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プロローグ 大好きな相手の…好きな人になりたかった…。

「ゴール!八雲高校、第四クオーター最後の数秒で放ったボールは見事リングに吸い込まれていき、3点追加で見事逆転勝利!」


「よっしゃー!」


「さすが美羽! やっぱりあんた天才だよ」


「いやいや~それほどでもあるよ~。でも、皆の力になれてよかった」


私は今、高校の友達がやっているバスケの試合に出場していた。


1日前…


「お願い! 美羽。明日のバスケの試合、来られない子がいて…。代わりにチームへ入ってくれない。今日、イチゴミルクおごるから!」


「明日は…えっと」


私は自前の手帳を開き…明日の予定を見る。


他の曜日にはぎっしりと部活名が書いてあったが明日の予定は真っ白だった。


「ん~いいよ! 明日は、ほかの部活ないし」


「ほんと! マジで助かる。明日は絶対負けられない試合なんだ」


「それじゃあ、絶対に勝たないとね!」


「おい…美羽、そんな約束していいのかよ。この前だって他の部活に『出てくれないか!』って頼まれてたろ…。確か、サッカー、バレー、テニス、バトミントン、卓球、水泳、ソフトボール、剣道、柔道、合気道、数えたらきりがない…お前の体どうなってんだよ」


私の後ろで机に肘をつきながら料理本を読んでいるのは竜ちゃん…。


私の幼馴染で大好きな人…。


「え~知りたい…。竜ちゃんになら教えてあげてもいいよ…」


私は制服のスカートの裾を持ちパタパタさせる。


「ば! お前何やってんだよ…」


竜ちゃんは料理本で顔を隠し私の視線を遮った。


「え~、竜ちゃんに私の体を教えてあげようとしただけだよ」


「俺はもっとお淑やかで清楚な女性がタイプなんだよ! お前とは正反対だ」


「ふ~ん…ま、気長に待つよ」


私は竜ちゃんの料理本を手に取り、真っ赤になった顔を拝んで教室を出ていく。


「何が…気長に待つだよ…。俺の気も知らないで…」


☆☆☆☆


私は、その日バスケットボール部の練習に参加した。


練習を終えバスケ部の部室を借りて着替えていると友人が話しかけてきた。


「それにしても、ほんとにバスケ初心者なの美羽?…私よりうまいんだけど…」


「え? 昔ちょっと遊んだくらいだよ。その時に竜ちゃんをボコボコにしちゃって、泣かせちゃったんだ~。い~思い出だよね」


「そう言えば、あいつも昔からバスケしてたような…」


「まぁ、竜ちゃんはもう忘れちゃってるみたいだけど…」


「そんな悲しそうな顔しないで、せっかく可愛い顏が台無しじゃん。美羽、元気だしなって。ほら!これ、あんたに頼まれてたやつ。姉さんから借りてきたよ」


友達が差し出してきたのは『イケプリ』という略称で人気のゲームだった。


「あ…イケプリ! もう貸してくれるの」


「姉さんがはまりすぎて、全キャラの攻略を3徹して一気に終わらせたみたい。今死ぬくらい寝てる」


『イ(・)ケ(・)メ(・)ン(・)な(・)プ(・)リ(・)ン(・)ス(・)()


略してイ(・)ケ(・)プ(・)リ(・)。


私がどうしてこのゲームをやりたいかというと、出てくる女の子たちがみんなお淑やかで清楚な子たちばかりだと聞いたからだ。


「これで、少しでも竜ちゃんの理想の人に…」


その日、私は久しぶりにパソコンを取り出し、慣れない手つきでゲームを始めた。


初め出したら止まるところを知らず…ゲームをやりすぎてしまった。


午後8時からゲームをしていたらいつの間にか午前1時を過ぎている…。


「あ! もうこんな時間。これ面白すぎて止まらなくなっちゃう。明日は大会だしもう寝よう」


そして今に至る。


「美羽が来てくれて助かったよ! ありがとう」


「良いよ良いよ、県大会はみんなで頑張ってね」


「うん! 任せといて。私たち、絶対に優勝してくるから」


私達は体育館の更衣室で服を着替える。


「ねえ、美羽、あのゲームもうやった?」


「うん! 滅茶苦茶面白いよ」


「ねぇ、今のところだれ推し! 私は断然、第1皇子のレイス様。あの美貌には誰もかなわないのよ…」


さっきまで勝つか負けるかという試合の中で熱い顔をしていた友達が乙女の顔になっている。


「私は…」


「待って! 当ててあげる。美羽の性格からしてドーラさんでしょ」


「あ…当たり…」


――どうしてわかったんだろう…。


「だって、竜君にめっち似てるもん」


「べ…別に顔が好きな訳じゃ…ないけど。その勉強できる人がカッコいいな…と思って」


「竜君も勉強できるけどね」


「ほら! 料理が得意じゃん、ドーラさん」


「竜君もめっちゃ料理得意だけどね…」


「うぐ…。そ、それは…もういいじゃん! おしまいこの話はおしまい!」


「もう、早く告白しちゃいなよ! 絶対大丈夫だから」


「だ、ダメだよ。竜ちゃんお淑やかで清楚な女性が好きなんだよ。私なんて正反対じゃん…」


「なるほど、だから『イケプリ』をやりたいなんて、珍しい話を持ち掛けてきたわけだ…。へ~理想の相手になりたいなんて~そんなに好きなんだ竜君が…」


「だから…そういうのじゃないって!」


「まぁ、後悔しないようにしなさいよ。人生は一度きりなんだから、いつ終わっちゃうか分からないんだからね」


「何言ってるの…。私は、まだ若いから大丈夫だよ」


「ハハハ、確かにそうだね。まだ高校生だもん、人生はここからが長いんだよきっと!」


その日、私はイケプリのメインストーリーを一気に全クリしようと思い、珍しく徹夜した。


「最終章の一歩手前まで来たけど…もう朝か…。早く学校行かないと…」


私は、眠い目をこすりながら自転車に乗る。


ふら付く足取りで自転車をこぎ、学校に向った。


セミの鳴く声が私の疲れ切った頭の中に響く。


うるさくて、叫びたくなるのを我慢しながら学校の正門が見えるところまで来た。


竜ちゃんが教室の窓から外を眺めているのを、私は見つけた。


私は自転車に乗りながら、竜ちゃんに手を振る。


「おーい、竜ちゃん! おはよう」


「ん… 何だ…美羽か…っておい!」

 

「おーい、竜ちゃん! 聞こえてる~」


さらに大きな声を出して私は、手を振る。


「……止まれ…」


竜ちゃんは何かを言っている…何だろう。


「何? 竜ちゃん」


竜ちゃんは窓から上半身が出るほど突っ伏している。


()ま(・)れ(・)!!!()()!!!」


「止まれ?」


その時だった…私の隣にトラックが目の前まで来ていた。


「え…」


即死だった。


私は、十字路に差し掛かったトラックにぶつかり死んでしまったらしい。


トラックに衝突した瞬間を私は少し覚えている。


骨が折れる音、内臓が破裂する音…。


痛みより先に私の意識が飛んだのが幸いだったと思える。


トラックにひかれたあとの私は無残な姿になっていただろう…。


清楚の欠片もない姿だ…。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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