人と獣人は見かけによらない?よるかもしれない?
ーーカタカタカタカタッーーカタッーーカタカタカタカタカタカターーカタッカタッーータッーンーーー
「ふぅ・・・」
勉強会から一夜明け・・あたしはいつも通り、朝から自室でデア・コチーナの事務作業をする今日・・・いやぁ、昨日はなんだかんだ楽しかったなぁ。シフォンさんが、あんなに飲める人だったとは・・・飲み比べ合戦で、ラング・ド・シャットの面々を次々と倒していき最終的にサクネアさんにも勝ったお姿は圧巻でしたね。しかも全然酔わないのシフォンさん。蟒蛇過ぎんよぉ・・まぁ、サクネアさん達が静かになって良かったけど・・・
カタカタカタカターーー
それにしても・・何よりも・・あたしが気になるのは・・やはり・・・円寿くんの膝枕だ・・・うぬぬぬぬぅ~・・やっぱり羨ましい~ぞぉ、トゥモさん・・・結局トゥモさんは、打ち上げの間は目を覚まさずお開きになる頃に目を覚ました。そして、一通り円寿くんの頬を堪能した後アオイさんとシフォンさんと一緒に転移して帰って行きました。
カタッーーカタカタカタッーーー
ちなみに、飲み潰れたランシャの面々はと言うと・・・まだいるんですよ、このデア・コチーナに。寝ているんですけどね。デア・コチーナの空き部屋に、全員運んでいったんですよ。おもに運んだのは円寿くんなんだけど、あたしとミサキリスちゃん・・それと、イケイケ双子ギャルも加わり頑張って合計九人運びました。いや~、大変だった。ランシャの皆さん、パッと見細いのに筋肉がしっかりついているから・・女子に言うのはかなりアレですけど・・・重かったです・・・まぁでもほら、筋肉は脂肪よりも重いですし・・健康的な重さだからね、うん・・・まぁ、ランシャの皆さんが重かったよりもですね・・それよりも気になったのが・・円寿くんがね・・してたんですよ・・お姫様だっこを・・あたし以外の女の人に・・チェルシーさんと、ウィネさん・・それと、サクネアさん・・・うん、いやね、別に円寿くんのお姫様だっこは誰にだって権利はありますよ。円寿くんは、サクネアさん達を介抱する為にだっこした訳ですから。100%善意ですからね。特別て訳じゃないけど・・それでも・・それでもさ・・・なんかやだっ!!だって・・だって・・・円寿くんのお姫様だっこはあたしの物だからっ!!えっ?いやだって、あたしは円寿くんが初めてお姫様だっこをした相手ですよ?そりゃそうですよ。まぁ、覚えていないんですけどね・・・えっ?何故初めてと言えるかだって?そりゃあ、もし円寿くんがお姫様だっこした事があるなら、元いた世界にある円寿くんの非公式ファンサイトで情報が乗っているはずだし・・多分・・・あっ、でもこの世界では・・どうだろうか?実は既に誰かしらお姫様だっこされていたり?むむむ・・・もやもやしてきた・・アズさんにでも聞いてみるか?いやでも流石にアズさんでも知っているかどうか・・・
カタカタカタカターーー
ピコッピコッピコッピコッーーー
「ん?」
キラキラキラキラーーー(明奈のPCの置かれている机の端から顔の上半分を出し、明奈の手に視線を向け顔を輝かせる円寿)
「・・・はわっ!?えっ、円寿くん!?」
「!?あっ・・ごっ、ごめんなさい先輩!驚かせてしまいました・・・」
「いっ、いやいや大丈夫だよ円寿くん・・こっちこそ、大きな声出しちゃってごめんね・・・」
円寿くん、いつの間にあたしの部屋に!?て言うか、何故気がつかなかった、あたし!!円寿くんの事を考えていたら、円寿くんがすぐ近くにいた・・・もしかして、円寿くんへの思いが強すぎて円寿くんを召還したか?んな訳無いか・・・
「そっ、それで円寿くん・・あたしに何か、様かな?」
「はいっ!その・・トゥモシーヌさんが店に来たので、先輩をお呼びしようと扉をノックした所、返事が無かったのでまた後にしようと思ったのですが・・・」
「ですが?・・・」
トゥモさん来てたのか。昨日も少し思ったけど、トゥモさんて普段何をしているんだろ?そもそも仕事とかしているのかな?後で聞いてみよう・・・
「その、昔高校の同級生の親戚が、声をかけたのに返事がなくて確認したら部屋の中で倒れていたという話しを聞いた事があったので、もしかして先輩もそのパターンでは?と、不安になりまして・・失礼ですが、扉を開けさせていただきました・・でも、仕事に集中していて気がつかないだけという可能性もあるので、そぉ~と扉を開けた所・・パソコンに向かって作業をしている先輩の姿が見えたので、あぁ・・先輩、集中して仕事しているから気がつかなかったのか。倒れてなくて良かったなと思い、邪魔にならない様にとそっと近づいてみた所、先輩の・・その・・・」
「そっ、その?」
「たっ、タイピング捌きが凄くて、見とれていました!」
「・・・たっ、タイピング?あたしの?」
「はい!その、お恥ずかしい話しなのですが、ぼく・・タイピングが、凄く苦手でして・・なかなか早く入力する事が出来ないんです。だから、パソコンでの作業が苦手でして・・それに比べて、先輩のタイピングが凄く早くて・・カッコいいなぁて・・・」
「!?かっ、カッコ・・いい?あっ、あたしが?」
「はい!物凄いスピードで、画面に文字が打たれていく所とか、凄くカッコいいです。尊敬します!」
「・・・」
「?先輩?」
「・・・ひゅっ・・・」
「?」
「っっっっ//・・・そっ・・そんなことないよおぉ~~~!!//ふへっ・・えへへへへへへへへぇ~~~~!!!///」
「!」
円寿くんに・・円寿くんに・・・っっっっ褒められたぁ!!う"れ"し"い"ぃ"!!カッコいいて・・尊敬するって・・言われた!う"れ"し"い"ぃ"!!!あっはぁ~~~!!・・ありがとう・・お父さん、お母さん!小さい頃からあたしにパソコンを使わせてくれて・・おかげで円寿くんに褒めてもらう事が出来ました!!感謝します!愛してる!あぁ、やばい・・表情筋が・・頬の筋肉が緩みまくっている・・あたし今とんでもなく表情が緩みまくっている・・はしたない顔、円寿くんに見せちゃっている・・でも、円寿くんに羨望の眼差しを向けられていると思うと・・・むふふふふふふふふぅぅ~~~///むずむずするぅ~~。胸の内側がむずむずするぅ~~!くすぐったいよぉ~~!それにしても、フィンガースナップと言いタイピングと言い・・円寿くん、指先が不器用なのかな?ふふっ、そんな不器用な円寿くんも可愛いよ♡あぁ・・今日はなんて良い日なんだろうか・・円寿くんに褒められて始まる1日なんて・・あたしの人生史上、最高の1日になりそう・・・
ーーーーーー
「・・・きっ・・きゃあぁーーーーーーー!!!・・・」
最高の1日になりそう・・・そう、思っていたんです・・まさか・・まさか、こんなとんでもない1日なるなんて・・今朝のあたしは、微塵も思っていませんでした・・・
ーーーーーー
「・・・」
わたしの名前は、ユーリッチ・ソーヤー。魔導省所属の・・・いや、元所属の魔導士だ。わたしの魔導士としての人生は、二日前に全て崩れさった。あっという間の出来事だった。戦乙女騎士団との交流会に参加したのが、わたしの運の尽きだったのだ。わたしは、その交流会に参加する日の朝・・何か胸騒ぎがした。わたしの人生に大きく影響する出来事が起こる・・それも、悪い方向に・・・わたしはこの直感が気になり、交流会に参加するのを辞退しようとした・・しかし、周りの同僚達に言われ渋々参加をしてしまった・・結果・・・案の定、わたしの人生は終わった。あの女・・サクネア・バサローによって・・・交流会の終わり際、今朝の不安も杞憂に終わったかと安心した時に・・ヤツはやってきた。ヤツが姿を見せた時、再び不安が襲ってきた。そして思った。『こいつだ・・こいつが不安の原因だ・・・』と。そして、サクネアが開口一番発した言葉でわたしの不安は的中した・・・ウェザーコック・・かねてより、わたしが取引している裏組織の名前を発したのである。そして、その裏組織の顧客リストを手に持つその女に向かって火球を放った魔導士がいた・・彼こそ、参加を辞退しようとしたわたしを『騎士団の女達は皆良い女ばかりだ。嫁探しと思って参加しろ。』と言って、わたしを無理矢理参加させたタムケル・ポッタルだ。タムケルの放った火球は、あっけなく相殺され瞬く間に彼は拘束された。その後、大臣の側近でもあったソラティアも連行された後、大臣が顧客リストに記されている名を呼び始めた。ヨーキ・フリューチ、ケイン・カシューマ、そして・・・わたし、ユーリッチ・ソーヤーの名を・・・わたしは、気がついたら走っていた。その場から逃げようと必死になって走っていた。そして・・逃げ切れた。何故逃げ切れたのか。ヨーキの名が耳に入った段階で走り出していたというのもあるが、それよりもわたしの扱う魔法・・影に潜む魔法の力が大きいだろう。わたしは、この魔法の力で魔導省を脱出し逃げ切れたのである。逃げ切れたと同時に、わたしは気がついた・・逃げた所で、わたしがウェザーコックと取引した事が消える訳ではない・・わたしが裏組織と繋がっていた事は白日の下に晒された・・魔導士として汚名がついた・・つまり・・・わたしの魔導士としての人生は、終わったのだと・・・後々になって、ヨーキ、ケイン・・そして、あの場にいなかったドリュースが捕まった事を知った。ウェザーコックと取引をしていた魔導士は、わたし以外捕まってしまった。魔導省から逃げてから、わたしは考えた。これからわたしは何をするべきなのかと・・いっその事、他国に亡命でもするかと思ったが・・・辞めた。とある酒屋にて、喉の渇きを潤し腹を満たし煙草を一本吸い心身に落ち着きを取り戻したわたしの下にやってきた感情・・それは、復讐心だった。サクネア・バサロー・・あの女さえいなければ・・あの女が交流会にこなければ・・わたしの人生が壊れる事は無かったのだと・・・物は一度壊れれば二度と、完全なる元の状態に戻る事は無い。もう二度と魔導士として真っ当な人生を歩めぬのと言うのなら・・せめてあの女に一矢報いる為に・・後悔を与えてやると・・それからわたしは二日間、情報を集め計画をねった。そして、何やらサクネアが特別熱を入れている獣人の子供が働いている店がある事を知る。この獣人の子供が不幸な目に合えば、きっとサクネアは後悔するだろう・・そう、わたしは考えた。そして向かった、デア・コチーナに・・デア・コチーナ・・この国では、言わずと知れた店だ。中に入ると、昼前だと言うのにかなり賑わっている。ウェイトレスも忙しなく動き回っている。そして・・・いた。この店で働いている獣人の子供だ。何やら眼鏡をかけた陰気そうな女と出てきたその獣人の子供は、知り合いがいたのか窓際の席に近づく。その席に座っている女・・長い黒髪に姿勢を真っ直ぐにして座り、表情を一切変えずアイスコーヒーを啜るその女・・・ん?・・・いや、待て・・・あの女・・・トゥモシーヌ・ネア=カミックではないか!?まて・・まてまてまてまてまてっ!何故あの女がここにいる!?あの万年引きこもりのトゥモシーヌが・・何故この様な人が溢れる場に・・そして、何故あの獣人の子供と知り合いになっている!?ぐっ・・あの女がいては、わたしの計画が・・あの獣人の子供に、この毒薬を飲ませるという計画が・・・いや、落ち着けわたし・・わたしの計画は、この毒薬をあの獣人の子供に飲ませる・・これだけで良いのだ。別にその後の事はどうでも良い・・どれだけ邪魔されてもこの薬を獣人の子供に飲ませ、もがき苦しんだという事をサクネアが知る・・そして後悔する・・己が行動により、己が思い人が被害にあったと・・そう、思えば良いのだ・・・よし、トゥモシーヌから離れウェイターの仕事についたな・・やるぞ・・・
「うっ、うん・・・すまない、そこの君。少し、良いかな・・・」
「!はいっ!ご注文でしょうか?」
「・・・いや、注文では無いのだ・・実は、わたしはこの店に長年通っている者でね。最近は、仕事の都合で来れていなかったのだが・・・久々に来てみたが、変わらずに賑わって・・いや、むしろここ数年でもっとも賑わっているじゃないか。それも、君がこの店で働き初めたからだと聞いているよ。頑張っているね。そんな君に、わたしから差し入れをと思ってね。これを・・・」
「!常連さんでしたか!いつもありがとうございます!差し入れ・・ですか?・・・(小瓶の中に、青色の液体?気泡がたっている・・炭酸かな?エナジードリンクみたいだ・・・)」
「あぁ。これはね、他国の薬屋から買った物でね。なんでも、疲労回復の効果があるみたいなんだ。わたしも飲んでみた所、たちまちここ数日間の疲れが無くなったんだよ。働き者の君への差し入れには、これと無い物だと思うのだが・・・どうかね?」
「・・・(疲労回復・・エナジードリンクだ!この世界にもエナジードリンクてあったんだ!)いただきます!差し入れありがとうございます!」
「あぁ。これからも、この店の為・・頑張ってくれたまえ」
「はいっ!それでは、ぼくは仕事に戻ります!」
