーク王子の対応もなんだか以前と比べると味気ない。それでも頑張ってたら両親から勝手に婚約者を決められてしまった。しかも攻略対象者でもないただのモブが相手だ。


 ルーク王子ともなかなか会えなくなり、歯がゆい思いでいたけどある日偶然にも街で遭遇した。そこからは何とか手紙だけはやり取りしてくれる迄は漕ぎつけたけど、これ以上は学園へ入学しないと無理そうだ。仕方なくプランを変更して取り巻き作りと勉学に集中する事にした。今度こそ王太子妃になりたいので、教養が足りないとか言われない様にしておかないと思ったからだ。側妃にしかなれなかったのはそれが足りなかったからだと、あの意地悪なルーファス王子に以前言われたのだ。


 ルーファス王子はルーク王子ルートに入ると出て来る隠しキャラで、ファンからの人気も結構ある。ゲームの中だと選択肢を選んだりするだけで勉学ステータスとか上がるから楽だったけど、ここでは実際に自分で勉強しないといけないから大変だ。ルーファス王子を攻略するにはある程度の学力が無いと「馬鹿は嫌いなんだ」と言われて相手にされない。だから苦手なのよね……。


 いよいよゲーム開始の入学式早々、やっとルーク王子との出会いイベントが起った。これでイベントが進められると喜んでたら、なんだか凄い形相のルーファス王子が現れて凄く怖かった。兄弟喧嘩なのか分からないけど、あんなルーファス王子初めて見た。でもルーファス王子に関わる気はないので、今までと同じくルーク王子にまとわりついていた。なんか今回ルーク王子の対応が良くないなぁ……なんて思っていたら急に知らない展開が押し寄せて来た。


 ルーク王子と婚約していた筈の姉が、王命でルーファス王子と婚約を結んだ。それだけでも驚きなのに王太子がルーファス王子へと交代する事になった。何がどうなっているのかサッパリ分からない。別に王太子じゃなくなってもルーク王子が好きだから気にしないけど。でもこれでルーク王子の婚約者の座は空いたのだからと喜んでたら、肝心のルーク王子が何故か自分を避け始めた気がした。教室に会いにいってもいつも居ない。


 そしてようやく今日はルーク王子に会えた。ここ最近のおかしな出来事も全部姉のせいだって分かった。ルーク王子と幸せになる為には色々と手を打たないといけないから、忙しくなりそうだ。ヒロインの為の世界なのに悪役令嬢が幸せになるだなんて、そんな話おかしい。きっとルーファス王子とルーク王子の両方を手玉に取ってるに違いない。そんなの許さないんだから。

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