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ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない  作者: 咲桜りおな
第二章 ルーファスの婚約者編
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モデリーンの小さなお願い

いつも誤字脱字報告ありがとう御座います。

感謝しております☆

「お姉様!!」


 ある日の夕方。明日から二連休になる為せっかくなので作りかけの刺繍を仕上げてしまおうかと思案していた所、突然モニラがわたしの部屋へと怒鳴り込んで来た。


「ノックくらいしなさい、いくら姉妹でも勝手に入って来ないで頂戴」


 まだ制服姿のモニラは帰宅早々、着替えもせずにそのままわたしの部屋へと直行して来たらしい。一体何を怒っているのか皆目見当がつかず、取り敢えず向かいのソファーへと座る様に促した。唇を尖らせたままソファーへと腰を下ろしたモニラは、お茶の準備も整う前に話を再開させた。


「全部お姉様がやってるんでしょう? いい加減にモニラとルーク殿下との仲を邪魔するのはやめてよね」

「何の話よ、わたしは何もしていないわ。そもそもわたしはルーファス殿下と婚約をしているのよ? 何故貴方達の邪魔をする必要があるというの?」

「だってまだルーク殿下の事、好きなんでしょう!? だから嫉妬してモニラがルーク殿下と会うのを邪魔してるに違いないわ」


 どうもモニラの話は意味が分からない。だけど確かにルークはモニラと極力接点を持たない様にしている様子だった。休み時間には教室を出て何処かへ姿を消しているし、昼も生徒会室で取っていると聞いた。モニラが教室に訪ねて来ても全く会えずに始業チャイムが鳴るので、仕方なく帰って行く姿をよく見かけていた。


「あのね誤解しているようだけど、わたしはもうルーク殿下の事は何とも思っていないわ。今はルーファス殿下のお気持ちを受け止める事で精一杯なの。ルーク殿下の事を考える余裕なんてないの」


 実際問題、ルーファスから毎日口説かれまくっていて彼のペースに巻き込まれて大変なのだ。あんなに好きだったルークの事もいつの間にか考える事さえ無くなり、気が付けばルーファスの事を考えて一人で顔を赤くしていたり……と、何だか恥ずかしい毎日を送っている。


「じゃあ何でルーク殿下とこんなにも会えないのよ! おかしいじゃない」

「……ルーク殿下にも色々とお考えがあるんでしょう。殿下が会う必要が無いと考えておられるのなら、それに従いなさい。それにモニラにはディオン様が居るのだから、これ以上恥を晒す様な行動は慎みなさい」

「ディオン様なんて関係ないって言ったじゃない。モニラが好きなのはルーク殿下なの!」


 モニラと話すといつも自分の意見を曲げる事をせず、勝手な思い込みで暴走するばかりだ。本当にどうしてこんな風に育ってしまったのか残念でならない。


「とにかく、わたしは何もしていない。勝手な言いがかりは迷惑だわ。ハウンド、モニラを部屋から追い出して頂戴」

「畏まりました」

「お姉様!?」


 まだ何やら喚いていたがこれ以上モニラの話を聞いても無駄でしかない。ハウンドにモニラの対応は任せてわたしは刺繍糸をテーブルの上へと広げた。本棚から刺繍図案集を取り出し、目当ての頁を開く。今日刺す分くらいは足りそうだが、完成させるには少々糸が少ないかもしれない。


「ハウンド、明日街へ出かけようと思うのだけど大丈夫かしら?」


 モニラを自室へと送り届けて来たハウンドに声を掛ける。


「はい、大丈夫で御座いますよ。お時間は何時頃に致しますか?」

「早い方がいいわ。朝食が済んだらそのまま出かけられるかしら」

「では馬車の用意をしておきますね」

「ええ、ありがとう」


 そんなやり取りをしながらもハウンドはテキパキとモニラに用意されていたお茶を下げたり、わたしのカップに紅茶を淹れ直したりしてくれた。我ながらハウンドはよく出来た従者だと思う。わたしの世話は勿論だが、武術も達者で護衛も兼ねているので昔からよく外出には連れて出る事も多い。


「……ねぇ、ハウンド」

「はい」

「…………もし、わたしがお願いしたら。……そしたら貴方はわたしの婚姻後もお城に一緒に行ってくれたりする?」


 ハウンドはラントス公爵家に代々使える従者の家系なので、わたしは彼を連れて出てはいけないと思っていた。それにルーク殿下の事で精神的に参っていたのもあって、ハウンドの事にまで気が回っていなかったのもある。大切な存在ではあったけど、これまでは今ほどハウンドに対して甘えを見せたりもしてこなかった。


「…………」


 ハウンドは少し驚いた表情をしてわたしの顔を見つめて来た。あぁ、やっぱり無理よね。だってハウンドは公爵家の人間だもの。邸を離れる訳にはいかないわよね。


「あ、いいの気にしないで。ごめんなさいね、変な事言い出して」

「お嬢様……」

「大丈夫よ、お城では誰か付けて貰うから」

「いえ、一緒に行きます。行かせて下さい」

「え……いいの?」


 逆にこちらが戸惑う。無理をさせてるのではないだろうか。


「勿論です、むしろ置いて行かれるとは思っておりませんでした。私はお嬢様の幸せを一生見届けるのが役目であり、楽しみなんですから。それを奪わないで下さい」


 ニカッと笑顔を見せ、何処か安堵した様子のハウンド。あぁ、なんだ……遠慮せずに素直について来てって言えば良かったんだ。馬鹿だな、あたし。


「ありがとう心強いわ。これからも宜しくね、ハウンド」

「こちらこそ私をお傍に置いて下さり、ありがとう御座います。これからも誠心誠意お仕え致しますお嬢様」


 改めてわたしの従者がハウンドで良かったと思った。あり得ないだろうけど、もしもこの先ルーファスから愛されなくなったとしてもハウンドが傍に居てくれる。それはとても心強いだろう。

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