ふぅ・・無事に渡す事が出来たか、実にあっけなかったな。幸い、懸念要素だったトゥモシーヌは陰気な眼鏡の女との話しに夢中になってこっちに気がつかなかったな。いや、あれは陰気な眼鏡の女が一方的に話しているのをトゥモシーヌがただ聞いているだけか?まぁそんな事はどうでもいい。これで、わたしの復讐は果たされた・・様な物だ。あの獣人の少年には悪いが、サクネアと関わってしまったのが運の尽きだ。己が運命を呪いたまえ・・・それにしても、あの少年・・いくらなんでも素直過ぎではないか?見知らぬ者の言葉を素直に信じ、あまつさえ何が入っているかも分からぬ液体を貰う・・騙したわたしが言うのもなんだが、あの少年は人を疑うという事を知らんのか?・・・!?もしや・・・これは演技か?・・・!?まさか、わたしの素性を知っていた!?既にわたしがお尋ね者のユーリッチ・ソーヤーである事を知っており、その上で一芝居うっていたと・・・そんな馬鹿な・・あの少年の純粋無垢な話し方、雰囲気・・あれが演技だと思えない・・わたしの考え過ぎか・・・
「すいません」
「!?はっ、はい・・なにか・・・!?」
なっ!?この女達は・・・二日前の交流会にも来ていた・・・
「戦乙女騎士団のミサキリス・コルンチェスターです」
「同じく、シュリナ・パスティオルとぉ・・・」
「ジュリア・パスティオルでーす!」
「ユーリッチ・ソーヤー。あなたには、犯罪組織ウェザーコックと取引した罪により捕縛命令が出ています。ご同行、お願いできますか?」
「っ・・・」
なんて事だ・・まさか、本当に芝居だったのか?わたしを騙す為の・・・あの少年、なんと恐ろしいんだ・・・ぐっ・・あの少年の器量を図る事が出来なかった、わたしの負けか・・復讐は、果たせずに終わるとは・・無念・・・
と、言う事で・・二日前の交流会で唯一行方を眩ましていた、ユーリッチ・ソーヤーて人が先程捕まりました。ちなみに、その逮捕の瞬間にあたしは・・・トゥモさんと円寿くんの話しに夢中になってて、まったく気がつきませんでした・・まぁ話してたと言っても、あたしが円寿くんの魅力をひたすら熱弁しててトゥモさんが聞いていただけなんだけど・・それでも楽しかったです、はい・・・てか、いつの間にか来ていたんだねミサキリスちゃん・・・あとイケイケ双子ギャル・・・話しを聞くと、イケボ新人騎士のリンジアちゃんがたまたま街の巡回をしていた所・・怪しげな風貌の人物がデア・コチーナに入ったのでミサキリスちゃんに連絡を入れたとの事。いや~・・リンジアちゃんみたいな真面目な娘がいるおかげで、街は守られているんですなぁ・・・
「・・・?先輩。店で何かありましたか?なんだか、お客様達が、ざわついているみたいですが・・・」
「あっ、円寿くん。あれ?円寿くん、さっきのシーン、見ていなかったの?」
「?シーン?」
「うん。指名手配されていた悪い魔導士が、さっきミサキリスちゃん達に捕まって連行されたんだけど・・・」
「!?そっ、そんな事があったんですか!?すいません・・ぼく、お客様から差し入れをいただいたので、さっきまでバックヤードにいました・・・」
「そうなんだ・・・」
ん?差し入れ?円寿くんに?円寿くんのファンの方かな?・・・いや、待って・・・それもしや・・さっきの・・・
バァンッーーー
「エンくんいますか?!」
先程ユーリッチを連行していったミサキリスちゃんが、お店の扉を勢い開けて戻ってきた。急いで来たのか、息を荒くしている。ただ事では無さそうなミサキリスちゃんの雰囲気に、客達も驚いている。
「!?ミサちゃん、どうしたの?」
「あっ、エンくん!・・その・・・飲んでいないよね?!」
「?何を?」
「さっきユーリッチ・ソーヤーから聞いたんだけど・・あいつ、エンくんに差し入れと言って薬を渡したって・・・」
「?差し入れ?あぁ、さっきの常連さん、ユーリッチ・ソーヤーさんて言うんだね。うん、差し入れ貰ったよ。エナジードリンクみたいなやつを」
「飲んでない?!」
「?・・・えと・・飲んでない・・て、どういう事?」
「あれ毒薬なんだよ!」
「・・・!?」
「えっ?毒薬?待って円寿くん・・さっき、差し入れ貰ってバックヤードに行ったて言ってたよね?」
「・・・はい・・・」
「・・・飲んじゃった?」
「・・・はい・・飲んで・・しまいました・・・」
・・・・・
「いっ・・いやあぁーーーーー!!??えっ、円寿くんが・・毒飲んじゃったぁーーー!?」
「エンくん!体調は?!体調は大丈夫?!どこか苦しいとか痛いとか無い?!あっ、そだ・・トゥモシーヌさん!エンくんに回復魔法を!」
コクッーーー(頷く)
「うぅ・・円寿くん・・・毒・・毒飲んじゃった・・死んじゃやだよぉ・・円寿くん・・・」
「!?しっ、死なない・・と、思います!・・多分・・だっ、だから・・泣かないで下さい、先輩!」
「エンくんには女神様のご加護があるから大丈夫じゃない?」
「そぉそぉ、よく分からない女神様のご加護」
「・・・えっ?シュリナちゃん、ジュリアちゃん?」
「あんた達・・ユーリッチはどうしたのよ?」
「リンジアに任せたー」
「あんた達ねぇ・・・」
「てかぁ、ユーリッチの話し聞いて、一目散にデア・コチーナに行っちゃったミサに言われる筋合い無ーい」
「無ーい」
「うっ・・それは・・ごめん・・ユーリッチの話しによると、飲んだ瞬間に、嘔吐、めまい、頭痛、腹痛・・その他ありとあらゆる苦痛が襲いかかり、一月以上苦しむ毒薬て聞いて・・その毒を、エンくんが飲んだかもしれないと思ったら、いてもたってもいられなくなって・・・」
「まぁまぁ良いよ良いよ。結果的に、エンくん大丈夫そうじゃん」
「女神様が守ってくれたねー、エンくん」
そう言って円寿くんの頭を撫でるジュリアちゃん(多分)そうだった、円寿くんには女神の加護があるんだった。いやでも、加護があるからと言っても毒薬なんて飲んだて聞いたらそりゃ焦るよ・・そもそも、円寿くんが毒を飲まされたて事実が問題だし・・・
「~~~・・・!」
「ん?どうしたの、エンくん?」
「・・・なんだか・・身体が・・暑くなってきた様な気が・・・」
「・・・えっ?」
「もしかして・・・毒の効果?」
・・・・・
「いっ・・いやあぁーーーーー!!??毒薬の症状が出てるぅーーーーー!!??」
「おっ、落ち着いて下さいアキナさん!毒の効果はもっとヒドいので、身体が暑いのは毒とは関係無いと思う・・・あぁもう!シュリ!余計な事言わないでよ!」
「えぇ!?あたしぃ!?」
「エンくん。身体が暑いて・・どれ位暑いの?」
「うん・・少し汗ばむ位かな・・あっ、でも、普段仕事してたら、これ位汗かく事あるから・・気のせい、だと思うよ。心配してくれてありがとう、ジュリちゃん・・・!」
「えっ、エンくん・・今度は、なに?」
「・・・今度は、頭が・・ふわふわ、してきた様な・・・」
・・・・・
「いっ・・いやあぁーーーーー!!??やっぱり毒薬の症状出てるぅーーーーー!!??」
「あっ、アキナさん落ち着い・・・あぁもう!女神様のご加護はどうなったの!?」
「もしかして、女神様・・今回サボってる?」
「女神様がサボりとか、ウケるー」
「あんた達!何呑気な事言ってるの?!」
「あたし達に当たらないでよ、ミサー」
「しょうがない・・やっても意味無いかもしれないけど・・エンくん、ペッしちゃいな、ペッ!」
「ジュリ、ここはペッじゃなくて、ゲボォッの方が良いよ。エンくん、ゲボォッしちゃいなさい!」
「ゲボォッ?はっ、吐くて事かな?分かったよ。お手洗い行ってくるね」
うぅ・・どうして・・どうして女神の加護が発動していないの?魔法は効かなかったのに、どうして毒薬は効くの?毒も無効化して下さいよ!これでもし円寿くんに何かあったら、デメティールさん本当許さないから!
「エンくん、大丈夫?」
「んぐ・・うぐ・・しっ、シュリちゃん・・自分から、はっ、吐くて・・どうしたらいいのかな?」
「指をね、喉の奥の方に入れて・・かき回すと吐き気が来るから、それを続けると吐けるよー」
「指を・・喉の奥・・やっ、やってみるよ・・・」
「こういうのって、お酒飲み過ぎて気持ち悪い時にやるんだけどねぇ」
「エンくんも、大人の階段を登ったねぇ」
「そんな階段登らんでよろしいっ!」
「んぐっ・・うっ・・んん・・・」
あぁ・・円寿くんの・・円寿くんの苦しそうな声が聞こえる・・うぅ・・その苦し味、できるならあたしが変わってやりたい・・円寿くんが苦しい思いする必要は無いんだよぉ・・ましてや、指を喉にいれて無理矢理吐こうだなんて・・どうして円寿くんが、異世界に来てまでこんな事にならにゃいかんのですか・・・
「えっ、円寿くん!大丈夫?はっ、吐けた?!」
「うぅ・・・はっ、吐けなかったですけど・・・!なんだか、頭がふわふわしていたのは治まりました」
「ほっ、本当?!」
安心したのか、思わず息を吐き出すあたし達一同。良かったぁ、円寿くん無事だぁ。しかし、本当になんだったんだろうか?結局、毒は効かなかったて事だよね?あれかな?毒の効果は無かったけど、毒を飲んでしまったという精神的ストレスによって身体が反応した・・て事かな?流石にストレスまではカバー出来ないか、女神の加護は・・・
「・・・?・・・?」
「ん?えっ、円寿くん。どうしたの?何かあった?」
「・・・いえ・・なんだか・・服が・・・」
「服?」
「とっ、とりあえず・・出てきて、円寿くん」
「はい・・・」
ガチャッーーー
!?!?!?!?!?
「・・・服がダボダボになってしまいました。何故でしょうか?・・・?先輩・・皆さん・・どうしましたか?」
「・・・きっ・・きゃぁーーーーーーーーー!!!」
トイレから出てきた円寿くんの姿を見て、あたしは悲鳴を上げてしまいました・・だって・・だって円寿くんが・・小柄で可愛い円寿くんが・・さらに・・さらに・・・
「ちっ・・小さくなってる・・円寿くんが・・・」
ーーーーーー
「可ぁ愛いぃーーーー!!」
場面は変わり、一同はデア・コチーナの客間に移動していた。ここは以前、明奈が初対面のミサキリスやサクネア達と円寿を交えてランチをした場所。そわそわしている明奈とミサキリスをよそに、テンション高い双子二人。彼女達が盛り上がっている理由・・それは、椅子に座り少し頬を赤らめているトゥモシーヌの膝にチョコンと収まって座っている・・・身体が小さくなってしまった、円寿にあった。
「可愛いエンくん!普段も可愛いけどぉ!」
「小っちゃくなって、さらに可愛くなったぁ!」
抵抗する事なく、双子二人に両頬を乱雑につつかれる円寿。
「あっ、こら、あんた達!雑にエンくんの頬をつつかない!」
「エンくん、どうして小っちゃくなったのぉ?」
「う~ん・・・ぼくにも分からないよ」
「分からないかぁ~」
「分からないなら仕方がないねぇ~」
「あんた達!何呑気な事言っているの!・・まったく、毒を飲んで身体が小さくなるなんて・・前代未聞よ・・・どうしましょうか、アキナさ・・・ん?」
「・・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・・」
「アキナさん?・・・(息が荒くなっている?大丈夫かな?)」
どっ、どうしよう・・円寿くんが・・小さくて可愛い円寿くんが・・さらに小さく・・小っちゃくなっちゃった・・可愛い・・どうしよう、緊急事態だよ・・可愛い・・このまま元に戻らなかったらどうしよう・・可愛い・・円寿くん、今は元気そうだけど後々体調悪くなったらどうしよう・・・ん"ぅ"き"ゃ"わ"う"ぃ"い"ぃ"っ"!!♡♡
「(どどどっ・・どうしよう、ミサキリスちゃん!大変な事だって分かっているのに・・一大事なのに・・今の小っちゃくなった円寿くんが可愛い過ぎて、あたしの感情がそれ所じゃないよぉ!)」
「(あっ、アキナさん!落ち着いて下さい・・お気持ちは分かります・・たしかに、普段から可愛いエンくんが・・そうですね・・初等部に上がったばかり位の年齢の体格になった事により、なんと言いますか・・より保護欲が増したと言いますか・・これは、少し・・可愛い過ぎますね・・気が気じゃなくなるのも、致し方ないかと・・・)」
致しかたないよぉ・・・てか円寿くん・・あたしとミサキリスちゃんがこんなに動揺しているのに、当の本人の円寿くんはなんでそんなに落ち着いているの?トゥモさんに、まるでぬいぐるみを抱く様に膝の上に乗せてもらっているし・・・あっ、頭撫でられている・・ぬいぐるみみたいに撫でられてる円寿くん・・可愛いね♡!ちなみに、円寿くんお着替えしました。ダボダボになった服を着ている円寿くんも、それはそれで可愛いかったけど・・流石にそのままだと円寿くんが不憫なので、トゥモさんが小っちゃくなった円寿くんに合う服を持ってきてくれました。ありがとう、転移魔法・・じゃない、トゥモさん。どうやらこの服・・というか制服、魔法学校の制服だそうです。むふふ・・制服姿の円寿くん、まるで小学校に入学したばかりの様な雰囲気・・可愛い♡後で写真撮っとこう!・・・ところでトゥモさん。この制服・・どうしたんですか?『・・・借りてきた・・・』て、言ってましたけど・・・大丈夫ですかトゥモさん?勝手に持ってきたんじゃないですよね?!
