26話
「ジョシュア様は、今左足首をけがしていますね。
それは昨日の落馬によるケガ、知っている人はサイト様とエディ様くらいでしょうか?
それと、国王様との仲はあまりよくないんですね。”実”ではないから・・・・。」
「なぜ・・・それを?」
ジョシュアより先に隣にいたエディが口を開く、このことは国のトップシークレットなのだろう。知っているのは多分王族のみなはずだ。
「あと、エディ様を救いたいんですね。それは私も賛成です。
あ、あとポプリに頼んでアップルタルト用意しますね!甘いのが好きって可愛い一面ありますね!」
にこっと笑うレイナを他所に、エディは不振そうに見つめていた。
その間ジョシュアのポーカーフェイスは崩れない、真剣そうにみつめているのだ。
……実の子供じゃない事は言わないほうがよかったかしら、でも一番信じてもらえるし。
内心追放やらなんやらされるのでは、と焦るレイナはニコニコ笑うと優雅に紅茶を飲んで落ち着く。
「レイナ様は・・・・?」
「私は聖女でも神に愛されし少女でもないです。ただ、一定の人の「情報」が頭に流れてくるんです。」
「情報?」
やっと言葉を発したジョシュアに、レイナはゆっくりうなずいた。真剣な空気に居心地が悪い。
「私はこれを【データベース】と呼んでいます。なんでこの力があるか分かりませんが、ジョシュア様のいう眠り姫になった後に使えるようになりました。
でも、情報が見れるのは一定の方だけなので、ここだとポプリやエディ様の情報は分かりません。」
「データベース、聖女とは違うんだな。」
「そうですね、聖女だと思っていたんですね残念です。」
……聖女だと思われてたの!?
皮肉を言いながらも、絶対なりたくないと思ってしまう。シャーロットの苦しみを知ればなおさらだが、データベースも関わらないし使わないようにしていたのだ。
それが、まさかジョシュアにばれるとは、弟に話したのより勇気がいる。
「ただ、この力は使わないようにひっそり生きていこうとしてました。あの時私は1度変な夢を見たんです。
そこで私は、その【データベース】となる人物が死ぬのを見ました。あれが私なら絶対そうなりたくなかったので。」
「夢?」
「はい、その夢で私はある人物の視点でした。そこに出ていたのはジョシュア殿下とサイト様、そして私の弟です。
そして、姿は見えなかったですが、データベースの子が死ぬ運命でした。だから、私はそんな運命になりたくないので、黙っていたんです。」
「でもデータベース=自分とおもったんですか?」
「エディ様、屋敷にずっと住み続けている足の不自由な同じ年の女の子と聞いて誰を思い浮かべますか?
姿はなかったですが、その子は毎回電話で話を聞いてくれていましたし。」
「まさか。」
「私は、今普通に歩けていますがそれは奇跡だと言われました。
もしかすると、あの夢はそうなる正夢だったのかもしれません、だから私は逃げました。誰にも言わないで魔法学園を卒業すると。」
ぎゅっと手をスレッドに握られ、レイナは苦笑する。足が動けるようになったのは「奇跡」と言われ本来なら屋敷で生活する運命だったのだ。
そして、その屋敷で「データベース」は後半殺される。
そう考えると、あの夢はシャーロットの視点だったのではないかとレイナは思った。だからシャーロットに「情報」は話さないで、逃げ切ろうとしていた。
だまっていたジョシュアは、ふーっとため息をつくとレイナの方に歩き「少し一緒に来てくれ」と言った。
スレッドが止めようとするが、「だいじょうぶ、姐さんを捕まえたりしない」と言われ席に戻る。
仕方ないと、レイナは中庭に案内することにした。
応接室からはなれにある、コストレス家の中庭は、彼女のお気に入りだった。学園ほどではないが季節の花が咲いており緑魔法を得意とする彼女には憩いの場所である。
ポプリに頼んで紅茶を新しく用意してもらうと、ジョシュアと二人で中庭のカフェテラスに座る。
周りには人払いをしたので、今は気持ちのいい風と鳥のさえずりしか聞こえてこなかった。
ふわっとなびく、アッシュ色の髪を抑えながらレイナは中庭に視線を向けていた。
ジョシュアの顔が見れない、秘密を話してしまったからなおさらだ。
……トップシークレットを話した「データベース」への罰でも下るのだろうか、それならスレッドは無実にしてほしい、彼にもはなしていなかったから。
いろいろ考えすぎて頭痛がしたレイナは、額を手で押さえる。
全く読めないこの王子に振り回されていることは多いが、こう沈黙が続くと嫌な考えしか思い浮かばない。
仕方ないと視線をむけると、ジョシュアはむすっとした表情をしていた。
この王子のこの表情は初めてみる、さすがに想像をこえた表情に、レイナはぽかんっと口をあけてしまった。




