12話
サラサラの黒髪に、王国貴族限定のネクタイで本で顔を隠しているがレイナが見間違えるはずがない。
正真正銘、ジョシュア王子がレイナの指定席であるベンチで眠りこけているのだ。
……なんで、ジョシュア王子が此処で寝てるの?!
思わず悲鳴を上げそうになるのをこらえ、レイナは周りを見渡した。
仮にも学生とはいえ、王子である。こんな場所で寝ていて何かあったらどうするのだ。
……護衛もいないの?え、大丈夫これ?
完全にパニックになってしまったレイナを他所に、ジョシュアは眠ったままだ。
とりあえず、眠ってしまっているジョシュアに、変な人が来ないように緑属性の魔法を使用し、壁をつくる。
本来なら、光魔法の結界が有力なのだろうが、レイナの加護が強いのが緑なので光魔法は全然である。
「これで、よしっと!」
「ほぉ、完璧な緑魔法の結界だな。」
「うひゃぁ!」
結界魔法に集中していたレイナは、いきなり真後ろから声をかけられ飛び上がってしまう。
「で……殿下!」
慌てて振り返ると、ジョシュアは寝起きなのか欠伸をしながら。
飛び上がったレイナを見つめる。
鋭い赤い瞳が、昔飼っていた猫のノワールのようで、思わず見とれてしまった。
「やけに特殊な結界を貼る奴がいるなぁ…って目が覚めたら、まさかスレッドの姉が暗殺計画か?」
「そんな訳がないでしょう、殿下が無防備に寝ていたので結界を貼って守ってたんです。」
濡れ衣はごめんだ。と言い返せば、ジョシュアは口に手をあて考えこむ。
「ああ、いい隠れスポットを見つけたと思ってたら。ついつい寝てしまってたんだな。悪い」
ジョシュアが手を伸ばすと、歪だったレイナの結界が光魔法で強化される。
「これで大丈夫だろう。」
「殿下……」
まさか毎回こうやってサボっているのでは?と意味を込めて少し睨むと、ジョシュアは口を引き攣らせた。
「そんな顔で睨むなよ。
コストレイス教授には内緒にな。」
「はぁ……分かりました。では、私の行動もあながち間違いでは無かったんですね。」
レイナは落ち着きを取り戻すように咳払いをし、優雅に立ち上がった。
学園といえど、相手は王族である以上淑女のマナーである。
「申し遅れました、ご存知かもしれませんが。
コストレイス伯爵のレイナと申します。」
「ああ、やっぱり教授の眠り姫なんだな」
眠り姫と言われて眉間にシワが寄る。
「なんですか、それは?」




