13話
眉を潜めるレイナに、ジョシュアは苦笑しながら教えてくれた。
コストレイス教授が、この2年間飽きるほど自分の娘の話をしていたらしい。
眠ってしまい起きる気配がない、目覚めるのはいつか気がかりで、授業をする余裕ではない…など。
「お父様……。なんかすみません…」
「気にしてないけど、教授がああも嘆いていたから」
……親バカめ。
大人しく地味に生きようとした学園生活は、父の親バカによって無理そうだ。
というか、ジョシュアに会ってしまったのも良くない気がレイナはしていた。
「殿下、誠に恥ずかしいので。眠り姫だけは忘れてください。
ただ川で溺れたお転婆娘なだけですので…」
「くふふ……」
しゅんとしたレイナを見て、ジョシュアがいつの間にか、お腹を抱えて笑っていた。
クールと言われるジョシュアが笑うこと自体に、レイナは何処にツボがあったの?と戸惑ってしまう。
高貴な方だと思っていたが、歳相応の表情をするようだ。
「殿下?」
「ああ、すまない。そんなに百面相をする人が周りに居なかったから…。
スレッドと紛らわしいから、レイナと呼んで大丈夫だろうか?」
「ええ、いいですけど。」
「じゃあ、レイナ。教授とスレッドに宜しく言っといてくれ。
迎えが来ちゃったようだ。」
校舎からサイトの声がする。
抜け出すのは何回もしているのだろう、面倒くさそうにジョシュアは背伸びをすると、結界を解除して中庭から出ていった。
ジョシュアが居なくなった後、レイナはサンドウィッチを頬張りながら小さくため息を吐くのだった。
……結局出会う運命なんかな。
ジョシュアを見た時に、趣味が昼寝になっていた事は内緒にしておこう。
流石に王子に憧れる、令嬢達が知ったら泣いてしまうかもしれない。
……本当、なんで私なんかにデータベースの役割を任せたのかしら。
サンドウィッチをもぐもぐしながら、先程のジョシュアのデータを頭から無くそうと、深呼吸した。
「私は、平凡に行くって決めたんだから。
誰にも話さず行くのよ、レイナ。」
自分に喝をいれると、気分がスッキリする。
これがレイナの良いところなのだ。




