頭痛の種
誰もが帰宅に足を早める、夕暮れ時、王宮の一室で頭を抱えむ者がいた。
「くそっ………。」
ダンっと空気を震わせる激し音がした。
白銀の髪に、翡翠色のメッシュが入った髪を後ろに束ね、歳は17程に見える。
整った顔立ちをしており、服装は王宮の騎士が着る制服を身にまとっている、騎士らしく腰には刀を携えていた。
しかし、その整った顔立ちとは裏腹に表情は苦痛にみち、額には冷や汗が浮き出ている。
青い瞳が見つめる先には、心配そうに席から身を乗り出しながら、ジョシュアがいた。
「また、例の頭痛か?」
ジョシュアは目の前の青年に心配そうに見つめ、そっと側近に下がるように目配せをした。
人には見せない方がいい気がした為だ。
「大丈夫か?」
ジョシュアの横で、もう一人いた人物が心配そうに声をかけた。
夕日と同じ、紅の髪をした青年だ。彼は手に持っている水差しを渡すと漆黒の瞳を細めながら顔を見つめる。
「……すまない。最近気づくと頭痛があって。」
「エディは、頭痛持ちだもんな。」
「サイトにも、今日の護衛任せてしまってすまない。」
「いいさ、今日は殿下が学園に行かなかったから助かってるし。」
エディと呼ばれた青年は、渡された水差しを飲みながらサイトにお礼を言った。サイトはどこ吹く風なのか、落ち込んでいるエディと正反対の様子だ。
サイトにおちょくられてジョシュアが視線を逸らすと、少し落ち着いたエディが面白そうに笑っていた。
「殿下が学園に行くと基本さぼるもんな。」
「そういうなよ、これでも父上の命令で会長をしたり忙しいんだから。」
「その割に、授業のいくつかを姿を隠すってコストレイス教授が泣いていたぞ。」
眠り姫の話ばかりするコストレイス教授、そうレイナの父親である。
最初は、娘が入学しただの会うたびに話してきており、ジョシュアは勿論お付のサイトもお腹いっぱいです。と言いたくなる親馬鹿っぷりなのだ。
会うまで、ジョシュアもどんなか弱い少女なのかと思っていたが、イメージが違ってびっくりをした。
もっと、「神の愛されし少女」ことシャーロットのようにか弱い淑女かと思っていたが、ジョシュアの会話一つ一つに表情が変化し、ましてや媚をうる姿もない。
正直言って、あの場所はサイトにばれてほしくなかった。
「他の授業に出れば【聖女様】について聞いてくる人ばかりだからな、まだコストレイス教授の親馬鹿を聞く方が楽だろ。」
勝手に父親が決めたシャーロットとの結婚に、周りの人が食いついてきて、正直逃げたいのが本音なのだ。
他の令嬢を娘に持つ教授や、王国に気に入られようと媚をうる人までおり、教授としては尊敬できるが王子としてしか見られていない自分に、ジョシュアは苛立つ事がおおかった。
それを知っているのか、サイトが肩をたたき「眉間のしわ」と教えてくれた。
「こらこら、一応エディの気になる人だろ?そういうなよ。」
「え、そうなのか?」
「ちがいますよ!何勝手にきめてるんですか!?」
二人の声が重なったのをみて、相変わらず楽しそうにサイトは笑った。
少し前まで張りつめていた空気はどこへやら。
まるで歳相応の男子のように、軽い調子で会話をしながらちょっかいをかけていく。3人はいわゆる幼馴染である。
そのせいか、一応王子として扱うが誰もいないと昔に戻ったように話せる関係なのだ。ジョシュアの専属騎士であるサイトと、サイトの父であり騎士団長の部下にあたるエディ。
昔から頭痛持ちだった為、専属騎士は難しいと悩んでいたのだがシャーロットの護衛につけた事がエディの喜びであった。
やっと二人と同じ立場になれる、そのために、頭痛なんてきにしてられないのだ。
「さて、では殿下仕事に戻りますか。」
すっと空気を換えた、サイトにエディも表情を引き締めて話をきく。
次の夏に陛下の誕生を祝う祝賀会をすることで、その時に「聖女」の力を見せてはどうか?という王様の意見についてだった。
神に愛された少女=聖女として、今はまだ隠されているシャーロットが力を見せなくてはいけない。
もし彼女の力が本当なら、ますますジョシュアの花嫁に決定させてしまうだろう。
そうでなくても、よりいっそう周りから圧が強まるのだ。
エディは気づくと握っていた拳が震えているのに気づき、ばれないように片手で抑えていた。




