35話
「レイナ様、お待たせいたしました。
シャーロット様がおいでになりましたよ。」
いつもの様にお茶を飲んでいると、聞きなれた優しい声が聞こえてきた。
執事長のリチャードである。
「わかったわ、リチャード。
こちらに案内して頂戴。」
「かしこまりました」
リチャードの声が遠くなるのを感じると、レイナは立ち上がって大きく深呼吸をした。
・・・・・・大丈夫、私ならできる。
そう言い聞かせると、隣に座っていたスレッドが心配そうな表情をしてくる。
本当ならスレッドを離れさせる予定だったけど、彼は頑なに拒否をしたのだから、しかたない。
スレッドに微笑んでいると、少し申し訳なさそうなノックが聞こえてきた。
「はい、どうぞ」
「レイナ様、ごきげんよう」
教わった事なのか、少したどたどしい感じで部屋に入って来た彼女に、レイナは笑顔で入室を許可すると自分に向かい合うように席へ案内した。
見慣れたレイナの顔に安心したのか、彼女も笑顔でそれにこたえる。
見れば見るほどお姫様らしい姿である。
田舎で暮らしたレイナも、その可愛らしさに見とれてしまいそうになるくらいだ。
・・・・・・うう、これが愛される聖女ってやつなのかしら。だめよレイナ、今日は厳しく行くんだから
ちらっとスレットを見ると、やはり彼も何か感じているのか、必死にシャーロットを見ない様にしている。
そんな弟に気づくと、自分に喝を入れながらレイナは慎重に言葉を選んだ。
「ねえ、シャーロットちょっと聞いていいかしら?」
「はい、なんでしょうレイナ様。」
まるで子犬の様に、こてんと首を傾ける姿が本当に可愛らしい。
「これは私が聞いた話なんだけど、貴方聖女になろうとしているの?」
「え・・・・」
「ああ、ごめんなさいね。嫌味とかじゃなくて、その・・・・・・」
これは嫌味なのか、いやいや。
言い方を考えているうちに、ふと「姉さま」と呼ぶ声に気づいてレイナはふと、スレッドに視線を送った。
「俺が発言してもいいですか?」
「え?」
「シャーロット様には申し訳ないけど、俺はその聖女には反対なんだ。
それは、姉様も同じだよ。」
いきなり話始める弟に、レイナは焦りながら見つめる。
もし神様の影響を受けたのだとしたら、どうしたらいいのだろうか。
じいっと彼の情報を読み取ろうとしたときに、レイナはふと違和感を感じたのである。
・・・・・・あれ、スレッドの情報が見えない?
スレッドとシャーロットを引き合わせたくないのは、シャーロットを保護する神様がスレッドを対象にしているから。
だから、彼が影響を受けない様に自分が言おうとしていたのに。
最悪情報を見て、レイナがシャーロットに知られない様にしようとしたのだが、まさかここで情報が見えないなんてことがあるのだろうか。
焦るレイナとは裏腹に、シャーロットはポロポロと空色の瞳から雫を落とし始めたのだ。
スレッドのセリフに、シャーロットが泣いてしまったのである。
「え・・・、ちょ。」
「そんなスレッド様に言われなくても、私だってわかっています。
でも、国の事を考えたらそんな事言えないんです。」
「そう言っても、シャーロット様が聖女になって国が戦争になるかもしれないんですよ。」
「しってます!」




