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データベースなら、華麗に逃げてみせます  作者: なつやさい
データベースの学園生活
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データベース王都に来る


 「お嬢様、これで持ち物は全部ですね?」


 暖かな日差しの中、屋敷の玄関にて馬車に荷物を積みながら、ポプリが手持ちの書類を見ながら確認をしてくる。

 心配性のポプリらしく、荷物を積むのに補助していた男性も苦笑するくらいだ。これで3度目であるから仕方ない。


季節は巡り、この春にレイナはやっとスレッドや父がいる王都へ足を運べるようになった。

 つまり、ついに魔法学園の入学が正式に決まったのだ。いつ行けるのかレイナには長い間不安の種だったが、主治医と父からの許可がやっとおり、ついに通えるようになった。


 もちろん、心配性の父の事だからスレッドを必ず同行させる事が条件になってしまったのは仕方ない。

でも一緒に通えるのは嬉しいと、ひとりずっと屋敷にいたレイナは朝からウキウキが止まらないのだ。


「大丈夫よ、心配しなくても。」


あいかわらずのポプリに流石にレイナは苦笑しながら、使用人一同を見つめる。

自分が眠ってから、ずっとこの屋敷を守ってくれた皆は家族のような者だった。

 しかし、学園に連れていけないのが悔しい。唯一王都にある父の屋敷には、ポプリを連れていって良いと許可をもらっていたのがありがたい。


「じゃあ、皆いってくるわね。」


春らしい、空色のドレスを優雅に広げお辞儀をすると屋敷の皆もお辞儀をしてくれた。


「お嬢!気を付けて!」

「ひろい食いしちゃだめですよ!」


……ちょっと、感動の別れじゃないの?!


思わず突っ込みそうになったが、馬車の運転主から声がかかれば構っている暇がなくなってしまった。

すぐに馬車に飛び乗ると、ゆっくりその場を離れていった。

こんなに別れがつらいとは、ちょっと泣きそうになるが隣でポプリが緊張しているのを見るとそんな事は吹っ飛んでしまった。


        ☆ 



「……ふぅ」


 馬車に揺られ数時間、気が付けば太陽は沈みあたりが暗くなっている時間帯になっていた、レイナは隣の眠ってしまったポプリを起こさないようにしながら、一息ついた。


 ポプリや屋敷の人には内緒にしていたが、レイナは結構気を使っていた。


このことを話したら、足の次は頭も異常があると騒がれてはいけないし、下手したら心配性の父の事だ、学園の入学も取り消しになったかもしれない。


 学園にはどうしても行きたかった、それは魔法を学びたいのもあったが、どうしても知りたい事があるからだ。


……本当にこの世界はゲームなんだ。




 あの日、弟のスレッドの好みを直感で当てた夜、レイナは不思議な夢をみていた。



目の前には光魔法が得意とする風景の映像が映っているのだ。そこには、自分の弟であるスレッドと、他にも何人か男性がいた。


 これが誰かの視点だというのは直ぐにわかった、しかし声を掛けようにも体が動かないからだ。


意識移転の魔法は、本でしか読んだことがないがそんな感じに映像が目の前に見えるのだ。

しかし声は聞こえず、文章が浮かんでいるのでそれを読むしかない。



 そこでは、一人の少女が必ず誰かと仲良くなっていっていた。それは物語のようで、小説が好きなレイナには飽きさせなかった。


 しかし、不思議なのはそこに現れる男性を見ると頭に好みのタイプや、好きな食べ物、今欲しいものなどがまるで文章のように流れてくるのだ。

これは一度スレッドを見たときにおこった現象に似ていた。


 映像の少女が何回も困るたびに、レイナの視点の人物はアドバイスをする。

そうすると彼女は良いほうに男性とストーリーが進んでいく。


だんだん見ているうちに、レイナは有る事に気づいていた。


それは未来を見せていること、そして学園でこのストーリーが始まっていること。そして、屋敷にいるレイナが殺されてしまうこと。


………私は死んじゃうの?


「これは、神様が考えた遊び、神様のゲームなの


……遊び?


あの少女の声がする。

いつ会ったか忘れたが、泣いていた少女に違いない。


「お姉ちゃんに、私の記憶を譲ったから神様に対抗して。お姉ちゃんは、データベースだから抗えるはず。」



『お願い未来をかえて、神様のゲームを壊して』


その声とともに、ポプリに起こされたレイナはあの時にすべてを思い出していたのだった。



自分は、神様の遊び【ゲーム】でデータベースという立場だということを。


……だからって、私に何ができるんだろうね。


横で寝てしまったポプリを見つめながら、彼女の情報が入ってこないことを考えるとやはり映像で見た男性達限定なのだろう。

 スレッドのレモンタルトの件もあるし、むやみにあの人達に会うことは控えた方がよさそうな気がしていた。

変に墓穴を掘らないとは限らない。


 とにかくレイナは魔法を覚え、またあの領地を豊かにしたかったし。死ぬなんて御免である。

変にかかわらないように、神様のゲームとやらに巻き込まれないで学園を過ごせれば満足なのだ。


「好きでこの力をもらった訳じゃないし、神のゲームとか巻き込まないでほしいわ・・・。」


半分ため息のよう吐いたセリフは、馬車のごとごとという音とともに消えてしまった。


とにかく、まだ見ぬ学園生活のスタートである。

もともと強気ではあるが、田舎娘には変わりがないので、ここは淑女らしくいこうとレイナはウトウトしながら決めていた。






 


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