23話
「それはどういう事ですか?
まっすぐ見つめる先に、ジョシュアの紅の瞳がある。
先ほどのほのぼのした空気とは変わり、ジョシュアは真剣な表情でみてきていた。
違う人が見たら、ラブシーンだろうが今レイナにはそんな余裕がない。
本当は話してしまえば楽になるのだろうか、しかしジョシュアの情報も見れる以上どう思われるか。
バレてはいけない、気づかないでほしい。レイナは心の中で必死に懇願した。瞬きをするのも忘れて、平然をよそおって紅の瞳を見る。
悩むレイナをよそに、ジョシュアは苦笑すると彼女の頭を優しく振れた。
「俺の感だから気にしないでくれ。
なんか悩みがあったら話してほしいだけだったから。」
優しいそこ言葉に、その表情に嘘偽りがないのはわかる。
顔を見つめると、ジョシュアの情報が入り込んできた。今の悩みはシャーロットとスレッドのようだ。
それを読み取った時、レイナはふと自然に距離をあけると自分のもっていたバックをあけた。
そして取り出した物をジョシュアへ渡す。
これが今レイナができる精一杯だった。
「殿下はお優しいのですね。でも大丈夫です。
シャーロット様を気にかけて下さい。
それと、こちらよければどうぞ。」
「これは・・・」
「では、私は授業に戻ります。
だめですよ、殿下【火月の花は毒がありますから】」
そうと言い放つと、怪訝そうなジョシュアを見ないようにして急いでその場を去った。
声をかけないでほしかった、ジョシュアに言われたらつい本音を話してしまいそうだったからだ。
しかしジョシュアは、シャーロットの事を気になっているのならレイナはモブとして離れるべきだ。
よくわからない感情に支配され、レイナは居たたまれなくなり何かいうとジョシュアを傷つけて悲しませる気がして、それ以上あの場にいれなかったのだ。
☆
火月の花とは、この国の火月の時にしか咲かない赤い花である。
これが咲くと火月の始まりであり、枯れると次の季節の移り変わりを表すと昔から言われてきていた。
レイナが去ったあと、ジョシュアは呆然と渡された物をみていた。
いわゆる白い包帯のような布である。それがレイナのタオルである。
ジョシュアはそれを持ち、タオルの中に緑属性特有の保護の加護がかかっている事に気づいた。
「これは治癒魔法か」
もともと緑魔法は治癒に強くない。治癒魔法が得意なのは光魔法である。
しかし一つだけ光より強みがある、それが植物の毒などの対処だ。レイナはその得意を生かして保護をかけたタオルを渡してきたのだろう。
にっと笑いながら、ジョシュアは隠していた右腕の袖をまくった。そこには火月の花で擦った擦り傷が一つついている。
実はずっと痛みに耐えていたのだが、レイナは何かを察したのだろう。
「やっぱりなんか隠してるな。レイナ」
そっと傷口に当てると、自分の光魔法で強化をして彼女が去っていった方向を見つめる。
レイナは覚えていないのだろうな、と内心ジョシュアは寂しくおもってしまった。
しかし、すぐにサイトの気配を感じていつもの表情に戻すと、サイトに呼ばれた方向へ歩き出したのだった。