「・・・・・」
あぁ、トゥモさん・・そんなお餅みたいに円寿くんの頬っぺを摘まんで・・・心なしか、いつも以上に円寿くんの頬っぺが柔らかい様に思える・・・
「ねぇえ、ミサ。とりあえずエンくんの事、サクネアさん達に相談してみる?」
「そうねシュリ。獣人の事だし・・サクネアに聞いてみるのが・・・」
「みっ、ミサキリスちゃん・・さっ、サクネアさんに円寿くんの事・・伝えて、大丈夫かな?」
「えっ?」
「円寿くんが小っちゃくなったのは、毒を飲んだのが理由な訳だよね・・多分サクネアさんの事だから、小っちゃくなった事よりも、円寿くんが毒を飲んだて事に対して・・滅茶苦茶怒りそう、じゃない?」
「・・・たしかに・・・」
「あぁ・・またキレ散らかされても面倒だもんねぇ。じゃあ、エンくんの事・・どうする?」
「う~ん・・・あっ、この小っちゃいエンくんは、エンくんの弟て事にすれば良いんじゃない?普段のエンくんは、おつかいに行ってて、ここにはいないて事にして!」
「あ~、ジュリー、ナイスアイディア!」
「弟・・か・・・とりあえず、そういう事にしておきましょう。エンくんを元に戻す方法は、後々考えるて事にして・・・」
「あ~、小っちゃい~エンジュだ~」
・・・・・
「なっ、ナミミナさん!?」
「わ~、大きな声~。びっくり~」
「ナミミナさん、酔い潰れて寝ているはずでは!?」
「寝てたよ~。でも~、あたし~酔い潰れてない~」
「と・・言いますと?」
「普通に寝むくなったから~、酔い潰れたふりして寝た~。飲み勝負とか~、面倒かったし~」
つまり・・ラング・ド・シャットの面々総出でシフォンさんに飲み勝負を挑み、次々と酔い潰れていく中・・どさくさに紛れてナミミナさんは、挑んだふりして普通に寝たと・・なんともらしいですなぁ、ナミミナさん・・・
「それより~、エンジュ~小っちゃくなってる~。何があったの~?」
「あっ、あぁ・・ナミミナさん。この子は・・エンくんのおとうt・・・」
「毒を飲んだら小さくなってしまいました」
「!?」
円寿くーーん!?なんで本当の事言っちゃうのーー!?さっきの話し聞いて無かったのーー!?ミサキリスちゃんとイケイケ双子ギャルも、びっくりしちゃってるよーー!?
「わ~、マジか~。エンジュ~毒飲んじゃったの~?危ないよ~。サク姉~心配するよ~。あたしもしんぱ~い。大丈夫~?」
「はい・・心配かけて申し訳ありません。体調に問題はありません。それと・・ごめんね、ジュリちゃん。さっきの提案を無下にしちゃって・・サク姉の事は僕に任せて!サク姉が心配にならない様に、僕がちゃんと説明するから。だから、皆は嘘をつかなくて良いよ」
「エンくん・・・エンくん、滅茶苦茶良い子!知ってたけど!」
「エンくん。サクネアさんがブチキレたら、ちゃんとあたし達の事守ってねー」
両頬をイケイケ双子ギャルにつつかれ、頭はトゥモさんに撫でられる円寿くん。そうだった・・円寿くん、嘘つくの苦手だったっけ。そんな苦手な嘘をつく位なら、本当の事を誠心誠意伝える・・それが円寿くん・・・うぅ・・眩しい・・眩しいよ、円寿くん・・それに比べてあたしときたら・・サクネアさんが怒るかもしれないから言わない方が良いだなんて・・・あたしさぁ・・・
「う~ん・・・あ~、エンジュが小っちゃくなった事~、ワンチャンサク姉~、気がつかないかも~」
「えっ?」
「なっ、ナミミナさん・・それは・・どういう事ですか?」
「サク姉~、アホだから~」
「あっ、アホて・・流石のサクネアでも、エンくんが小さくなっている事には・・・」
「あぁ・・でもたしかにワンチャンあるかも」
「あの、湖みたいな水堀を泳ぐなんて発想する様な人だからなぁ・・・」
「?湖みたいな・・水堀?」
その水堀て・・・あぁサクネアさん、そういえばあの魔導省の水堀泳いだんだったっけか。いくら体力があるからって・・うん、たしかにアホだ・・・
「ナミミナさん。サク姉はアホなんかじゃないですよ。少し大雑把な性格をしているだけですよ」
「大雑把か~。エンジュの言い方が~優しい~」
「とっ、とりあえず・・サクネアが気がつこうが、気がつかなかろうが関係なく、行くだけ行ってみようか」
て事で、サクネアさん達が寝ている部屋に移動します・・・あっ・・トゥモさん、円寿くんを抱っこしたまま移動するんですね・・本当にぬいぐるみみたいに扱っているな・・・おっ、この部屋だ。サクネアさん達がいる部屋。まだ寝ているかな?そぉ~っと開けてみよう・・・
「・・・はわっ!?」
「!?どうしましたか?アキナさん?」
「あっ・・えぇ、えと・・いやその・・・とっ、トゥモさん!あっ、あたしが良いと言うまで、円寿くんをこの部屋に入れないで下さい!」
「?・・・」
コクッーーー
「?・・・(先輩どうしたんだろう?慌ててるみたいだけど・・・)」
「パイセーン。どうしたんですかー?そんな顔赤くして・・・はっは~ん・・これはこれは・・・」
「え~?何シュリ、あたしも見たーい・・・おっほー・・・」
チラッーーー(振り返りにやけ面で円寿を見る双子二人)
「エンくん、部屋の中、見て見る~~?」
「?」
「!?なっ、何言ってるのシュリナちゃん、ジュリアちゃん!トゥモさん!駄目!絶対駄目ですからね!」
コクッーーー
「?・・・えと、よく分からないけど・・とりあえず、エンくんとトゥモシーヌさんは待ってて下さい。先に、あたし達が入りますね」
「うん、分かったよ」
コクッーーー
「・・・(アキナさんとシュリジュリは何を見た?シュリジュリの反応からして嫌な予感しかしない・・・)サクネア、失礼しま・・・!?」
部屋の中の光景を見て、顔を赤らめるミサキリスちゃん。そりゃそうだ・・ランシャの皆さんが床やソファに雑魚寝しているこの状況。ただ寝ているだけなら良かったのだが・・彼女達の寝相が悪いのか・・それとも着ている服が薄着だからなのか・・はたまた両方か・・皆衣服が乱れていた。片乳、半ケツが出ているのは当たり前・・女であるあたしですら直視するには抵抗する位の不健全な光景が広がっていた・・こっ、こんなの・・円寿くんに見せられる訳無いでしょっ!あとなんとなくトゥモさんの目にも毒な気がする・・それに、サクネアさんに至っては・・・
「サク姉~。おっぱい丸出し~。あと股開き過ぎ~。ウィネの顔蹴っちゃってるよ~。こんな格好見たら~、エンジュビックリしちゃうよ~。ほらほら~。起きて~」
「ちっ、チェルシーさん・・それと、ウィネさん達も起きて下さい・・・」
「んん・・んがっ・・う~ん・・・ん?・・エンジュ・・エンジュ、いるのか?・・・」
「サク姉~。ほら~、おっぱ~い。隠して隠して~」
「ん?・・あぁ・・すまねぇな・・・」
寝起きだからなのか・・それとも羞恥心が無いのか・・言われたから仕方がなく、胸のバンドで豊満な乳房を隠すサクネアさん。むむむ・・やっぱりこの人、円寿くんの教育に悪い・・・
「先輩。入っても・・大丈夫でしょうか?」
「えっ?あっ、うん。大丈夫・・かな?・・・」
周りを見渡して・・・よしっ、ちゃんと胸や尻をしまったな・・・
「あぁ、うん。もう入っても大丈夫だよ、円寿くん」
「了解です!失礼します!」
トゥモさんに抱えられたまま、円寿くんが入って来る。
「ん?おぉ、エンジュ~」
「おはよう!サク姉!あっ、トゥモシーヌさん。下ろしてもらっても良いですか?」
コクッーーー
優しく円寿くんを床に下ろすトゥモさん。円寿くんがトテトテとサクネアさんの下に歩いて行く。円寿くんに近寄るやいなや、両脇を掴み持ち上げるサクネアさん
・・ナミミナさんは気がつかないて言ってたけど、どうだ?
「よっと・・うふふふふ~。エンジュ~、なんか今日のエンジュ軽いなぁ」
「うん。軽くなったよ、サク姉」
「そうかぁ、軽くなったかぁ・・体重が落ちているて事だなぁ。ちゃんと飯食わなきゃ駄目だぞぉ」
「うん。ご飯、沢山食べるよ」
・・・・・
気がついていない!?サクネアさんの胸辺りにあるはずの頭の位置が、腰よりも下にあって明らかに背が低くなっているんですが・・ただ軽くなっただけて・・それでもかなり軽くなっているはずですよ、今の円寿くん。
「(なっ、ナミミナさん・・あれ、本当に気がついていないんですか?気がついていないフリとかじゃ無いんですか?)」
「(いやいや~ミサリッシュ~。フリするとか~、サク姉は~そんな~、器用な人じゃ無いよ~)」
「・・・(やっぱりサクネアさん・・・)」
「・・・(アホだった・・・)」
「うん~。ま~。サク姉は気がつかないけど~・・・チェル達は気がつくと思うけどね~」
「えっ?・・・あっ・・・」
目線を移すと、チェルシーさん達ランシャの皆さんの表情が写る。その表情はと言うと、皆漏れなく『えっ!?うわっ・・マジか・・・』と言った驚愕の表情だった・・・
「さっ、サク姉・・なんか・・エンジュ、小さくない?」
「ん?何言ってんだチェル。エンジュはいつも小っこいだろ」
「うん・・いやまぁ、あたしらに比べたら小さいけどさ・・・」
「あっ、あきらかに、普段のエンジュより小さくなってるっす!」
「ん?う~ん・・・んん?・・・」
呑気な表情で円寿くんを持ち上げたまま、まじまじと見つめるサクネアさん。いやいや・・そんなに見ないといけない位分からんのか?
