2-12.パールシークルージング、の前に(2)
ファッション回その2です。
今度は水着!
挿絵はないので想像でお楽しみ下さい。
初回投稿からはや1ヶ月が経ちました。
いつもお読み下さってありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
アルベルトが着せられた服は全てお買上げとなった。ただしサイズの合わなかったヴィオレとクレアのチョイスはサイズを選び直してあるが。
ミカエラが財布からカードを取り出そうとするのを、アルベルトが押し止めて自分の財布から全て支払ったので彼女は少し驚く。
「おいちゃんよかよ?これウチらが無理やり着せたんやけん蒼薔薇騎士団で払うばい?てか金持っとったん?」
「いやいや、俺が使うものなんだし、せめて自分で払うよ。俺だってそのくらいの蓄えはあるし、ちゃんと持ってきてもいるからね」
「まあそげん言うならそれでも良かばってん……」
そう言いつつ、案外律儀なアルベルトの性格をちょっと見直したミカエラである。
買った服が大量なので一旦店で預かっておいてもらうことにして、一行は次の目的地に向かう。
そう、水着を買うのである。
なおアルベルトが今着ているのは、最後にレギーナに着せられたコーデそのままだ。売上票だけ取ってもらって、今日はこのまま1日着て回るつもりである。
「ならウチらはしばらく選びよりますけん、おいちゃんも自分とば選んでき。多分ウチらは時間のかかるけん、おいちゃんは買うたら店の外で待っとってもらえたらよかけん」
「えっ、俺も買わないとダメかな」
「なしな、要るやろうもん水着。それとも海さい入らんつもりなん?」
「だって俺泳げないし」
意外な事実判明。
だがこの世界のこの時代で、泳げないのは割とよくある事でもある。
「泳げんでちゃ水際ぐらい入りたかろうもん。それにひとりだけ水着買わんやったら姫ちゃんがまた気にするけん買うてきぃよ」
「ああ、それもそうか。分かったよ、じゃあまた後で」
そう言って男性用水着売り場へと消えていくアルベルトを見送って、ミカエラもレギーナたちの元へと戻って行った。
そうして時間をかけて彼女たちが選んだ水着は。
ミカエラは綺麗な青いシンプルなビキニに腰回りだけを覆う花柄のパレオを合わせ、やや地味だがよく似合っている。ビキニのブラの胸元の合わせが結び目になっていて、それがワンポイントになるとともに小ぶりな胸をよく引き立てていた。
ビキニにしたことでウエストのくびれもよく目立っていて、こうしてみると胸がやや小さいだけで彼女もレギーナに劣らない素晴らしいプロポーションなのだとよく分かる。
余談だが、ミカエラとレギーナは胸以外のサイズが身長や体重まで含めて全部同じだったりする。
ヴィオレは今日のファッションとは打って変わって派手なラメの入った紺色のビキニだ。トップには胸元のみ覆う生地の柔らかなタンクトップも合わせて、やや大きすぎる胸をほどよく隠すとともに華やかさと豪奢さも演出していて、こちらもよく似合っている。
ついでにサングラスとつば広の婦人帽も合わせて、普段から名乗っている「マダム・ヴィオレ」をよく体現していた。そのままビーチチェアに寝そべっていれば、どこのセレブかと注目を集めること間違いなしだ。
クレアはシンプルな白のワンピース水着、なのだが、小柄な身体に不釣り合いなほど大きすぎる胸がいよいよ強調されて、暴力的とも言える破壊力を有している。
腰には柄物のパレオを合わせてワンポイントにしているが、視線のすべてを胸が集めてしまうのであんまり意味がない。ついでに言えば背中も年齢の割に大胆に開いているのだが、こちらも残念ながら目立たない。
そしてレギーナ。
彼女もミカエラと同じくビキニをチョイスしていた。色は鮮やかな黄色、ただしトップスは首元とバストラインだけを覆って肩から背中までを大胆に露出したハイネックタイプで、胸元が涙滴型に大胆に開いている攻めたデザイン。ボトムスはややハイレグになっていて、しなやかな長い脚が際立つデザインになっている。
腰回りに足首まである長い柄物のパレオを合わせれば、腰のくびれがより強調されてプロポーションもさらに引き立つ。さらに蒼髪はポニーテールと同じ位置で団子状に纏めてあり、美しいうなじまで露わになっていて、きっとビーチの視線を独り占めする事だろう。
