凸凹5人パーティで邪城攻略、移動は転移でラック楽♪︎
「パイセンパイセーン」
「ねーねーパイセーン」
「はわっ!?なっ、何かな・・シュリナちゃん、ジュリアちゃん・・・」
「今回のぉ、お城潜入作戦の面子のぉ、割合を考えてみたんだよねぇ」
「わっ、割合?えっと・・なんの?」
「えー?分かんないのパイセーン」
「ボケとツッコミの割合に決まってんじゃーん」
「ボケと、ツッコミ?」
「そ。このボケとツッコミの割合を考えていたらぁ、もしかしてうちのミサの負担が大きいのではと思いましたー」
「ミサキリスちゃんの負担が・・大きい?」
「そ。ミサがいつも以上に疲れちゃう的なー?」
「足腰が小鹿みたいにガクブル的なー?」
「ねー」
「・・・へっ?あっ・・そっ、そうなん、だね・・・」
「パイセン乗り悪ーい」
「はわっ!?」
「あたし達がぁ、ねー、て言ったらパイセンも、ねー、て言わなきゃ駄目っしょ」
「ごっ、ごめんなさい・・・」
「こらこら双子ちゃん達。あんまりアキナちゃんで遊ばないの。それで、何がどうミサキリスちゃんの負担になってるの?」
あっ、ありがとうございますアオイさん、助かりました・・イケイケ双子ギャルの乗りが辛い・・・
「あー。アオイお姉さんもー、それ気になりますー?」
「そっちが言い出してきたんじゃない、もう」
「そうでしたー、えへへ。それじゃあ話しを戻しまして・・どうしてミサの負担が大きいのか、説明する為に誰がボケで、誰がツッコミか、発表したいと思いまーす!」
「まーす!」
なっ、なんか始まった・・・
「まずはうちのミサ。ミサはツッコミじゃん?」
「つっ、ツッコミだね・・・」
「真面目一筋だからねー、ミサは」
「そんでー、エンくんは、真面目だけど滅茶苦茶天然じゃん?だからボケ」
「えっ、円寿くんは・・・たしかにボケだね、天然ボケ・・・」
「エンくんは、そんな天然ボケだからこそ可愛いんだけどね、ふふっ」
「そっ、その通りですアオイさんっっっっ!!」
「うおっ・・急に大きな声だすじゃんパイセン・・・」
「そんでー、ナミミナさんは、マイペースでどう見てもボケ」
「今回の緊急参戦も、ボケ以外の何者でもないわね」
「んでー、コクオーくんはツッコミかなー?あー、でもぉボケの一面もあるかもー。アホの子っぽいし」
「アホの子ウケるー」
「幼いものね、彼。凄く素直そうだし、天然ボケ相手に、強引に納得させられそうよね」
「そんでー、トゥモシーヌさんは、ボケ。間違いなくボケ」
「それは間違いないわね」
「そもそも無口無表情キャラでツッコミ出来ないじゃーんて話しだしねー」
めっ、メタい事言うな、ジュリアちゃん(多分)・・・
「て事でー、実質ツッコミがうちのミサしかいないからー、負担でかくなーい?て話しー」
「うむ・・まぁ、ミサキリスちゃんには、そこも含めて、頑張ってもらうしかないわね。本人もそれは承知の上でしょ」
「やっぱそうなりますー?」
「そっ、それで2人は、そんなミサキリスちゃんのツッコミの負担が大きくて、心配なの?」
「いやー?別にー」
「えっ?」
「慌てるミサを見るのも想像するのも、あたし達の娯楽ー?的な」
「エンくんの慌ててる所も娯楽ー」
「ほんと、双子ちゃんて愉快な性格しているわね」
!?ごっ、娯楽て・・円寿くんとミサキリスちゃんを愉悦の為の玩具みたいな・・ふっ、2人が不憫だ・・むぐぐ、イケイケ双子ギャルめぇ・・・
「パイセンもその一部ですよー」
「はわっ!?」
あたしも玩具!?なんでさ!?
「ミサもエンくんもいないしー、パイセンで遊ぶしかないよねー」
「ねー」
「あらあら、アキナちゃんも大変ね」
ひいぃぃ!?みっ、ミサキリスちゃん!円寿くん!はっ、早く帰ってきてえぇぇ!?
ブオンーースゥーーカッーーパアァーーー
「・・・ん?うおっ!?なんか光ったと思ったら、いつの間にか別の場所にいるぞ!?これが魔法か!」
先程までいたラング・ド・シャットの部屋から瞬きをしたその一瞬で、コクオーの視界に移る景色は月が地上を照らし始めた茂みの中だった。
「これがトゥモシーヌさんの転移魔法だよ、コクオーくん。凄いでしょ!」
「わ~。何回経験しても~毎回感動する~」
「・・・・・」ムスゥー
自分に抱きつくナミミナを怪訝そうに見つめるトゥモシーヌ。
「・・・あっ、あの・・ナミミナさん?」
「ほえ?どったの~?ミサリッシュ~」
「どったのて・・・(あぁもういいか・・また戻るのもトゥモシーヌさんの負担になるし・・ついて来ちゃったんだから今さらどうにもならないか・・・)いや、大丈夫です・・・」
「ナミミナ!お前なんでついて来てんだよ?チェル姉が、ランシャの面子は戦った疲労があるから、お留守番て言ってたろ!」
「うるさいや~い。ついて行きたかったんだ~い」
「ナミミナさん。身体・・本当に大丈夫?無理してない?」
「大丈夫~、おにい~。あたしは日頃から~、他の皆よりも~体力を温存させてるから~」
「それサボってるて言うんじゃねぇか?」
「そう言う場合もある~」
「サボってんじゃねぇか!」
「うっうん、えぇと・・とりあえず、まずはなによりも、トゥモシーヌさん転移ありがとうございます。周りを見る限り、どうやらあたし達はバルニオン皇国内にいるみたいです。アレを見て下さい」
ミサキリス指差す方に視線を送る一同。そこには、先程望遠魔法で覗き見たお城・・ベディット・カンバッヂの城が見えた。円寿一行は、ベディット・カンバッヂの城の西側少し離れた箇所にある城を見渡せる小高い丘の茂み転移していた。
「あの位置にベディット・カンバッヂの城があるって事は・・つまり壁を超えて、バルニオン国内にたどり着いたという事です」
「わ~。お城だ~お城~」
「あそこにガキ共が・・・ぜってぇ助ける!」
「・・・」
「?・・エンくん、どうしたの?大丈夫?」
「・・・ミサちゃん、ごめんね・・ぼく、こんな時にこんな事思うなんて、凄く不謹慎だと思うんだけど・・・」
「?」
「ぼく・・初めてティリミナ王国じゃない別に国に来れて・・・すっ、凄く・・嬉しいよ!///」
もの凄く申し訳なさそうに本音を吐き出す円寿。
スッーーナデナデーーー(円寿の頭を撫でるトゥモシーヌ)
「・・・もぉ、エンくんたら・・観光しに来てる訳じゃないんだよ・・まったくもぉ」
「ごっ、ごめんなさい!ミサちゃん・・・」
「まぁでも、変に緊張して怖じ気づくよりかは良いかな・・・よし!それじゃあ、まずは各々・・どういう戦闘スタイルかをここで改めて確認したいと思います。まずはあたし。あたしの武器は槍。魔力で身体強化をして、槍にも魔法を纏わせて戦う事が出来ます。まぁ、これが戦乙女騎士団の基本スタイルなんだけどね。属性は風です」
「!ミサちゃん風属性だったんだね!」
「うん。ちなみに、土魔法と炎魔法も、少しだけなら使えるよ」
「3つも!凄い!」
「ミサリッシュ~。武器は槍て言うけど~、どこにその槍~持ってるの~?」
「大丈夫ですよナミミナさん。今出しますね」
「?」
腰にぶら下げている革製の袋に手を入れ、中から片刃のダガーナイフを2本取り出すミサキリス。
「このナイフを、こう・・刀背の部分をくっ付けます」
カチッーーー
「「!!」」
円寿とコクオーの頭の耳がピコンと羽上がる。そんな耳をジィー・・と見つめるトゥモシーヌ。ミサキリスの武器にはあまり興味が無い様だ。そして、さらに袋から3本の20cm位の短混を取り出すミサキリス。
「ほえ~。それを~?」
「これをですね・・・連結させます」
ガチッーーガチッーーー
「「!!!」」
「そして、この連結させた混を、先程のくっ付けたナイフに・・連結」
ガチィッーーー
「「!!!!」」
「はい、あっという間に短槍の出来上がりです。これが戦乙女騎士団の主武装、組み立て式の槍です。エンくんはこの槍、見た事あるよね。」
「うん!トレイターのアジトでの戦いの時に見たよ!」
「そうだね。ちなみに、この短槍の状態は、主に屋内での戦闘時に使われます。あんまり長いと、狭い屋内だと使いにくいからね」
「だからあの時は短かったんだね・・・ん?て事は、屋外での戦闘の時は・・・」
「気づいたねエンくん。外ではね・・こうするの」
ガションッーーー
「!!!!!」
「!!!・・・(伸びた!そうか、混の一本一本が警察官が持っている警棒みたいに伸びて、結果槍全体が伸びて長い槍になった!)初めてミサちゃんに会った時に使っていた槍だね!」
「うん、そうだね」
「はあああ~・・カッコいいー!!」
「かっけぇっっす!ミサの姉さん!」
キラキラした目でミサキリスとミサキリスの槍を見つめる円寿とコクオー。
「・・・(男の子て、やっぱこういうの好きなんだな。円寿くんもコクオーくんも、組み立てていく度に反応していたからな)さて、次はトゥモシーヌさんですね」
コクッーーー(頷く)
「トゥモの姉さんは、転移魔法以外に・・どんな魔法が使えるんすか?」
「・・・だいたい・・・」
「えっ?・・だっ、だいたい?」
コクッーーー
「・・・あぁ、えと・・トゥモシーヌさんに変わって、あたしがトゥモシーヌさんを説明しますね・・・(トゥモシーヌさんの戦闘スタイルは、この前の烏との戦いで見たからね)今トゥモシーヌさんが言っただいたいと言うのは、だいたいの魔法が使えるという意味です。ですよね、トゥモシーヌさん」
コクッーーー
「!て事はトゥモシーヌさん・・雷魔法と空魔法以外にも、土、炎、風、水、氷の魔法をだいたい使えると言う事ですか?しかも無詠唱で?」
コクッーーー
「!!凄いです!トゥモシーヌさん!」
「・・・・・//」
ぷにぃーーー(円寿の頬をつく)
「トゥモシーヌさんの戦闘力は、正直かなり高いです。やはり魔法を無詠唱で、かつ無動作で放てる事が出来るのが、とてつもなく大きいです。さらにトゥモシーヌさんは、複数の魔法を同時に発動させる事も出来ます。正直、下手な兵士数十人程度なら、トゥモシーヌさん1人で余裕で制圧出来ると思います」
「・・・・・」ドヤァー
「わ~。トゥモシンヌ~、まさに人間兵器~」
「さて、次はコクオーくんなんだけど・・コクオーくん、武器とか持ってきている?」
「すいやせん!ミサの姉さん!俺・・慌てていたんで、武器は乗っていた馬車に起きっぱなしです!だから武器持ってません!すんませんっ!!それなんで、拳で戦います!あっ、あと脚も使います!」
シュッシュッと拳を二回打ち出し、右足を上げるコクオー。
「そっ、そうなんだね・・・(声大きいなぁコクオーくん・・潜入作戦だから、あまり騒がしいのは・・でも悪気は無さそう・・こっちは何も言えない・・いっそ清々しい・・・)」
「コクオ~、声がうるさ~い。ボリューム下げろ~」
「ん?そんなデカかったか?」
「コクオーくん。あんまり大きな声出すと、お城の人達に僕達の存在がバレてしまうよ。ここはお城から遠いから大丈夫かもだけど・・一応、コソコソて話そうね。」
「コソコソっすね!了解っす!エン兄さん!」
「まだデカいぞ~、コクオ~」
「・・・(呼び方がエン兄さんに変わってる・・さてコクオーくんだけど・・いくら獣人の高い身体能力があるとはいえ、武装が無いのは不安だな・・・)そうだコクオーくん。もし良ければ、あたしの丸盾使う?」
「!良いんすか!ありがとうございます!うっし!これでさらに敵を強くぶん殴る事が出来ますね!」
「・・・(攻撃に使うんだ・・・)えと、それじゃ・・次はナミミナさんですね。ナミミナさん、武器は持って来ていますか?」
「持ってるよ~ミサリッシュ~。あたしにはこの短弩が~・・・あれ?たんど~・・あれ?たん・・・」
「?」
自分の服をゴソゴソとまさぐるナミミナ。しかし、短弩か出てくる気配が無い。
「あれ~・・ん~・・・あっ・・・」
「?ナミミナさん?」
「そうだ~。ケリィと戦った時に~、壊されたんだった~。うご~、ケリィの奴~、許さ~ん」
「えっ?て事は・・ナミミナさんも、武器は無しと?」
「そうなる~。だから~、コクオ~、あたしにミサリッシュの~丸盾よこせ~」
「はぁ!?ざっっけんなよ!この丸盾は、おれが先にミサの姉さんから借り受けたんだぞ!」
「うるさ~い。ケリィの責任はコクオ~の責任だ~い。責任にとってよこせ~」
「あぁ、もう2人共・・落ち着いて・・・(子供同士の喧嘩みたいだよなぁ、これ・・・)」
「2人共!喧嘩は駄目だよ!今は喧嘩なんかしている場合じゃないんだよ!」
「!・・エンくん・・・」
「わ~、おにい~、怒らないで~」
「!?すっ、すいやせん!エン兄さん!でも、ナミミナの奴が・・・」
「ナミミナさん、ぼく怒っていないよ。コクオーくん、気持ちは分かるよ。でも、元々その丸盾は、ミサちゃんの物なんだから、2人のどっちかが使うかは、ミサちゃんに決定権があるとぼくは思うな。あっ、ちなみにぼくの考えを言うとね、丸盾を2人で交互に使う様にしてみたら良いんじゃないかな?」
「交互で・・すか?う~む・・・ミサの姉さんは、どう思いますか?」
「うん。あたしも、エンくんの提案が良い落とし所だと思うな」
「そうすっか・・・おいナミミナ。おれはエン兄さんの案で構わねぇぞ・・おっ、お前は?」
「え~。コクオ~と武器のシェアとか~、なんかダルい~」
「!?おっ、お前なぁ!」
「う~ん・・・あ~そうだ~。お城に潜入した時~、敵から武器~奪っちゃえば~良いんだ~。」
「なっ、ナミミナ!お前自分勝手過ぎんだろ!エン兄さんの提案を無下にすんじゃねぇよ!」
「大丈夫だよコクオーくん。あくまで提案だからね。不満なら断っても構わないんだよ。それよりも・・ナミミナさん。ぼく、人の物を奪うのは・・あまり良い事だとは思えないな」
「おにい~、たしかに~奪うのは悪い事~。だけど~、悪い奴の使っている武器は~、悪い方法で得た武器だから~、奪ってもセ~フ~。むしろ良い事~」
「!?いっ、良い事なの?そう・・なのかな?」
「納得しちゃ駄目だからねエンくん・・うん、まぁでも・・今回は状況が状況だし、奪って使う方法もやむ無しかな。あたしはそれで良いと思いますよ、ナミミナさん」
「わ~い、ミサリッシュの許可~貰った~。よ~しコクオ~。武器をゲッツするまで~、あたしを守れ~。許可する~」
「おっ、お前なぁ~・・・」
「あぁはは・・・(ナミミナさん、自由だなぁ・・・)さて、それじゃあ最後はエンくんだけど・・・(エンくんは正直戦闘要員としては扱わないのだけれど・・・)」
「エン兄さんは、どうやって戦かうんすか?」
「ごめんねコクオーくん。ぼくは、暴力が苦手だから戦う事は出来ないんだ」
「そっ、そうなんすか!?獣人て、小さかろうが大きかろうがやる時はやるてのが獣人の本能なんで、エン兄さんみたいな獣人は、なんか・・その・・すげぇ、珍しいっすね・・・」
「うん・・みんなが戦うて言うのに、ぼくだけ戦わないなんて・・凄くズルいよね・・ごめんね、コクオーくん・・・」
「!?ちっ、違うっすエン兄さん!そんなつもりで言った訳じゃないっす!」
「おにいは~、別大陸の獣人だから~、こっちの獣人と~考えが違っても~、しょうがないよ~」
「大丈夫、気にしていないよ、コクオーくん、ナミミナさん。ぼくは戦う事ができない・・・だからね、その代わり・・みんなの盾になるよ!」
「たっ、盾!?」
「えっ?あの・・エンくん、それって・・・」
「うん!ぼくには女神様のご加護て力があるから、この力で、こう・・攻撃された時に、みんなの前に立って守るよ!」
強気な表情でバッッと両腕を大の字に開く円寿。
「女神様のご加護て・・・あっ、もしかして・・俺がエン兄さんを殴ろうとした時に、バチコンッッて弾かれたあれっすか?」
「うん。そのあれだよ」
「ねぇねぇ~おにい~。その力て~、どういう原理なの~?魔法なの~?」
「う~ん・・ぼくも、いまいちどういう原理なのかよく分からないんだけどね・・物理的な攻撃は弾いて、魔法みたいな攻撃はぼくにあたると消えちゃうんだ。とにかく、ぼくに攻撃はきかないみたいだから、攻撃されたらぼくの背中に隠れてね。みんなを守るよ!」
スッーーナデナデーーー
「わ~。おにい~ゆうか~ん。でも~、おにい~ちっこいから~、隠れるのムズいかも~」
「!?そっ、そうだね・・えと・・それじゃあ、こうっ・・目ぇっ一杯腕を広げれば・・どうかな?」
「むむ~、まだちっこいな~。でも~、一生懸命な所は好感持てる~。おにい~、女神様のご加護で~、腕を伸ばしたりは出来ないの~?」
「うっ、腕を伸ばす!?どうかな・・もし、次デメティール様に会う機会があったら、腕を伸ばせるかどうか、聞いてみるよ」
「!?・・・(えっ?エンくんデメティール様に会えるの?てか腕を伸ばすてなんだ!?エンくんも冗談を真に受けないでよ・・・)」
「ナミミナ!エン兄さんがちっこいとかそういう事じゃねぇんだよ!よく分かんねぇけど、エン兄さんは無敵て事だろ!その無敵の身体を使って、身を挺して俺達を守ってやると言っている・・その心意気がすげぇんだ!エン兄さんカッッけぇっす!!」
「!!・・・(かっ、カッコ良いて言われた・・・)ありがとうコクオーくん!凄く嬉しいよ!」
「ふふっ・・・(エンくん、カッコ良いて言われて嬉しそう・・・て、のほほんとしている場合じゃない・・エンくん・・デメティール様に会う事が出来るとか、そもそも女神の加護はどれ位の攻撃に耐える事が出来るのかとか色々聞きたい事があるし・・そもそもいくら無敵とはいえエンくんを盾にするのは正直気が引けるとか・・言いたい事は山ほどあるけど・・・はぁ・・今はやめよう・・あんまり時間も無いし・・・)さて、それでは城に潜入する為の編成を伝えます」
「!編成!・・・(なんだかカッコ良い!)」
「まぁ、編成と言っても、簡単な物だけどね。まずは先頭は、コクオーくん。お願いできるかな?」
「おぉ!先頭て事は・・切り込み隊長て事っすね!しゃあぁっっ!」
「お前は切り込み隊長て言うよりも~、弩の弓だぞ~、コクオ~。」
「んなぁっ!?捨て駒て事かよっ!?」
「大丈夫だよコクオーくん。捨て駒だなんて思ってないからね。コクオーくんには、獣人の鼻と目と耳を使って前方を警戒しながら戦ってほしいの。盾も持っているし、敵の不意な攻撃があっても対応出来ると思うから、先頭に選びました」
「あれ~?コクオ~、お前~たしか~。」
「?」
「すっ・・すいやせん!ミサの姉さん!俺・・その、今日・・鼻の調子が悪くて・・匂いの判別が、出来ねんす・・ほっ、本当すいやせん!」
「う~ん、そっか・・・(早速考えていた編成が崩れたな・・いやでもしょうがない。緊急時でも臨機応変に対応するのが指揮する者の役目だ。)大丈夫だよコクオーくん。そうだな・・鼻の調子は悪いみたいだけど、目と耳は大丈夫?」
「はいっ!目と耳は、むしろ鼻が悪い分いつもよりも研ぎすまれている感覚があります!」
「了解。それじゃあ先頭は変更なくコクオーくんでお願いね。それじゃあ、隊の2番目はあたs・・」
「ミサちゃん!」
「えっ?どうしたのエンくん?」
「そのね・・2番目は、ぼくに任せてもらえないかな。」
「えっ?あぁ、その・・エンくんには、4番目をお願いしようと思っていたんだけど・・どうして、2番目が良いのかな?」
「うん。ぼくはみんなの盾になるて役割があるから、後ろにいるよりも前にいた方が良いと思うんだ。本当は、先頭で攻撃を受けて後ろでみんなが反撃するのが理想だと思っていたんだけど・・盾役も出来て攻撃も出来る、攻守一対のコクオーくんが先頭に選ばれて、そっちの方が正解だなて思ったんだ。だから、ぼくは2番目。ぼくがコクオーくんの後ろにいれば、調子の悪いコクオーくんの鼻の部分をカバー出来て、後ろのみんなも守る事が出来る!どうかな?ミサちゃん」
「・・・(エンくんを盾役にするのは抵抗があるのがあたしの本音・・でも、エンくんの意見も出来る限りの尊重したい・・どうしようか・・・)う~ん・・・」
「エン兄さん!俺の鼻のカバーしてくれるんすか?!」
「うん!任せて。それに、コクオーくんの丸盾と、ぼくの女神様のご加護が重なれば、鉄壁だよ!」
「鉄壁!カッッけぇっっ!」
「・・・(エンくんとコクオーくん、色々と相性良いな・・相性の良い2人を近くに置いた方が、作戦が良い方向にいくかもしれない・・・)よし、分かったよエンくん」
「!」
「元々、子供達を助けようて言ったのはエンくんだからね。エンくんの意見を尊重して、2番目を任せるよ」
「本当!ありがとうミサちゃん!」
「うおぉ!行きましょう!俺達鉄壁コンビで!ガキ共を助けるっす!」
「うん!頑張ろうね!コクオーくん!」
「さて、それでは次ですね。3番目はあたs・・・」
ズイッーーー(ミサキリスの前に立つトゥモシーヌ)
「・・・とっ、トゥモシーヌさん・・どうしましたか?」
「・・・・・」ジィーー
ミサキリスを一点に見つめるトゥモシーヌ。
「・・・(あっ、圧を感じる・・・)もっ、もしてかして、3番目が良いんですか?」
コクッーーー