「・・・ん?・・はっ!?エンジュ小っこくなってる!?」
「いや気づくの遅いよサク姉?!」
「おうこらアキナぁ!!なんかエンジュ小っこくなってんぞ!どういう事だぁ?!」
「ひいいぃぃぃぃぃ!?すいませえぇぇん!!!」
「!サク姉。先輩の事、怒鳴っちゃ駄目。ぼくがちゃんと説明するよ」
うぅ・・サクネアさん怖い・・なんで怒鳴るのさ・・さっきまで円寿くんが小さくなっている事、気がつかなかったくせに・・そりゃ、あたしが円寿くんから目を離したのも原因の一つだけどさ・・怖い・・・そして、サクネアさんに抱えられたまま事の経緯を話しだす円寿くん。
「毒を飲んで・・・」
「小さくなった?」
「えぇ・・・」
「おうこらアキナぁ!!エンジュ毒飲んでんじゃねぇかぁ!そうならねぇよぉ見張っておくのがお前の仕事だろぉがぁ!」
「ひいいぃぃぃぃぃ!?ごめんなさあぁぁぁい!?」
「!サク姉。だから先輩の事、怒鳴っちゃ駄目。先輩は悪く無いよ。今回の件は、ぼくの不注意が招いた結果だよ。悪いのはぼくだよ」
「いやいや~エンジュ~。そもそも悪いのは~、毒を飲ませた~ユーリッチだよ~。エンジュ~、悪くないよ~」
「!そうでした!」
「てかナミ・・あんた、いつの間に起きていたのよ」
「チェル~。みんなが~、寝坊助さんな~、だけだぞ~」
「・・・(何か妙だけど・・まぁ良いか)」
「あのぉ、チェルシーさん。絶対にそうじゃ無いて分かっている上で聞きますけど・・獣人て、毒飲むと小さくなるんですか?」
「うん、大丈夫だよミサちゃん。獣人にそんな体質は無いから」
「ですよね・・・」
「獣人特有の匂いがしない・・魔法を使える・・毒飲むと小さくなる・・・エンジュは不思議っすね。生まれた大陸が違うだけで、同じ獣人でこうも変わるもんなんすね」
「たしかに・・・あっ、そうだ。そういえば、前にシュリがさ・・エンジュの成長速度は人間と変わらない・・て、言ってたじゃん?あれ結局どういう事なの?」
「あぁ、そんな事言ってましたね・・・あれ?ねぇミサ。エンくんの本当の年齢て、言って良いんだっけ?」
「えっ?本当の年齢?」
「あっ・・・」
露骨に、しまった・・て、表情になるシュリちゃん。ほらもぉ、チェルシーさんが疑いの表情でこっち見てきてるじゃぁん・・・
「シュリ、あんたね・・・う~ん・・あぁもう・・エンくん。エンくんの本当の年齢、教えても良いかな?」
「うん!問題無いよ!」
「良いの?ミサ?」
「うん。あとでアズさんに伝えておく。それに、今この場にいる人は、皆信用できる人達だし。その信用できる人達に対して、隠し事するのも悪いしね」
「そっか。ミサとエンくんが良いなら、あたしは止めないけど」
「あたしもー」
「うん。ありがとね、シュリ、ジュリ。さて・・・」
そして、ミサキリスちゃんがランシャの皆さんに円寿くんの本当の年齢・・18歳である事をつげる・・皆さんの反応は、いかに?・・・
「じっ、18歳?」
「ずっと5、6歳だと思ってたっす・・・」
「獣人は・・5、6歳で、普段のエンジュの身長位ですしね・・・」
「獣人で18歳て、殆どが身長180cm以上あるしねぇ」
「てか、18歳にしては、幼過ぎない?」
「人間的にいっても、あの外見は12、13歳位でしょ」
「しかも今はさらに小さくなっているし・・・なんか、頭こんがらがってくるね・・・」
「ん?なんだエンジュ。エンジュ18歳だったのか。そんなにあたしと年離れてねぇんだな。まぁ、あたしのが年上てのは変わらないがよ」
「!そうだったんだね!」
「サクネア、あまり・・驚かないのですね・・・」
「そうだな。エンジュが6歳だろうが18歳だろうが、エンジュの在り方が変わる訳じゃねぇしな。変わらねぇて事は、あたしがエンジュを守る立場ってのも、変わらねぇて事だ」
「・・・なるほど」
「それによ、どんなに歳取っても、中身がガキのまま変わらねぇ奴だっているしな。中身だ、中身」
「そう、ですね・・・(あなたがそれを言うのか、サクネア・・・)」
あっ、あたし今ミサキリスちゃんが考えている事分かる気がする・・・ん?チェルシーさんも、何やら意味深な表情でサクネアさんを見ていますね・・・
「・・・あっ、てかさエンジュ・・18歳て・・あたしと同い年じゃん」
「!」
「!?!?」
「えっ?」
「・・っ、チェルシーさんて・・18歳、だったんですか?」
「うん・・てか、うちの獣人の面子にいたっては・・エンジュより年下だよ」
「!」
「!?!?!?」
「えっ・・なっ、ナミミナさん・・失礼ですが・・年齢は?」
「あたし~?14歳だよ~」
「14歳!?」
「ちなみに~、他は~・・・」
「あたしは15歳!」
「あたしは16歳!」
「あたしは13歳!」
「そんでもって、ウィネが最年少の・・・」
「12歳っす!」
発育!発育の暴力だ、これ!獣人の発育の恐ろしさよ!てか、円寿くんより年下て事は・・あたしから見ても年下か・・皆、若々しいと思ってはいたけど・・て、あたしもまだまだ全然若いでしょうに!何おばさんぶってるんだ・・・
「わ~。エンジュ~、お兄ちゃんだったんだ~。じゃ~、これからおにいて呼ぶね~。よろしく~、おにい~」
「「「「おにいー!」」」」
「!?はっ、はい!」
「今のおにいは~、小っちゃいおにいだ~」
「「「「小っちゃい、おにいー!」」」」
「!?よっ、よろしくお願いします!」
「よ~し、おにいを~愛でるぞ~」
「「「「おー!」」」」
「!?」
なんのノリなんですかナミミナさん、それ!?えっ、円寿くんをオモチャにはしないで下さいよ!?
「サク姉~、おにい~貸して~」
「おう。貸してやるが、雑に持つなよ。丁重に持てよ、丁重に」
「分かってるっす!」
「よっと~。わ~・・おにい~、ウエスト細い~。もっと~お肉~、食べた方が~良いよ~」
「そうですか?分かりました!沢山食べます!」
「てかさぁ、おにい。前から思ってたんすけど、あたしらに敬語使うの、やめて欲しいっす」
「!」
「サク姉にはタメ口なのに、あたしらには敬語て・・なんか変だもんね」
「それに、あたし達のが年下て事が分かったんだから尚更じゃん。ほらっ、タメ口ぃ、タメ口!」
「あっ、えっ・・えと・・・わっ、ワカタヨー」
「わ~。やっぱ最初は~、片言になるんだね~」
「エンジュ。あたしも同い年なんだから、タメ口で良いからね」
「あたしとミョリンは年上だけど、タメ口で話して良いからね」
「辛ければ、敬語のままで大丈夫ですよ」
「!いっ、いえ・・辛くは・・なっ、ナイヨー」
こうして、円寿くんがタメ口を使う相手と無駄に発育の良い妹分達が沢山出来ました。それにしても、おにい呼びされる円寿くんか・・新鮮だな・・円寿くんに、また新たな可能性が出来ましたな・・・
「てかあんた達。エンジュを愛でるのは良いけどさ、少しはどうしたらエンジュが元に戻れるか、考えたらどうなの?」
「え~。そんな事言ったって~」
「そういうチェルさんは、何か考えはあるんすか?」
「えっ?あぁ・・いや、あたしも・・考え中・・だけどさ・・・」
「ふむ・・エンジュは、魔導士が持っていた毒薬によって、小さくなってしまったんですよね・・ならば、ここは同じ魔導士の方に聞くべきでは?」
「ミョリ~ン、賢~い」
魔導士・・・あっ、そっか。トゥモさんがいた。そもそも最初からトゥモさんに聞けば良かったんじゃん。トゥモさんも一言言ってくれたら・・あぁ、そっか。トゥモさんずっと円寿くんの事、愛でてて・・それどころじゃなかったか・・・
「トゥモシーヌさん。その・・ユーリッチの使った毒薬について、何か心当たりはありますか?」
「・・・毒薬は・・・分からない・・・けど・・・」
「けど?」
「エンジュを・・・戻せる方法は・・・ある・・かも・・・」
「あるかも!?そっ、その方法は、なんでしょうかトゥモさん!」
「・・・マイラス・・・」
「!マイラスさん!」
「マイラス~?おにい~。マイラスて人~、どなた~?」
「えと、マイラスさんはね・・かくかくどうのこうの・・・」
「マイラス?マイラスて人て・・・あれたしか、あたし知ってると思うんだけど・・・」
「あたしも・・なんか凄い人てのは、記憶の片隅の方で覚えているんだけど・・・」
「・・・あんた達、自分の国の女王補佐官すら思いだせないて・・いよいよヤバいわよ・・・」
なんでこのイケイケ双子ギャルは、一応この世界の公務員的な職についているのに国の偉い人の名前がすぐに出ないのだろうか・・・
「ヤバく無いやい!」
「今思い出したんだい!」
「・・・それで、指パッチンで魔法を発動できる凄くカッコ良い人・・それがマイラスさんだよ!あっ、あと親獣家て言ってたから、獣人にもちゃんと理解のある人だよ!」
「わ~。おにい~、そんな人と~知り合いなんだ~。おにい~、すご~い」
「「「「おにい、すごーい!」」」」
円寿くんが年上て分かってから、もの凄いスピードで懐いたなランシャの年少娘達・・円寿くんも、少し戸惑い気味だ・・・
「トゥモシーヌさん。つまり、マイラス補佐官なら、エンくんを元に戻す事が出来るって事ですよね?」
コクッーーー
「なんだぁ。じゃあもう、問題解決じゃーん」
「エンくーん。戻れるよー」
「やったー!」
「いや待って。ただ一つ問題が・・・トゥモシーヌさん。マイラス補佐官て・・呼んですぐ来れる様な人じゃ・・無いですよね?」
コクッーーー
「え~?なんでですかぁ?トゥモシーヌさーん」
「滅茶苦茶忙しいからに決まっているからでしょ!女王補佐官に加えて、魔導省管理局長も勤めている人なのよ」
「・・・とりあえず・・・連絡・・してみる・・・」
おっ、トゥモさんが魔通玉をピカピカさせ初めましたよ。モールス信号形式とはいえ、魔力通すだけでどこにでも連絡取れるのは便利だな・・・
「へぇ。そうやって魔導士は、連絡する事が出来るんだ。ミョリンもこれ、出来るの」
「出来なくはないですよ。ですが、この連絡手段は相手も魔力を使えないといけません。ですので、あたし以外魔力を使える者のいないランシャでは、意味が無いのですよ、チェルシー」
「あぁ、そうか。いやぁ、うちでも使えたら便利だと思ったんだけどねぇ。ねぇ、サク姉」
「ん?なんか伝えたい事があるなら、走って伝えりゃ良いだろ」
「・・・あっ、うん、ごめん。話す相手間違えたわ」
「あれ~?トゥモシンヌて~、魔法ですぐに移動出来るんだよね~。その宝石みたいなの~使わなくても~、魔法で移動して~直接伝えれば~、良いんじゃ~ないの~?」
「・・・出来ない・・・」
「!?そっ、それは、どうしてでしょうか?トゥモさん・・・」
「・・・アオイに・・・言われた・・・」
トゥモさん曰く、管理局には正当な手続きをしないと入る事は出来ないとの事。転移魔法を使えるトゥモさんも例外ではないので、管理局にはまず一報を入れないと駄目とアオイさんに言われているみたいです。
「んだよそれっ。めんどくせぇなぁ」
「サク姉。色々手続きがあるのは、それだけその組織がしっかりとしている証だよ。国の公的機関がしっかりしているから、国の治安は守られるんだよ。面倒くさいかもしれないけど、仕方がない事なんだよ」
「うっ・・むぅ・・そっ、そうなんだな、エンジュ・・・」
そうだね円寿くん。色々手続き厳しいのは、それだけその国がちゃんとしているて事だもんね。ちゃんとしていないと、サクネアさんみたいなのが好き勝手しちゃうから大変になるね。おっ、トゥモさんが話しの続きをしますよ。
「・・・それに・・・」
「それに?」
「・・・あたしが行くと・・・パニックになる・・らしい・・・」
「あぁ、たしかに、トゥモシーヌさん位の有名人が、管理局にいきなり現れたら、何事かと驚きますよね」
「とっ、トゥモさん・・そのアオイさんは、今日は・・どうしているんですか?」
「・・・仕事・・・」