まあ、彼女たちが泳ぐのはプライベートビーチだから他人の目に晒されることはないのだが。
ちなみに、水着はサライボスナの湯着と違って伸縮性のある繊維で織られていて、女性用は局部に透け防止のパッドも入れてある。男性用は股間にカップが入れられていて、透け防止だけでなく形状が水着の外に響くのを防いでいる。何しろ刺激で大きさが変わるものだし、ビーチには周囲に刺激しかないので気を使うのだ。
ついでに言うと女性用の上下セパレートタイプの水着を「ビキニ」というのは、東方世界の遥か海上にあるという「ビキニ諸島」の住人の女性たちの民族衣装に似ていることから名付けられたものらしい。西方世界の人々のほとんどはそんな場所になど行ったこともないので確かめようもなく、なので単に「上下セパレートタイプの女性用水着=ビキニ」と機械的に覚えて呼んでいるだけであった。
で、アルベルトが選んできた水着だが。
「あんたね……」
「……おいちゃん、ほんなこつセンス無いばいね」
「///」
「一応聞くけど、貴方どうして縦縞を選んだのかしら?」
レギーナが、ミカエラがドン引いている。
クレアが顔を真っ赤にして黙り込む。
ヴィオレが呆れつつ確認する。
「えっ…………いやまあ、安かったから?」
「「「「選び直せ!! 」」」」
「はっ、はいぃ!」
全員から怒鳴られて、大慌てで別の水着を探しに行くアルベルトであった。
で、持ってきてはダメ出しされてを繰り返して。
「も、もうあとは派手なのしかないよ!?」
「ほんなら派手なの持ってきたらいいやん」
「えぇ……」
「つべこべ言わずに持ってくる!」
そうしてさらに何度かダメ出しを食らった挙げ句、ようやく植物柄のオーソドックスなトランクスタイプの海パンで許してもらったアルベルトである。
「まあ、まだ地味だけどこれで勘弁してあげるわ」
「最初に選んだのよりは随分マシよね」
「もっと派手なのでもいいと思う…」
「いっそこの店の男物全部買うてった方が早いっちゃないとかいな」
「いや……さすがにそんなに買っても使わないし……」
というか男物全部となると布面積の小さな際どいものまで揃ってしまうので、それはとても恥ずかしいし勘弁して欲しいと本気で嫌がるアルベルトであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ちゅーか、時間のかかりすぎてもう昼っちゃけど」
「お腹空いたわ。どこかお店入りましょ」
「クレアも、お腹すいた…」
「あそこに海産物専門店があるわね」
「クルーザーの出港時間っていつなの?」
「昼三ちょうど、ラグシウム港の一番桟橋から出るそうよ」
「じゃあまだ余裕あるわね」
というわけで手近な店に入った一行である。さすがに水着ではなく着てきた私服に戻っていたが(アルベルトを除く)、それでも目を引く美女4人組は店員や客の注目を一手に集めている。というか彼女たちが店に入ったのを目撃した通行人たちまで次々と入店して、たちまち店は大混雑になってしまった。
ただしレギーナが腰に提げている二本の長剣のおかげで、ナンパ男が声をかけてくる事もない。
その代わり。
「おい、あんなスゲェ美女たちを侍らせてるあのおっさん、ナニモンだ?」
「分かんねえ……どこぞの金持ちってわけでもなさそうだし、なんか分不相応っつうか……」
美女の中でひとりだけ浮いているアルベルトの方が、かえって目立ってしまっている始末である。
「いや待て?侍らせてるっつうか……むしろ連れ回されてるの男のほうじゃね?」
「でもよ、なんか従者って感じでもねえし、関係性がよく分かんねえな?」
「ちょっと、早く決めなさいよ。まだ決まってないのあなただけよ?」
「ちょっと待ってレギーナさん。どれが一番簡単に作れて覚えやすいか迷っちゃって……」
「レパートリー増やすのやら考えんと、食べたいモンば選んだらいいやん」
(待て、今あいつ「レギーナ」って呼んだぞ?)
(えっじゃあ、もしかしてあれって“蒼薔薇騎士団”か!?)
(なるほど、そりゃ美女揃いのはずだ……)
(だがしかし、そうなるとなおさらあの男の正体が判らんぞ!?)
(確かに…………ていうか全人類男子の夢を独占しやがって羨ま、いやけしからん奴だ!)