「・・・(トゥモシーヌさん、エンくんの近くにいたいんだろうなぁ・・まぁそれはあたしもだけど・・指揮する立場上、できれば3番目・・つまり真ん中で状況に合わせて指示を出したいんだけど・・・ん?いやまてよ・・・)よし・・それじゃあ、3番目はトゥモシーヌさんでお願いします」
コクッーーー
「ほえ~?ミサリッシュ~あっさり~。良いの~」
「はい。トゥモシーヌさんは、今回の作戦の要。転移魔法があります。緊急時に転移する時に、トゥモシーヌさんが真ん中・・3番目にいた方が、前も後ろも集まりやすいですよね。それにトゥモシーヌさんの魔法は、中~遠距離でその力を発揮します。3番目にいれば、前と後ろ・・どっちにも対応出来ます。なので、3番目はトゥモシーヌさんが適任かと」
「ほえ~、なるほ~」
「トゥモシーヌさん!よろしくお願いします!」
コクッーーナデナデーーー(頷き円寿の頭を撫でる)
「トゥモシーヌさんが後ろにいると、なんだか心強いです。あっ、でも、耳は触らないで下さいね」
コクッーーー
「・・・(耳?あぁ、たしかエンくん、耳を触られるのが苦手なんだっけ。大丈夫かなトゥモシーヌさん・・・)さて・・次の4番目は・・・(あたしと言いたい所だけど、2回連続で言えずにいる・・ナミミナさんはどうだ?)」
「ほえ?」
チラッとナミミナの方に視線を向けるミサキリス。
「あた・・・」
「ほえ?」
「・・・ssしぃ・・・(あっ、言えた)」
「わ~。ミサリッシュが4番目て事は~、あたしは5番目~、1番後ろだね~」
「あの・・良いんですか?あたしが4番目で?・・・」
「ほえ?うん~、別に良いよ~。あたしはどこでも~。」
「そっ、そうなんですね・・良かったです・・・(考え過ぎたな・・・)」
「くそ~、でも1番最後なら~、なおのこと~短弩が無いのが~、悔やまれる~。短弩あれば~、後ろで援護射撃~出来る~。うが~、ケリィ~許さ~ん」
「・・・(台詞は怒っているみたいだけど、声のトーンが怒っている様に聞こえないな、ナミミナさん。)あの・・ナミミナさんは、武器を入手するまで耳と鼻を使って後方の警戒をお願いします。何かあれば、すぐにあたしに知らせて下さい」
「オッケ~、ミサリッシュ~」
編成が決まった。前から、コクオー、円寿、トゥモシーヌ、ミサキリス、ナミミナである。隊のリーダー核はミサキリスが担当する。
「頑張ろうね!ナミミナさん!」
「・・・う~ん・・・」
「?どうしたの?ナミミナさん?」
「・・・あ~。分かった~」
「?何が?」
「うんとね~。ずっと~、おにいと話してて~違和感があったんだ~。それがね~、ようやく分かった~」
「ぼくと話してて・・違和感?」
「そ~。おにい~、あたしの事~、ナミミナさんて~呼ぶ~」
「?そう・・だね。ナミミナさんて呼んでるよ」
「それ駄目~」
「!?」
「せっかく~、あたし達~ランシャのみんなを~ため口で話す様になったのに~、さん付けで呼ぶのはおかし~」
「そっ、そうかな?」
「そうだぞ~。だから~、あたしの事~、ナミて~、呼んで~」
「えと・・・ナミ・・さん?」
「だから~、さん付けは駄目~。ミサリッシュを~呼ぶ時みたいに~」
「なっ、ナミ・・ちゃん?」
「うむ~。よきかな~」
「えと・・満足してくれたみたいで、良かったよ。なっ、ナミm・・ナミ、ちゃん・・・」
「・・・(ナミちゃんて、言い慣れていないなエンくん。まぁ、その内慣れるよね、あたしの時みたいに。)ふふっ、呼び方は大事だからね、エンくん」プニィー
「そうっすよエン兄さん!呼び方は大事っす!」
「それとね~、チクレーチ~、ピュマ~、メグ~、ウィネも~ちゃん付けで~、呼んであげて~。喜ぶと~、思うから~」
「分かったよ、ナミ・・ちゃん・・・(て事は、チクちゃん、ピュマちゃん、メグちゃん、ウィネちゃんて呼べばいいのかな?)」
「・・・・・」
プニィーープニィーーー
「!・・?どうしましたか?トゥモシーヌさん。」
チョイチョイーーー(自分の方を指差す)
「?」
「・・・・・」
チョイチョイーーー(再度自分の方を指差す)
「?」
「わ~、トゥモシンヌ~。さてはトゥモシンヌも~、ちゃん付けで~、おにいに~呼んで欲しいんだな~?」
「・・・・・」
コクッーーー
「!えと、それじゃあ・・・とっ、トゥモ・・ちゃん・・・」
「・・・・・///」
プニィーーー
「・・・(トゥモシーヌさん、少し照れてるな・・エンくんの頬をつついているのも照れ隠しかな?ふふっ、隠せていないけどね。)さてと、呼び方も決まった事だし・・そろそろ出陣!・・と、言いたい所ですが・・・」
「?」
「まず城のどこに潜入するのか、潜入したらどう動くのか、まず最初に何をするべきか等々・・説明をしてから出陣しましょう」
「!」
ミサキリスから他4人に潜入作戦における説明が伝えられる。その他、そもそも潜入作戦をした事があるのかや、各々どれ位戦闘経験があるのかの確認も行われた。そして・・・
「よし・・これで確認は出来たかな」
「うん!大丈夫だよミサちゃん!」
「おっしゃあっっ!燃えてきたぜぇっ!」
「張り切り過ぎて~、へまするなよ~、コクオ~」
「それでは・・これより、児童獣人救出ベディッド・カンバッヂ城潜入作戦を開始します」
「!うん!了解ミサちゃん!頑張りましょう!コクオーくん!ナミ・・ちゃん!トゥモs・・さっ、ちゃん!」
コクッーーー
「おっす!」
「うお~。サク姉の敵をとるぞ~」
「!サク姉まだ生きてるよ、ナミちゃん」
「とっ、トゥモシーヌさん・・転移お願いします」
コクッーーー
ブオンーースゥーーカァッーーパァッーーー
城から少し離れた小高い丘から場面は変わり、ここは城の西側の壁の上・・鋸壁に魔方陣が出現する。
「よっと」
「さて・・コクオーくん。ここから、城の中・・見れるかな?」
「大丈夫すよ、ミサの姉さん。この距離だったら、獣人の視力なら余裕っす。ダニだろうかノミだろうが見つけられます!」
「!そこまで見えるの?コクオーくん凄い!」
「えっ?あっ、いや・・これは、例えっすよ、エン兄さん・・・」
「!?」
「あはは・・えと・・エンくん、ナミミナさん。耳と鼻は問題無い?」
ピコッーーピコピコッーーー
「うん!耳、以上無しだよ!」
「くんく~ん・・くんかくんか~・・鼻も~、OKなり~」
今回の作戦にあたって、獣人である3名には各々担当する役割がミサキリスから与えられた。人間よりも優れた五感を持つ獣人だが、1つの器官に意識を集中させる事によって、よりその制度を上げる事が出来る。目に集中させればより遠くの物を・・耳に集中させればより離れた音を捉える事が出来る。ミサキリスは、この獣人の特徴を最大限活かす為、これを三等分にする事を思いついた。先頭を行き常に視界から新しい気色が入り、鼻の調子が優れないコクオーには目を。そんなコクオーの鼻をカバーしつつ円寿には耳を。残るナミミナには鼻を各々任せる事にした。
「ナミミナ、お前ちゃんと匂い嗅いでんだろうな」
「嗅いどるわ~い。いいから~、コクオ~は目の役割を~果たせ~」
「分かってるよ、たく・・・ふむふむ・・あっちには兵士がいて、あっちにも・・くそっ、やっぱ警備厚いっすね・・・ん?いやまてよ・・・」
コクオーの視線の先・・それは、城の窓であった。
「窓から中が覗けんな・・どれどれ・・・おっし、ミサの姉さん。あそこの部屋、見張りの兵士がいないっす。あそこから入りましょう」
「了解。それじゃ・・・」
「・・・ほえ?・・ミサリッシュ~、人間の匂いが~近づいて来るよ~」
「!?」
ピコンーーピコンッーーー
「この足音の数・・近づいてくるのは2人だよ、ミサちゃん」
「巡回中の兵士だね・・トゥモシーヌさん。1時の方向のあの部屋に転移お願いします」
コクッーーブオンーースゥーーカァッーーパァッーーー
「よっと」
「・・・(あれ?煙草の匂い?)ん?」
「えっ?」
彼はこの城に従えるしがない一兵士。今日も今日とて巡回と証して、長年使われておらず物置部屋となっている空き部屋で紙煙草で一服・・つまりサボっていた。そしていつも通り吸い終え、2本目に火をつけようとした時・・彼の目の前に突如、魔方陣が現れた。現れたのも束の間、そこから女の騎士が1人、女の魔導士が1人、獣人が3人現れた。突然の事態に、彼は状況を理解するのが追い付かず開いた口から咥えていた煙草をポトリと落とした。
「あっ・・・」
兵士と5人の間に沈黙が流れる。そして、ようやく事態を飲み込めた兵士が硬直していた口を動かし始める。
「・・・なっ、なんだぁ!?お前r・・・」
「うおりゃっっ」
ブオンーーガコンッーーー
「がっっ・・・」
兵士が声を挙げようとしたその瞬間、いち早く動いたのは目担当のコクオー。ミサキリスから借り受けた丸盾を、フリスビーを投げるが如く投擲し見事兵士の額にヒット。兵士は気絶し、跳ね返った丸盾をスマートにキャッチした。
「うっし」
ゴンッッーーー
「うっし・・じゃないや~い、あほんだら~。」
「いぃっっつぅぅ・・なっ、何すんだよナミミナ!俺に拳骨して良いのはチェル姉だけなんだぞ!」
「チェルに代わって拳骨したんじゃ~。てか~、兵士がおったやないか~い」
「しっ、しょうがねぇだろ!窓からは見えなかったんだから!見張りの兵士がサボってるなんて、思わねぇだろ!」
「コクオーくん、声が大きいよ。ヒソヒソ、ヒソヒソだよ」
「すっ、すいやせん!エン兄さん!」
「ナミミナさん。この件は、コクオーくんだげの責任ではありません。最終的にGOサインを出したのはあたしです。皆が皆、真面目な兵士だけではないと予想できなかった、あたしのミスでもあります」
「ミサリッシュ~・・・」
「ミスしたのは仕方がないよ。バレずに済んだんだから、結果オーライだよ。それにコクオーくん、あの兵士さんを、すぐに・・えと、眠らせた?のは、ナイス判断だったよ!」
「そっすか!あざす!エン兄さん!」
「でも、あの兵士さん・・その、死んじゃってはいないよね?気絶してるだけだよね?」
「大丈夫っすよぉ、エン兄さん。あんなもんじゃ獣人は死なないっすから。そんなやわじゃねぇっす」
「・・・あの人は獣人じゃないよコクオーくん・・人間だよ・・・」
「あっ・・そだった・・・(やべ、獣人の感覚でやっちまった・・・)」
「・・・」
「あぁ・・・あっ、ほらエンくん。あの倒れた兵士、ピクピク動いてるよ。死んじゃった訳ではないから、安心して」
「!本当だ!」
「ほっ・・・(良かった。エンくんの目の前に人が死ぬ瞬間なんて、見せたくないからなぁ・・・)さて・・まず最初の段階・・城内への侵入はクリア。エンくん、次は何をするか、覚えてる?」
「うん!城内にいる、魔力妨害をしている魔導士の排除だね」
「そうだね。それじゃ・・・」
ミサキリスが合図を出そうとしたその瞬間、円寿の耳がピコンと反応する。
「!・・エンくん」
「うん。人が近づいて来ているよ」
ミサキリスは考え出す。先程の小高い丘の上での作戦説明の際、ミサキリスはトゥモシーヌから転移魔法はどこまで転移出来るのかを聞いた。トゥモシーヌ曰く、転移魔法で転移はどこへでもいける。どんなに現在地から離れている場所でも、トゥモシーヌ自身が行った事のある場所・・あるいは目視で確認した場所なら問題ないという。最近はあまりしていないみたいだが、昔は暇さえあれば望遠魔法でこの大陸の様々な場所を水晶越しに見ていたトゥモシーヌ。水晶越しでも場所を確認さえすれば転移が可能なのである。しかし、今トゥモシーヌ達がいるのは城中が魔力妨害でジャミングされている。最初に小高い丘に転移したのも、そこが望遠魔法で確認出来たギリギリの位置だったからだ。そこからトゥモシーヌは、自分の目で確認した位置までにしか転移ができない・・・訳ではない。確認しなくても転移は出来るのだが、その場合転移した先が安全かどうかが分からない・・つまり、不安だからなるべく確認出来ない限りは転移したくないのがトゥモシーヌの気持ちである。もし転移した先が城の兵士がいる目の前だったら・・そもそもちゃんとした場所に転移出来るのか・・転移した先が壁や柱の中だったら・・最悪自分1人ならなんとかならん事もないが、今は自分以外に4人の仲間がいる。安易に転移して仲間を・・大切な相手を危険な目に合わせたくない・・そんな不安がトゥモシーヌにはある。しかし、今この場には、そんなトゥモシーヌをカバー出来るその仲間がいる。
コンコンーーー(壁を叩く)
ピコッピコッーーー
「・・・!ミサちゃん、この壁、そんなにぶ厚くないよ。そうだな・・20cm位かな?それで、この部屋と同じ位の空間があるよ」
「くんく~ん。煙に匂いとかも無~い。人の気配は無し~」
「ありがとうエンくん、ナミミナさん。トゥモシーヌさん、それではこの隣、20cm先に転移お願いできますか?」
コクッーーー
ブオンーースゥーーカァッーーパァッーーー
「・・・」
転移してすぐに周りを確認するミサキリス。人の気配は無いとは聞いたものの、念の為辺りを見渡す。
「・・・(ここも空き部屋か)トゥモシーヌさん。ここまで転移魔法を三回仕様していますが、まだ・・眠くはないですか?」
コクッーーー
「了解です。眠くなったらすぐに伝えて下さい。エンくん、ナミミナさん、近づいてきた兵の様子は?」
ピコッピコッーーー
「うん。離れていったみたいだよ」
「遠ざかっていくなり~」
「ありがとう。それじゃ改めて・・あたし達はまず最初に、魔力妨害を行っている魔導士を排除します。連絡手段の確保する為です。ですが、闇雲に魔導士を探していく訳にもいきません。あくまで魔導士探しは作戦の初期。ここに時間を割く事はできません。そこで、魔導士を効率よく探しだす魔道具があります」
「!アイテム!」
「それがこの・・魔力を可視化する事の出来る眼鏡です。」
「魔力を可視化出来る・・・」
「眼鏡?」
キョトンとするコクオーと円寿。ミサキリスが取り出したのは、よくある黒縁の眼鏡であった。
「わ~。なんだか~、普通の眼鏡~。てか~、魔力を可視化て~、なんぞや~?」
「百聞は一見に如かず・・エンくん、この眼鏡、かけてみて」
「うん!」
ミサキリスから渡された眼鏡を素直にかける円寿。
「わ~。おにい~、眼鏡似合う~」
「・・・(眼鏡かけたエンくんて、なんだか新鮮だな・・可愛い・・・)」
円寿の新たな可能性に少し頬を赤く染めるミサキリスと、同じ事を思い頬を染めるトゥモシーヌ。
「!!」
「ふふっ・・どうエンくん。分かった?」
「これは・・・ミサちゃん、コクオーくんにナミちゃんの身体から、薄い赤紫のオーラみたいなのが見えるよ。ゆらゆらしてる・・もしかして・・これが、魔力?あっ、ぼくからも見えてる」
「そうだね。正確に言うと、エンくんが見えているのは魔力の残滓だね。今さっき、トゥモシーヌさんの転移魔法であたし達に魔力がついたんだね。このように、魔法を使うとそれと同時に魔力も放たれるだけど、それを目で見える様にするのがこの眼鏡・・魔道具、見通す眼。これを使って、魔力妨害で魔力を放っている魔導士を見つけます」
「ドゥルシャン!・・・(名前カッコ良い!)」
「おお!そんな便利な物があるんすね!魔法てすげぇ!」
初めて見る魔力(の残滓)に、目を輝かせながらミサキリス達を眼鏡越しにキョロキョロと見渡す円寿。
「・・・!ミサちゃん。よーく見ると、さっきから小さい蛍みたいな光の粒が沢山飛んでいるんだけど・・これってもしかして・・・」
「光の粒・・・トゥモシーヌさん、もしやこれが・・・」
コクッーーー
「・・・魔力妨害・・・」
「やっぱり・・エンくん、今見えているのが、魔力妨害で放たれている魔力だよ。それの発生源を辿っていく事になるって訳」
「!なるほど!・・・(魔力にも色々な見え方があるんどなぁ、凄いなぁ・・・!!トゥモシーヌさん・・あっ、じゃないや・・トゥモちゃんの身体からは、凄く濃いオーラが見える・・・あれ?そもそも色が違う・・黄色・・いや金色?人によって違うのかな?)」
「おにい~、あたしも魔力見た~い。眼鏡貸して~」
「!うん、良いよ」
「わ~い・・・わ~、ほえ?わ~、ほえ?わ~・・・」
「・・・(ナミミナさん、リアクションが独特だな・・・)」
「ナミミナ!次、俺な!」
「コクオ~は~、3秒だけな~」
「なんでだよ!?」
「・・・(ドゥルシャン、完全に玩具扱いだな・・・ん?トゥモシーヌさん、エンくんの方を見て残念そうな顔してる・・・あぁ、なるほど・・もう少しエンくんの眼鏡姿、見ていたかったんですね・・まぁ、あたしも少し残念かも・・・)」
「おぉ!これが魔力!すげぇ!」
「コクオ~、3秒たったぞ~。返せ~」
「まだたってねぇだろ!早ぇよ!」
「なにを~」
「!ナミちゃん、ちょっと待って。この・・見通す眼だけどざ、コクオーくんが、かけていた方が良いとぼくは思うな」
「!エン兄さん!」
「え~?なんで~、おにい~」
「コクオーくんは、目担当だからだよ。先頭の人がこの見通す眼をかけていた方が、有効的だとぼくは思うよ」
「そうか~、なるほ~。おにいが言うなら~仕方がな~い。コクオ~、ちゃんと~役に立てよ~。」
「言われなくても役に立ってやらぁ!エン兄さん、俺頑張ります!」
「うん!頑張ろうね!・・・ふふっ」
「?どうしたんすか?エン兄さん」
「コクオーくん、眼鏡かけていると、チェルシーさんによく似ているなぁて・・やっぱり姉弟だね」
「!!そっ、そっすか・・似てますかね・・へへっ・・・//」
円寿の言葉に少し驚き、照れ臭そうに笑うコクオー。
「こら~、コクオ~、なに喜んでんだ~」
「!?ばっ、バカっ!別に喜んでなんかいねぇよ!」
「・・・(コクオーくんて、やっぱりお姉ちゃん子だよな・・・)よし、それではコクオーくん。さっきも言った通り、沢山の光の粒が見えてると思うけど、その発生源にはより沢山の光の粒が出ていると思うから、城を捜索しながらそれを見つけて」
「了解っす!ミサの姉さん!」
「それじゃ、部屋を出ましょう。エンくん、ナミミナさん」
「うん!部屋の外に気配は無いよ!」
「おにいに同じく~」
「了解。コクオーくん、先頭お願い。警戒は怠らない様にね」
「任せて下さい!ミサの姉さん!」
扉に手を掛け、意気揚々と開けようとする気持ちを抑え、慎重にソッと扉を開くコクオー。周りを確認し、後ろを振り向き頷くと、一向は城内を静かに走りだす。本格的な作戦の開始である。コクオーが見通す眼で魔力妨害の発生源を探りながら、円寿とナミミナが人の気配を感じしだい報告。ミサキリスの指示の下移動し、どうしても兵士をかわしきれない場合は、人数に応じて撃破か転移を選択する。兵士の撃破はコクオーの速やかに行い、トゥモシーヌが魔法でサポートの形をとる。ちなみにコクオーはミサキリスから、兵士を撃破する時はできる限り一撃で気絶させる様にと指示をされていた。そうこうしている内に、城に潜入してから10分が立つ。連携が上手く行き、5人は順調に足を進めていた・・・かに思われた。
「そういえばナミミナさん。先程兵士を1人撃破しましたが、武器を調達なくても良かったんですか?剣を持っていましたが」
「あたしは~、弩弓しか~、使いたくないのだ~」
「弩弓ですか・・・(遠距離の武器が良いのかな?)それじゃあ、弓でも大丈夫ですか?」
「弓は駄目~。弓は~、矢をいちいち引かなくちゃ~いけないから~、めんど~い。弩弓なら~、引き金引くだけだし~、らくち~ん」
「なっ、なるほど・・・」
「贅沢言ってんじゃねぇよナミミナ!てかよぉ、拳使って戦えばいいだろうがよ!」
「うっさいや~い。手で殴るの痛いんだ~い」
「たくっ・・・」
「!コクオーくん、ストップ。人の気配がするよ」
「おっと」
円寿の言葉に足を止め、曲がり角から顔を少しだしこちらに近づいてくる兵士を確認するコクオー。距離はあるものの、このままだと確実に遭遇する事になる。ちなみに顔を出す時、頭の耳が目立つといけないので後頭部に耳をたたんでいる。
「・・・ん?あの兵士・・・おい、ナミミナ。ご所望の物が近づいてくるぜ」
「おぉ~?本当か~コクオ~」
近づいてくる兵士は2人。1人は剣を、もう1人は弩弓を持っていた。
「よ~しコクオ~。速やかに倒して~武器をいただくのだ~」
「おう!・・て、なんでお前が命令してんだよ!」
「コクオーくん。兵士が近づいてくるよ」
「おっと、そうでしたね。さっさと仕留めますか」
「トゥモシーヌさん。コクオーくんのサポートお願いします」
コクッーーー
「・・・(一歩で間合いを詰める想像で・・弩弓を撃ってきたら丸盾で弾いて、剣の兵士を蹴り飛ばし、そのままの勢いで弩弓の兵士に回し蹴り。間髪いれずに蹴り飛ばした兵士に追撃して落とす・・うっし、完璧だ・・いくぜっ!)」
兵士を倒す想像練習をするコクオー。
「う~ん・・・あ~、そうだ~」
「?ナミミナさん?」
「あたし~、良い事思いついた~。コクオ~、兵士なんだけどさ~・・・」
「コクオーくんなら、もう出ちゃいましたけど・・・」
「なぬ~」
ダッーーー
「なっ!?じっ、獣人!?」
「こいつっ・・はやi・・・ごはっっ」
兵士に向かって走り出すコクオー。兵士から見たら、急に曲がり角から出てきた獣人が一瞬にして間合いを詰め、剣を構える間も無いまま左頬に上段蹴りが入り、そのまま壁に叩きつけられた・・ようだった。
