20話
……これが本来のデータベースの役割なのよね。
保健室から出たあと、玄関に向かって歩きながらレイナはため息を着いた。
図書館にある鞄は諦めて、後で治癒術父にでも頼むとして、帰るしかない。
スレッドの事といい、色々あり過ぎてパンクしそうな頭を支えながら玄関先に向かうと見慣れた漆黒と赤髪の二人が立っていた。
……殿下とサイト様。
先程ご迷惑をかけた、ジョシュアとその護衛のサイトが玄関先で待っていたのだ。
流石に今すぐ会いたくなかったが、明らかにレイナを待っていたようでレイナに気づくと、ジョシュアは歩み寄ってくる。
「大丈夫か?眠り姫。」
「殿下その呼び名やめてくださいっていいましたよね?」
「ん?なんの事だ?」
レイナの不機嫌そうな様子など意にも介せず、ジョシュアはにっこりと笑ってすっとぼけている。
ジョシュアにバレないように舌打ちをしつつ、レイナは得意の淑女の仮面で対応する事にした。
先程スレッドが迷惑をかけた事もあり、揉め事は避けなければならない。
「先程、弟がご迷惑おかけして申し訳ございませんでした。」
一応、相手はこの国の王子に値する。
コストレイス家淑女として素直に謝ると、相手は少し目を細め苦笑した。
「それは、いい。一応スレッドから事情を聞いたしな。」
……いや、後ろの騎士様めっちゃ睨んでますが。
ジョシュアは気にしないというが、後ろで待機するサイトがめちゃくちゃ睨んでいる。
レイナはそんなサイトに、冷や冷やしてしまう。
「それで、ご要件は?」
「ああ、ほら。」
「あ!鞄!」
ジョシュアが手渡してきたのは、後々取りに行こうと考えていた図書館に置きっぱなしの鞄であった。
「わざわざ、ありがとうございます。」
まさかの展開に笑顔で答えると、ジョシュアはバツが悪そうに視線を逸らした。
そんなジョシュアに、サイトが呆れ顔で「気にしないで下さい、俺が持ってきたんで」と助け舟を出す。
「サイト様が?わざわざすみません。」
「いえいえ、それよりちょっと聞きたいんですが。」
「はい、何でしょう?」
怖い性格かと身構えていたが、案外柔からな口調のサイトに緊張が緩む。
眉間に皺を寄せてはいるが、キリッと切れ目の漆黒の瞳がレイナを捉えていた。