仕事、か・・たしかに、世間的には昼前だから働いている人の方が多い時間だけど・・アオイさんは、今の円寿くん見たらどんな反応するのかな?・・・なんか、少し嫌な予感がするな・・・
「さて、とりあえずエンくんの件は、マイラス補佐官の連絡を待つて事で、一旦置いておきましょう。あとは・・・」
ガチャッーーー
「あら~。みんな、こんな所にいたのね~」
「!アズさん!」
アズさんだ。円寿くんが大変な事になっているのに、今までどこに?・・・あっ、そっか。厨房にいたのか。お客さん、沢山いたからなぁ・・・
「あら~!エンくん、おめかし?可愛いわ~!」
「魔法学校の制服です。トゥモシーヌさんが用意してくれました!」
「似合ってるわ~!あっ、そうだエンくん。今日の晩御飯は、何が良いかしら?」
「!そうですね・・・チキンドリアが食べたいです!」
「チキンドリアね。分かったわ~」
・・・・・
「えっ!?ちょっ、アズさん・・それだけですか!?」
「あら~、ミサちゃん。それだけって、どういう事かしら?・・・あっ、大丈夫よミサちゃん。晩御飯は、勿論チキンドリアだけじゃ無いわ。副菜も沢山あるわよ」
「あぁ・・いや、晩御飯の品数が少ないて話しじゃないですよ・・エンくんです、エンくん!」
「エンくん?あぁ、今着ている制服の事?大丈夫よ~、ミサちゃん。リアクションが小さい様に見えたかもしれないけど、エンくんがあまりにも似合い過ぎてて、もの凄く感動しているわ!」
「あぁ、いや、そっちでもなくて・・・」
「もう、焦れったいなぁ・・・あっ、ナミミナさん。エンくん貸して下さい・・・」
「おけまる~、シュリっち~」
「よいしょ・・・ほら、見て下さいアズさん!小っちゃい!あたしが簡単に持てる位に、小っちゃくなってます!」
円寿くんの両脇を抱えて、ズイッとアズさんの前につき出すシュリナちゃん。
「あら~・・・ふふっ。エンく~ん、今日も頬っぺた、ふわふわぽよぽよねぇ」
ぷにぷにーーー
「あっ、アズさん・・本当に、分からないんですか?」
「あら~、そうね・・・分からないわ~」
「え~?女将もアホだったの~?」
「あら~、ナミちゃん。ひどいわ~、アホだなんて~」
全くひどいと思ってなさそうに、呑気に笑顔で答えるアズさん。てか何故分からない?もしかして、アズさんの中で円寿くんは元々小さくて可愛いらしい存在・・だから、円寿くんが小っちゃくなった所で変わらない・・分からない、て事か?天然にも程がありませんかね!?サクネアさんだって、よーく見たら気がついたっていうのに・・よーく見たらだけど・・・それと、ナミミナさん。今、女将もて言いました?サクネアさんのいる前でサクネアさんをアホ呼ばわりするなんて・・怒られても知りませんよ・・・サクネアさん、気がついていない・・やっぱりアホだ・・・
「あっ、そうだわ。お昼の用意ができたから、みんなを呼びに来たんだったわ。手伝って欲しいの。食事を運ぶのと・・・そうね。この人数だから、テーブルも用意しないといけないわ。運ぶ係と、用意する係に別れて、準備手伝ってくれるかしら?」
「了解です!」
という事で、二班に別れて昼食の準備をする事になりました。ランシャの皆さんがテーブル用意班。力仕事ですからね。ランシャの皆さんの方が安心でしょうし。残りの面子で食事を運びます・・運ぶのだけど・・・
「えっ、円寿くん・・おぼん重たいけど、大丈夫?」
「!大丈夫です先輩!重たく無いです!」
「危ないようだったら、あたしが持つよ?」
「!大丈夫だよ!ミサちゃん!」
なんだろうか・・円寿くんが小っちゃくなったせいか、食事を乗せたおぼんを運ぶ・・こんな単純な行動がとてつもなく心配だ・・見ててハラハラする・・汁を溢して火傷して、転んじゃったらどうしようとか・・そんな事考えてしまう・・世の小さい子供をもつお母さんお父さんも、こんな気持ちなんだろうか・・これが大きくなるまで毎日・・・親て偉大だな・・ありがとう、お母さん、お父さん・・・
「トゥモシーヌさーん。運ぶのめんどくさいから、転移魔法でまとめて運んじゃって下さいよー」
「おっ!シュリ、ナイスアイディア!トゥモシーヌさん、おなしゃーす!」
「こらっ!そうやってあんた達はすぐ楽しようとするんじゃありません!トゥモシーヌさん、聞かなくて良いですよ」
コクッーーー
「えぇー?そんなー。」
「トゥモシーヌさんも、エンくんに何回も往復させて食事運ばせるの、不安じゃありませんかー?」
「こらっ!エンくんをダシに使うな!」
「・・・・・」
チラッーーー
あっ、今トゥモさんが心の中でジュリアちゃん(多分)の言葉に対して『たしかに・・・』て思った・・そんな顔してた・・無表情だけど・・そして、円寿くんの方を見た・・まぁでもたしかに、あたし達含めて16人分の食事を運ぶ訳だから・・6人で運んでも、最低一人は二回運ばないといけない・・今の円寿くんが、二回食事を運ぶ為に往復する・・・円寿くんは大丈夫てかもしれないけど、それを見ているあたし達の精神が不安だ・・・
「!う~ん・・ぼくは大丈夫なんだけど・・・(あんまり皆に心配かけるのも悪いな・・・)・・!それなら、自分の分は自分で持って、サク姉達の分はトゥモシーヌさんが転移魔法で運ぶ・・それなら、往復しなくてすむけど・・・トゥモシーヌさん、よろしいでしょうか?その、トゥモシーヌさんの負担にならなければ・・ですけど・・・」
「・・・・・」
コクッーーー
「!あっ、ありがとうございます!トゥモシーヌさん!」
スッーーナデナデーーー
ふふふ、大丈夫だよ円寿くん・・そんなに不安そうにお願いしなくても、余程の内容で無い限りトゥモさんは円寿くんのお願いは聞いてくれるよ・・勿論、円寿くんがその余程の内容なんて言わないて事も分かっているよ・・なんてったって、トゥモさんの同士であるあたしがそうなんだからね・・ふふふ・・・という事で、無事食事を運び終わりテーブルに並べて昼食の時間です。用意されたテーブルは二つで、8人8人にわかれる事になりました。こういう時に偶数は良いよね!綺麗なわけられる事が出来るから・・・ただ、問題が一つ・・・
「エンジュはあたしの隣だ!」
「ちょっとサクネア、勝手に決めないで下さい!」
「おにいと~お話ししたいから~、おにいと同じ~テーブルが良いな~」
「・・・・・」(トゥモシーヌの無言の圧力)
「あら~。エンくん、モテモテだわ」
そう、円寿くんの隣は誰が座るのか問題である。分かっちゃいたけどね・・あっ、ちなみにあたしは円寿くんの隣でなくて大丈夫です。何故かって?そりゃ勿論、円寿くんの食事姿を真っ正面から見たいからですよ!隣だと、円寿くんの顔しっかりと見れないし・・あと、円寿くんが隣に座っていると気が気じゃなくて食事どころじゃなくなるし・・推しが幸せにご飯食べてる絵面で、こっちも箸が進むて訳ですよ!・・・今回の食事には箸使わないな・・えと、フォークが進むて訳ですよ!つまり、あたしの希望は円寿くんと同じテーブルで円寿くんの対面の席です。この前は、斜めだったからなぁ・・今回は、しっかりと真っ正面の円寿くんをあたしの視界に収めたいのです!
「はいはーい!席決めは、平等にくじ引きが良いと思いまーす!」
「シュリー、ナイスアイディア!」
「くじ引きか・・・よし!くじ引きだ!くじ引くぞ!」
「おっ、サク姉。素直にシュリジュリの提案飲んだね」
「ふっふっふー。チェル、あたしがギャンブルに強いて事、知ってんだろ?」
「あぁ、たしかに。ここぞという時に、無駄に引きが強いよね、サク姉は」
「だろだろ!つまり、くじ引きの時点であたしの勝ちだ!」
「!サク姉、引きが強いの?」
「おう!エンジュ!負け無しだぞ!」
「!サク姉凄い!」
「・・・(ちょいちょい負けてはいるんだけどね。負け続けるんだけど、これで最後て時・・つまり、ここぞという時に大勝ちするんだよなぁ、サク姉て・・さてさて、今回の引きは・・・)」
「・・・ぐぬぬぬぬ・・・」
「どんまい、サク姉・・・(どうやら今回のくじ引きは、ここぞという時では無かった・・そういう事みたいだね。残念、サク姉)」
はい・・て事で、席が決まりました。まずはAテーブル・・・西側左席、シュリナちゃん(多分)。西側右席、アズさん。東側左席、ミョリンさん。東側右席、ウィネさん。南側左席、円寿くん。南側右席・・つまり、円寿くんの隣に座れたのは・・・我らがトゥモさんです!おめでとうございます!トゥモさん!そして、北側右席・・つまり、円寿くんの真っ正面。あたしの希望の席・・ここには・・・ナミミナさんです。あっ、ちなみにあたしはその隣・・北側左席です。第一希望では無かったけど、円寿くんをしっかりと見る事ができます!円寿くんの右隣にトゥモさんで、角を挟んで左隣にはアズさん。安心できる面子に円寿くんが挟まれて良かった。シュリナちゃん(多分)が同じテーブルにいるのが少し不安だな・・ミサキリスちゃんも、もう一つのテーブルの方だし・・まぁ、ジュリアちゃん(多分)があっちのテーブルにいるし・・脅威は半減かな?
「わ~い。おにいと同じテーブルだ~。おにい~、あたし~人参嫌~い。おにい~食べて~」
「!ナミミナさん。アズさんの作る料理は、野菜が苦手な人でも食べられる様に味付けがしてあるよ。だから、頑張って食べてみて。それでも無理だったら、ぼくが食べるよ」
「わ~。おにい~、優しくも厳しい言葉~。分かった~。食べてみる~。んぁ~ぅぐ・・・」
「おにい。あたしはピーマンが苦手っす。苦いのが駄目なんすよねぇ。このピーマンも、美味しく食べれるっすか?」
「うん。水に浸けて、しっかり苦味を抜いて味をつけているから、食べられると思うよ」
ふふふ・・円寿くんがお兄さん感、お兄ちゃん味を出している・・よきかな、よきかな。さて、続いてBテーブル・・・西側左席、サクネアさん。西側右席、ミサキリスちゃん。東側左席、メグさん。東側右席、チクレーチさん。南側左席、ジュリアちゃん(多分)。南側右席、ピュマさん。北側左席、ケーギンさん。北側右席、チェルシーさん。ちなみに、上から見て北側にAテーブル。南側にBテーブルて配置になっています。円寿くんの真後ろにチェルシーさんがいる形になりますね。
「ちっ、なんでお前が隣なんだよ」
「それはこっちの台詞です・・と、言いたい所ですが、くじ引きで決まった事ですからね。文句は無しですよ」
「まぁまぁ、サク姉。エンジュと違うテーブルなのは残念だけどさ、サク姉の席からでも、エンジュには話しかけれるんだし、良いんじゃない?」
「それだと、エンジュが態々後ろ向かねぇといけなくて、飯食いずらいだろ。エンジュの飯の邪魔はしたくねぇ」
「なるほど、たしかにそうだ。んじゃ、また今度だね」
「えっと・・・ピュマちゃん、だっけ?ピュマっちて呼ぶね!いぇーい!よろよろー!」
「右結びだから・・・ジュリっちか。ふぅー!よろよろー!」
「・・・(こっちの二人は早くも仲良くなっているな。まぁ、だいたいのランシャの面子が、シュリジュリみたいなノリしてるし、波長が合うだろうな)」
さて、食事の挨拶を済ませて昼食の時間開始です。いただきます!
さてさて今日の献立は・・・エビピラフ、ビーフシチュー、シーザーサラダ、オニオンスープ。そして・・付け合わせの骨付き肉です。付け合わせのボリュームじゃない・・流石は異世界クオリティ・・・
「エンく~ん。はいこれぇ・・あ~ん・・・」
「!んあ~ぐ・・・!美味しいです!」
アズさんによる円寿くんへの、あ~ん・・これはもう慣れました。だって食事の度に毎回あるんですもの。お母さんが我が子にご飯を食べさせる様な物ですからね。慈愛の行為です。ちなみに、あ~んしたのはビーフシチューのとろとろお肉です。円寿くん幸せそう♡・・・ん?トゥモさん、どうしたんだろうか?何か・ソワソワしている?