「へっ・・・(遅ぇ遅ぇ!全然反応できてねぇじゃねぇか!)」
「っ!?こいつ」
ビシュッビシュッーーー
カンカンーーー
放たれた弓を丸盾で受け止め、想像練習通りに勢いのまま回し蹴りを放とうとするコクオー。
「だりゃっ!」
「コクオ~ストッ~~プ~~」
「んなっ!?」
コクオーの蹴りが兵士の眼前でピタッと止まる。
「ナミちゃん!?どうしてコクオーくんを止めるの!?」
「コクオ~、その兵士~、気絶させないで~捕えろ~」
「なっ、なんでだよ!?」
「ひいぃっっ!」
「あっ、くそっ・・待ちやがれっ!」
隙を見て逃げ出す兵士。慌てて追いかけようとするコクオー。
「!この音・・まずいよコクオーくん!沢山の兵士がここに来ているよ!逃げないと!」
「!?でもエン兄さん!兵士が・・・だぁっ!もういねぇ!?逃げ足だけは一丁前かよ!?」
「っ・・・(兵士に逃げられた、これはまずいな・・・)エンくん、兵士はどこから来るの?」
「ぼく達の後ろの曲がり角からだよ。もうすぐ来ちゃうよ!」
「・・・(さっき逃げた兵士が伝えた?いや違う・・流石に早過ぎるし、エンくんが音を聞いたタイミング的に逃げられる前・・・っ!コクオーくんが蹴りつけた兵士が壁に激突した時か・・音で気づかれた・・う~ん、これはミスったな・・コクオーくんに一撃で兵士を倒す様にと言ったのはあたしだからな・・音も出さずに倒せと言うのは、流石に酷だよな・・・)」
ダダダダダッーーー
円寿達の後方から兵士が6人やって来る。
「!?何者だぁ!貴様らぁ!」
「!?・・・(まずい)走るよ皆!」
ミサキリスが声でコクオーに向かって走り出す円寿。それ続き後ろの3人も動く。
「すいませんトゥモシーヌさん。そこの角を曲がったら、先程確認した踊り場に転移してもらって良いですか?」
コクッーーー
「!コクオーくん!そこの角を曲がったら兵士がいるよ!1人だよ!」
「OKっすよエン兄さん!」
躊躇う事なく角に飛び出し視線を右に向けるコクオー。円寿の言う通り、そこには兵士が1人いた。
「なっっ!?・・ごばっっ・・・」
兵士の腹に容赦なく膝蹴りを食らわすコクオー。倒れる兵士を横目に、そのまま円寿達が走り去る。
「トゥモシーヌさん、お願いします!」
コクッーーー
ブオンーースゥーーカッーーパァッーーー
ダダダダダッーーー
「どういう事だ!?もう姿が無いぞ!?」
「そもそも奴らはどこから入って来たと言うのだ!?衛兵は何をしている!」
「とにかく探すぞ!ベディット様にも急ぎ連絡を!」
「よっと」
「ふぅ・・あっ、危なかったね、ミサちゃん・・・」
「そうだねエンくん・・・(もうバレてしまった・・なんて不甲斐ないんだ、あたし・・・)トゥモシーヌさん、ありがとうございました」
コクッーーー
「コクオ~のアホ~。お前がもたもたしてるから~、兵士が逃げて~早速バレたじゃんか~」
「なっ!?おまっ・・このぉ、ナミミナふざけんな!お前が、あの時変な事言って俺を止めるからだろ!バレたのはお前のせいだ!」
「なんだと~」
「2人共!喧嘩は駄目だよ!バレちゃったものは仕方がないよ!切り替えて行こう!」
「エン兄さん・・・」
「わ~。おにい~、優しい~。」
「あの、ナミミナさん・・どうしてあの時、コクオーくんを止めたのですか?あたしから見ても、あまり最善の行動ではなかったと思います。理由を聞かせてくれますか?」
「んとね~、あの兵士を捕まえて~、魔力妨害をしている~魔導士の居場所とか~、色々聞き出そうと~思ったの~」
「「「!!」」」
ナミミナとトゥモシーヌ以外の3人が驚きを見せる。たしかにナミミナの言っている通り、この城の事を知る兵士に魔導士等の居場所を聞いてしまう方がもっとも手っ取り早い。勿論、一端の兵士如きが知らされている城の情報等たかが知れているかもしれない。魔力妨害を行う魔導士の居場所を知らない可能性・・嘘の情報を掴まされる可能性だってある。しかし、それでも何かしら情報を得られる事は、潜入作戦においてとても重要である。ナミミナの行動は意味のある物であった。
「ごめんなさいナミミナさん。先程の最善の行動ではないと言う言葉を取り消します。ナミミナさんの意見は正しい・・どうしてそれを失念していたのか、お恥ずかしい限りです・・・」
「いやいや~ミサリッシュ~。気にしなさんな~」
「ナミちゃん凄いよ!そうだよね、情報を集めるのは大事だよね。勉強になったよ!」
「わ~い。おにいに誉められた~」
「・・・ちっ、ナミミナ・・悔しいけどよ、たしかにお前の意見は正しい・・だけどよ、ならせめてもう少し早くそれ言ってくれよ!そうすれば、こっちだってもっと上手くやったのによ・・・」
「う~ん、たしかに~」
「ナミミナさん。ナミミナさんの行動は間違いではありません。ですが、やはり今回の場合それを伝えるタイミングは間違いでした。ナミミナさん、これから何か意見がある時は、突発的に伝えるのではなく、出来ればあたし達に伝えてからでお願いできますか?」
「分かった~。突発的はやめる~。ミサリッシュ~、おにい~、トゥモシンヌ~、コクオ~、ごめんね~」
「うん。ナミちゃんの活躍、ほく期待しているよ!」
「・・・まぁ、ナミミナよ。どうしても突発的に動いちまうのは分かるぜ。なんせ獣人だからよ。理性より本能が先に働いちまうんだよな。分かるぜ・・うんうん」
「わ~、コクオ~なんかムカつく~」
「・・・(理性より、本能?・・あぁそっか。たしかに獣人だからそうなるのも納得だけど、それ以上に・・ナミミナさんの身近にいるあの人が、普段から本能全快だからな・・ナミミナさんマイペースだけど、多少なりとも影響は受けているんだろうな・・・)あはは・・・」
「いたぞぉ!侵入者だぁ!」
「!?」
「まずいっ・・皆行きますよ!」
階段の上から兵士達が現れ短弩を撃ち出す。難なくかわす獣人組と、飛んでくる矢を短槍で弾きトゥモシーヌを守りつつ後退するミサキリス。
「逃げたぞ!追えっ!」
「トゥモシーヌさん、少し走って兵士が見えなくなったら、また転移お願いします!」
コクッーーー
廊下を走る円寿達の背中を追いかける兵士達。角を曲がった所を追い詰めようとしたが、すでに円寿達の姿は無かった。
「くそっ!もういなくなってやがる・・・」
「獣人が3人に人間2人・・妙の動きが速いな・・獣人は身体能力が優れているからとして、人間の方は魔力による身体強化か?」
「それにしては速過ぎるだろ」
「明らかに身なりが魔導士の女がいたな・・空魔法で姿を消しているのか?」
「透明化か・・可能性はあるな」
「・・・なぁ、もしかすると・・なんだけどさ」
「ん?なんだ?言ってみろよ」
「あの女・・転移魔法使いだったり・・・」
・・・・・
「いや、それは無いな」
「あぁ、ないない」
「やっぱり無いか」
「転移魔法使いて、あの大陸唯一の転移魔法使いだろ?万年引きこもりで、その存在すら怪しまれているて言うじゃねぇか」
「そもそもなんでその転移魔法使いが、この城に侵入してきてるんだよ?なんの理由があって?」
「知るかよ。まぁ、転移魔法使いの事は置いといてだ。さっさと侵入者を見つけるぞ」
円寿達が城に潜入した頃から少し時は戻り、場面変わってここはラング・ド・シャットの家。円寿一向がベディット・カンバッジの城に転移した直後、家の主たるサクネアが目を覚ました。
「・・・そうか・・そうだったんだな・・・」
転移する前に円寿くんがティーカップに淹れたほうじ茶をすすりながら、サクネアさんが自分が寝ている間にあった出来事をチェルシーさんから聞き終える。
「・・・はぁ・・ダセぇな、あたし・・・」
「サク姉・・・」
「完全に自惚れてた。ここ最近ずっと調子良く仕事出来てたからよ、今回もいつも通り目の前にクソ共ぶっ飛ばして、ガキ共助けて、んでクソの親玉ぶん殴って、お前らと祝杯あげる事しか頭に無かった・・あのユズリハて女の言った通りだ。まったく見えて無かったんだ。目の前のあの女の事も、あたしが負ける可能性も・・見ようとしなかった・・本当ダセぇよ、あたし・・・」
「・・・あぁ、えと・・さっ、サク姉ダサく無いよ!」
「そっ、そうだよ、サク姉はカッコ良いんだから!」
「まっ、負けたて聞いた時は驚いたけど・・それでも・・・」
「あたし達の憧れのサク姉である事には変わらないっす!」
「ネガティブなサク姉なんてらしくないよ!」
必死にサクネアさんのフォローの言葉をかけるチクレーチさん、ピュマさん、メグさん、ウィネさん、ケーギンさん。ケーギンさんに到っては涙目だ・・・
「あんた達・・・(そっか・・この娘達が入った頃て、ラング・ド・シャット勝ちっぱなしの負け知らずの時期だったっけ?)」
「・・・だぁもう、お前らそんな顔すんなよ・・泣くなケーギン!たく・・・っ・・・」
「ん?どうしたの?サク姉」
なんとも言えない気まずい表情になるサクネアさんに気づき、チェルシーさんが問いかける。
「んぅ・・なっ、なぁ、チェル・・・今回あたしが負けたって・・その・・えっ、エンジュも・・聞いたんだよな・・・」
「・・・うん、そうだけど・・・」
「・・・」
「・・・サク姉?」
「・・・はあぁぁぁぁぁぁ~~~・・・」
「サク姉!?」
はうわっ!?サクネアさん、なんてクソデカため息!?重い!ずっと重い雰囲気だったけどさらに重くなったぁ!?これにはそれまで淡々としていたあたしの心の声も驚きを隠せない!
「・・・ぐっ・・エンジュ・・エンジュに知られた・・負けちまった事を・・くそっっ・・・」
サクネアさん、自分が負けた事よりも円寿くんにそれを知られた事に対して落ち込んでいるのか・・・
「あたしはエンジュに、喧嘩じゃ・・戦いなら負けねぇて言ったんだ・・エンジュが憧れるカッけぇ自分のままでいたかったんだ・・なのに、負けちまったらよ・・エンジュ、ガッカリしたよな、ズタボロのあたしを見て・・・」
「はぁ・・・サク姉のおバカさん」
「!?」
「サク姉・・エンジュが負けたサク姉を見て、本当にガッカリしたと思っているの?」
「・・・だっ、だってよ・・・」
「まったく・・エンジュ、サク姉が負けた事なんて全然気にしていなかったよ。それよりも、サク姉がまず生きているかどうかをすぐに確認したんだ。あたし達は泣きじゃる事しか出来なかったのにさ・・誰よりも冷静だったよ、エンジュは・・・ふっ、なんか、ちょっと悔しかったけどね」
「・・・そうか・・やっぱエンジュの奴、肝が座っているな・・礼を言わねぇとな。エンジュ!エンジュどこだぁ?いるよなエンジュ?」
「・・・サク姉、あのね・・まださ、サク姉が寝ている間にあった出来事なんだけどさ・・終わっていないんだよね」
「あ?」
チェルシーさんは再び話し始める。拐われた子供達を助ける為、非道を尽くすベディット・カンバッジ氏に説教をする為、氏の城にトゥモさん達と共に向かった事を。サクネアさんはそれを黙って聞いている・・・だっ、大丈夫かなサクネアさん・・なんだか恐ろしい展開になりそうで落ち着かない・・・
「・・・て事なの、サク姉」
「・・・」
「サク姉?」
ギィロォッーーー(恐ろしい表情で明奈を睨み付けるサクネア)
「ひいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?!?」
「アキナぁ・・てめぇ、どうしてエンジュを行かせたぁ!止めろよエンジュを!て言うかよ・・エンジュが行ったならてめぇもついて行けよ!てめぇなんの為にエンジュについていると思ってんだゴルアァッ!」
「ごみぇんにゃじゃああぁぁいぃぃぃぃぃ!?」
「ミサキリスぅ!ミサキリスはどこだぁ!だぁくそっ!あいつもいねぇのか・・・ミサキリスの奴、もう二度とエンジュをゴミ共の巣窟には連れて行かねぇて言ってやがったのに・・簡単に破りやがった・・・許せねぇ!!」
「えっ?ちょちょちょっ、ジュリ・・ミサてサクネアさんとそんな話ししてたの?」
「いや知らない・・あたし達がいない所で話してたら、分からないよね・・・」
「サク姉ストップ!」
「あぁ?なんだよチェル!」
「落ち着きなさいサク姉。先輩ちゃんを怖がらせないの。先輩ちゃん怖がらせた事を知ったら、エンジュが悲しむでしょ?てか、今回の件はそもそもエンジュの方から名乗りを上げたの。それで皆で相談して、全員が納得しているから。先輩ちゃんに詰め寄るのも、ミサキリスちゃんを攻めるのも筋違い。ほら、こっち戻りなさい」
「ちっ」
「うぅ・・怖い・・シャクネアしゃん・・怖いよぉ・・うぅ・・・」
「パイセーン、怖かったでちゅねぇー。よちよちよちー」
「ほーらっ、怖いお姉さんはー、あっちにいきまちたよー」
「うぅ・・シュリママ・・ジュリママ・・・」
「・・・(どうして赤ちゃん言葉でアキナちゃんを慰めているのかしら、この双子ちゃん達・・アキナちゃんも受け入れている・・ママて・・・幼児退行を起こす程怖かったのね、サクネアの事が・・・)」
頭から汗マークを流すアオイ。
「おぅチェル・・全員が納得しただぁ?あたしが納得してないんだがぁ?!」
「そりゃそうでしょ、サク姉は寝てたんだから・・安心してサク姉・・ちゃんとサク姉の事、納得させるから。と言っても、あたしの言葉じゃないけどね」
「あぁ?」
「よく聞いてサク姉・・あたしはね、サク姉が起きたら伝えてほしいて、エンジュから伝言を預かっているの」
「なにっ!?エンジュから!?」
「それじゃ伝えるね・・『サク姉・・・ぼくを信じて』」
「!?しっ、信じて?なにをだ?」
「『子供達は、ぼくとミサちゃん、トゥモシーヌさんにナミミナさん、コクオーくんとで必ず助ける・・正直、根拠とかは無いから、なかなか信じてもらえないかもしれないけど・・それでも、ぼく達5人が無事帰って来る事を、信じて待っていて欲しい・・そして、この作戦が成功した時・・その時は、ぼくはサク姉にリベンジして欲しい』」
「リベンジ・・・」
「『ぼくは、サク姉を信じている。サク姉は必ず立ち上がる・・立ち上がって、ぼく達にカッコ良い姿を・・勇姿を見せてくれる事を、信じているよ。だから今は、英気を養って待っててね・・・』だってさ」
「・・・」
「リベンジ・・ユズリハの事だね。エンジュも、ナミから聞いてサク姉が戦いに集中していなかった事、知っているからね。ふふっ、サク姉・・サク姉が負けた事・・あたし達以上にエンジュが納得していないみたい。そりゃそうだよね、エンジュの中で、サク姉はハチャメチャに強い最強のヒーローだからね。あっ、勿論あたし達ランシャ皆もそう思っているよ。まぁ、当たり前過ぎて今さら・・かな?」
「そうだよサク姉!」
「サク姉は最強なんだ!」
「ちゃんと戦ったらサク姉が勝つに決まっている!」
「リベンジしましょうサク姉!」
「リベンジで勝てば負けはチャラだよ!」
「最強にカッコ良いヒーローのサク姉を・・あたし達は見たいっす!!」
「「「「「「サク姉!!!」」」」」」
「・・・おっ、お前ら・・・」
「サク姉、あたし達の理想のサクネア・バサローは、滅茶苦茶高い所にいるぞー。たどり着けるかなー?」
チェルシーの言葉に、小さく笑い声をあげるランシャの面々。皆その表情は、優しく明るい表情であった。
「お前ら・・・へっ、たく・・揃いも揃って好き勝手人の理想を上げやがってよ。本当、勝手な連中だ・・・だが、勝手過ぎてむしろ清々しい!」
「サク姉・・・」
「分かったよ。お前らとエンジュがそんなにあたしを信じるっつぅんなら・・あたしも信じてやるよ!」
「ふっ・・うん、ありがと、サク姉」
「たがしかし!」
「えっ?」
「それでもやっぱりエンジュが心配だ!」
「えぇぇぇ・・・」
「もし万が一エンジュが怪我でもしたら大変だろ!」
「そんな事言ったらキリがないよサク姉・・・」
「やだなぁ、サクネアさん。エンくんは女神の加護で守られているから、怪我なんてしませんよ」
「ん?なんだぁ?怪我しない?女神の加護?」
「あれ?」
「あっ、そうだシュリ。エンくんが女神の加護で守られているのって、たしかランシャの皆知らないんじゃなかったっけ?」
「あれ?そうだっけ?」
「なになにぃ?シュリジュリー。またあたし達の知らないおにいの秘密ー?」
「この前の年齢みたいなー?」
「おしえろおしえろー!」
チクレーチ、ピュマ、メグが双子二人に詰め寄る。
「はいはーい、教えるよー・・・と言っても、あたしもいまいち女神の加護の事、よく分かっていないんだよね・・・あっ、パイセンなら知ってるかもー。パイセー・・・」
「うぅ・・ママ・・ママ・・・」
ジュリアに膝枕され頭を撫でられる涙目の明奈。
「シュリー。パイセンはまだ時間かかりそうだよー」
「パイセンウケるー」
「あ?なんでアキナの奴、あんなんなってんだ?」
「サク姉が怖がらせたからでしょーが」
「なぬっ!?」
「パイセンは使い物にならないかぁ・・・ならば、困った時のぉ・・アズさん頼みー!アズさーん!」
「シュリナちゃん。女将さんなら、エンくん達が転移したタイミングでお店に戻ったわよ」
「なんですとー!?アオイお姉さんもっと早めに教えてよー」
「・・・(転移した直後にあたしの側に来て耳元で、『あたし、お店に戻るわ。アオちゃん、あとお願いね』て言って、こっちが引き留める間もなくそそくさ部屋を出てってしまったのよね・・・)」
「本当だアズさんいない。アズさんマジサイレント」
「もうしょうがないわね・・あたしも全てを把握している訳ではないのだけれど、あたしの知っている範囲で良いなら、エンくんの女神の加護について説明してあげるわ」
「流石アオイお姉さーん!」
「説明おなしゃーす!」
ランシャの面々に向かって自分が見て来た女神の加護の力を説明し始めるアオイ。円寿に魔法が触れた瞬間その魔法は霧散した事、円寿に向かって突貫した烏が弾かれた事・・ランシャの面々の反応は様々で、驚愕の表情を見せる者、キラキラと表情を輝かせる者・・そして、疑念を抱いた表情を見せる者・・・
「・・・とまぁ、こういう感じね。原理はよく分からないけど、エンくんに対するあらゆる危害から、女神デメティールが守ってくれているみたいなの」
「へぇ、なるほどね。コクオーが白猫ちゃんに殴りかかった時、弾かれたのはその女神の加護の力て事なんだね」
「そうね・・・て、えっ?待って、コクオーくんがエンくんに殴りかかった?!」
「口閉じていなさいケリシュナイル・・すいませんアオイさん。コクオーのその件は、あたしがコクオーに言って、一生かけて罪を償わせますので・・・それでアオイさん。その女神の加護って、やっぱ魔法なの?」
「そうね、多分だけど・・あれは魔法では無いと思うわ。魔法て、発動すると必ず使用者から魔力が多かれ少なかれ放出されるの。基本的には目で見えないんだけど、魔法に通じている魔導士は、放出された魔力を肌で感じる事が出来るの。その魔力が、女神の加護を発動している時のエンくんからは、無いのよね」
「魔法ではない・・魔法ではない力・・魔法を越えた力、と言う事でしょうか?」
「そうねミョリンさん。正直、魔導士からしたらそんな力があるなんて、簡単に認めちゃ駄目なんだけどね・・いかんせん大陸唯一の希少な魔導士様が、『・・・エンジュは・・大丈夫・・・』て言うもんだからさ。認めざるおえないと言うか・・・そもそも、当の本人がよく分かってない力だからね・・困っちゃうわ」
「アオイお姉さん、今のトゥモシーヌさんのモノマネですかー?似てるー!」
「そうでしょジュリアちゃん。これね、シフォンには禁止にされているの」
「えー?なんでですかー?」
「シフォンのツボみたいで、笑いが止まらなくなるからよ」
「なにそれウケるー」
「真似されて不服そうな顔しているトゥモもセットで、シフォンのツボみたいなの」
「なにそれめっちゃ見たーい!」
「トゥモ達が帰ってきたら見せてあげるわ。さて、説明は以上よ」
「攻撃が効かないって・・おにい無敵て事?凄ーい!」
「魔法も使えて女神様からも守られていて・・やっぱりおにいは獣人の革命児・・いや、むしろ女神様から送られてきた天からの使い!」
「つまり・・天使!」
「おにい、天使だったんすね!」
「天使て、あんた達・・まぁいっか・・それでサク姉、なんかよく分からないけど、エンジュは無敵らしいよ。それでも心配?」
「心配に決まっているだろ!」
「えぇぇぇ・・・」
「サクネアさーん。何がそんなに心配なんですかー?」
「お前らなぁ・・・いくらエンジュが無敵だからって、目の前でエンジュがクソ野郎共に殴られそうになっている時・・放っておくのか?!」
「えっ?いや、それは・・・」
「エンジュに向かって弓矢が飛んで来る時・・エンジュが崖から落ちた時・・無敵だから大丈夫だろと、そのまま見ているだけなのかよ?!エンジュが殴られそうならそいつをぶん殴る!弓矢は掴み取る!落ちてきたら下でエンジュを助ける!あたしならそうする!エンジュが無敵だとか関係ねぇ!エンジュが危険に晒されている状況の時点で、助けなきゃいけねぇだろ?!放っておくなんて、あたしには出来ねぇっ!」
