7話
「スレッドはどうしたのかしら?」
姉弟の見ず要らずのお茶会は、スレッドは仕事があるからと、少し寂しそうにしながら帰る事になり解散になった。
「姉様次は学園でね。」
とまるで、犬のように笑顔で帰るスレッドを見送り、レイナは自室に戻ると、ポプリに声をかける。
気になるのは、スレッドがいきなり不機嫌になったあの時だ。
なんかカンに触る事を言ってしまっただろうか。
「お嬢様、私気になったんですが。
レモンタルトは誰かからお聞きになったんですか?」
「え?」
思わずポプリを見ると、彼女も不思議そうに見返してくる。
……レモンタルト?
「本当は言うなと言われてましたが、スレッド様は、お嬢様が意識不明の間に色々頑張っておられました。
そのひとつが、苦手な食べ物の克服です。
実はレモンタルトは、克服した姿を見せようと思って黙っていたんですよ。」
……思い出した!
ポプリの言葉に、頭がカチリとピースがうまる。
……そうだ、スレッドは酸っぱい食べ物が苦手だった。
特にレモンは苦手で、レイナがレモンティーが好きなばかりに良く喧嘩をしていたものだ。
食べなきゃ強くなれないわよ!と、母が居ない分、弟に言い聞かせていた。
だから、レモンタルトを食べれるようになったのを見せようとしてくれたのだ。
……あれ、私なんで知ってるの?
当たり前のように、頭に浮かんだ為話してしまったが、普通ならおかしい。
スレッドの好み、嫌いな物、今欲しい物、全部普通に頭に思い浮かぶのだ。
直接彼から聞いた訳ではないのに。
……え。なんで。
心臓が早くなり、息が上がる。
異変に気づいたポプリが、駆け寄り背中を撫でてくれた。
「大丈夫ですか?お嬢様?」
「ごめん、ちょっと頭痛くて、少し休むね」
「はい、出歩いてお疲れ様ですもの。
お夜食は起きてからにしましょう」
優しく布団を掛けられながら、レイナは頭がぐるぐるしていた。
訳が分からなかったが、何となく気づいてはいけない「何か」を知ってしまった気がする。
そのうち、眠気がくるのはあっという間だった。