「・・・・・」
「ふふっ・・!あら?どうしたの、トゥモちゃん?」
「?」
「・・・・・」
キョトンとした表情で、トゥモさんの方に顔を向ける円寿くん。トゥモさん、何か迷っている雰囲気だけど・・・
スッーーー(ピラフの乗ったスプーンを持ち上げる)
「・・・あ~ん・・・」
「!んあ~ぐ・・・!美味しいです!トゥモさん!」
「・・・・///」
んにゃあぁぁぁーーー!?トゥモさんが円寿くんに、あ~んしたぁーーー!?少し恥ずかしそうにしているトゥモさん可愛い!なっ、なるほど・・アズさんのあ~んを見て、自分も円寿くんにあ~んをしたくなったのですね・・両隣から美女にあ~んしてもらえる円寿くん、なんと羨ましきかな・・・
「わ~。あたしも~おにいに食べさせる~。おにい~、あ~ん・・・」
「!んあ~ぐ・・・!」
ナミミナさんも!?て、ナミミナさん・・今人参食べさせましたよね?嫌いと言ってた人参を、流れで円寿くんに食べさせましたね?駄目ですよナミミナさん、ちゃんと食べなきゃ。まったく・・いや、それにしても・・色々な人にあ~んされる円寿くん・・ふふふ、微笑ましい光景ですな・・素敵な絵面・・箸が・・じゃない、フォークが進む・・進むと、思っていたのですがね・・・
「むぅ~・・・」
円寿くんから少し視線をずらすとですね・・見えるんですよ、サクネアさんが。円寿くんを視界に収めようとすると、サクネアさんと目が合いそうになるんです・・・気が気じゃない・・円寿くんの事、見たいのに・・チラチラと円寿くんを見ているんです、サクネアさん・・目が合ったらなんか言われそう・・怖い・・・なっ、何か話題を・・・
「あっ・・とっ、トゥモさん。そういえば、さっき管理局に連絡したじゃないですか。どんな内容の文を送ったんですか?」
「・・・エンジュが・・・小さく・・・なった・・・」
・・・・・
「・・・えっ?あっ、それだけ・・ですか?」
コクッーーー
「・・・そっ、それだけで・・ちゃんと伝わってくれますかね?」
「・・・大丈夫・・・」
大丈夫・・かなーー?あぁ・・うん、まぁ・・モールス信号だから、あまり複雑な文章は送れないとは思うのだけれど・・・流石にシンプル過ぎないか?いやでも、変にあれやこれや伝えるよりかは起きてしまった事実だけを単刀直入に伝える方が良い・・のか?そもそも、この文章で管理局の人が動いてくれるのかな・・・
「・・・ん?この通信は・・・」
場面が代わり、見通しの良い広い部屋。そこには、大量のテーブルとそこに座る局員達。彼、彼女らが座る席には、複数の魔通玉が設置されていてそれぞれ無造作に光り輝いている。ここは、魔導省管理局本部。支部が各所に配置されている為、国中の魔通玉による連絡を一手に引き受けている訳では無いが、それでもひっきりなしに連絡がやってくる。そんな中・・・
「これは・・・!?」
「ん?どうかしたかウィーグラフ。何かあったのか?」
「たっ、大変です先輩・・・とっ、トゥモシーヌ・ネア=カミック氏からの、連絡が来ました・・・」
「!?とっ、トゥモシーヌだと!?あの万年引きこもりで、存在しているかも怪しまれた事もある・・大陸唯一の転移魔導士、トゥモシーヌ・ネア=カミックだと!?」
「・・・(万年引きこもり・・そんな呼ばれ方してるんだな、トゥモシーヌ氏)はっ、はい・・・」
「それで・・通信内容は?」
「はい・・それが・・・エンジュが、小さくなった・・と・・・」
「・・・は?」
「えっ、エンジュて・・人の、名前ですかね?それに、小さくなった・・とは、どういう事でしょうか?」
「・・・うむ・・急に連絡してきたと思いきや、訳の分からぬ内容・・変わった人だと聞いた事があったが、たしかにこれは・・・とにかく、相手が相手だ。マイラス局長に伝えよう。局長なら、何か分かるかもしれん」
「了解しました」
席を立ち、少し小走りで移動する二人。彼らが向かった先・・局長室、つまりマイラスのいる部屋。
コンコンーーー
「局長、よろしいでしょうか」
「うむ。入りたまえ」
ガチャーーー
「失礼します」
「うむ。どうした、ランゲくん、ウィーグラフくん」
「はい・・実は先程、トゥモシーヌ・ネア=カミック氏から連絡がありまして」
「トゥモシーヌ?ほぉ・・それは、なかなかに珍しい相手から連絡が来たものだね。それで、どんな連絡だい?」
「はい・・その、内容がですね・・エンジュが、小さくなったと・・・」
「!?エンジュ?・・クスノキ少年か!クスノキ少年が、小さく・・なった、だと?・・・ウィーグラフくん。それは、どの程度小さくなったのだ?」
「どの程度?・・いえ、ただ、小さくなった・・とだけ」
「・・・(トゥモシーヌからの連絡だ。只事ではないはず・・・!?もしや・・・)クスノキ少年は縮小魔法をかけられたのではないだろうか?」
「しっ、縮小魔法!?エルフィーが使う、あの魔法ですか!?」
縮小魔法・・・アトラピア大陸においてエルフィーのみが扱える魔法で、その名の通り生物を縮小させる魔法である。
「しかし局長・・縮小魔法は、エルフィーが自分自身にかける魔法のはずです。自分ではない他者にかけたという事例は、聞いた事がありません」
「そもそも、他者にかけられたとして・・何故、その少年が被害に?少年とエルフィーになんの関係が・・いや、何故エルフィーがそんな事を・・・」
「うむ・・・考えれば考える程に謎が深まるな・・だが、この件が急を要する事態だという事は分かる・・今すぐ向かおu・・・」
「いけませんよ、マイラス殿」
「むぐっ・・・」
マイラスを食いぎみに呼び止める声が部屋に響く。縹色の長髪に眼鏡をかけた男が、扉の影からゆっくりと姿を表しマイラス達に近づいてくる。
「仕事を放り出し、どこへ行こうと言うのですかマイラス殿?」
「すまない、トリント殿。どうやら、わたしのだいじな知り合いの身に、何かが起きているみたいなんだ・・緊急事態、という奴だ」
男の名はトリント・マグナス。彼はティリミナ王国第二王女、オルステン・ドーター・ティリミナの側近であり、魔導省管理局の外部顧問を勤める人物。
「(とっ、トリント様がいるて聞いて無いですよ先輩!)」
「(あっ、あたしも、知らなかったぞ・・・)」
「マイラス殿・・それは、今あなたが抱えている仕事を遅らせてでも、やらなくてはいけない事なのですか?」
「・・・うっ、うむ・・だが、しかし・・・」
「どうなんですか?」
「・・・わっ、分かった。今日の分の仕事を片付けてから向かう事にする。そうと決まれば・・・ランゲくん。ウィーグラフくんを貸してくれ。作業効率を最大限高める」
「はっ、はい、分かりました。ウィーグラフ、行ってきなさい」
「りっ、了解です」
「・・・まったく・・分かれば良いのです・・・(エンジュ・・クスノキ・・・たしかマイラス殿いわく、弁舌の才を持ってドリュース・ディキンスを屈服させた獣人の少年・・か・・トゥモシーヌの名も出てきていたが・・はたして・・・)」
「くっ・・・(すまない、クスノキ少年。今すぐに君の所へと向かいたいのだが、それが出来なくなってしまった・・だが安心してくれ・・わたしの仕事を完遂した後、全速力で君の下へ馳せ参じよう!それまで、待っていてくれ・・クスノキ少年・・・)」
「いっ、いつになく、真剣な表情ですね、マイラス局長」
「うむ・・それ程にまでに、大切な相手なのだろうな。そのエンジュと言う少年は・・・」
「・・・!そうだ、ウィーグラフくん。トゥモシーヌに連絡をいれてくれないか?」
「はっ、はいっ。どのような・・連絡を?」
「・・・!」
スッーーー(魔通玉を取り出す)
「わ~。トゥモシンヌ~、綺麗な宝玉~。なんかピカピカ光ってる~」
「とっ、トゥモさん。もっ、もしかして・・マイラスさんから連絡が?」
「・・・・・夕刻までに・・・そちらへ向かう・・・だって・・・」
「!マイラスさん、来てくれるんですね!」
コクッーーナデナデーーー(頷き円寿の頭を撫でる)
良かったー。ちゃんとトゥモさんの連絡、ちゃんと伝わってたー。ふふっ、円寿くん、マイラスさんに会えると分かって嬉しそう。さて、夕刻・・ですか。マイラスさんが来たら、おそらくなんかしらの方法で円寿くんを元に戻してくれるはず・・円寿くんが今の小っちゃいままでいられるのもそれまで、か・・・!?たっ、大変だ・・・
「えっ、円寿くん!」
「!?どっ、どうしましたか先輩?そんなに慌てて」
「写真撮らせて!」
「?写真・・ですか?」
そうです写真です!今の小っちゃくなった円寿くんを電子の海に保存しておくのです!戻ったら、もう二度と見れなくなるかもしれないし・・・あっ、不味い・・今のあたし・・滅茶苦茶自分勝手。円寿くんの都合も考えないで写真撮らせてだなんて・・写真撮られるの嫌な人だっているのに・・・
「・・・あっ、うん、ごめん円寿くん。勿論、円寿くんが嫌なら、撮らないけど・・・」
「大丈夫ですよ!」
「!」
「撮りましょう、写真!せっかくだから、皆さんもいっしょに!」
円寿くん・・優しい・・良かった、写真撮らせてもらえる・・今の小っちゃい円寿くんが撮れるなら、なんだって良いよ!
「ほえ~?先輩ちゃ~ん。写真て~何~?」
「えっ?えと・・写真てのは・・・」
写真が分からない?そうだった。この世界の文明レベル的に写真・・カメラは無いのか。写真て何・・か。改まって説明を求められると難しいな・・・
「あ~・・写真てのは、この、スマホのカメラを使って・・・」
「スマホ~?この~、薄い板みたいなの~?」
てぇ、カメラが無いんだからスマホなんてもっての他じゃーん!あたしのアホー!
「あっ!そだそだ、パイセンパイセン。それ。あたし気になってた奴。それスマホって言うんだ」
「ふえ?えっ、えと・・しっ、シュリナ・・ちゃん(だよね?)・・うっ、うん・・そだよ・・・」
「それさ、魔導省行った時に、それ使って何かしてたじゃん?なんか・・パシャて音もなってよね?もしかして、それが写真て奴?」
「うっ、うん。そだよ。写真を撮ると、このスマホの中に撮った写真が残るんだよ」
「残ると~、どうなるの~?」
「えっ?どっ、どうなる?えと・・あぁ、う~ん・・・」
「先輩!いっその事、撮った写真を見せてあげたら良いんじゃないですか?百聞は一見にしかず、です!」
「そっ、そっか・・・ほっ、ほら、見て下さいナミミナさん。この前、魔導省の交流会の時の写真です!」
「ほえ~・・・わ~・・ほえっ?・・わ~・・ほえ?わ~・・・」
なんか、バグった機械みたいなリアクションするなナミミナさん・・・
「どれどれ・・・えっ!?何これ凄い!これ水堀じゃん!お城も写ってる!風景がそのまま切り取られているみたいなってんじゃん!どんなに絵が上手い人でも、こんなリアルに描けないよね?えっ?パイセンパイセン!この写真てのにさ、あたしも写す事て出来ますか?」
「うっ、うん・・それじゃ・・あっ、ナミミナさん。ちょっと、スマホ返してもらいますね」
「おけまる~」
「それじゃ、撮るよシュリナちゃん・・あっ、ナミミナさんもついでに・・・」
パシャッーーー
「とっ、撮れたよ。シュリナちゃん」
「ん~?・・・!?えっ?ちょっ!うっそ!マジ!?ヤバっ!あたしとナミミナさんが写ってるんですけど!ヤバい!」
「わ~。鏡に写っているみた~い」
「ナミさん!あたしも見たいっす!」
「えー?なんかあっちのテーブルで、シュリが盛り上がってるんだけどー。あたしも混ぜてー!」
「ジュリっちー。あたしも行くー!」
「「あたしもー!」」
イケイケ双子ギャルとランシャ年少娘sが、あたしのスマホにわらわらと・・そうだよね。ギャルてスマホ好きだもんね。もしこの世界にスマホが普及していたら、きっとこの娘達もsnsに加工した自撮り写真や謎の踊ってみた動画を上げるんだろうなぁ(偏見)。
「パイセーン!これの使い方おせーてー!」
「えっ?あぁ・・うん。撮りたいものを、こう・・写して、ここの白い丸を指で押すと・・撮れるよ」
「なるほー!あざっす!パイセン!ちょっと借りるねー!」
「えっ?えぇと・・うっ、うん・・いいよ・・・」
スマホ持ってかれたー。うわー、キャッキャッ言いながら写真撮り初めている・・・
「・・・・・」
ん?トゥモさんがまたもやソワソワしている・・・スマホの写真が気になるのかな?トゥモさんにもスマホの事教えたいけど・・あたしのスマホは陽キャギャルに使い回されているし・・すごい、教えてもいないのに早速自撮りし初めている・・スマホ返してて言える雰囲気じゃ無いな・・・あっ、そだ・・・
「えっ、円寿くん。今、スマホ持っているかな?」
「!はい先輩!持ってますよ!」
「!」
あっ、トゥモさんの視線が円寿くんに向いた。『エンジュも持ってるの?』て顔してる!そりゃあたし達の元いた世界で、持っていない人の方が少数派ですからね!
「えっ、円寿くん。トゥモさんをカメラで撮ってみて」
「!なるほど・・トゥモシーヌさん。トゥモシーヌさんを、写真に撮ってもよろしいですか?」
コクッーーー
「!ありがとうございます!では・・・」
パシャッーーー
「ん~?なになにエンジュ。なぁに面白い事してんのさ・・・わーお!美人さんが美人さんのまま絵になってんじゃん!」
「これが写真です!」
「サク姉も。ほらほら、見てみ」
「ん?おっ、おう・・・」
「ほらほらミサちゃんも!」
「えっ?あっ、はい・・エンくん、あたしにも見せてくれるかな?」
「良いよ、ミサちゃん!」
「あらあら・・みんなで携帯電話に夢中になっちゃって・・ふふふ・・・みんな~。遊んでも良いけど、遊ぶならご飯食べ終わってからにしちゃいなさーい。」
「「「「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」」」」
こうして、一旦皆席に戻り昼食を食べ終えた後、あたしと円寿くんのスマホを使った写真撮影祭りが始まった。
カシャッーーー
「見てー!あたしの顔撮れたー!」
「凄ーい!撮りたい方向の向きを変える事が出来るんだー。超便利ー!」
「ほらほらみんなー!あたしの後ろに来て来てー!顔近づけて・・・はーい、にっっこりっ!」
「「「「「「イェーイ!」」」」」」
カシャッーーー
「う~ん・・・7人を撮ろうとすると、あたしの腕の長さじゃ写真に収まんないなぁ」
「長さかぁ・・・あっ!棒の先端にスマホをつけたら、広い範囲でも撮れるんじゃない?」
「うぅわジュリ、マジ天才じゃんそれ!」
あれ?この娘達、異世界の娘だよね?早速自撮りモードを覚えて、しかもこの世界には無い自撮り棒の存在に言及するとは・・・異世界ギャル、恐るべきスマホへの順能力・・・
「はーい、サク姉撮るよー」
「むっ・・・」
カシャッーーー
「どれどれぇ・・・ぷっ、あははははは!ちょっとサク姉、何この顔ぉ?めっちゃ緊張してるて顔してんじゃん!」
「なぬっ!?・・・だぁっ!?だっ、ダサぇ!?この顔はダサ過ぎる!チェル!もっ、もっかいだ!」
「はいよー。はーい、にっっこり」
カシャッーーー
「ん~と・・はーい、サク姉口角が引きつってるー。マイナス1ポイント」
「だぁっ、クソっ!なんでだぁ!?」
異世界ギャル達がスマホ順応している一方で、そのリーダーでもあるサクネアさんは撮られるのに苦戦しているみたいだ。サクネアさん・・大丈夫かな・・・
「サク姉。カメラに撮られている事を意識しないで、もっと自然な表情でいれば良いんだよ」
「しっ、自然な・・表情?どんなんだ?エンジュ」
「えぇと・・楽しい時て、自然と表情がほぐれて明るくなると思うんだ。だからサク姉も、楽しい事を考えてみると良いと思うよ」
「楽しい事・・・(そんなもん、エンジュとの・・・)へへぇあ・・・」
「!?」
「・・・サク姉なに今の顔。欲望駄々漏れで汚い・・・(絶対エロい事考えたな)ほら、エンジュ怯えてんじゃん」
「なぬっ!?すっ、すまんエンジュ!怖がらないでくれぇ!あたし怖く無いぞぉ!」
「・・・ふふっ・・・」
「!?おう、ミサキリス・・お前、今笑ったな?」
「・・うっ、うん・・笑っていません」
「笑っただろ」
「笑っていません」
「笑った!」
「笑ってない!」
「!?喧嘩は駄目だよー!」
ありゃりゃ、ミサキリスちゃんとサクネアさんが言い争いを初めちゃった。円寿くん、慌てて止めに入っているけど・・・ん?アズさん・・二人にゆっくり近づいている?