「おっ、おう・・そっ、そすか・・・」
「はぁ・・・(サク姉たら・・アオイさんが説明している時、ずっと疑いの表情向けてたからなぁ・・サク姉の圧に、シュリ引いてんじゃん。まぁ、サク姉の気持ちも分かるけどさ・・このままサク姉を落ち着かない状態のままにしておくと、何かと面倒なんだけどな・・・)」
「う~ん・・・あっ、良い事思いついたー。シュリー、こっち来てー」
「んー?何ー、ジュリー?」
「えっとねぇ・・こしょこしょこしょ・・・」
「うんうん・・・あはっ、それ良いかもー!」
「でしょー!」
「ん?・・・(シュリジュリ、何コソコソ話しているのかしら?)」
双子二人を怪しそうに見るチェルシー。ジュリアから何か提案を受けたシュリナが、サクネアに近づく。
「サクネアさーん!」
「あぁ?なんだよ?」
「もぉ、怖い顔しないで下さいよー」
「してねぇよ。それでなんだよ?」
「えっとですねぇ・・・あたしもー、エンくんからチェルさんみたいに伝言を頼まれているんですよー」
「エンジュから?」
「はいー。エンくん曰く、サクネアさんがおとなしく待っててくれたらぁ・・・エンくんがキスしてあげるって言ってましたぁ!!」
「なっ・・なん、だと・・・」
「・・・(嘘だ)」
「・・・(絶対嘘ですね)」
「・・・(ピュアでしかも嘘つけないエンジュが冗談でもキスしてあげるなんて、言う訳無いじゃん・・・)」
呆れた表情のケーギン、ミョリン、チェルシー。
「しかも添い寝つき!」
「なぬぅっっ!?」
「・・・(ミサキリスちゃんがいないから、好き勝手言ってるな、シュリジュリ)」
「えー?おにい、太っ腹じゃーん!」
「シュリっちー。そのキスて、サク姉からおにいにキスするんじゃなくて、おにいからサク姉にキスするて事?」
「そうだよピュマっち!」
「おにいからのキスだ!しかも添い寝も!」
「サク姉!これはおとなしく待っていないと駄目っすよ!」
「・・・」
「?サク姉?」
プルプルと震えだすサクネア。それを見て、流石に嘘とバレたかと冷や汗を流すシュリナ。しかし、
「・・・うおおおぉぉぉぉ!!エンジュからの、キぃぃスぅ!しかも添い寝ぇぇ!!分かったぞエンジュ!あたし待つぞ!そして・・ユズリハに勝ってエンジュを抱く!!」
「えっ?ちょっと待ちなさいサクネア。何よ抱くって?添い寝よ、添・い・寝!正直エンくんからキスも添い寝もしてほしくないのに、抱くなんてもっての他でしょ?!」
「あぁ?添い寝して良いて事は抱いて良いて事だろがぁ!」
「なんでよ?!どうしてそうなんでもかんでもすぐに性行為に持っていこうとするのあなたは!!」
「本能だからに決まってんだろ!」
「あなたねぇ!」
「イェーイ!サクネアさん!」
「抱いちゃえ抱いちゃえー!エッチしちゃえー!」
「こおーらサク姉!またそうやってすぐにアオイさんと喧嘩を始める・・シュリジュリも、煽り立てないでお願いだから」
「しゅいませーん」
「なんだよチェル。アオイがいちいち突っかかって来るからいけないんだろうが」
「あなたが訳分からない事言いだすからでしょ」
「んだとこらぁ!」
「何よ!」
「はいはい、いちいち喧嘩しない・・サク姉さぁ、この際だから言っちゃうけど、アオイさんはね、サク姉の命の恩人なんだよ」
「はぁ?アオイが?あたしの命の恩人だぁ?何言ってんだよ」
「ちょっとチェルシーさん!?いっ、言わなくていいわよ、そんな事・・・」
「いや、言わせて下さいアオイさん。こういうのはちゃんと言っとかないといけません・・・サク姉、ユズリハに負けてボロボロになったサク姉を助けてくれたのは・・誰だと思う?」
「あぁ?・・・?・・いっ、医者・・とかじゃねぇのか?」
「医者て・・サク姉、魔導士と同じように位、医者の事も嫌いでしょうよ」
「そっ、そうだったな・・・」
「・・・アオイさんよ」
「!?」
「アオイさんと、トゥモシーヌさんが、魔法でボロボロのサク姉を直してくれたのよ。見て見なさいよ自分の身体。傷一つ無いでしょ」
「・・・たしかに・・・」
どこか気まずい表情のサクネアと、サクネアに比例する様に気まずい表情のアオイ。
「・・・おっ、おい・・・」
「なによ」
「なんで・・助けてくれたんだよ・・・」
「・・・そんなの、サクネアが傷ついたままだと、エンくんが悲しむからに決まっているでしょ。あなたの為じゃないわ。勘違いしないでよね・・・」
「へっ・・あぁ、そうかよ・・そうだよなぁ、エンジュを悲しませるのはよくねぇよな」
「・・・」
「・・・」
「・・・(お互い黙っちゃった・・あぁもう本当この二人ときたら・・・)サク姉」
「なっ、なんだよチェル」
「助けてもらったんだから、言わなきゃいけない事があるでしょ」
「・・・言わなきゃ、駄目か?」
「駄目に決まっているでしょ。ほら・・うん」
顎でサクネアに合図するチェルシー。少し怒りの表情のチェルシーに、サクネアもたじたじである。
「・・・分かったよ・・・おっ、おい・・・」
「なによ」
「助けてくれて・・その、礼を言う・・・あっ、あがっ・・ありが、とな・・・」
頬をかきながら、なんとも不器用にお礼の言葉を伝えるサクネア。
「・・・」
「・・・おっ、おい・・なんか、言えよ・・・」
「・・・ふっ・・・」
「?」
「ふふふふ・・あっははははははは!!!」
「!?」
顔を伏せたと思うと、突如笑いだし始めるアオイ。目元には涙を浮かべている。
「なっ・・おっ、おいっ!なっ、なに笑ってやがる?!」
「サクネア・・あなた、ありがとうて言葉位、スムーズに言いなさいよ!こんなにも言い慣れていないありがとう、初めて聞いたわ!」
「なっ//・・てっ、てめぇ//・・・」
「あっはっはっはっはっ!」
「チェル!?」
「サク姉本当さぁ・・あがっ・・あがっ、て・・ふふ、どうして、そこで噛むのよ・・ふふっ・・お腹痛い・・・」
腹を抱えて笑いだすチェルシー。羞恥心でサクネアが顔を赤くする。
「サク姉ウケるー!」
「サク姉もっかい言ってー!」
「もっかい噛んでー!」
「かっ、噛んじゃうサク姉も可愛いよ!」
「やっぱサク姉可愛いっす!」
「・・・っふふ・・・」
「だあぁっ!//うっせぇぞお前らぁ!ケーギン!ウィネ!可愛い言うんじゃねぇ!ぶっ飛ばすぞぉ!おうこらミョリン!お前もなに笑い堪えてんだ?!そんな面白いもんじゃねぇぞ!//」
「っふ・・ごっ、ごめんな、っふふ・・さい・・・」
「ミョリンさんツボってるー。ウケるー」
「サクネアさーん!アオイさんの次はー、パイセンに謝って下さーい」
「あ・・あぁ?!謝る?アキナにか?」
「そうですよー。サクネアさんが怖がらせるから、パイセン赤ちゃんになっちゃったんですよー」
「そっ、それは、アキナが勝手にビビってんのが・・・」
「パイセンがこのままだとぉ、ジュリの脚が痺れて動かなくなっちゃいますよー」
「知らねぇよ!?んな事ぉ!」
「あぁははは・・ウケたウケた、はぁ・・サク姉、アオイさんにお礼言えたんだから、先輩ちゃんにもさっさと謝っちゃいなさい、ほら」
「だあっクソっ!分かったよ!」
「サク姉また噛んじゃ駄目っすよー」
「っふ・・・」
「うっせぇぞウィネ!//笑うなミョリン!//たくよ・・・おい、アキナ」
「うぅ・・うぅ・・ゆゅ・・・」
「・・・おいっ!!!」
「ひいぃぃっっっ!?」
「こらサク姉、怒鳴らないの。優しく、優しく」
「クソっっ、面倒くせぇ・・あぁ、おっ、おい、アキナ・・その・・怒鳴っちまって、すまなかったな・・・ごっ・・ゴメンナサイ・・・」
・・・・・
「・・・どうして、棒読みなの?」
「!?///」
「あっはっははははははは!!!」
再び声を上げて笑いだすアオイ。それに釣られてランシャの面々も笑いだす。
「ふはは!やっ、やめてケリシュナイル・・それ言わないで・・ふふ・・・」
「おいてめぇ!ケリシュナイルとか言ったかぁ?!てめぇあとでぶん殴るっ!//」
「えぇー?そんなー」
「なんかめっちゃ盛り上がってるー。パイセーン、サクネアさん謝ってくれましたよー?戻ってきてー」
「うぅ・・・ふえ?さっ、サクネアさん?」
あっ、あれ?サクネアさんがあたしに謝っている?・・謝ったんだよね?・・・そういえば、あたしサクネアさんにぶちギレられて、あまりの恐怖になんだかそれ以降の記憶が曖昧で・・・はわっ!?あたしジュリアちゃん(多分)に膝枕されてる!?どうせなら円寿くんの膝枕が良かった・・・あっ、そうだ円寿くんはお城に行っててここにはいないんだった・・あぁでもジュリアちゃん(多分)の脚もこれはこれで・・おほっ、美少女の生脚・・・
「くそっ、たくっ・・好き勝手笑いやがって・・・おうチェル、聞きてぇ事があんだがよ」
「あはぁはぁ・・・ん?なにサク姉」
「エンジュが連れてった面子なんだがよぉ・・ミサキリスとトゥモシーヌがついて行くのは分かる。コクオーも、まぁ今回の件の責任感じてんだろうからな、分かる。だがよ・・・なんで、ナミの奴もついて行ってんだ?」
「・・・うん、いや本当・・それなんだよね、サク姉・・・」
「ナミさん、テキロとの戦いでは意識失わなかったみたいなんすけど、それでもダメージは確実にあるはずなんすよね・・心配っす・・・」
「ナミちゃんて、たまに突拍子もない行動するよね」
「そうですねケーギン。でも、その突拍子もない行動が、結果的にあたし達を助けてくれた事もありますね」
「結果的にだけどね」
「相談もなく動くからビックリするんだよ」
「あたし昔ナミがとんでもない行動起こして場を滅茶苦茶にした時、ガチギレした事ある」
「あっはっはっ!あん時なぁ。メグにつられてチクとピュマもキレだしてよ!」
「まぁ、結果的に仕事が上手くいったから、後で謝ったけど・・・」
「あったねぇ、そんな事・・あの時はあたしら身内だったから良かったけど、今回はそうじゃないからなぁ・・本当、エンジュ達に迷惑かけてなければ良いんだけど、あの娘・・・」
「へぁ・・はぁ・・・はぁっっくぅしょぉいぃっっ!・・たぁっ、ちくしょうばぁろぉ~い・・・」
「!?おいナミミナ、でっけぇくしゃみかましてんじゃねぇよ!うっせぇだろ!」
「・・・(ナミミナさん、おじさんみたいなくしゃみするな・・・)」
「ナミちゃん、もしかして少し冷えた?ぼくの服着る?」
「ん~ん、大丈夫だよ~おにい~。でも~、おにいのその~、何気無い心遣いは~、嬉しい~」
「・・・(ナミミナさんがエンくんの服来たら、サイズ的に厳しいよな・・特に、胸の部分が・・・)」
「それにおにい~。このくしゃみは~、みんながあたしの~応援をしてるんだ~」
「応援!国を越えて、ランシャのみんなの気持ちがここに届いているんだね!」
「いや、エン兄さん・・ナミミナの事だから、ぜってぇみんなに心配されてるんすよ・・・」
「う~ん、でもおにいの言った通り~、少し肌寒いかも~。トゥモシンヌ~、そのローブ~、良かったら~貸して~?」
「・・・・・」ムスゥー
「わ~。トゥモシンヌ~やめて~。そんな露骨に~嫌な顔するの~。ごめんてごめんて~」
「身体動かしゃ嫌でも暖まってくらぁ。ナミミナ、お前もいい加減戦え」
「くそ~。コクオ~のクセに正論~。ムカつく~」
「えと・・ナミミナさんの武器(弩弓)調達に加えて、何か羽織れる物の調達も加わったて事で・・とりあえず、行きましょうか」
談笑しながら歩みを進める円寿一向。円寿一向はここまで、ナミミナの意見を取り入れ、兵士が気絶しない程度に撃破し捕らえる。そして情報を聞き出しては眠らせる(物理)を繰り返し行っていた。しかし、中々有益な情報は集められずにいた。捕らえた兵士の殆どが、ベディッド・カンバッジが裏でしているあれやこれやを知らずにいたからである。自分の部活にさえ隠し通す徹底ぶりに、外道ながらも感心しつつある円寿一向。と、ここで円寿の耳が反応する。
ピコッピコっーーー
「!コクオーくんストップ」
「!ういっす」
コクオーが足を止めた事を確認し、耳に神経を研ぎ澄ませる円寿。
「・・・この先にある部屋・・人が2人いるんだけど、2人の会話から魔法て言葉が聞こえてくるよ。片方は柔らかい声質で、片方は豪快な口調・・何か飲んでるみたい」
「魔法、か・・片方は魔導士かな?コクオーくん。眼鏡からはどう見えてる?」
「あ~・・・魔力が滅茶苦茶放出されている感じはありませんね」
「そっか・・・(たまたま魔法を話題に出している只の一般兵士だろうか?いやでも、もし魔導士だった場合は確実に制圧して情報を聞き出したい・・なにか判断材料があれば・・・)」
「くんく~ん・・・あれ~?おにいが~なんか飲んでるて言うから~、この時間だし~お酒飲んでると思ったけど~、匂いがお酒じゃないな~」
「!・・・(お酒じゃない・・て事は、もしや・・・)ナミミナさん。その匂い・・もしかして、これの匂いではないでしょうか?」
ミサキリスはそう言うと、腰に下げている袋から小瓶を取り出す。中にはマゼンタ色の液体が入っている。
「わ~、綺麗~。ちょっとサク姉の髪の色に似てる~」
「この液体の匂いを嗅いでもらえますか?」
「どれどれ~・・う~ん・・・あ~、部屋にいる人が飲んでいるの~、これだ~」
「やはり・・みなさん、今からあの部屋を襲撃・制圧します」
「おっ!きましたねぇ、ミサの姉さん!」
「中にいるのはおそらく魔導士が2名。トゥモシーヌさん、今回の戦闘の参加、お願いできますか?」
コクッーーー
「!トゥモちゃん戦うんですね!どんな風に戦うのか、ぼく楽しみです!」
「・・・・・」
ぷにぃーーー
「・・・(そっか、エンくんトゥモシーヌさんの戦闘シーンは見た事無いのか)それではコクオーくん、あたしが合図を出したら・・・」
ミサキリスから作戦の内容が伝えられる。その説明がされている間、円寿とナミミナはとある物がずっと気になっていた。
「・・・と、この様な形で行きます。何か質問はありますか?」
「はいっ!」
「はいエンくん」
「先程ミサちゃんが見せてくれた、小瓶の液体は何でしょうか?」
「おにい~、それそれ~。あたしも~気になってた~。誰も何も言わないから~、あたし以外知ってるのかと思った~。ミサリッシュ~、それなに~?おせ~て~」
「2人共ポーション知らなかったんだね。ポーションはね、魔力を回復する為の薬液です」
「魔力を回復する・・薬液?」
「そう。魔力を使い過ぎると、眠くなってくるのはエンくんも知ってるね。そんな魔力切れを起こす前に、これを飲むって訳」
「なるほど!・・・(エナジードリンクみたいだ!)」
「わ~。つまり~、それ飲んでたら~、トゥモシンヌは~転移バンバン使っても~大丈夫~て訳だね~」
「まぁ、そうですね。只このポーション、結構高価でね、あたしも常に持ち歩いているんだけど、なかなか飲むのに気が引けちゃうんだよね・・・」
「高価?」
「ミサリッシュ~、おいくら~?」
「この小瓶(250ml)で金貨5枚だね」
「?・・・(金貨5枚・・そういえば、この世界のお金の価値がどれ位なのか知らないな・・えぇと、たしか、デア・コチーナが1日だいたい8時間働いて、銀貨1枚と銅貨3枚だったっけ?て事は、1日労働よりも、金貨の価値は高いて事かな?)」
「わ~、お高~い」
「えっ!?そんなたけぇ物だったんすか?この液体」
「!・・・(ナミちゃんとコクオーくんの反応、やっぱり金貨は貴重・・つまり、このポーションも貴重!)コクオーくんは、ポーション知ってるの?」
「はいっす。よくテキロの先輩方が飲んでたっす。俺にも飲ませてくれって言っても、コクオーには必要無いて、飲ませてくれなかったっす」
「たしかに~、獣人は~魔法使わないから~、飲む必要は~無いな~」
「これ4本買ったら、あたしの月の給料無くなっちゃう値段なんだよ。まぁ、それだけ効果があるて事なんだけどね」
「それは・・たしかに、飲むの気が引けちゃうね・・・」
「だけど、今回は気が引けるとかそんな事言っている状況ではないので・・トゥモシーヌさん、このポーションを差し上げます」
「・・・・・」コクリ
「いいの~?ミサリッシュ~?」
「はい。戦闘中にトゥモシーヌさんが眠くなってしまうリスクに比べたら、ポーションの1本や2本・・・おっ、惜しくないです!」
「ミサリッシュ~、ちょっと言い淀んだな~?」
「とっ、トゥモシーヌさん、どうぞ!」
内心ハラハラしながらポーションを渡すミサキリス。それを素直に受け取り、口に運ぶトゥモシーヌ。
「あっ、トゥモシーヌさん・・少量でも十分魔力が回復しますので・・・(勿体ないし)少しづつ飲んで下さi・・・」
ゴクッゴクッゴクッゴクッゴクッーーー(一気飲み)
「!?」
「うおぉーー!金貨5枚を一気にいったー!」
「わ~、トゥモシンヌ~良い飲みっぷり~」
「・・・・・」フンスッ
「・・・みっ、見事に飲み干しましたね・・・(金貨5枚・・給料の4分の1が・・・)」
「トゥモシンヌ~、遠慮が無いタイプだった~」
「これでトゥモちゃんの魔力が回復したから、全力で戦えますね!トゥモちゃん!」
コクッーーー
「よっ、よしっ!トゥモシーヌさんの魔力も回復した所で、作戦開始です。コクオーくん、お願いね」
「ういっす!ミサの姉さん!」
ミサキリスの作戦・・その内容は、いわゆる奇襲である。コクオーが部屋の扉を蹴破りそのまま入り、丸盾を投げ中にいる魔導士を牽制。その間に円寿とトゥモシーヌが部屋に入り、魔導士が反撃してくる間も与えずトゥモシーヌの魔法で撃破・制圧する。とにかく完全スピード勝負である。そして、コクオーが意気揚々と今、扉に向かって走り出し勢いよく右足から跳び蹴りを放つ。
バコォッッーーー
「!?」
「なんだ!?」
部屋には細身の魔導士と、その魔導士よりかは大柄な魔導士がポーション片手に椅子に座って談笑しているようであった。そこに、扉を蹴破って獣人が現れたのである。
「へっ・・・(ミサの姉さんは牽制て言ってたが、その牽制で仕留めても問題ねぇよなぁ!)おらぁっ!」
跳び蹴りの勢いのまま空中で身体をひねり、遠心力を加え丸盾を投げつけるコクオー。
「!?危ねっ・・・」
放たれた丸盾を間一髪避ける細身の魔導士。しかし・・・
ガコォンーーガンッッーーー
「がっ・・・」
背後の壁に当たり跳ね返った跳弾ならぬ跳盾が細身の魔導士の後頭部に直撃し、白目を向き倒れこむ。
「コクオーくん!」
円寿が部屋に入り、そのままコクオーの下へ走り出す。その後ろから、トゥモシーヌも姿を見せる。
「くそっ!?炎よ、火玉となれ・・・」
大柄の魔導士が詠唱文を唱え、コクオーに向かって魔方陣を展開する。細身の魔導士を仕留め跳ね返った丸盾を掴み取りコクオーは、飛んでくるであろう魔法に対して身構える。
「魔導士の時点で、トゥモに勝つ事は出来ないわ」
「えっ?」
「それはどういう事でしょうか?アオイさん」
サクネアさん達ランシャの面々が、ケリシュナイルさん相手に鬼の如き表情で、テキロの事等諸々色問い詰めているその横で・・あたしとイケイケ双子ギャルの2人はアオイさんからトゥモさんの話しを聞いていた。アオイさんの話しに興味があるのか、ミョリンさんもあたし達の方でいつの間にか話しを聞いていた。
「正確には、魔法での攻撃手段しか持ち得ない魔導士は、トゥモに勝つ事が出来ないて事。魔法を発動すると、魔方陣が展開されるじゃない?その時、詠唱文を唱えたり、あらかじめ用意しておいた詠唱文をなぞる訳なんだけど・・その時て、どうしても隙が出来るじゃない?この隙が生まれる時点で、その魔導士はトゥモには勝てないの」
「トゥモシーヌさんは、無詠唱で魔法を発動出来る・・つまり、相手よりも早く魔法を発動出来る・・だからでしょうか?」
「そうね。でも、トゥモはそれだけじゃないの」
「それだけじゃない?」
「空属性の魔法に、相手の出した魔方陣に接触して乗っ取る魔法があるんだけど・・トゥモはね、これを転移魔法と組み合わせるのよ。相手が魔方陣を展開した瞬間に、片方の手だけを魔方陣の近くに転移させて指一本でもいいから触れる・・これだけで乗っ取り完了よ。無詠唱で相手よりも先に魔法を出せるトゥモだからこそ出来るやり方ね」
相手の魔法を乗っ取る!?ジャミングに加えてハッキングもあるのか魔法て・・・
「魔法を乗っ取ると言いますが、そんな指一本触れただけで出来る事なのでしょうか?」
「もちろんそんな簡単じゃないわ。魔法に対する知識力と解析力が必要よ。単純にトゥモは魔導士としての基礎スペックも高いから。飛行魔法は使えないけどね」
いや本当どうしてそんなスペック高いのに飛行魔法は使えないのだろうかトゥモさん・・まぁ、別に飛行魔法使えなくても問題無い位凄い魔法を使えているんだけど・・それにしても、聞けば聞く程凄いんだなトゥモさん。友達でいられるのが本当奇跡だな、あたし・・これも全て円寿くんのおかげだね。ありがとう円寿くん♡
「・・・ぐっ・・なん、で・・・」
大柄の魔導士は困惑していた。獣人の男に向けて放とうとした炎魔法が、発動した瞬間自分に向け放たれたのである。超至近距離でもろに火球を喰らったその魔導士は、訳も分からず天を仰いでいた。そして、その一部始終を、コクオーと円寿はその高い動体視力で自身の眼に捉えていた。
