34話
「やっぱり私がシャーロットに言うしかないわね。」
レイナがそういうと、ジョシュアが困った顔を向けてきた。
何か言いたそうな表情の彼に、レイナは優雅に笑いながら遮ると、こう言い放ったのである。。
「だって、これは神様の遊びなんでしょ?
だったら、それにシャーロットが抗ってくれるのにかけるしかないじゃない。」
だれしも、頭をかかえる弟に同情したのだが、レイナ以外それに気づいていなかった。
☆
学園が再開してから、秋金の月の間はシャーロットはとにかくかけ回っていた。
いつもなら好きに買い物に行ったりできたのに、今はとにかく誰かお付の人がついてくるのだ。
しかも以前なら自分の後ろに、あきれ顔でついてくる白銀の彼がいない。
それどころか、ここ最近はシャーロットの実家にすら彼女は帰られていなかった。
「お父様……お母様……。」
爵位をもらってから、両親は泣くほど喜んでくれた。
それが嬉しくて、彼女は「神様の声」を代弁するのを辞めなかったのだ。
小さな田舎町に居たときは、皆子供の遊びだろうとおもっていてくれたのだが。
それが社交デビューする12歳を過ぎるころに、まるで火の様に噂は燃え広がっていったのだ。
「神の声を真似する愛くるしい子がいる」それが最初だったのに、
気が付いたら誰しもが「聖女」「神に愛されたシャーロット様」など、自分より身分の高い人ですら膝をついて頭を垂れるのである。
彼女はそれが何よりも嫌だった。
でもエディやジョシュア殿下、それに王様が喜ぶのが嬉しくて、彼女は笑顔で対応していたのだ。
「私の何が間違いだったんだろ?」
ぽつりとつぶやいた声は、一切誰の耳にも届かない。
この広い部屋では、今はシャーロット独りぼっちなのだから。
膝を抱えてうずくまっていると、ふとノックをする音が聞こえた。
「シャーロット様いらっしゃいますか?」
それは今は彼女のお付のメイドである、たしか王家から派遣されてきたようで、無表情なイメージが強い。
「はい!」
「コントレイス家の方からお手紙を預かりました。」
そう言って彼女が渡してきたのは、綺麗な水色の便箋だった。
コントレイス家といったら、あの二人兄弟しかありえない。
これはどちらだろうか?
そう思い開けてみると、中身はレイナからの招待状だった。
「すみません!今からお出かけ致しますわ。
可能なら車を用意できますか?」
そう告げると、手紙のメイドは深々お辞儀をして、その場を去っていった。
「これは……レイナ様からだわ。」
一人でいたら、彼女はとてもじゃないけど耐えられなかった。
だからレイナの招待状を受ける事にしたのである。
大好きな、可憐でそれでいて凛々しいレイナ様。
密かな憧れの人に呼ばれた事に、シャーロットは浮足立ってしまっていた。