「あら~、大変だわ~。ねぇえ、サクちゃん。ちょっと良いかしら?」
「あぁ?!て、うおっ!?女将・・なっ、なんだよ・・・」
「サクちゃん。エンくんの事、肩車してあげてくれないかしら?」
「!!・・・(肩車!)」
「肩車?あぁ・・エンジュ、良いか?持つぞ」
「うん!お願い!」
円寿くん、肩車て聞いて顔をキラキラさせてる。そんな円寿くんを後ろから抱えて、軽々持ち上げ自身の肩に乗せるサクネアさん。
「ういっ、どうだ、エンジュ」
「高いよ!天井も凄く近くなったよ!背が伸びたみたいで、楽しいよ!サク姉!」
「おっ・・へへっ、そうかエンジュ!楽しいか!」
はい今日1の円寿くんの満面の笑顔いただきましたありがとうございます円寿くんの喜びがあたしの生きる糧です生きる希望をありがとうございます(早口)。あっ、ついでにサクネアさんも笑顔になったな。凄く嬉しそうだ。そうか・・円寿くんが笑えばサクネアさんも自然と笑えるのか。アズさん、ナイスアシスト!ふふっ、円寿くんはしゃいでる・・キャッキャッしている円寿くん、可愛いよ♡
「よっしぃエンジュ!ジャンプしてやっから、天井に触ってみろ!」
「ジャンプだね。うん!やってみるよ!」
「ジャンプし過ぎて、エンジュごと天井ぶち破んないでよぉ、サク姉」
「大丈夫だよ、チェル。心配すんな」
「ちっ、ちょっと・・気をつけて下さいよ、サクネア。エンくんに怪我させないで下さいね」
「エンジュを傷つける真似なんかしねぇよ。なぁ、エンジュ!」
「うん!サク姉の事、信頼してるよ!ミサちゃんも、心配ありがとね」
この部屋の天井そんなに高くないんですけどね。まぁ、あたしは頑張ってジャンプしても届かないんですけど・・・おっ、サクネアさん軽々と飛んだ・・おぉ、円寿くん天井にタッチしましたよ。円寿くん、楽しそう・・今回ばかりは、円寿くんを楽しませてくれてるサクネアさんに感謝ですね・・・
カシャッーーー
「・・おっ、ねぇ先輩ちゃん。ほら、この写真・・良くない?」
「いっ、良いですね、チェルシーさん!もっと撮りましょう!」
「オッケオッケー」
ふふふ・・合法的に円寿くんの写真が撮れる・・なんて素晴らしいんだ。後で編集して円寿くんだけが写っている様にしよう。あたしの円寿くんフォルダがどんどん潤っていきますよ・・ふふふ・・・ん?どうしたんですかトゥモさん?サクネアさんに近づいて・・・
「・・・・・」
「よっと・・・あん?なんだよトゥモシーヌ」
スッーーー(両手を前に出す)
「あ?・・・あぁ、もしかして・・エンジュ貸して欲しいのか?」
コクッーーー
「あぁ、わぁーたわぁーた。貸してやるからもう少し待ってろ。今はあたしがエンジュと遊んでんだ」
「・・・・・」
スッーーー(両手を前に出す)
「あぁ?貸せって?だから、もうちょい待ってろつってんだろ!」
「・・・・・」
プクゥーーー(頬を膨らます)
「?トゥモシーヌさん?」
スッーーー(右手を上げる)
バンバンバンバンバンバンバンバンーーー
「!?」
「あだぁ!?あだ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!ちょっ、やめ・・やめろトゥモシーヌ!叩くな!痛い!てっ・・なっ、なんども同じ所叩くなぁ!」
「とっ、トゥモシーヌさん!?どうしたんですか?!たっ、叩いちゃ駄目ですよ?!」
はわっ!?トゥモさん、ウェイアーユーオコ?円寿くんを貸してくれないからって、サクネアさんの右肩を執拗に叩いている・・しっ、シンプルに暴力だ・・あのサクネアさんに暴力をふるうなんて・・トゥモさん、強いな・・・
「あだだだ・・・あぁ!もう分かった!貸す!貸すから!だから叩くなぁ!ほれっ!」
「・・・・・」
観念したサクネアさんから円寿くんを受け取るトゥモさん。円寿くんも困り顔である。
「トゥモシーヌさん・・サク姉の事、叩いちゃ駄目ですよ・・・」
コクッーーー
「おいアキナぁ!なんだあいつはぁ!?ワガママ過ぎんだろアレ!どうなってんだぁ?!」
「ひぃぃぃぃ!?ごごごめんなさぁい!?」
「あたし貸さないとは言ってねぇだろ?!なんかあたし駄目な所あったかぁ?!」
「ひぃぃぃぃ!?ああありましぇぇん!?」
サクネアさん怖い顔で怒鳴らないでぇぇ!どうしてトゥモさんに言わないであたしに言ってくるんですかぁ!?こっ、今回ばっかしはトゥモさんが横暴過ぎます!・・・トゥモさん、満足そうに円寿くんを抱きしめないで下さい!トゥモさんのせいで、あたしが怒られているみたいになっているんですよ!うぅ・・・てか、どうしてサクネアさんやり返さなかったんだろう?喧嘩っ早いサクネアさんなら、あんな理不尽な暴力なんてすぐやり返すと思うのに・・・
「・・・・・」
チラッーーー(チェルシーの方を見る)
「ん?どっ、どうしましたかトゥモシーヌさん?」
「・・・・・」
フンスーーー
「・・・あぁ、写真撮れて事ですね。良いですよ」
トゥモさん、円寿くんと写真撮りたかったのか。いやでも、だとしてもサクネアさんを叩いてまで急かす必要は無いと思うんですが・・・
カシャッカシャッーーー
「はい、撮れましたよトゥモシーヌさん」
コクッーーチラッーーー(頷いてミサキリスの方を見る)
「ん?」
スススッーースッーーー(ミサキリスに近づき円寿を渡す)
「えっ?あぁ、はい・・どうも・・・(エンくん渡されちゃった・・エンくんも、されるがままなんだね・・・)」
円寿くん、どうして抱っこされながら次次と回されているのが分からないのかキョトンとしてる。でも抵抗せずに素直に受け入れている。今の円寿くん・・完全に扱いがペットの犬や猫だ・・円寿くんは・・・犬っぽいな・・素直にご主人の言う事を聞く白犬円寿くん・・・可愛い♡・・・
「ミサちゃん、重くない?」
「うん。これ位全然大丈夫だよ、エンくん」
チラッーーチョイチョイーーー(チェルシーの方を向きミサキリスを指差す)
「えっ?あぁ・・なるほど。今度はミサちゃんを撮れば良いんですね?」
コクッーーー
あぁ、なるほど・・トゥモさん、自分だけではなくて皆にも円寿くんと写真撮って欲しかったのか。トゥモさんなりの気遣いだったんですね。うん、だとしてもサクネアさんを叩く必要は無かったのでは?サクネアさんが少し不憫だ・・・円寿くんを皆と、か・・・ん?皆・・・
「はい。エンジュとミサちゃんのセット、撮りましたよトゥモシーヌさん。次は誰にします?」
チラッーーー(明奈に視線を向ける)
「えっ?」
チョイチョイーーー(明奈を指差しミサキリスを見る)
「えっ?」
「あっ、なるほど。了解です。エンくんを、アキナさんに渡せば良いんですね、トゥモシーヌさん」
コクッーーー
「えっ?」
「はいっ、アキナさん。アキナさんの番ですよ」
「・・・えっ?」
・・・ほっ・・ほわあああぁぁぁぁぁぁぁっーーーーーー!?あっ、ああたあたあたあた・・あっ・・あたしが・・円寿くんを・・・だっ、ただだだだだ抱っこぉ!?ほわぁ!?まっ、ままままま待って!待って下さい!急な円寿くん接触チャンスに、心の・・心の準備がががががが・・とっ、トゥモさん・・なんて恐ろしい事を思いつく人なんだ・・・
「・・・・・」
グッ!ーーー(サムズアップ)
トゥモさんグッジョブ!・・・と、言いたい所ですが・・・むっ、無理ーーー!小っちゃくなっているからといって、円寿くんは円寿くん・・18歳の円寿くんなんだよ・・抱っこという形とはいえ、円寿くんにこんな安易に触れる事になってしまうなんて・・・あたしの感情がまずい事になる・・ただでさえ、円寿くんが隣に座るだけで心臓が張り裂けそうになるて言うのに・・・だっ、抱っこ!?何かおかしな感情が芽生えたらどうするんですか?!
「ん?アキナさん・・エンくんの事、抱っこしないんですか?」
「!?えっ?あっ、いやいやいや、します!するます、するでます!だっ、抱っこ、するよ・・・」
「?先輩、もしぼくを持つのが大変なら、無理に持たなくても良いですよ」
「!?たっ、大変じゃないよ円寿くん!全然大変じゃない・・あぁやっぱ大変かも・・・いややっぱ大変じゃない!」
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"情緒がパニック!あたしの感情が大変な事にいいいぃぃぃ・・・あぁもう!腹をくくりなさい明菜ぁ!たしかに円寿くんを抱っこしたら、興奮し過ぎて血の循環がフル回転・・からの脳みそがパンクして死ぬ!でも、ここで円寿くんを抱っこしなかったら、皆から『なんだよ、明菜の奴抱っこしねぇのかよ・・このクソ陰キャ眼鏡女がよ・・・』て、思われて場がしらける・・なにより、円寿くんに『抱っこが出来ない・・触りたくない・・僕、先輩に嫌われているんだな・・・』て、思われるかもしれない・・・いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!円寿くんの事嫌いなんかじゃないよおぉぉぉぉぉぉ!!!!嫌いな訳無いよぉ!大好きだよぉ!大好きである事は間違いないんです・・ただ、単純に好きて言葉だけで表す事が出来ないタイプの好きなんですぅ・・・よっ、よし・・円寿くんに僕嫌われているなんて思われる位なら、あたしの脳みその一つ二つ・・いくらでも爆発四散すれば良いんだぁ!いざっ、感情の爆心地へ・・・
「・・・ふぅっ・・ほっ・・ふぅっ・・・」
「・・・(先輩、なんだか辛そう・・汗もかいてる・・やっぱり重たいんだろうなぁ・・・)先輩、重たいですよね。下ろしても大丈夫ですよ」
「!?ちっ、ちが・・おぉ重たくないよ!円寿くんが重たい訳無いよ!」
「!?そっ、そうですか・・・」
「ちっ、たく何やってんだあいつは・・・おいアキナぁ!もっとエンジュの事しっかりと持ちやがれ!こお・・がしっと!がしっとだ!そんなんじゃエンジュが不安になっちまうだろうがぁ!」
「ひいぃぃぃ!?はっ、はいいぃぃ!?」
はぁっ・・はあっ!えっ、円寿くんが・・近ぁい!抱っこしてるから近いに決まっているけど・・近いよぉ!うぅ・・違う、違うんだよ円寿くん・・あとサクネアさん・・重たい訳じゃないんだよぉ・・たしかにしっかりと円寿くんを持ってあげたい・・あげたいんだけど・・・はぁあっ!円寿くんの・・匂い!匂いがぁ!直にぃ!あたしの鼻に円寿くんの頭が近いから・・円寿くんの良い匂いがダイレクトにぃ!それに加えて・・触感!円寿くんの触感がぁ!円寿くん、柔らかいよぉ!あぁ・・身体が小っちゃくなっているから、二の腕とか・・太腿が・・柔らかい!嗅覚と触覚での二点攻めで、あたしの情緒ががが・・・それと、あんまし円寿くんと接触するとあたしの汗が・・とくに、手汗が・・円寿くんの素肌を汚してしまうのですうぅぅぅ・・だから、しっかりと持ちたいけど持てないんですうぅぅぅ・・・
「ひぃ・・ひぃ・・はぁ・・・」
「・・・トゥモシーヌさん・・先輩ちゃん、あんな状態だけど、撮った方が良い?」
コクッーーー
「・・・(良いんだ・・・)あぁ、先輩ちゃん、エンジュ、撮るよー」
カシャッカシャッーーー
あぁ、撮られてしまった・・今のあたしを・・うぅ・・多分の今のあたし、とんでもない表情になって写真に納められていると思う・・不本意だ、滅茶苦茶不本意・・円寿くんとの2ショットが、こんな不本意な物になってしまうなんて・・・
「・・・先輩。大丈夫ですか?」
「!?うっ、んーん、大丈夫だよ、円寿くん・・はは・・・」
「顔が赤くて・・息も荒いです。もしかして、体調が悪いんですか?」
「!?あっ・・息?荒くなってる?あぁ・・えと、それは・・・あっ、そだ・・それはね、夜中までパソコン触っていたから、寝不足で・・少し、おかしなテンションになっているのかも・・ほら、深夜のテンションて奴?」
「?・・・(深夜のテンション?)そう、でしたか・・先輩、遊ぶ事も大切ですが、睡眠不足は良くないですよ。今日は、しっかりと睡眠、取って下さいね」
「うっ、うん・・ありがとね、円寿くん・・はは・・・」
あははぁはっはぁ~~・・円寿くんの優しさが身に染みる~~!ごめんね円寿くん・・深夜のテンションて言葉にキョトンとしてたね・・円寿くん、これまての人生で夜更かしした事無いんだろうなぁ・・しっかりと睡眠取っている円寿くんにとって、深夜のテンションとか言われても分からないよね・・大丈夫だよ円寿くん・・円寿くんは深夜のテンションなんて覚えなくて良いんだよ・・しっかりとした睡眠は、長生きの秘訣だからね・・円寿くんは長生きしてね・・・ん?あれさっき、円寿くん・・あたしの事、息が荒いて言った?・・・あたしの息が円寿くんにかかっていた!?不味い!?くっ、臭かったかな?いっ、一応円寿くんに会う様になってからはブレスケアはしっかりとしているんだけど・・・この世界にもあったんですよ、口臭予防の液みたいな奴。アズさんが教えてくれました。まぁ、それはいいとして・・だっ、大丈夫かな?ただでさえ、獣人の嗅覚は優れている訳だし・・汗かいているから、きっと汗臭さも・・・いやあぁぁ!!円寿くんに臭い女と思われたらどうしよぉ!?