「なっ、なんだ?あの魔導士?自分に向けて炎出したぞ?自爆か?」
「・・・(あの魔導士が魔方陣を出した瞬間、近くに小さな魔方陣が現れて、そこから手が出てきたな・・綺麗な手だったな・・もしかして・・・)」
「・・・・・」
「トゥモちゃん!もしかして、今のトゥモちゃんですか?」
コクッーーー
「!やっぱり!どんな魔法を使ったのですか?」
「・・・触れる・・・」
「触れる!」
「・・・乗っ取る・・・」
「乗っ取る!」
「・・・自爆・・・」
「自爆!」
「・・・勝ち・・・」
「勝ち!」
「・・・・・」ドヤァー
「!凄いです!トゥモちゃん!」
「えっ!?エン兄さん、今の説明で分かったんですか?」
「うん!トゥモちゃんが凄いて事が分かったよ!」
「なっ、なるほど・・・(いや待てよ・・エン兄さんは、トゥモの姉さんの強さを直感で理解しているて事か・・考えるな、感じろ・・そうどっかで聞いた事がある・・そういう事か!)分かりましたよエン兄さん!男が細けぇ事考えても仕方がねぇて事ですね!理解したっす!トゥモの姉さんはすげぇ!」
「?・・うん、トゥモちゃんは凄いよ!」
円寿とコクオーに褒められ、ホクホク顔のトゥモシーヌ。
「・・・(なんとなく噛み合っているようで噛み合ってない気もするけど・・まぁいっか・・・)コクオーくん、この縄で、あの魔導士達を拘束してくれるかな?色々と聞き出す事があるからね」
「了解っす!ミサの姉さん!」
ミサキリスから縄を渡され、その縄を使い魔導士達を手際良く縛り始めるコクオー。トゥモシーヌはと言うと、頑張ったからご褒美をと言わんばかりに、円寿の頬を揉みしだいていた。
「アオイお姉さん!」
「ん?何かしらシュリナちゃん」
「前々から気になっていたんですけどぉ、トゥモシーヌさんて、相手が発動してきた魔法を、転移魔法で転移させる事は出来ないんですかぁ?」
「それは・・例えば、相手が炎魔法で火球を飛ばしてきた時、その火球を転移させるて事で良いのかしら?」
「そーでーす」
「出来るわよ」
「出来んのかーい」
「なんなら転移させた火球を、さらにそのまま相手にぶつけ返す事も出来るわ」
「えぇ?それじゃあ、わざわざ相手の魔法に合わせて、自分の手を転移させて触れて乗っ取るよりも、あたしが言ってるみたいに、相手の魔法を出させてからその魔法を転移させる方が、安全ちゃ安全じゃないですかー?」
「乗っ取るやり方だとー、出遅れたらやられちゃう、スピード勝負的なー?リスク高いよねー」
「なるほど、たしかにそうね・・いくらトゥモの無詠唱が早いとはいえ、たしかにシュリナちゃんの言う方が確実よね・・・どうしてかしら?」
トゥモさんが安全な方ではなくリスクがある方をやる理由・・あたしには分かる。それはもう、ただただ単純なトゥモさんの気持ち・・・
「・・・あっ、あの・・・」
「?」
「なにー?パイセーン」
「たっ、多分・・シュリナちゃんの言ったやり方よりも、乗っ取るやり方の方が・・多分ですけど・・・かっ、カッコ良いから、トゥモさんはそれを使っているんじゃないかなぁ・・と、思います、はい・・・」
「カッコ良い?」
「あー、たしかに、相手の魔法を乗っ取って自爆ー、の方が、なんかデキる魔導士、ぽいかも」
「スタイリッシュー、みたいな?」
「みたいなー」
「えと・・それで、多分・・トゥモさんの事なので・・えっ、円寿くんに、どうせ見せるなら、カッコ良いほうを見せたいんだと思います。円寿くん、凄く喜ぶと思いますし・・・」
「うわパイセン、絶対それじゃん」
「めっちゃ納得いったわ」
「エンくんに良い所を見せたい、か・・なるほどね」
「トゥモシーヌの気持ち分かるぞっ!」
「はわっ!?さっ、サクネアさん!?」
いっ、いきなりあたしの側に顔を出さないで下さいよ!?心臓止まるかと思ったじゃないですかっ!
「そうだよなー、エンジュにカッけぇ所見せたいよなー、うんうん。エンジュの喜ぶ顔見ると、こっちもすっげぇ嬉しくなるもんなっ!つかよぉ、エンジュの話ししてんなら、あたしも混ぜろよ」
「あなた、ケリシュナイルさんと話ししていたんじゃないの?」
「いや、まぁ最初はあたしがあの野郎に色々問い詰めてたんだがよ・・・ほれ、あれ、見てみろ」
「ん?・・あっ・・・」
サクネアさんの指差した方を見てみると、そこには鬼を越えて阿修羅の如き表情でケリシュナイルさんに言葉の嵐をぶつけるチェルシーさんが・・あぁあぁ、他のランシャの面々が、チェルシーさんの迫力に気圧されちゃってる・・てか完全に怯えているな・・こっ、怖い・・ケリシュナイルさんはと言うと・・・笑顔だ・・滅茶苦茶ニコニコしている・・あの人恐怖て感情あるのか?てか多少は申し訳ないて態度をした方が良いのでは?
「チェルの奴、どんどんヒートアップしてきやがってよ、あたしを押し退けて今はあんな感じになっちまった。よほどムカついてんだな、あれ」
「いっ、いいんですか?サクネアさん・・チェルシーさんを止めなくて・・・」
「良いんじゃねぇか?なんなら、そんなにムカついてんなら口で言わねぇで殴っちまえば良いとあたしは思うぞ!」
「えぇ・・・」
「ウケるー」
「チェルがあんなんだから暇なんだ、あたし。だからよぉ、エンジュの話ししようぜエンジュの話し!おいアキナぁ!なんかエンジュが好きな物の話ししろ!」
「はわっ!?えっ、円寿くんが、好きな・・物?」
「話しの振り方が雑過ぎるわサクネア。でもまぁ、エンくんの好きな物・・あたしも気になるかなぁ・・物によっては、プレゼントしてあげられるしね、ふふっ」
「なぬぅっ!?おっ、おいっアキナっ!アオイには教えんな!あたしだけに教えろ!」
「はわっ!?」
「なんでそう邪魔するのよあなたは!」
「抜け駆けしようとすんなよ、ずりぃだろぉ!」
「別に良いじゃない!」
「良くねぇよ!」
「またサクネアさんとアオイお姉さんの喧嘩が始まったー」
「サクネアさん、アオイお姉さんが助けてくれた事、もう忘れたのかな?」
「忘れたとかウケるー」
「ねー」
ちょおぉぉぉ!?ウケるーとか言ってないで、2人を止めてよイケイケ双子ギャル!えっ?お前が止めろって?いやいや無理に決まっているじゃないですかぁ、やだなぁ・・・あぁもう、円寿くん達早く帰って来てえぇぇ!!
「!」
「ん?エン兄さんどうしましたか?」
「今、先輩の声が聞こえた気がしたよ」
「マジすか?」
「おにい~、それきっと~、先輩ちゃんの~応援の声だよ~」
「!応援!そうだね!先輩!ぼく頑張ります!」
「・・・(多分だけど、応援じゃなくて、アキナさんの苦労している声・・悲鳴な気がする・・・)」
「にしても、ミサの姉さんが使った魔法の札。あれ便利っすねぇ」
「ミサちゃん、それアオイさんに渡された札だよね」
「うん。スムーズに事が進んで、良かったよ」
細身と大柄の魔導士を難なく撃破した円寿一向。その魔導士をコクオーに指示して拘束したミサキリスは、彼らにアオイから渡された魔法が封じ込められた札を仕様した。仕様した札は、洗脳。洗脳と言ってもそこまで強力な物ではなく、こちらの質問に嘘偽り無く答えさせる・・所謂自白剤の効果をもたらす魔法である。この札を使い情報を掴んだ円寿一向は、目的地に向かい足を進めていた。その目的地とは・・・
「そんでぇ、結局どういう事なんすか?あの魔導士の言ってた事は?魔力妨害は、魔導士がしている訳ではないて?」
「コクオ~、お前~話しちゃんと聞いてなかったのか~?」
「ナミミナは分かったのかよ?」
「分かるわ~い。つまり~・・その~・・・ミサリッシュ~、どゆ事~?」
「お前も分かって無ぇじゃねぇか!」
「あはは・・えぇとですね、魔力で動く機械道具が、魔力妨害を発生させているて事ですね」
「それが分からないんだよね~」
「?と言うと?」
「それって、誰も何も触れて無ぇで勝手に動いているて事っすよね?魔法に縁の無ぇ俺達獣人からすると、魔法で勝手に動く物があるのが、よく理解出来ねぇと言うか・・・」
「大丈夫だよ、コクオーくん、ナミミナさん。あたしも、話しではそういう魔力を動力源に起動する機械道具がある事は知っていたけど、実際に見た事無いからさ」
「そうなんすね・・エン兄さんは、きかい・・どうぐ?て、分かるんすか?」
「うん、分かるよ。ぼくのいたせかi・・じゃないや、大陸ではね、機械はどこにでもあるからね」
「マジっすか!エン兄さんの大陸て、凄ぇんすね!」
「おにいのいた大陸~、行ってみたいな~」
「うん!是非来て欲しいな。あっ、でも今は、デメティール様の調子が悪いから、今直ぐ行くのは少し厳しいかな」
「ありゃ~、残念~」
「・・・(デメティール様の調子の問題なんだ・・・)!みんな、そろそろ時計塔に着きますよ」
ミサキリスの言葉に、一向は窓から見えるそれを視界に写す。円寿一向が向かっていた場所・・それは、巨大なベディット・カンバッジ城から直接渡り廊下で行き来出来る時計塔である。この時計塔に、魔力を動力とした機械道具があるのである。
「ん~?・・・うおぉっ!?すげぇ!」
「!どうしたのコクオーくん?」
「あの時計塔の天辺から滅茶苦茶光の粒子が出てるっす!それも、空に向かって登っていった粒子が、上空で広がっている・・そんで、この城を囲む様に散布されてんのか・・これ魔法でやってんのか、すっげぇな・・・」
思わず感心しながら足を進めるコクオー。魔力妨害を行う機械道具は、時計塔の最上階にあった。その最上階に直接繋がる渡り廊下に向かって走る円寿一向。そして、その渡り廊下に差し掛かろうとしたその時、コクオーが足を止めた。
「ストップっす」
「!」
「どうしたのコクオーくん」
「渡り廊下の向こう側・・人がいます」
「・・・(やっぱりそうなるか。機械道具が魔力妨害をしているて事は、それを守る存在もいるだろうしね)みんな、警戒して下さい。戦闘になります」
身構える円寿一向。しかし、どれだけ目を凝らしても、人らしき存在はコクオー以外の面々の視界には写っていない。
「?コクオーくん、誰もいない様に見えるけど・・・」
「エン兄さん、音や匂いはしないんすか?」
「うん、そうだね・・それらしき音も無いし、匂いもこのお城の、地面の匂いと言うか埃と言うか・・・」
「どゆこと~?ミサリッシュ~」
「・・・(誰もいない、気配も感じない・・でもコクオーくんには見えている・・て事はつまり・・・)トゥモシーヌさん、これはおそらく・・魔法ですか?」
コクッーーー
「・・・透化魔法と・・消音魔法・・・」
「魔法か・・・やいっ!そこのお前っ!隠れているつもりかもしんねぇが、俺には魔力を纏ったてめぇの姿がはっきり見えてんぜ!おとなしく姿を見せやがれ!」
「・・・(あの眼鏡の獣人・・俺が見えているのか。獣人の鼻対策に、わざわざこの城の埃を被ってきたんだが・・・なるほど、魔力をその瞳に写すドゥルシャンか・・また面倒な物を・・誤算だったな・・まぁ仕方が無い・・・)」
透化魔法を解除し、その姿を表した鎧の男。コクオーに自身の存在を見破られたものの、その表情は至って冷静であった。
「!・・・(あの人・・どこかで見覚えが・・・あぁもう、ここまで出てきているのに・・・)」
「わ~。人が出てきた~」
「やいてめぇ、名を名乗りやがれ!」
「人に名乗れと言うのなら、まずは自分から名乗るのが礼儀ではないのか?」
「たしかにそうだな!コクオー・モルガラぁ!てめぇぶっ飛ばす男の名だぁ!」
「くすのk・・エンジュ・クスノキです!」
「ナミミナ・カバックだぞ~」
「・・・トゥモシーヌ・・・」
「!?・・・(えっ!?みんな名乗るの!?)みっ、ミサキリス・コルンチェスターです!」
「ふむ、ご丁寧に全員名乗ってくれたな。良いだろう・・俺の名はライナウェルト・ギンカン、傭兵だ」
「傭兵?同業者か」
「!・・・(ライナウェルト・ギンカン・・思いだした。先の戦争で名を上げたと言われているはぐれ魔道騎士。この城にいるて事は、ベディットに雇われたのか)」
「おいそこの眼鏡の獣人。コクオー・モルガラと言ったか。俺をぶっ飛ばすと言ったが・・それはつまり、この扉の先にある、機械道具に様があると言う事だな?」
「へっ、そうだよ、話しが早ぇじゃねぇか。てめぇをぶっ飛ばして、そのまま機械道具もぶっ壊すんだよ!」
「なるほど。ならば俺は、ベディット氏との契約・・機械道具に害をなそうとする者を全て排除せよ・・これに従い、貴様らをこの場で蹂躙してみせよう」
「上等だぁ!やってみやがr・・・」
「ちょっと待って下さい!!」
「ぁるれ・・!?えっ、エン兄さん!?」
「エンくん?」
「ん?なんだ、獣人の幼子よ」
「ライナウェルトさん、でしたよね?あなたは、この城の持ち主である・・えと・・べっ、べど?・・・とっ、トゥモちゃん、この城の持ち主の名前、なんでしたっけ?」
「・・・ベディット・・・」
「!ありがとうございますトゥモちゃん!それでは仕切り直して・・えと、ライナウェルトさん!あなたは、ベディットさんが獣人の子供達を誘拐して、それを商売にしている事をご存知なのでしょうか!」
「・・・そうだな、存じていたのかと言われたら、存じてもいるが存じていなかったとも言える」
「?えと・・それは、その・・つまり・・・」
「おいてめぇ!何小難しい言い方してんだ!エン兄さん困ってんだろ!エン兄さんと俺に分かる様に言いやがれ!」
「・・・(コクオーくんも分からなかったんだ・・・)」
ちなみにナミミナも分かっていない。
「ふむ、まぁ良いだろう。ベディット氏に黒い噂があるのは有名な話しでね。ここバルニオンで裏家業をしている者の間では殆ど黒だと言われている。しかも、噂は立つものの誰もその噂が本当である事を証明出来ないのだ」
「証明出来ない?」
「ベディット氏は徹底した秘密主義だからな。中々しっぽを掴ませないのだ。誰もが疑っているが、誰も証明出来ない・・まぁ、結局はお前達に知られてしまったのだがね。お前達がこの城に来た事で、俺もようやくベディット氏が黒だと言う事を今知った。と言う訳だ。ふむ、獣人の幼子の誘拐・・そして売買か・・外道だな。確実に地獄に落ちるであろうな」
「!ならば、ぼく達は戦う必要は無いと思います!」
「いやある」
「!?」
「たしかにベディット氏は外道だ。だが、それは俺の仕事において何の意味も持たない」
「そっ、それは、どうしてでしょうか?」
「雇い主がたとえ外道であろうがなんであろうが、雇われた以上、その者との契約は絶対・・それが傭兵というものだ。俺は契約を・・この門を通ろうとするお前達の排除を、全力で遂行する・・ただそれだけだ・・・」
「・・・そうですか・・それが契約だから・・理解はしました・・でも、だからと言って納得する事は出来ません!それよって悲しむ子供達がいるんです・・だから、ぼく達も負ける訳にはいきません!」
「そうだぁ!てめぇをぶっ飛ばして、ガキ共を助けぇる!」
「ふん、やってみろ・・・」
左腕の鎧の前腕当を指でなぞるライナウェルト。
「!・・・(詠唱文をなぞった・・魔法が来る)」
魔法発動の気配を感じ、槍を構えるミサキリス。
ブオンーースゥーーー
ライナウェルトの左右に魔方陣が計4つ現れる。その魔方陣が下から上へスライドする様に動くと、そこから4人の騎士が現れた。その姿をライナウェルトに瓜二つ・・いや、ライナウェルトそのものだった。
「なぁっ!?ふっ、増えたぁ!?」
「!!・・・(分身!分身の術だ!魔法て、忍者みたいな事も出来るんだ、凄いなぁ・・・)」
キラキラした表情を見せる今の円寿の心の内に、危機感という物は殆ど無かった。
「お前達がどのような戦術を見せるのか分からないからな。まずは数を合わせさせてもらった。これで人数は五分五分だ。数での優位性は無くなったぞ」
「くっ・・・(透化魔法に消音魔法、そしてこの分身魔法・・ライナウェルト・ギンカン、この男の属性は空か。まさか分身魔法を使うなんて・・こっちは戦えるのが実質3人・・むしろ数的にはこちらの不利・・どう行くか・・・)」
「・・・・・」
ブオンーースゥーーー
「!?」
ライナウェルトが僅かに動揺を見せる。自分をトゥモシーヌと言った魔導士と思われる女が、自分と全く同じ様分身魔法を発動して見せ・・しかも、一切の詠唱も動きも無かったからである。
「っ・・・(俺と同じ空属性か・・それとも空属性も使える高位の魔導士か・・いや、それはどうでもいい・・あの女、無詠唱・・無詠唱で魔法発動しただと!?この大陸で魔法を無詠唱で発動出来る者と言ったら・・トゥモシーヌ?・・・!?そうか、あの女・・大陸唯一の転移魔導士か・・・くっ!?何故その様な奴がこの場にいるのだ!?何しに来たと言うのだ!?存在すら怪しまれている万年引きこもりの女が!?)」
勿論、ライナウェルトの心の声を、トゥモシーヌが聞く事は無い(魔法で出来なくは無い)。しかし、彼の表情から彼が考えている事が、トゥモシーヌはなんとなく読めていた。
「・・・・・」イラッー
ブオンブオンブオンブオンブオンーーー・・・
「なぁっ!?」
ライナウェルトが驚愕する。分身魔法により5人となったトゥモシーヌ。分身魔法による生み出された分身には2つのパターンがあり、1つは本体と意識を共有しつつ独立して動く物。こちらは多様な動きが出来るものの、その分本体への負担が大きいので、複数使用が難しいのである・・もう1つは、本体と動きが連動する物・・こちらは本体分身全て同じ動きをするので、動きが読まれやすいが本体はの負担が軽度で済む。トゥモシーヌが使用したのは後者である。これにより、本体であるトゥモシーヌが魔方陣を展開すると、分身達も同じ様に魔方陣を展開する。トゥモシーヌが1つ展開すれぱ計5枚・・トゥモシーヌが3枚展開すれば計15枚・・・トゥモシーヌは、そこまで広くない渡り廊下の空間に10枚の魔方陣・・計50枚の魔方陣を展開させた。烏の群れを撃退する時は、ここまで魔方陣を展開させなかった。今のトゥモシーヌは、ほんの少しイラッときている・・そう、ほんの少しだけ・・・
「これは・・・(あれ?トゥモシーヌさん・・なんか怒ってる?エンくんの申し出をライナウェルトが断ったから?いや、にしてもこれは・・・)」
「わ~。色々な色の魔方陣がいっぱ~い。綺麗~」
「すっげぇなぁ・・・ん?トゥモの姉さん、こっから全部魔法を出していくんすか?」
「・・・大丈夫でしょうか?トゥモちゃん、後ろにある時計塔まで壊れないでしょうか?」
「・・・大丈夫・・・」
「!トゥモの姉さんが大丈夫て言ってるなら大丈夫っすよ!多分!」
「うん!そうだね、多分!」
「大丈夫な訳あるかあっっ!!待て・・待て待て待て待てトゥモシーヌ!流石にこれ程の規模の魔法は想定外だ・・・」
「・・・・・」
ライナウェルトとその分身達が慌てふためくも時既に遅し・・無情にも、50枚の魔方陣から各属性の光線の如き魔法の砲弾が一斉に放たれる。『ちょ・・ま・・』円寿の耳には、そうライナウェルトの声が聞こえた気がした。
ドオッッッゴアァァァァァンーーー・・・
放たれた魔法はライナウェルト、そしてその後ろの門・・そして、そのまま時計塔をぶち抜いた。
「・・・・・」フンスッ
「うおおぉぉぉ!!トゥモの姉さんすげぇ!!」
「わ~。トゥモシンヌ~、マジ人間兵器~。あたしトゥモシンヌとは絶対に喧嘩しな~い」
円寿はと言うと、その圧倒的迫力を間近で見て、目を輝かせて感動していた。そして、1人困惑気味のミサキリス。
「・・・いや、あの・・トゥモシーヌさん・・これは流石にやり過ぎでは・・・」
「・・・?」
そうかな?という表情でミサキリスを見るトゥモシーヌ。
「てか~、これだけの質量だと~、ライナウェイウェイ消し炭になってるんじゃな~い?」
「!?けっ、消し炭!?それはちょっと酷過ぎるよ!?こっ、コクオーくん!ライナウェルトさんは無事かな!?」
「う~んとぉ・・・おっ、安心して下さいエン兄さん。あいつ結構しぶといみたいですよ」
「!」
土煙が少し晴れると、そこには地面にひれ伏し身体を小刻みに震わせ、かろうじて生きていたライナウェルトの姿があった。
「ぐっ・・己・・・(分身4体を壁にし、さらに自身に防御結界と身体強化を加え守りを固めたが・・・これはかなりの傷害だ、身体が動かん・・正直身体が消し飛んでいないのが奇跡・・ん?)」
ライナウェルトが目線を上に向けた瞬間、自身の額に何かを当てるミサキリスの姿があった。
「負傷している所申し訳ないのですが、あなたには色々と聞きたい事があります。強引なやり方ですが、付き合ってもらいますよ」
「しまっ・・・」
ブオンーーー
ミサキリスの洗脳の札が発動し、一瞬にしてライナウェルトの意識を掌握する。
「おっ、ミサの姉さん、魔法の札使ったんすね!」
「そうだよコクオーくん。さて・・・(ちゃんと意識を掌握出来てるか確認しなきゃね、念の為)それじゃあ皆さん、ライナウェルトに何か質問したい人はいますか?」
「はいっ!」
元気よくシュバッと手を上げる円寿。
「はい。それじゃあエンくん」
