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#03

3話目です。


「会長、資料ここに置きますね」


「ありがとう」



礼を言いながら資料をめくり、入学式の段取りを確認する。

そう、俺は学園の五年になり、生徒会長の座を務めている。もう十六歳になっていた。制度上は成人だ。



一年次に生徒会に入って以来、生徒会役員として学園の隅から隅までに気を配り、学業も常に主席を維持し続け、ほぼ学園を掌握したと言っても過言ではない。


キーになりそうな女子生徒は、慎重に仲良くなるか、また難しければ、従順な僕になってもらったり、同時にキーになりそうな男子生徒の元に送り込んだりと、人間関係も抜かりなく構築して来た。


当然、家にはルルカが居てくれていて、俺の動きをサポートしてくれている。




ソフィアは、俺の入学一年後に卒業したが、俺と離れたくないと周りを説得し、親のコネクションも総動員して、学園に臨時教師として残っている。


せっかくなので、生徒会顧問も務めてもらっていて、お陰で要望などが通り易く風通しは最高だ。




同級生のレナード殿下は、十六歳になってすぐに立太子され、次期国王に向けて順調に歩んでいる。

俺は時間を掛け人の好いレナード殿下にさりげなく取り入り、かなりの信用を勝ち取っている。

同じく父上が陛下に重用されている事も後押ししているんじゃないかな。




明日は入学式だ。

今回の入学式で、これまで長らく練って準備して来た作戦をいよいよ開始する。最初の山場だ。心して掛からねば。







今年は、初の試みとして王族の交換留学生が入学する。

隣国の王族、第二王子のクラウス君だ。ちなみにレナード殿下の弟君が入れ替わりに隣国へ留学している。




俺は入学式で、祝辞を述べたあと、早速クラウス君の教室に向かい、挨拶を述べる。


「クラウス殿下、はじめまして。わたくしは当学園の生徒会長を務めております、タクト・アルカーナと申します。交換留学生として我が学園に通って頂ける事、非常に光栄に存じます。生徒を代表して深く感謝申し上げます。

当学園に関しまして、ご意見ご要望がございましたら、私に何なりとお申し出下さい。迅速に対応させて頂きます。また、殿下におかれましては是非私共生徒会に客員としてご参加頂けば幸甚に存じます」



俺がそう切り出すと、十二歳のかわいいクラウス殿下は、御付きで入学して来た御学友の方々と相談され、時間のある時には顔を出して下さる事となった。



当然、学友たちには既に手を回してあり、それとなく女子生徒会役員と接触させてある。



そう、俺の目的は、隣国の王族に太いコネクションを作る事。

それが四年前からの宿願だ。そのためにここまで準備して来た。




さすがに王族のクラウス殿下に直接、派手に仕掛ける訳には行かないが、御付きの御学友の皆さんをそれとなく抱き込んで雰囲気を誘導し、殿下とは清い友誼を深める分には、国際問題にはならないはずだ。



それから、数か月は適度な交流を図り、すっかり打ち解けたクラウス殿下とはサシで話すほどの仲になっており、俺を兄の様に慕ってくれる様になった。



クラウス殿下は実の兄の第一王子とはあまり上手く行っておらず、その第一王子は、対我が国強硬派で有名だ。



クラウス殿下と友誼を結び我が国との友好の懸け橋になってもらう事に何の不都合があるだろうか。



この時は、何もかもが上手く行っていて少し不用心だったかもしれない。









多少危ない場面はあったが、結果としては、相手の企みを阻止する事ができ、そして逆襲の狼煙を上げる事が出来た。




クラウス殿下は明らかに狙われていた。

それはそうだ。第一王子がなぜ我が国への留学に反対しなかったか?


我が国でクラウス殿下が害されれば、第一王子にとっては、開戦の口実と、王位争いの解決の一石二鳥だ。当然狙ってくるはず。



俺は父上にその危険性をずっと前から進言していて、父上曰く「お前に言われずとも重々承知している」そうで、俺の知らない間に厳重な警戒態勢が敷かれていた。



そして、学友の中にも第一王子派が紛れ込んでいたが、我が優秀な生徒会役員の夜の頑張りにより、こちらに付いて頂けたのも大きい。


念入りに指導した成果が出た様だ。




襲撃の情報は筒抜けで、クラウス殿下のお守りは無事に済ませられるはずだった。


が、全て計画通りとは行かず、犠牲が出てしまった。学友の中で最高位の令息が凶刃に倒れた。第二王子派筆頭の公爵家の子息だ。

王族にも連なる公爵家の子息が留学先で殺害されたとあっては、外交的に大問題である。


関係者の顔色が一気に青ざめたのは間違い無い。



だが、ここで我が生徒会役員の活躍により寝返ってくれた学友のうちの一人が大活躍を果たした。彼は記録係を務めており、第一王子派の犯行の証拠となる、指示書類や記録を全て保管しており、それを押収する事が出来た。


恋は盲目。もう彼はこのまま我が国に居ればいいね。




その証拠を携えた我が国の情報部が、外務卿と共に秘密裡に隣国に赴き、水面下で事件を収拾した事により、外交問題は未然に防がれたそうだ。



後ほど父上から、生徒会長たる俺と生徒会役員皆の活躍について国王陛下よりお褒めの言葉を頂いたと聞かされた時に、顛末について解説してもらった。



隣国でも、問題を起こした第一王子は、廃嫡は免れたが勢力を大きく後退させ、第二王子派が一気に躍進し、王位継承争いの大勢は決した様だ。









色々ありすぎて、俺の予想した平和な展開とは程遠いが、結果として目的は達成出来た。



もう隣国の第一王子は力を持っていない。

これでルルカは自由だ。





ルルカの秘密。

それは彼女の出生の秘密であり、現状置かれている困難な状況が打開できない事の説明だった。




初めて、俺と秘密を共有したあの夜。ルルカは俺に打ち明けた。



・ルルカは俺と同じく転生者で、前世ではVIP向けの高級娼婦だったこと。


・隣国に生まれ育ったが、異常な程の治癒魔法能力を発揮してしまい、聖女認定されてしまった事


・第一王子に目を付けられ、囲われたが嫌で逃げて来た事


・第一王子が王位を継ぎ権力が増大すれば、今まで以上に捜索の手が広がり、いずれ見つかり連れ戻されてしまうであろう事




最初それを聞いた時には、何を言っているのだろうと思ったが、前世の知識を聞けば合致し、治癒能力も本物、隣国第一王子の悪評振りは当時の幼い俺でもよく聞いていたものだった。



ルルカをずっと手元に置いておきたい俺は、この境遇を解決するために、隣国の第一王子から権力を奪うための方法を考え、実行したのだった。



学園に入り、実権を掌握し、第二王子が交換留学に来るようにそれとなく要望し、友誼を結び、支援して、結果的に徐々に第一王子の権力を奪う。



第一王子派が仕掛けてくれたのは嬉しい誤算で、そのお陰で事態は急激に進展を見せたが、それも幸運、結果オーライだった。





ひとまず、家に戻って、ルルカに報告だ。

第一王子はもう勢力回復は絶望的の様だし、今日は二人で祝杯を上げよう。






そう思い家に戻ったが、ルルカは家から消えていた。








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