彼女たちの会話の内容を盗み聞きしている連中の間にざわめきが広がってゆく。そのざわめきは店の外に、そしてラグシウム全体にとあっという間に広まっていく。
この世界にSNSとかあったらとんでもない事になっていたはずだが、幸か不幸かそんなものはなかった。
「よし、じゃあこのシーフードのピッツァにしよう」
「ようやく決まったかしら?じゃあ店員を呼ぶわよ?」
「てんいんさーん…」
そしてさらにしばらく待って注文した料理が届き、それぞれ舌鼓を打ちつつ堪能する。ただアルベルトだけは周りが気になって落ち着かない。
「どうしたのよキョロキョロして。落ち着きなさいよ」
「いやそう言われても、みんなすごい見てるし」
「いつものことよ。慣れなさい」
「えぇ……慣れろって言われても……」
「ウチらどこさい行ったっちゃこげな感じばい?」
「そうね。まあ少ししたら貴方も慣れるわよ」
「そ、そうかな……」
というか、こうやって注目の的になるからレギーナたちはアルベルトに服を買わせたのだ。彼女たちは行く先々で常に衆目を集めて回るため、同行するのなら当然彼も身なりに気を使わなければならない。でなければどんな噂が立てられるか分かったものではないのだ。
これがラグ市内ならばまだアルベルトも顔が知られていたし、彼が蒼薔薇騎士団に助けられて雇われたというのも周知されていたので普段通りでも構わなかったのだが、よその街となるとそうもいかない。
そのことにようやく気付いたアルベルトである。だが、注目に晒されるのだけは慣れそうもなかった。
食べ終わり、店を出たところで陽射しに思わず空を見上げると、雲が切れてようやく晴れ間が広がってきた所であった。
時刻は昼二を過ぎたところで、今から一番桟橋に向かえば充分間に合う計算である。クルージングツアーは出港してから特大三ほどかけて、ゆったりと周辺の島嶼の間を縫うように周遊して港に戻ってくるのだそうだ。
「やっと晴れてきたわね!」
「こらよかクルージング日和ばいね♪」
和気あいあいとはしゃぎながらアルベルトを連れて、ラグシウムの街をのんびりと散策しつつ桟橋へと向かう蒼薔薇騎士団。その後を野次馬のギャラリーがゾロゾロついて行く。
「……よかけど、ちょっと集まりすぎたばいね」
「んーでも、クルーザーの中までは来ないでしょ」
「そういえばまだシーズンには少し早いのに、ずいぶん観光客がいるのね」
「あ、多分今ついて来てるのはほとんどラグシウム市民だと思うよ」
「…………は?」
「え、こんなに住んでるの?」
「俺の記憶に間違いがなければ、ここはスラヴィアでも結構大きな街で5万人ぐらい住んでるはずだけど」
「5万て……ファガータとあんま変わらんやないね!?」
そういえばザムリフェで『魔道具職人を探すならラグシウムの方がいい』と言ったのはアルベルトである。その言葉通りにザムリフェは人口約3万、ラグシウムが約5万で人口規模も商規模もラグシウムの方が明らかに上であった。
ちなみにラグは約1万人である。交易都市と観光都市の差こそあれ、それを差し引いてもラグシウムは人口の多い都市だと言えた。
一番桟橋が見えてきて、そこに真っ白で雄大な船体が横付けされているのが見て取れる。きっと、というかほぼ間違いなくあれがパールシークルージング用の遊覧船だろう。思ったよりも大きく、これは乗客3桁くらいは収容できそうだ。
とはいえヴィオレの集めてきた情報によれば、今年のクルージングは雨季に入って始まったばかりだという話だったので、乗客はそこまで多くもないだろう。
「あれが遊覧船ね!今から楽しみだわ♪」
「あれだけ大きいなら揺れることもないでしょうし、きっと楽しめるわ」
「海で船遊びやらなかなか無いけんね、しっかり楽しまんと損ばい♪」
「おふね…おっきい…」
そして四人とひとりは、乗船案内所で料金を支払うと次々と船へ乗り込んでいくのであった。
お読みいただきありがとうございます。可能な限り毎日更新の予定です。
もしもお気に召しましたら、継続して読みたいと思われましたら、作者のモチベーション維持のためにもぜひ評価・ブックマーク・いいねをお願い致します。頂けましたら作者が泣いて喜びますので、よろしくお願い申し上げます!
●女性用水着に関する補足●
この世界にビキニタイプの水着を広めたのは日本からの転生者です。当たり前のように「ビキニ」と呼ぶので意味を問われて説明に困って、それで地球上での名の由来をそのまま説明してしまいました(笑)。
つまり、この世界の東方世界に「ビキニ諸島」があるかどうか、この世界の誰も知りません。
●蒼薔薇騎士団のサイズ情報●
一応、こんなのの設定もあったりします。
・レギーナ
身長:82デジ(164cm)
体重:48リブラ(48kg)
スリーサイズ(単位:デジ):43.5-29-42(87E-58-84cm)
・ミカエラ
身長:82デジ(164cm)
体重:48リブラ(48kg)
スリーサイズ:41-29-42(82B-58-84cm)
※ツルペタではない。微乳と美乳の中間くらいな感じ。
・クレア
身長:76.5デジ(153cm)
体重:42リブラ(42kg)
スリーサイズ:44.5-28-40(89G-56-80cm)
※身体の線が細いのでヴィオレよりもカップが大きめ。
・ヴィオレ
身長:85デジ(170cm)
体重:55リブレ(55kg)
スリーサイズ:45-30-45(90F-60-90cm)
ついでにアルベルトは、
身長:87.5デジ(175cm)
体重:70リブラ(70kg)
です。