「ライナウェルトさんは傭兵と聞きましたが、その・・雇い主さんの指示は絶対なのですよね?」
「・・・うむ、そうだな。それが傭兵というものだ」
「・・・その、雇い主さんが、子供達の誘拐を指示したら・・・ライナウェルトさんは、それも仕事として行うのでしょうか?」
悲しげに表情を曇らせながら、円寿が問いかける。
「えっ、エンくん!?そんな・・自分が辛くなる様な質問を、無理にしなくても・・・」
「心配してくれてありがとうミサちゃん。でも大丈夫だよ。ぼくはこの作戦に参加した時点で、ぼくなりに覚悟を持ってきているから」
「エンくん・・・」
「誘拐か。答えよう、獣人の幼子よ。俺は傭兵、雇い主との契約は絶対だ。だが、俺はあくまで戦闘専門だ。場合によっては殺しをする事もある、当たり前だがな・・だが、戦闘以外の仕事依頼はそもそも受ける気がない。その様な依頼が来たら初めから断っているからな。何故なら俺は誘拐のプロでは無いからだ。俺は確実にこなす事の出来ない仕事はしない主義だ。そして・・・俺自身、人拐いと言う物は嫌いだからな・・・」
「!そっ、そうなんですね!」
暗かった円寿の表情に明るさが戻る。
「ま、今回はその専門である戦闘で負けたのだがな」
「へっ!そうだライナウェルト!お前は負けたんだ!悪者の味方しやがって!今日でお前の傭兵業はおしまいだ!」
「その言葉、甘んじて受け入れよう」
「・・・(受け入れるんだ)あぁ・・えと、他に、質問のある方は・・・」
「はいは~い」
「はい、ナミミナさん」
「は~い、う~ん、そうだな~・・・ミサリッシュ~、洗脳の魔法て~、なんでも言う事聞かせられるの~」
「そうですね・・あまり、細かい指示は出来ませんが、簡単な指示なら問題無いと思います」
「よ~し、それじゃ~、なんだか辛気臭い雰囲気に~なっているから~、空気を変えよ~。ライナウェイウェ~イ、なんか歌って~」
「うっ、歌って!?・・・(たしかに簡単な指示だけど・・・)」
「もしくは踊って~」
「ナミちゃん、ライナウェルトさん負傷しているから、踊るのは厳しいと思うよ」
「あ~、そっか~」
「おいナミミナ、お前何ふざけた事言ってんだよ。歌を歌うだ踊るだ?んなもん、こいつがやる訳・・・」
「うむ、踊るのは無理だが、歌ならば良いだろう」
「えっ!?」
驚き思わず勢いよく顔をライナウェルトに向けるコクオー。コクオーをよそに、地べたに伏した状態から、少し身体を横に向け大きく息を吸い込み始めるライナウェルト。そして・・・
「・・・♪~~~~~~~~・・・」
「!?」
高らかに歌い始めるライナウェルト。横になっているままとは思えない様な安定した声量、そしてビブラート。まさかの美声である。歌っているのは、バラードだった。
「!・・・(知らない曲だけど、なんだか凄く優しいというか・・暖かいというか・・・)」
円寿がライナウェルトの美声に聞き入っているその横で、ミサキリスはなんとも言えない表情をしている。
「・・・(えっ?・・えっ!?何これ?どういう状況!?負傷して横になったまま歌い始めるライナウェルト・・それに聞き入るエンくん達・・なんでみんな素直にライナウェルトの歌を聞いているの!?)」
「♪~~~~・・・以上だ」
「うっ・・上手ぇ!」
「わ~。ライナウェイウェイ良い声~。なんかおもろ~い」
「ライナウェルトさん!歌上手いですね!プロの歌手みたいでした!」
円寿の言葉に頷き小さく拍手をするトゥモシーヌ。
「うむ、そうか。歌を歌うのは、嫌いでは無いのでな。お前達の心に少しでも感動を与えられたのなら、この上なく嬉しい」
「・・・(これって洗脳の魔法が効いているのか・・それともただ単にライナウェルトが少しアレなだけなのか・・分からない・・・)あぁ、えと・・ありがとうございました、ライナウェルト。それで・・あたしからも、質問良いですか?」
「うむ、良いだろう。なんだ?」
「この場に魔力妨害を行う機械道具と呼ばれる物があったと思うのですが・・・(何となく予想出来てるけど・・・)」
「あぁ、それなら先程、そこのトゥモシーヌの魔法の一撃・・いや五十撃と言うべきか?その五十撃で跡形もなく消し飛んだぞ」
「あはは・・やっぱり、そうでしたか・・・」
「・・・・・」ドヤァー
「誇らしげにしないで下さいトゥモシーヌさん・・一応、あたし達の任務は隠密でないといけないのですからね・・・」
あっ、そうだそういえばそうだった、とそんな表情のトゥモシーヌに、ミサキリスは頭から汗マークを流す。
「ありゃ~。ライナウェルトじゃなくて~、機械道具が~消し炭になったか~」
「機械道具がどんなんなのか、見てみたかったすねエン兄さん」
「そうだねコクオーくん。洗練された無駄の無いデザインなのか、それともごてごてした武骨なデザインなのか・・見たかったなぁ」
「・・・・・」シュン・・・
「わ~。おにい~、トゥモシンヌが~、悲しそうに~おにいを見てるよ~」
「!?ちっ、違いますよトゥモちゃん!決して、トゥモちゃんを攻めている訳ではありません!」
「そうすっよトゥモの姉さん!そもそも機械道具をぶっ壊すのが、俺らの目的の一つだったんすから。壊してくれたトゥモの姉さん、マジ感謝っす!あっ、見て下さい!魔力妨害の粒子が消えてますよ!」
「その粒子は~、コクオ~にしか見えてないんだぞ~」
「・・・・・」ジィー
本当?という表情で円寿を見つめるトゥモシーヌ。
「トゥモちゃんのおかげで、ここまで凄く順調に進んでいます!本当に、ありがとうございます、トゥモちゃん!」
「・・・・・」ジィー
モニュウーーモニュッモニュッモニュッーーー(円寿の両頬を両手で挟み揉みしだく)
「あはは・・・(機嫌良くなったみたい)それではライナウェルト、次の質問です。これがあたし達一番の目的なのですが・・先程も言った通り、ベディッドは獣人の子供達を誘拐して売り捌いています。それで、その誘拐してきた子供達は、この城のどこかにいるはずなのですが・・・(・その子供達の居場所は、知っていますか?」
「うむ、なるほど・・すまない、それは分からないな」
「てめぇっ!知らないとはどういう事だぁっ?!嘘ついてたら承知しねぇぞっ!」
「コクオーくん。ライナウェルトさんは今なんでも正直に答える状態だから、嘘はつけないよ」
「ん?あぁ、そうか。そうでしたね・・・」
「大丈夫だよコクオーくん。正直、ライナウェルトはベディッドが誘拐行為をしているのは知らなかった・・今さっき知った訳だから、あたしのこの質問であたし達が期待する答えがかえってくるのは、正直望み薄かったからね。まぁ、でも・・子供達の居場所が分かる、何かヒント的な物が聞ければ良いかな位には思っていたけど・・・」
「ヒント、か・・・そこまでに値するか分からんが、幼子達の居場所に関して、少し心当たりがある」
「「「!」」」
獣人3人の頭の耳がピコンッと羽上がる。
「この城の地下にはな、城の広さに匹敵する程の・・・は、さすがに言い過ぎか・・まぁ、正直かなり広大な監獄あると聞いた事がある。その監獄は、脱獄しようとするのは勿論、許可なく侵入しようとする者達を排除する為に何重もの罠がつけられている・・通称要塞監獄とも言われてい場所だ。拐われた幼子がいるとしたら・・まぁ、そこであろうな。確証は無いが」
「要塞監獄~?え~、名前そのまんまんじゃ~ん。もっと可愛い名前つけようよ~」
「監獄みてぇな所に、わざわざ名前つける程じゃねぇだろうが」
呆れながらナミミナに言葉を吐くコクオー。二人を横目に、ミサキリスが返答する。
「この城の地下・・なるほど、ありがとうございますライナウェルト。これで質問は終わりです、あとは眠っていて下さい」
「あぁ・・そうさせてもらおう・・・」
ミサキリスの言葉通り、スゥーッと瞼を下ろすライナウェルト。それはまるで息を引き取るかの様に、静かに眠りについた。勿論これは洗脳の魔法による物なのだが、これまでに経緯を見ると、まるでライナウェルトが疲労困憊末眠りついた様に見えた。そして、地に横たわり静かに寝息をたて始めたライナウェルトを確認すると、ミサキリスは一同に声をかける。
「よし、それじゃあ行きましょう!次あたし達が向かうべき場所が分かりました。あまり時間をかけたく無いのd・・・」
ミサキリスが一同に指示を出そうとしたものの、それは最後まで言い終える前に止まってしまう。コクオーとナミミナがはて?と疑問に思い、彼女の視線の先を追う。するとそこには、先程眠りついたライナウェルトを黙って見下ろす円寿の後ろ姿があった。そして一同は感じる。一同からは円寿の背中しか見えていないが、それでも見て取れる程、彼が悲しんでいる事に。いてもたってもいられず、ミサキリスは円寿に近づきその顔を覗き込む。
「エンくん?・・・!」
覗き込んだその表情は、彼女の予想通り悲哀に満ちた表情であり、一点にライナウェルトを見ている。
「・・・ミサちゃん。当たり前だけど、ぼくは今日初めてライナウェルトさんと出会った。だから、ライナウェルトさんを多く語れる程彼の事を知らない・・でも、そうなんだけどね・・ぼく、ライナウェルトさんと違う形で出会う事が出来たらなぁ・・て、思ってしまったんだ。分かってはいるんだ。世界には、数えきれない程の人達がいて、その人の数だけ色々な考え方や価値観を持った人がいるって事を。だから、ライナウェルトさんみたいに、自分の感情とは別に、これはこれ仕事だと切り離す事が出来る人がいる事も、ぼくは分かっていたよ。多分、ライナウェルトさんは本人も知らない内に、今日みたいに悪い人の側に立つ事だって・・この仕事を続けていく以上これからもあると思う・・・だけどね、もし・・ほんの少しの巡り合わせの違いで、今回みたいな形ではなく別の形でライナウェルトさんに会えたら良かったなって・・少し、思ったんだ。もしかしたら、皆みたいな関係にもなれたかもしれないかなて・・・ライナウェルトさんと話して、その・・凄く、面白い人だと思った。彼と仲良くなれたら、楽しい日々がさらに楽しくなったのかもしれないなって・・それに・・・」
それに?と、言葉を返すミサキリス。
「ライナウェルトさん、誘拐は嫌いて、言ってくれた。たったそれだけの言葉を聞いただけで、もしもの事を考えてしまったんだ。でも、そうはならなかった・・そう思ったら、なんだか・・凄く、胸が苦しくなってきたんだ・・・」
僅かに円寿のその瞳が潤いだし、今にも涙が溢れてきそうになる。円寿のその姿にコクオーと、珍しくナミミナも戸惑っていた。何か円寿に言葉をかけてやりたいが、どんな言葉をかけて良いのか分からず、胸の内で地団駄を踏む。すると・・・
スッーーナデナデーーー
「!トゥモちゃん・・・」
「・・・・・」
泣かないでと言いたいのか、それとも泣いても良いんだよと言いたいのか、はたまた特に意味は無く単純に円寿にそうしたかったのか・・真意は不明ながらも、トゥモシーヌは円寿の頭を優しく撫でる。そしてもう一人、優しく円寿に触れようとする女騎士が、
「エンくん」
「!」
ポムッ、と両手で円寿の頬を持ち上げ包み込む様に触れるミサキリス。その表情はどこか呆れている様な、それとも慈しむ様な、それでもどこか優しい表情だった。
「もうエンくんたら、こんな会って間もない・・しかもあたし達を始末しようとした相手に対して、そこまで色々考えちゃうなんて・・本当、お人好しにも程があるぞ」
「ミサちゃん・・・ごめんなさい・・・」
「あっとっと!?謝らないでエンくん、怒ってる訳じゃないからさ。エンくん、あたしね、エンくんのその感情は間違っていないと思う。普段は、どうしてもお互いの立場上譲れない物があってやむを得ず衝突・・なんて関係なんだけど、本当はその相手としっかりと向き合えば仲良くしていけるんじゃないかなぁ・・て、思う事はあたしにもあるからさ」
あはは、と笑うミサキリス。やむを得ず衝突、この言葉にナミミナは何やらピンと来たのか、ミサキリスに向かってジィーッと視線を送る。ナミミナの視線が気になりつつも、ミサキリスは円寿の両頬に当ててた手で、今度は円寿の両手をギュッと握り胸の高さまで持ち上げる。
「エンくん、本当はここで、エンくんに何かエンくんがちゃんと納得出来る様な言葉をかけてあげたいんだけどね・・あたしも、いうてたった19年しか人生歩んでないからさ・・言葉が全然出てこないんだよね・・ごめんね、エンくん。だから、あたしが出来るのは、エンくんのその優しさに共感する事。エンくん自身になって・・なんて生意気な事は言えないけどさ、こうやって側に立って話しを聞く事なら、いくらでも聞いてあげられる。ほらエンくん!もし言い足りない事があるなら、どんどん言っちゃえ!」
「!・・・ミサちゃん!」
「おっ・・おぉっ、そうっす!ミサの姉さんの言う通りっす!エン兄さん、俺バカだから難しい話しは理解出来ねぇっすけど、エン兄さんの言葉から伝わる魂は感じ取ってみせますので、言いたい事があったら俺にもがんがんぶつけて下さい!」
「!コクオーくん!」
「バカて自覚あったんだな~コクオ~」
「るっっせぇ!バカ言うなナミミナぁ!自分で自分の事をバカとは言うが、他の奴から言われるのはムカつくんだよ!」
「ほほ~?それなら~、チェルに言われるのもムカムカするのか~?」
「なっ!?ちっ、チェル姉だぁ?・・・っっチェル姉は・・その、とっ、特別なんだよ(小声)・・・///」
「小声で言っても~、獣人のあたしには聞こえているぞ~、本当バカだな~」
「だぁっっくそぉっ!?//だからバカて言うなっっ!///」
顔を真っ赤にしてナミミナに怒鳴り付けるコクオー。慌てて円寿が止めに入る。
「ふっ、二人共!喧嘩は駄目だよっ!」
そんな円寿が近づいて来たのに気がつくと、コクオーを雑にあしらい円寿に視線を向けるナミミナ。
「わ~。おにい~、どよんどよんな雰囲気じゃなくなってる~。元気になってくれた~?」
「!ナミちゃん、気をつかってくれたの?」
「あたし~、ムズい話しは分からんけど~、おにいが悲しい顔してるのは~、なんかやだ~。ぺか~てキラキラ輝くおにいがいい~」
ナミミナのぺか~、という表現が引っ掛かり首を傾げるミサキリス。
「ぺかーっだね!分かったよナミちゃん!」
分かったんだ・・と、内心呟くミサキリス。
「それと~、ムズい話しは分からんけど~、あたし~コクオ~みたいにバカじゃないからね~」
「だからバカっつうなよ!あっ、エン兄さん!俺はエン兄さんにバカと言われても大丈夫っす!」
「!?そっ、そんな事言わないよコクオーくん!?」
「コクオ~、何言ってんだ~お前~」
「ふふっ・・・(コクオーくんとナミミナさんがいて良かった。少しはエンくんも元気になったかな?)」
獣人3人のやり取りを微笑ましく見守るミサキリス。そのすぐ後ろで同じく見守っていたトゥモシーヌ。すると、彼女が身につけているネックレスの宝石が突如チカチカと光だす。
「!」
どうやら宝石の持ち主も、その輝きに気がついた様だ。
「ほえ~?あ~、トゥモシンヌのネックレスが~ピカピカしてる~」
「!そうだった、機械道具は壊れて、魔力妨害が消えたから・・通信が戻ったんだ!」
「やりましたね!エン兄さん!」
「トゥモシーヌさん、おそらくその輝きは、ランシャの家の面々からの連絡だと思うのですが、どういった連絡ですか?」
「・・・・・」
時は少し遡り、円寿一向が時計塔に向かって走っていた頃・・・ラング・ド・シャットの家では、まさに混沌を極めていた。にらみ合い罵り会うサクネアとアオイ。それを演劇を鑑賞する様に笑顔で見ている双子二人。かたやケリシュナイルに溜まりに溜まった様々な感情・・というか怒りを絶え間なくぶつけるチェルシー。そのぶつけられている当の本人はと言うと、双子よろしくこちらも笑顔である。修羅の如き形相のチェルシーが面白いのか・・はたまたこの怒りは自分に対する好意の裏返しだと勝手にそう思い込んでいるのか・・後者だとしたら、とんだ勘違いナルシストである。その自惚れ具合も大概にした方がいいだろう。そして、そのチェルシーの迫力に怯え皆で抱き合い震えているランシャ年少組+ケーギン。同じ部屋の中、二ヶ所で怒号が轟くこの空間で、1人冷静に城の外観を写す水晶玉を覗く女が1人・・そしてその女の側に逃げ込む女がまた1人。
「ひっ、ひえぇぇ・・・」
「!先輩ちゃんさん、大丈夫ですか?」
「ミョリンさ~ん・・すっ、凄いですね・・こんな戦場みたいな雰囲気の部屋で、そんな冷静でいられるなんて・・・」
「いえ、ただあたしは、アオイさんがサク姉と言い争いを初めてこの水晶玉から離れてしまったので、せめて誰かしらが見ていないと思い、ここに」
ミョリンさーんクウゥールゥッッッ!なんて落ち着き具合なんだっ!あたしもいつかこんなどんな状況でもクールでいられる大人になりたいなぁ・・あたしなんか、こんなとっ散らかった状況で目を回しながらパニくる事しか出来なかったよ・・・
「先輩ちゃんさん、おそらくここは今の所安全圏だと思われるので、変に動かずこの水晶玉を見ていましょう」
「そっ、そうですねミョリンさん!」
あぁ、ミョリンさんのこの落ち着き具合・・素敵だなぁ。なんだろうな・・何故こうも落ち着くのか?なんだか頼っても大丈夫て雰囲気と言うか・・口調が燐としていると言うか、芯通った声と言うか・・とにかくミョリンさんの側なら安心していられる・・そんな気がする。たしかにここは安全圏だ。クール美人、ありがたや、ありがたや・・・さてさて水晶玉はと・・・うぅむ、まだ城の外観を写したままで動かないか・・円寿くん達が転移して、だいたいかれこれ1時間位かなぁ。トゥモさんがいるとはいえ、流石にもう少しかかるかな・・・
「むむむ・・・」
「・・・」
「・・・んん・・・」
「・・・」
・・・うん、たしかにミョリンさんの側は安全圏だ。安全圏なんだけど・・・なんだか気まずい!どうしよう?静かに黙しているのも、それはそれで会話が無くて気まずい!気まずいと思っているのはあたしだけ?!ミョリンさんは気まずくないのかな?視線をチラッと・・・おほーーっ!めっったクソ美人!いや褒めるのにクソは失礼だな。いやいやそうじゃない・・ミョリンさん、瞬きも最低限に水晶玉を見つめている。凄く真剣だ。こんなに真剣そうにしていると、声かけづらいよなぁ・・変に声かけて迷惑がられたら嫌だしなぁ・・・
「・・・それにしても、大きなお城ですね、先輩ちゃんさん」
「・・・ん?あっ、えっ?・・あっはいっ!そそそそうですね!こっ、この前見てきた魔導省本部の城とは比べ物にならない位、大きいですね、はは・・あっ、あれですかね?めちゃくちゃお金持っているんですかね?いやー、金持ちはお金のかけ方が凄いなー・・・」
・・・なんだあたしそのつまらない会話の返しはーーーっっ!?お金持っているだぁ?持っているに決まっているでしょ!よく知らないけど領主様なんだから!貴族か?先祖代々貴族なのか?知るかっ!んな事ぉ!・・・うぅ、ごめんなさいミョリンさん。違うんです・・まさかミョリンさんから声をかけてくるとは思わなかったんです・・だからなんて返していいか分からなくて、動揺してクソほどつまらない返しを・・あぁ、もっとあたしに落ち着きと会話のボキャブラリーがあれば・・・
「・・・!先輩ちゃんさん、これは・・・?」
「えっ?」
おや?今一瞬なんだか水晶玉の映像にノイズが入った様に見えたな・・これって・・アオイさんに確認してもらおう。
「あっ、あの、アオイさん・・今、その水晶玉の映像なんですが・・・」
「つかそもそも惚れた男をエロい目で見て何が悪いんだこらぁっっ!」
「だからあなたは直球に言いすぎなのよっ!」
「直球で言いだろうがぁっ!周り口説い言い方は好きじゃねぇんだよっ!察して欲しいなんてあたしのガラじゃねぇ!言葉てのはなぁ、伝わんなきゃ意味がねぇんだよ!」
「だからといって、それでエンくんを困らせるのは違うわ!あなた結局独りよがりなのよ!」
「だとこらぁっっ!」
ひいぃぃぃぃっっ!?なんか喧嘩がさらにヒートアップしてませんかねぇ!?てか何の話しですか!?あぁでもサクネアさんの、言葉は伝わんなきゃ意味が無いはあたしに刺さるなぁ・・円寿くんみたいな天然タイプにははっきりと言った方が伝わる・・いや、伝わらない事もあるか?・・てか2人の迫力が強くて、こんなのの声がかけられない・・いや、でも水晶玉の事を伝えないと・・・
「あっ・・アオイさんっっ!!」
「何よっ!邪魔しないでっっ!!」
「ひいぃぃぃぃっっ!ごっ、ごめんなさいぃ!」
だっ、駄目だー!サクネアさんと同じ位アオイさんが怖くなってるぅー!頑張ってあたしなりに大きな声出したのに・・ミョリンさーん、ヘルプー・・助けてー・・・
「サク姉、言い争いを止めて下さい」
「あぁっ?んだよ、邪魔すんなよミョリン!今ここでアオイから引く事は・・・」
「エンジュの姿が見れます」
「なぬぅっ!?」
「えっ?ちょっとミョリンさん、それ本当?」
「・・・ので、言い争いを止めて下さい」
ミョリンさーーーーん!!流石ですミョリンさんっ!見事二人の口喧嘩を止めて見せました!
