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ピーマンとお婆ちゃん

「フォルビアお帰りなさい。お茶会は楽しかった?」


「うん、凄く楽しかったよ。歳が近い子ばかりだったから、意外と話も合ったし」


――それに…ゲームに出てくるキャラクターだったしね。まぁ、5歳児の時なんて全く知らなかったけど。でもみんなちゃんとオーラあったなぁ…さすが登場人物たち。私にもそう言ったオーラ出てないかな…やっぱモブなのかな。


「そうだ…まだ私運動してない、最低ノルマの腹筋1回やらないと」


私はベッドまで戻り、1回腹筋をした。


「よし、1回終わり。後299回っと!」


――最低ノルマは1回、その後は300回までやるそう決めてるんだ。こんな子供の時から筋トレしたら、身長が伸びないっていうけど…でもまぁ昔くらいの伸長になってくれれば文句は無いんでね。今日食べたお菓子のカロリーも少しは消費しないと。


『コンコン!』


いきなりノックされ、特に疚しい事もしていないのに私は布団に包まる。


「は…はい!何ですか?」


「フォルビア様はご夕食をお召し上がりになりますか?お目仕上がられるのでしたら、すでにご用意してありますのでダイニングルームの方へお越しくださいませ」


「た、食べるからちょっと待ってて」


私はすぐさま、ベッドから飛び降り、地面にくしゃくしゃになっている服を拾うと徐に頭を突っ込む。


「うぐ…。うぐぐ…」


――あれ…頭が入らない…ここ頭入れるところじゃないのかな…。


いったん冷静になり頭を入れる入口をよく見ながらゆっくりと服を着た。


「よし…しわしわだけど良いか…」


扉を開けると、ミリアさんが静かに立っている。


「ではこちらへ」


ミリアさんの後を追いながら、ダイニングルームに向う。


「初めてのイザベラ様とのお茶会、楽しめましたか?」


「え…うん、楽しかったよ…どうしてそのことを今聞いたの?」


「いえ、馬車の中で聞くことが出来ませんでしたので。これからもお茶会があると思われますが、優先順位などはどういたしましょうか。それと、フォルビア様もお茶会を開かねばなりませんし、そのことを考えておいて欲しいのです。今日のイザベラ様のお茶会はその良い参考になられたでしょうから」


「う…うん…考えておくよ…」


――どうしよう…すご~くめんどくさい。できればお茶会には行きたくないし…お茶会を開きたくもない。


色々考えてみたが…私には友達と言える存在がまだ居ないことに気が付いた。


――あれ…私、友達いなくない…今日会った人たちは確かにいろんなお話できて面白かったけど。毎日会うような…何でも話せて、相談できるような友達が1人もいない。5歳児でも友達くらい居ても良いよね普通。


友達の事を考えてたら何故だか凄く焦ってきた…。


――どうしよう、どうしよう…このままだと幼馴染とか昔からの友達~とか1人もいない寂しい奴になっちゃう。竜ちゃんまでとは行かなくとも私の昔を知ってくれている人が誰かいてくれたらすごく生きやすくなると思うんだけどな…。男の子でも女の子でもどっちでもいいから…贅沢は言いません。1人でも構いません、神様どうか私にお友達を…何なら私の趣味嗜好が一致する相手を…お願いします。


「どうされたんですか?そんなに祈りを捧げても、今日の夕飯は変わりませんよ」


「え…もしかして…ピーマンが入ってるの…」


「ええ、今日はピーマンをふんだんに使用したスープが提供されます…と!逃がしませんよ」


ミリアさんは逃げようとする私の首根っこをとっつ構える。


――く…くっそ~ミリアさんじゃなければ逃げられたのに…。


私の首根っこを掴みながら、ダイニングルームの扉を開けるミリアさん。


「お待たせしてすみません、フォルビア様をお連れいたしました」


「お?来たのか、フォルビア。お茶会でおかし食べすぎてこないかと思ったぞ」


「何言ってるんですか、フォルビアが来ないわけ無いでしょ。食いしん坊なんだから」


「それもそうか」


ダイニングルームには大きめの机が1つ、多分6人用テーブルくらいの大きさだ。


テーブルの上には雰囲気が漂うローソクと天井にはシャンデリア。


王室よりギラギラではないが、食事するだけならろうそくの明かりだけでも事足りるだろうが、貴族だからだろうか…蛍光灯の明かりくらい眩しい。


「フォルビア、その服は何ですか?そんな皴だらけの服を着て貴族である自覚をもっと持ちなさい」


「は…はい、お婆様…」


「まぁまぁ…御母さん…フォルビアはまだ5歳なんですから…」


「何を言っているんですか。キアン、貴方は男性だから良いかもしれませんがフォルビアは女性なのですよ。貴族社会で生きて行くにはしっかりとした教育が不可欠。5歳だからと言って生活態度を疎かにしては成りません!キアン、貴方の服装も乱れているわよ。服装の乱れは心の乱れ、貴方は我がナーべス家の頭首、つまりナーベス家の顔なのですよ。そのことをもっと自覚していただかなければ!」


「は、はい!」


――お婆ちゃん…今日もピリピリしてるな…。


私のお母さんのお母さん、名をオリビア・ナーベス。


この口調から分かる通り、結構きつい性格をしている人物だ。


性格はきついのだが…言っていることは何となく正しいのだろうと私にもわかる。


「フォルビア、いつも言っていますが食べ方が成っていませんよ。もっと優雅に上品に食べるようにしなさい」


「は…はい」


――このフォークとナイフを使った食事って何か上手くできないんだよね。あぁ、箸が恋しい。


色々指摘されながらも出てくる料理を食べ続ける。


一品を除いて。


「フォルビア、このスープも上手いぞ。少しでも良いから食べてみないか?」


「大丈夫です!」


――シェフの皆さんには悪いが…苦手なものは苦手なのだ、子供っぽい…いや、子供だから良いのだよ。


「フォルビア、好き嫌いは感心しませんよ。好き嫌いをしていては殿方も好き嫌いで分けてしまうようになってしまいます」


「そう言われても…嫌いなんですもん…」


「良いですか、フォルビア。嫌いという言葉を口にしてはなりません。嫌いとは負の感情です。負の感情を好む人間はこの世に存在しないのですよ。この感情は常に己の中にたまって行くのです。負の言葉を発すればそれだけ、自分が負の感情につつまれていき、印象が悪くなってしまうのです。そうなったら婚約も難しくなるわよ」


「…そ、そうですね…気を付けます…」


こんなお婆ちゃんだが、良い人には変わりない。


それに結構すごい人らしいのだ。


この家の元頭首、私のお爺ちゃんもナーベス家に婿入りしたそうなんだけど…早くして戦争で亡くなっちゃったみたい。


お爺ちゃんが居ない状態でこの家を守り続けてきたのがお婆ちゃんなのだ。


それが凄い事なのだと言う。


私にはまだよく分かっていないが、女性が貴族の位を守ると言うのは普通不可能らしい。


いったい、どうやってこの家を守ったのだろうか…。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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これからもどうぞよろしくお願いします。

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