「あれー?喧嘩もう終わりー?」
「あたしー、もうちょっと見たかったなー」
「あ?なんだよ、見せもんじゃねぇぞ」
「ちょっと双子ちゃん達、口汚く罵りあってるのを見て楽しむなんて、随分愉快な性格してるじゃない?」
「たくっ・・んで、ミョリン、エンジュはどこだ?早く見せろ!」
「まだ写っていませんよ。アオイさん。水晶玉の映像が今さっき乱れました。もしかしたら、エンジュ達が目的の一つを成し遂げたのかもしれません」
「ありがとうミョリンさん。今すぐ確認を・・・」
「待って下さい」
「!?」
えっ?どうしたのですかミョリンさん?水晶玉を確認しようと覗き込んだアオイさんを手で塞いだ?なして?アオイさん、虚を突かれた様な表情してますよ?
「・・・おふざけで止めた・・訳ではなさそうね。ミョリンさん、賢そうなあなたがこんな事するというのは、何かしら理由があるのよね?」
「はい、アオイさん・・先程あなたは、サク姉との子供じみた口喧嘩を止めようと割って入ろうとした先輩ちゃんさんに対して、どんな対応したか・・覚えていますか?」
「!?・・っ・・・」
みっ、ミョリンさーーーん!?まさかそんな・・・たしかに、アオイさんあたしに対して語気強めに何よっ!て言いましたけども・・・あたしの事なんて気にしなくて良いのに・・アオイさんは、その・・頭に血が上っていたんですよ。普段のアオイさんだったらあんな対応しない・・と思うし・・・
「・・・はぁ、たしかに・・本当そうね、ごめんなさいミョリンさん。そして・・ごめんなさいアキナちゃん。アキナちゃんに声を荒げる必要なんてある訳ないのに・・大人げないにも程があるわね、あたし・・本当にごめんなさい」
「えっ?あっ、いいぃいえっ!そんな、アオイさん・・そんな頭を上げて下さい!あたし全然怒ったりとかしてないですから!」
「おうっ、そだ、反省しろアオイ」
イラッ「サクネア・・あなt・・・」
「サク姉も謝りなさい」
「どわっ!?あっ、あたしもかぁ?なんでだミョリン!」
「水晶玉の操作が出来るのは、この場ではアオイさんしかいません。妨害されてはいますが、水晶玉がないとエンジュ達の姿が確認出来ません。つまり、水晶玉を扱えるアオイさんは重要なのです。その邪魔をサク姉はした事になります。サク姉との口喧嘩に乗ってしまったアオイさんも悪いですが、サク姉あなたも悪いです。だから謝りなさい」
はわわわわっ!?ミョリンさん、口調こそ冷静だけど、これは怒っていらっしゃる!?サクネアさんが押され気味だ。ミョリンさんてこんな一面あるんだなぁ・・てか、ミョリンさんてサクネアさんに説教みたいな事出来るんだ。てっきりそういう役目はチェルシーさんだと思っていたんだけど・・・
「あっ、ミョリンお姉さーん。ちなみに僕は水晶玉使えるよー」
「あなたは信用してません」
「たはー」
ミョリンさん、ケリシュナイルさんをズバッと否定したー!圧倒的即答だー!・・・ケリシュナイルさんも、だよねー、みたいな反応だな・・たはー、て・・・
「・・・くそっ、わぁったよミョリン・・すまねぇな」
「よろしい。これで引っかかっていた物は取れました。それではアオイさん、水晶玉お願いします」
「分かったわ。さて・・・」
アオイさんが改めて水晶玉に手をかざすと・・・おぉ!映像が動きましたよ!お城の外観しか写せなかったカメラ(て事にしておく)が中まで見れる様になってる!
「あっ、アオイさん!円寿くん達の場所、分かりますか?」
「大丈夫よアキナちゃん。トゥモの持ってる魔通玉の魔力反応を辿れば・・・ほら、この通り」
「!」
おっ・・あっ・・・あーーー!!円"寿"く"ん"っ"っ"っ"!!!円寿くんだーーー!まだ1時間と少ししか立っていないのに、なんだか凄く久しぶりの様なこの感覚・・トゥモさんとミサキリスちゃんもいて・・・ん?ミサキリスちゃん、円寿くんの手を握っている?それでお互い見つめあってる?んんんんん?こっ、この場面は・・なんだかまるでミサキリスちゃんが円寿くんに愛の告白でもしているみたいなんですけど!?どういった経緯でこんなじょうきょうに!?ちょっ、至急詳細を希望します!
「あぁーーーーっ!ミサ、エンくんとイチャイチャしてるーーっ!ずるーーいっ!」
「あたし達がいないからて、ここぞとばかりにぃーーーっ!」
はわっ!?みっ、耳元で叫ぶのは止めてよイケイケ双子ギャル!ビックリしたなぁ、もう・・・いやいや、シュリナちゃんジュリアちゃん、これはイチャイチャしてる訳ではないですよー。ミサキリスちゃんがそんな真似・・・しっ、しないよね?
「ん?・・うおぉーーーいっ!ミサキリス!?抜け駆けかぁ?抜け駆けなのかぁ!?許さん!許さんぞぉぉっ!!おいこらミサキリスっ!聞こえてんのかぁっ!」
「あぁもうっ、うるさいわよサクネア!耳元で叫ばないでちょうだい。あと、水晶玉に向かって叫んでもミサキリスちゃん達には聞こえていないわよ」
「あぁ?!聞こえていねぇだぁ?んじゃどうやって連絡すんだよ?走るか?やっぱあたしが走りに行けば良いのかぁ?」
「だからそれは辞めてねサク姉・・・」
いつの間にかあたし達の側に、呆れた表情のチェルシーさんが立っていた。
「おうチェル!あの陰魔の優男とは決着ついたのかよ?」
「えー?チェルシーお姉さん、僕にもう飽きちゃったのー?」
「黙りなさいケリシュナイル。次あたしの許可なく口を開いたら、その首をはねるわ」
物騒だなチェルシーさん・・顔が怖い・・本気そうなのがまた怖い・・・
「チェルシー。首をはねても、その男なら口を閉じない可能性があります。糸と針でしっかりと縫い付けてから首をはねましょう」
「良い提案ねミョリン。そうしましょう」
ミョリンさん!?さらに物騒な事口にしましたよこのお姉さん!?2人共、ケリシュナイルさんへの殺意が高いなぁ・・円寿くんの前では、出切ればそういう部分は控えていただきたい・・・
「それでアオイさん。エンジュ達への連絡は・・たしか、魔通玉てのを使うのよね?」
「そうよチェルシーさん。物覚えが良くてありがたいわ。水晶玉の望遠魔法が使えるて事は、魔通玉による通信も使えるて事。流石に国外だから、通信を送ってから届くのに少し時間はかかるけどね」
「んじゃ早く連絡しろっ!時間かかんなら尚更だろうがっ!」
「あぁもう、急かさないでちょうだいサクネア・・・(ミサキリスちゃんがエンくんの手を握っていたのも、気にならない訳ではないけど)まずは状況の把握と整理の方を聞くのが先。もうトゥモに連絡を送ってあるから、少し待ってて」
「・・・・・」
場面は戻り円寿一向。チカチカと輝く宝石を、トゥモシーヌはじっと見つめていた。
「・・・みんな・・無事か?・・て・・・」
「無事だよ!」
「傷1つ無ぇっす!」
溌剌と答える円寿とコクオー。しかしナミミナは、その言葉に首をかしげた。
「ほえ~?無事かって~、あたし達の姿は~、アオインヌ達には見えていないの~?」
「!たしかに・・魔通玉の通信が出来ているて事は、水晶玉の望遠魔法も使えているて事だよね?ぼく達の姿は見えているはずだけど・・・」
「いや、ナミミナさん、エンくん。アオイさんの聞いている無事と言うのは、あたし達の精神面の事を聞いているんだと思うよ」
言葉の意図を汲み取って2人に伝えるミサキリス。その精神面の心配をされてるいるのが、他でもない円寿なのである。物理的に傷つく事はない円寿が最も心配とされる部分。アオイの気持ちは、ミサキリスは嫌と言う程理解していた。
「エンくん。改めて聞くけど、エンくんの心は無事?精神的に疲れていない?」
「・・・」
円寿が少し目線を上にして、何かを考える様な仕草をする。少しの沈黙の後、円寿が答える。
「うん、大丈夫だよミサちゃん。今さっき、少し悲しくなったけど、もう大丈夫。もう心は軽くなっているよ!これも、皆でおかげだよ!ありがとね、皆!」
円寿の輝く様な笑顔が、その場にいる4人と、それを水晶玉越しに見るアオイ達の心を笑顔にする。と、続いて次の連絡がトゥモシーヌの下に届く。
「・・・サクネア・・起きた・・て・・・」
「!!サク姉!!」
「うおーーーっっ!!サク姉無事目が覚めたんすねっ!!」
ピョンピョンと跳ねて喜びの感情を示す円寿と、両手をガシッっと握り雄叫びをあげるコクオー。
「コクオーくん、あんまり大きな声出さないでね・・ここが敵地だって事、忘れないでね・・・」
やんわりと注意をするミサキリス。まぁ、でもそれもしょうがないかと内心思っている。
「わ~~い。サク姉復活復活~~~。やったぁ~~~」
いつもはローテンションなナミミナも、我がリーダー様の回復報告には珍しく目に見えた喜びを見せる。いつもより声の間延び具合も増している。
「良かったね!ナミちゃん!」
「うん~、良かったなり~。これもおにいと~、トゥモシンヌとアオインヌのおかげ~。感謝なのだ~」
「・・・・・」フンスッ
うむ、予期に計らえと言わんとばかりに強気な表情で頷くトゥモシーヌ。一方、お礼を言われたもう1人は不思議そうに首を傾げていた。
「?・・・ナミちゃん。サク姉を助けたのは、トゥモちゃんとアオイさんであって、ぼくは何もしていないよ?」
「いやいや~、何言ってんのさ~おにい~。そもそも~、おにいがいなかったら~、あたし達は~トゥモシンヌとアオインヌに~、会う事は無かったんだぞ~」
「!」
「おにいがいなかったら~、あたし達は~サク姉を助ける手段が無かった~。でも~、おにいがいたから~、トゥモシンヌとアオインヌと知り合えて~、サク姉助かった~。だから~、おにいにも~感謝するんだぞ~」
「ぼくが、いたから・・・」
「ナミミナさんの言う通りだよエンくん。人と人との縁を繋ぎ結びつける。縁の橋渡しだね。それも立派なエンくんの力なんだから。あたしだってエンくんがいなかったら、アキナさんトゥモシーヌさん・・それこそサクネアと知り合う事も無かったと思う。誇って良いんだよ、エンくん!」
「ミサちゃん!」
スッーーナデナデーーー
「!~~~、トゥモちゃん!」
「おっ・・おぉ、おぉっっ・・・」
「ほえ?コクオ~。何お前震えてんだ~?頭おかしくなったのか~?あ~、元々か~」
「はぁ!?おっ、おかしくなんかなってねぇよ!元々おかしくもねぇ!俺はなぁ、感動してんだよ・・俺は今まで、力つったら戦いに勝つ力こそが全てだと思っていたんだ。でも、エン兄さんに会って、力てそれだけじゃねぇ・・エン兄さんみたいな、戦い以外の力・・強さがある事を知った。すげぇ・・すげぇよエン兄さん。俺なんか足下にも及ばねぇ・・・」
「いやいやコクオ~。お前がおにいの足下にも及ばないなんて~、端から皆知ってるから~」
「うっ、うるせぇよ!俺だって分かってるわい!・・・ナミミナ、俺決めたぜ・・・」
「お~?とうと~う、チェルに土下座して~、一生ランシャでただ働きする決心がついたか~?」
「あぁ、そうだ・・・て、はぁっ!?なっ、なんだよそれっ?!一生ランシャでただ働きだぁ?!そっ、そんな事するかぁっ!たくっ・・ちっ、チェル姉には、改めて謝罪はするけどよぉ・・・」
「ほえ~?違うの~?そんじゃなんだよ~?」
「俺はなぁ、暴力が苦手なエン兄さんに変わって、エン兄さんが戦う為の武器になるっ!」
「・・・」
「・・・なっ、なんだよナミミナ・・・」
「そんなの~、今さら過ぎるじゃんかコクオ~。お前~、この城に来てから~、おにいに変わってずっと戦ってんじゃ~ん」
「違ぇよ!俺が言ってんのは、この城での戦いが終わった後もずっとて事だ!俺は生涯、エン兄さんの武器だ!」
「ほえ~。なるほ~。ま~、おにいの邪魔にならん程度に~、励めば良いんじゃ~ん」
「コクオーくん」
「!エン兄さん!俺、武器です!エン兄さんの武器になります!」
「うん。コクオーくんの話し、聞いてたよ。気持ち、凄く伝わったよ。コクオーくんが武器なら、ぼくは盾だね。コクオーくんも、ぼくの事を頼ってね!」
「はいっす!エン兄さん!」
おや?おやおやおや?水晶玉越しでも分かる、円寿くんがコクオーくんともの凄く仲良くしているこの感じ・・円寿くん、妹分だけじゃなく弟分もこの世界で出来たね♡お兄ちゃんだね円寿くん!微笑ましいねっ!お兄ちゃんの円寿くんも可愛いよっ♡!
「ふふっ、チェルシー。ナミもコクオーも元気そうですよ。良かったですね」
「うっ・・なによミョリン、その意味ありげな言い方は」
「いえ別に、特に深い意味は」
「何よもう・・言っとくけど、コクオーの心配はしてないから。あんなバカ弟、少し・・いや、かなり痛い目みないと駄目なんだから・・しいて言うなら、今回の面子はエンジュ含めて皆優しいから、甘やかされていないかが心配ね・・・ちょっ、何よミョリン。何笑ってんのよ」
「ふふっ、いえ、別に」
「まぁあと、ナミは別の意味で本当に心配。てか、あの娘ったら、武器らしき物持っていないじゃない?短弩はどうしたのよ短弩は?まさか、ナミってば丸腰で敵地にいるの?」
「みたいですね。短弩は・・おそらくそこにいる優男が壊したから持っていないと思われます」
「えー?あれは不可抗力だよー。戦闘中は武器が壊れる位あるじゃんかー」
「ケリシュナイル・・・」
ひいぃぃぃっ!?チェルシーさん怖い!ギロリとケリシュナイルさんを睨みつけたぁ!てかナミミナさん、本当に丸腰だけど大丈夫なのかなぁ?
「安心しろチェル。ナミも獣人の女だ。いざって時は拳でも脚でも使うだろ。結局最後に必要になってくんのは、己の肉体なんだからな!」
「・・・サク姉、だと良いんだけど・・・」
「それよりもアオイ。ミサキリスがエンジュの手を握って抜け駆けしようとしたアレ!アレの詳細を早く聞きやがれ!」
そっ、そうだ。アレですよアレ!・・アレてなんだ?とっ、とにかくアレです!ミサキリスちゃんの心境はいかに?!
「命令するみたいに言わないでちょうだい!まったく・・そのアレて奴も、もう送ってあるわ」
「・・・・・!」
トゥモシーヌの魔通玉が輝き、その輝きをじっくりと読み取る。『先程ミサキリスちゃんがエンくんの手を握って何か話していたみたいだが、アレはどういう経緯があってそうなったのか?』そう記されていた。
「・・・・・?」
トゥモシーヌは不思議に思った。何故アオイはわざわざこの様な内容の文を送ってきたのかと。ミサキリスが手を握ったのは、悲しんでいる円寿に励ましの言葉を伝える為だ。それ以上でもそれ以下でもない。円寿を愛でる者ならば、円寿が悲しんでいたら励ましてあげるのが使命であろう。まったく、そんな事も分からんのかアオイは・・と、トゥモシーヌは胸の内で遺憾の意を唱える。よって、この質問に答える必要は無い・・そう、トゥモシーヌは判断した。しかし、トゥモシーヌは分かっていなかった。たしかに彼女達は、自分同様に円寿を愛でている。だが、各々円寿にそれ以上の感情を持っている事を。彼女達にとって、ミサキリスの行動は誤解を生む行為だという事をトゥモシーヌは知らなかったのである。この円寿に対する各々の思いのすれ違いによって、後にミサキリスが不憫な目に会うのだが・・それはまた別の話し・・・そんな事よりも、トゥモシーヌは自分なりに考えてもいた。明奈やアオイ達も、自分達の事が心配なのであろうと。それはそうだ、なんせ我らが愛くるしき存在の円寿が隣国の・・それも醜悪たる外道の腹の中に放りこまれているのだ。円寿を愛でる者として、心配しないのはその者こそまさに外道だ。そんな同士たる彼女達の心配を少しでも緩和させるには・・・
「・・・・・!」
おや?トゥモさん、両手をポンと叩きましたね。それで・・・ん?あれ?トゥモさん、今こちらをチラッと見ましたか?ありゃ?もしかして、トゥモさんあたし達がこの水晶玉から見えている位置が分かっているんですか?あっ、円寿くんに近づいた・・そして円寿くんの頬を指で突きましたよ。ちょっと良い?て感じでね。それで・・・あっ、こっちを指差してますね。あそこから見ているよ・・そう伝えているのかな?やっぱトゥモさん、水晶玉から見えている位置が分かるんだ。おっ、円寿くんやミサキリスちゃん達もこっちを見ましたよ・・・あっ♡今円寿くんと目が合った♡水晶玉越しに目が合うのもこれはこれでまた良いですなぁ♡それからの・・・ん"き"い"ぃや"あ"ぁぁーーーーーーーーー♡♡♡♡♡!!!!!円寿くんがっ!円寿くんが手を振ってくれてるーーーーー♡♡♡♡♡!!!!両手でっっ!大きくっっ!!とびっきりの笑顔でっっ!!ファンサぁっっ♡!円寿くんのファンサぁっっ!円寿くんもっとファンサしてーーー!!もっとあたしに手を振ってーーー!!あっっ♡ピョンピョンしてる♡!オーイ、オーイて言っているのかな?可愛いね♡!ピョンピョン円寿くん可愛いね♡!・・・あっ、ミサキリスちゃん達も手を振ってくれてる。トゥモさんは胸元で小さく手を振っていますね。
「うおぉぉーーー!円寿っ!あたしはここだっ!ここにいるぞ円寿っ!」
はわっ!?ちょっサクネアさん!?水晶玉に覆い被さらないで下さい!円寿くんが見えないです!そんな両手でガバッと掴まないで下さいよ、サクネアさんの力で壊れたらどうするんですかっ!?
「はいはいサク姉、皆が見えないから離れようねぇ・・・」
チェルシーさんに羽交い締めにされ、移動させられるサクネアさん。サクネアさん、猫みたいだな・・ともあれありがとうございます、チェルシーさん。
「アオイさん。エンジュ達は、あたし達の事が見えているのですか?」
「いや、見えていないわよミョリンさん。トゥモシーヌはね、この望遠魔法を見られている位置を、魔力で感知しているのよ」
あっ、見えている訳では無いんですね。つまり円寿くん達は、何もない城の天井に向かって、あたし達が見ているであろう場所に手を振ってくれている訳ですね。ありがとう円寿くん・・円寿くんの気持ちはちゃんと伝わったよ!・・・おや、どうやらアオイさんの魔通玉に連絡が来たみたいです。曰く、これから城の地下に向かうと。そこに拐われた獣人の子供達がいるみたいです。円寿くん達が安全に進む事が出来る様、望遠魔法でナビゲーションして欲しいとの事です。これでようやく円寿くん達の力になる事が出来る!おっ、早速アオイさんが水晶玉の映像を動かしましたよ。さてさて、映像はどんな具合ですかね・・・
「!?不味いわ・・・」
はわっ!?数十人の兵士達が円寿くん達の所に向かっている!?アオイさんの言う通りこれは不味い!はっ、早く連絡を・・・と、思っていたのも束の間、兵士の接近をいち早く察したのか直ぐ様転移魔法で移動しましたね。『ふふっ、これが獣人の鼻と耳の力よ』そう、チェルシーさんが本の少しドヤ感を出しながら言いました。たしかに兵士が違いて来た時、円寿くんの耳がピコピコッて可愛いく動いていたな。ナミミナさんも、なにやらスンスンと匂いを嗅いでいましたね。それを受けてトゥモさんが転移魔法を使うと。なるほど、ここまでこうやってこの城を進んで来たんだね!音と匂いで立体的に空間を把握出来るて、やっぱ獣人て改めて凄いなぁ。おっ、兵士達が先程まで円寿くん達がいた所につきましたね。どうやら円寿くん達が既に姿を消している事に困惑しているご様子で・・ふふふ、これは草。『どこに消えたっ!探せっ!』とでも言っているみたいでww・・・そういえば、ちょくちょく写っていて気になっていたんだけど、なんか男の人倒れていません?騎士、みたいな姿だけど・・なにやら安らかな顔で眠っているみたいで・・兵士達が起こそうと身体を揺らしています。起きないな・・・えっ?まって、この人死んでる?死んでいらっしゃる?はわっ!?て事は、あたし今死体を見ているて事!?いやあっ!ショッキング!?じゃあまって、死体がこの場にあって、それまでそこに円寿くん達がいた・・て事は、殺したのは・・・
「あわっ・・あわわ・・あわわわわ・・・」
「パイセーン。なに急に顔面蒼白になってんのー?」
「プルプル震えててウケるー」
「先輩ちゃん、またなんか自分の世界に入っているの?」
「かもしれないわね、チェルシーさん。アキナちゃん、アキナちゃんてば」
「あわわわわわわわ・・・」
「・・・もう、聞こえていないのかしら?」
「たくっ・・・ぉぃアキナあぁっっ!!」
「っっっ!?はっ、はいいいぃぃっっ!?」
「シャキッとしろぉっ!シャキッとぉっ!」
「はっ、はいいいぃぃっっ!」
はわっ!?どっ、どうしてあたしはまたサクネアさんの怒鳴られているの!?
「戻ってきた?アキナちゃん」
「えっ?あっ、はい・・て、何がですか?」
「戻ってきたみたいね。アキナちゃん、あたしなんとなくアキナちゃんが想像していた事が分かるから言うけど・・安心してアキナちゃん。この倒れている騎士、眠っているだけよ」
「!?そっ、そうなんですか!?」
「そうに決まっているでしょ。たしかに揺さぶって起きないみたいだけど、僅かに呼吸してる動きが見えるわ。それに、さっきトゥモから連絡があったの。『・・・倒れている騎士は・・・眠っているだけ・・・負傷してるけど・・・』てね。おそらく戦闘があったんでしょう。エンくん含めて皆無傷だから、あの騎士に完勝したんでしょうね」
「そっ、そうだったんですね・・てっきり、あの騎士さん死んでいるのかと・・・」
「大丈夫よアキナちゃん。トゥモもミサキリスちゃんも、エンくんが見てる前で人の命を奪う行為なんてしないと思うわ。そもそも、トゥモは殺しなんてした事無いもの」
「アオイお姉さん!うちのミサも、殺しなんてした事無いよー」
「てかー、仕事柄普通にそんな事したらアウトー、的なー」
そっ、そうだよね。そりゃこっちの世界でも殺人行為は普通に駄目だよね・・いや分かっていましたよ、トゥモさんもミサキリスちゃんもそんな事する訳無いってね。分かってはいたけど・・・いやほら、こっちの世界の倫理観とか、あたしいまいち把握出来ていないし・・・
「おうおうっ!言っとくがな、うちのナミも殺しはやってねーぞ!疑ってんじゃねーぞ、アキナ!」
「はわっ!?うっ、疑ってなんかいませんけどぉ!?」
「先輩ちゃん。あたしら、職業柄荒っぽい事はするけど、殺しはNGでやって来ているからね。まぁ、仮にOKだとしても、ナミは面倒くさがりそうだけどね」
「殺しはNGすけど、半殺しはOKなんすよ、先輩ちゃん」
「はわっ!?はっ、半殺しぃっ!?」
「殺さなければOKー!」
「悪い奴らはいくらでもボコして良いんだよー」
「そうサク姉が教えてくれたー」
「「「「ねー、サク姉ー!」」」」
「おうよ!悪党には正義の鉄槌が下るつうのが、世の常て奴だぁっ!」
サクネアさん、なんて自信満々な表情なんだろうか・・ランシャ年少組の4人もサクネアさんの色の染まっているなぁ・・・
「こーら、あんた達。物騒な言葉で先輩ちゃんを脅かすのはやめなさい。そういうのはサク姉だけで手一杯」
「すんませんすっ」
てへぺろっ☆(・ωく)・・じゃないですよウィネさん・・・あっ、流れ的に、コクオーくんにも聞くべきなんだろうか?コクオーくん、ケリシュナイルさんのいる傭兵集団にいたんだよね・・殺しとかしててもおかしくは無いけど・・どうなんだろ・・・ん?チェルシーさんがケリシュナイルさんに近づいていった・・あっ、これは・・・
バンッッッ!!ーーー
ひいぃぃぃ!?やっぱりケリシュナイルさんの目の前のテーブル叩いたぁっ!
「ケリシュナイル・・・あんた・・いや、あんた達は、コクオーに殺しはさせてんの?・・・」
めっ、目が・・目が怖いですチェルシーさん・・その目で人が殺せそうな位怖いですよ・・・ほら、さっきまで明るかったランシャ年少組の4人+ケーギンさんが、また皆抱き合って怖がっているじゃないですか・・・
「んー?あぁ、そっかー。そういえば・・・コクオー、殺しはしてないね」
ニコッと答えるケリシュナイルさん。もうあなたが、空気読まないで笑顔でいる事には何も言いません・・・
「・・・本当でしょうね?」
「うん、ほんとほんと。コクオーは、殺し童貞だよ。殺しはね」
「・・・そう」
う~む・・チェルシーさんの今の心境はいかに?てかなんだ殺し童貞て。そんな物、一生童貞で良いんですよ、まったく・・・ん?殺し、は?・・・うんまぁ、深く考えないでおこう・・・おっ、アオイさん水晶玉を動かしてますね。ん?これは・・いかにも地下と言った風景ですが・・・
「ふふっ・・!・・・(おっと、どうやら来てしまったみたいだね)あぁ、そうそうお姉さん達、ちょっと良いかな?」
「あぁ?何よ、気安く話しかけないでくれる?」
「まぁまぁ、そう言わずにさ。これがわりと緊急事態なんだよ」
「はぁ?あんた、何言ってんの?」
「それがさ・・・あと3秒後に、ここ、襲われるよ」
「えっ?」
「・・・!・・チェル、お前ら、構えろ」
ーー不穏な言葉を放つケリシュナイル。その表情は、笑みを浮かべながらもどこか冷静であり、その突拍子も無い言葉に謎の真実味を与えていた。そして、ケリシュナイル同様何か察したのか、静かに口を開くサクネア。この状況に、明奈やチェルシーが疑問を持った瞬間に、その時は来たーーー
フッッーーー
「!?」
ーー突如消える部屋の明かり・・明奈は勿論、チェルシーらランシャの面々はこの状況を飲み込めず動揺。しかし、そうでない者達もいる。ケリシュナイルとサクネアに加えて、シュリナとジュリア・・そして双子二人の、いつもの陽気な雰囲気とは違う真剣な表情を読み取り、この場の対応策を瞬時に思考しだすアオイ。そしてーーー
ズズズッーーー
「チェルっ!後ろだっ!」
「!?」
ーー光の消えた部屋の影から、水中から静かに這い出る様に姿を表すローブの隠者。それにいち早く気がつき声を木霊させるサクネア。しかし、チェルシーが振り返るよりも先に、その隠者の凶刃が彼女の首下めがけて襲いかかるーーー
ザシュッーーー
「・・・っっ・・・」
「!?・・ミョリンっ!?」
ーー飛び散る鮮血。その血液は、チェルシーの物ではなく、彼女を庇い右手を伸ばしたミョリンの物だったーーー
「剣よ」
ーーケリシュナイルの幻影剣が、隠者めがけて放たれる。しかし、剣先が触れるよりも先に、隠者は再び影の中に姿を潜らせたーーー
「へぇ、早いね、やっぱり」
「ちっ、くそが・・お前らっ!すぐにこの家から出ろぉっ!」
「サク姉!?」
「うおらっっ!」
ーーサクネアは声を走らせると、爆裂音と共に躊躇なくそのまま家の壁を拳打の一撃で見事打ち破り大穴を空けるーーー
「皆!早く家から出てっ!」
「了解アオイお姉さん!」
「ほらパイセン。なにボケェとしてるんですか?行きますよ」
「えっ?・・あっ、はい・・・」
あっ、あれ?一体何があったの?なんかケリシュナイルさんが3秒後にどうのこうの言った後から展開が早過ぎてついていけてない・・とりあえず、逃げる流れなんですね?
「ミョリン!?大丈夫!?」
「ミ"ョリ"ーン"!?ちっ、血がぁ・・血がいっぱい出てるぅ・・・」
「大丈夫ですチェルシー。ケーギン泣かないで下さい。たしかに切られましたが、傷は浅いです。これなら応急処置で十分です。それよりも、早くこの場から離れましょう」
「てか何あいつ!?全然気配無かったんだけど!?」
「音も匂いもしなかった・・これじゃあ、あたしらの耳も鼻が意味無いよ・・・」
「音も匂いも無いとか、あいつマジなんなの!?めっちゃムカつく!」
ミョリンさん怪我してるの!?何故!?あっ、ウィネさんからハンカチ渡されて傷の所を巻いて止血してる・・・
「ケリシュナイルっっ!!さっきのは何?!てかどうしてあれが襲ってくるて分かったのよ?!あんた、まさかっ・・・」
「おっとっと、言っておくけど、僕が手引きした訳じゃ無いからね。大丈夫、ちゃんと説明するからさ。とにかく今は、安全な所まで・・・と、言ってる側から」
「!?」
えっ?なんですか?止まるんですか?落ち着かないなぁ、あたし今だに状況が把握出来ていないていうのに・・・て、はわっ!?なっ、なんですか!?影の中から・・人!?人が出てきましたけどぉっ!?しかも、5人!?なんですかこの人達!?いかにも暗殺者て見た目してるんですけど!?あぁもうナイフ構えてるぅ・・・えっ?もしかして、もしかしなくても、あたし達この人達に襲われるんですか?てか殺される?なんでぇっ!?ケリシュナイルさんが襲われるならまだ分かるんだけど・・あっ、あたし達は何もしてない・・して、いないよね?
「この人達はね、お姉さん達。死神だよ。ベディッド・カンバッジが秘密裏に動かしている暗殺者だね。概ね、ベディッドの真実を知った僕達を消しにきたんだろうね」
しっ、死神!?やっぱ暗殺者じゃないですか!?真実を知ったから・・けっ、消すぅ?ひいぃぃぃ!?殺されるのぉ!?りっ、理不尽です!ばっ、バレて困る様な事してるなら、最初からそんな事しなければいいんですよぉっ!
「死神だなんだ、んなこたぁどうでもいいんだよ・・・」
「サク姉?・・・」
「ミョリンを傷つけた・・んで家を壊す羽目になった・・・てめぇら、まさかここまでやって無事に帰れると思っちゃいねぇよなぁ・・・」
ひぃっ!?サクネアさん、さっ、殺気が・・肌にビリリリと伝わる位の殺気が・・暗殺者の人達、微動だにしてない。よくあんなの向けられて落ち着いていられるな・・あたしだったら速攻泡吹いて倒れてる・・・てか、こんな状況じゃ円寿くん達のサポート出来ないじゃん?!あぁもう、せっかく通信が回復して安心した所だったのにぃ!どうしてこうなるのさっ!?円寿くぅぅぅぅんっっ!!
「・・・・・!」
「!トゥモシーヌさん、アオイさんからの連絡ですか?」
コクッーーー
時計塔から転移し、円寿一向は城の地下に向かって足を進めていた。
「・・・襲撃・・されたって・・・」
「!?」
「襲撃!?サク姉達が、襲われたて事ですか!?」
コクッーーー
「でも・・全員・・無事・・・」
「無事、ですか・・でも、これでは終わらないですよね・・・」
「心配です、ランシャの皆は負傷しているていうのに・・それに、先輩もいます・・先輩は戦う手段を持っていません・・どうしましょう・・凄く不安です・・・」
「エンくん、安心して。この展開を予想して、シュリとジュリにはアキナさんを守る様、指示を出していたから」
「!そうなの?」
「おにい~、先輩ちゃんには~アオインヌもついてるし~、チェル達はサク姉が~絶対守るから~、大丈夫だよ~」
「そうっす!サク姉のバカみたいな強さは、エン兄さんも知ってるはずっす!」
「ナミちゃん、コクオーくん・・うん、分かったよ!そうだね、サク姉の強さ、それにシュリちゃんジュリちゃんアオイさんの事を信じないとだね!」
「コクオ~、今サク姉の事~、バカて言ったな~。こんにゃろ~、チクッてやる~」
「うおぉいっ!?ちっ、違う!そういう意味で言った訳じゃねぇ!止めろっ!チクるなぁっ!たくっ・・・おっ、これか?」
足を止めるコクオー。それに合わせて円寿達も続々と足を止める。円寿達の目の前には、見上げる程の大きさの扉が佇んでいた。
「どうやら、これが先程アオイさんから連絡あった、地下監獄への扉ですね」
「この先に、子供達が・・・」
襲撃を受ける前、アオイは地下監獄の入口を見つけてトゥモシーヌに連絡を入れていた。そして、その扉の前に円寿達はたどり着いたのである。
「扉を見つけてくれたけど~、この扉の先の連絡が来る前に~、襲われちゃったか~。くそ~、タイミング悪い~」
「仕方がねぇだろナミミナ。なっちまったもんは仕方がねぇ。サポート無しで行くしかねぇだろ!」
「そうだねコクオーくん!ぼくもここからは、更に耳の感度を上げて警戒していくよ!」
「うん、それじゃあ改めて・・皆、準備は出来てる?」
「うん!」
「おうっ!」
「うい~」
コクッーーー
「よし、それじゃあ開けるよ!」
ギイィィッッーーー
ーー続くーーー
この度は、ケモ耳美少年のなすがまま異世界観光、第9巻をお読みいただき誠にありがとうございます、にがみつしゅうです。そして、2023年1月にお読みいただいている読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。この9巻は、出来れば2022年内に投稿しようとしていたのですが、年末は色々と忙しく年を跨ぐ形になってしまいました。大変申し訳ありません。
さて、本格的に始まりました、第3章。ちなみに、読者様も気がついていらっしゃる方もいると思いますが、一応説明致しますと・・・前回第8巻終盤の文章の、
「侵入者だぁぁ!!」・・から最後までの文章は、所謂次回予告みたいな奴でございます。
ベディッド・カンバッジ城攻略メンバーは、円寿、ミサキリス、トゥモシーヌ、ナミミナ、コクオーによる5人パーティです。9巻時点では見事負傷者0人、優秀ですね。執筆してて思ったのですが、トゥモシーヌが優秀過ぎますね、少し。転移魔法での移動は勿論、魔力さえ万全なら大火力による広範囲殲滅が可能とアタッカーとしても優秀。さらに、魔法の無詠唱で同じ魔導士相手に、魔法の発動スピードで問答無用でアドバンテージを取れる。ミサキリスの持っていたポーションのおかげで魔力切れの心配も無い。チートキャラですね、トゥモシーヌは。そんなトゥモシーヌの広範囲殲滅魔法であっという間にやられてしまった傭兵、ライナウェイウェイ事、ライナウェルト・ギンカン。そんな彼の簡易プロフィールを置いておきます。
ライナウェルト・ギンカン 慎重:187cm 髪色:ブルーフォグ 年齢:28歳 得物:両刃剣
透化魔法、消音魔法、分身魔法を使える優秀な空属性の魔導騎士であるライナウェルト。彼の強さですが、実はトゥモシーヌがいなければ円寿以外は彼によって倒されています。丸腰のナミミナはともかく、ミサキリスとコクオーが全力で戦っても彼に勝つ事は出来なかったでしょう。それ位強いライナウェルト。彼の不運は、相手側に伝説的な存在扱いされているトゥモシーヌがいた事。これに尽きます。いや本当トゥモシーヌ様々ですね。そんなライナウェルト、自白状態だったとはいえ、歌ってと言われて素直に歌ったりと、なかなか愉快な性格をしております。ポッと出のキャラですが、もったいない気もするので、どこかでまた登場させられたらなぁ・・と思ったり思わなかったり・・・
そして、もう1人優秀なのがコクオーです。短い期間とはいえ、テキロの下傭兵業をしていたので場馴れしております。ミサキリスから渡された丸盾を、器用に武器として使うのは流石だなと。さらにコクオーは、ミサキリスに続くツッコミ役としても働いております。双子二人の予想よりもツッコミ役として頑張っています。ただし、所構わず声を大きくして話してしまうのが、潜入作戦としては致命的にアウトですね。トゥモシーヌとコクオーの二人のおかげで、戦力は申し分無し。また索敵においても、3人の獣人によって広範囲をカバーしているので、かなりぬるゲーな攻略戦になっております。ただし、そんなぬるま湯な状況はこの回まで。次回からは、円寿一向がガンガンピンチに陥ります(多分)。今回活躍の少なかったミサキリスとナミミナは、次回に活躍します。ご期待下さい。
次回は世間が某黄金の連休に入る前には投稿出来たら良いなと思っております。
それでは改めまして、この度はケモ耳美少年のなすがまま異世界観光、第9巻をお読みいただき誠にありがとうございました。