「わ~。皆で~、おにいを抱っこして~写真撮ってるの~?あたしも混ぜて~」
はわっ!?なっ、ナミミナさん!?いきなり背後から顔を出さないで下さい!びっくりするじゃないですか!
「オッケー。じゃあ、次はナミね」
「先輩ちゃ~ん。おにい~、貸して~」
「はっ、はい・・どうぞ・・・」
「あっ、アキナさん・・大丈夫でしたか?だいぶ汗ばんでますね。ハンカチ使いますか?」
「あっ、ありがとう、ミサキリスちゃん・・・」
ミサキリスちゃんに、心配される程にヤバかったのかあたしは・・あぁ・・円寿くんの温もりがまだ腕に・・抱っこしている時は気が気じゃなかったけど、離れるとそれはそれでもう少し抱っこしたかったなぁとなる・・・よっ、よし!次はブレスケアに加えて汗対策もバッチリしておこう!
「おにい~。ほらほら~、高~い高~い」
「!!!」キャッキャッ!
「いや、ナミあんたさぁ・・流石にエンジュを子供扱いし過ぎでしょ・・・(エンジュ喜んでいるけど・・・)仮にもおにいて呼ぶ様になったんだからさ。今まで通りの弟扱いだよ、それ」
「おにいはお兄ちゃんだけど~、弟でもあるのだ~」
「「「「おにいは弟ー!」」」」
「・・・うんごめん。あんた達何言ってんの?」
「ま~ま~、チェル~。細かい事~、気にしな~い」
「細かいて・・まったく。ごめんね、エンジュ。こいつら、エンジュの事バカにしてる訳じゃないからね」
「!うん、大丈夫、分かってるよ!それに子供扱いは、ぼくもう慣れているから、気にしなくていいよ!」
「そっか・・オッケオッケ。そんじゃ・・ほらあんた達、撮るよー・・・(慣れている・・気にしなくていい、か・・イラついている感じも無い、な・・やっぱエンジュ18歳なんだなぁ・・器が広い・・妥協する事が出来る・・いや、そもそも妥協している感覚が無いのかもしれない・・それだけ精神が落ち着いている?もしかしたら、年はあたしと同じだけど精神年齢はあたしより上だったり?)」
「おにい~。いないいな~い~・・ばぁ~」
「!!!」キャッキャッ!
「おにい笑ってるっす!」
「・・・(うん、気にせいだな。精神年齢高い奴が、あんな純粋にいないいないばぁで喜ぶ訳無いもん・・・)」
円寿くんが最初小っちゃくなった時はどうなるかと思ったけど、案外この状況にもなれるもんだな・・ふふ、円寿くん楽しそう・・自然に赤ちゃん扱いされてるけど・・そこまでは小っちゃくないんだけどな・・・
「いぇーいパイセ~ン、なぁ~にハァハァ言ってるんですか~?」
「はわっ!?しっ、しゅ・・シュリナ・・ちゃん?」
「残念パイセ~ン、シュリはあたしでーす!こっちはジュリー!」
「パイセン、まだ覚えてないのー?ショックー」
「ごっ、ごめんね、じっ・・ジュリアちゃん・・・」
「それよりもパイセーン。写真取りましょー!」
「えっ?あっ、うん・・・」
「ほらほらミサも!トゥモシーヌさんもこっち来て下さい!」
「・・・・・」ススス、、、
「はいはい。それにしてもあんた達。この数分で、ずいぶんスマホ使いこなせる様になっているじゃない」
「でしょでしょー!」
「パイセーン。あたしスマホ欲しいー。買って買ってー!」
「はわっ!?かっ、買う!?」
「こらっ!あんた達!」
「むっ・・・(トゥモシーヌが離れた・・・今だ!)うっし、ナミ。あたしの番だ、エンジュ貸してくれ!」
「ほえ~?サク姉に~?」
「サク姉。あたし達がまだ、おにい抱っこしてないっす」
「安心しろウィネ。少し遊んだら、すぐにお前らに渡してやるから」
「えぇ・・・(サク姉の少しが少しで済んだ試しが無いからなぁ・・あぁでも、さっきからサク姉、おにいと遊び足りなくて、うずうずしながらこっち見てたからなぁ・・しょうがない・・・)分かったっす。サク姉におにいを渡すっす」
「!良いのか!すまねぇな、ウィネ!よしっ、ナミ!」
「はいは~い。おにいを託すぞ~」
「サク姉!」
「エンジュー!よーしよし。エンジュ!次は何して遊ぶか?」
「う~ん・・そうだなぁ・・・んぅ・・・」ウトウト・・・
「ん?どうしたエンジュ?」
「あら?そうだったわ~。サクちゃん、エンくんそろそろお昼寝の時間だったわ~」
「なぬっ!?眠いのか、エンジュ?」
「うん・・眠く、なってきたよ・・・」
「エンくんはね、お昼ごはんを食べた後は、いつも20~30分はお昼寝時間を取っているわ。お昼寝すると、午後の作業効率が上がるみたいなの!・・・あら?そうこう言っている内に、エンくん寝ちゃったわ」
「わ~。おにい~、寝るの早~い」
「んふふ~。エンジュは寝つきが良いからなぁ」
「サク姉~。おにいが寝ちゃったからて~、また襲っちゃ駄目だよ~」
「襲うか!流石に今のエンジュは小っこ過ぎんだろ」
えっ?いや待って下さい、今聞き捨てならない言葉が聞こえたのですが!?なんですか、襲うて?!しかもまた?またて言いましたか?!てか、いつの間にまた円寿くんがサクネアさんの所に!?てぇ・・・はわぁーーー!?円寿くん、サクネアさんの腕の中でスヤスヤお寝んねしてるーー!?んぎゃわぁぃぃぃーー♡♡!!しゅり・・じゃない、ジュリアちゃん!あたし達の写真はいいから、円寿くんを撮ってぇーーー!
「よーしお前ら、あたしらもこれから、円寿に習って昼寝を取り入れるぞー」
「わ~い、お昼寝~。サク姉~。昼寝の時間は~、5時間が良いな~」
「長い!1時間で充分だ!」
「いや、サク姉・・1時間も、昼寝にしては長くない?」
コンコンーーー
「あら?誰かしら。は~い、どうぞ~」
ガチャーーー
「こんにちはぁ」
「あら~。アオちゃんじゃな~い」
あっ、そういえばアオイさんの事忘れていました。すいませんね、アオイさん。ん?どうして箒を持っているんですか?
「あら、皆集まって・・・あっ、トゥモぉ!もう、どうして連絡しているのに返さないのよ!」
「・・・・・?」
「ん?じゃないわよ、まったく・・トゥモが向かえに来てくれないから、飛行魔法使ってきたのよ、もう」
「・・・・・」
「あっ、トゥモあなた今、すぐ来れてるんだから良いじゃん・・て思ったでしょ、もう」
なるほど、飛行魔法を使って来たから箒を持っているんですね。にしてもアオイさん、トゥモさんの心の声が聞こえるんですかね?長年一緒にいると生まれる、信頼度がこれを可能にしているのかな?まっ、まぁあたしも、トゥモさんの気持ちが分かったりしますけどね!
「アオイお姉さん、こんちわー!写真撮りましょー!」
「撮りましょー!」
「えっ?しゃしん?えっ?何その薄い板・・えっ?」
「面倒くさいから説明省きますけど、まぁ魔道具みたいな物ですよぉ、アオイお姉さん」
「そうそう、細かい事は気にせず、写真撮りましょー」
「魔道具!?えっ、ちょっ、変な呪いとか、かからないわよね?!」
「呪いとかウケるー」
「かからないですよー。はい、撮りますよー」
「まったくもう・・・」
カシャッーーー
イケイケ双子ギャルに流されるまま、戸惑いつつも写真を撮られる瞬間は決め顔のアオイさん。くっ、これが大人の女の適応力か・・無駄にエッチな決め顔しやがって・・・
「ふぅ・・あっ、それよりも、エンくんはどうしたの?姿が、見えないけど・・・」
「エンくんですかぁ?エンくんなら、サクネアさんが・・・あれ?」
「あ?なっ、なんだよ・・・」
あれ?円寿くんの姿が無い?サクネアさんさっきまで、すやすや円寿くんを抱っこしてたんじゃ・・なんかバツが悪そうな顔してるけど・・・
「・・・サクネア」
「あ?なんだよ、アオイ・・・」
「エンくんはどこ?」
「えっ、エンジュは・・いねぇよ・・・」
「皆集まっててエンくんだけいないなんて事は無いでしょ」
「いっ、いねぇもんはいねぇ!」
「・・・サクネア、あなた隠しているつもりでいるけど、肩から獣人の耳が見えているわよ。それ、エンくんのでしょ」
「なにっ!?」
「はぁ・・・(サク姉、嘘つくなんて慣れない事しない方が良いよ・・・)」
チェルシーさんがため息を・・・あぁ、サクネアさん円寿を背中におぶって隠していたんですね。すぐバレたけど・・・
「どうしてエンくんの事、隠すのよサクネア」
「あ?どうしてだと?そんなもん、アオイがエンジュ見ると面倒くさくなるからだろぅがよ!」
「それはあなたでしょ!」
「うんだと!」
「はいは~い二人共~、大きな声で喧嘩しちゃ駄目よ~。エンくん起きちゃうわ」
「!?そっ、そうだな、女将・・・」
「あたしはそもそも喧嘩なんかしたく無いんです、女将さん。サクネアがいちいち絡んでくるから・・・」
「あぁ?あたしのせいかよ!」
「なによ!」
「だから、喧嘩は駄目よ二人共。ほら、サクちゃん。大丈夫だから、エンくんを見せてあけて」
「むぅ・・・」
もしかしてサクネアさん・・円寿くんが小っちゃくなったから、余計な騒ぎを起こさぬ様にアオイさんには隠したかったのかな?まぁまぁサクネアさん。ここはアオイさんを信用しましょうよ。
「わぁーたよ・・良いか、アオイ。今のエンジュを見ても、なにもすんじゃねぇぞ。特に、他の魔導士連中に言うとかするんじゃねぇぞ。絶対だぞ!」
「・・・(今の?)分かったわよ。だから見せて」
「・・・ほら・・・」
仕方がないといった顔で、おんぶしていた円寿くんをそのまま抱っこしてアオイさんに見せるサクネアさん。円寿くんはと言うと・・・幸せそうな顔ですやすや寝たままでした。うふふ、可愛いなぁ円寿くん♡にしても円寿くん・・サクネアさんとアオイさんが結構騒がしくしてたのに、全然起きないな・・獣人の耳は音に敏感なはずなんだけどな・・・さて、今の小っちゃい円寿くんを見たアオイさんの反応は?
「・・・」
「あっ、アオイさん?」
「・・・っはぁ♡・・・」
はわっ!?アオイさん・・・声にならないほどキュン♡て顔になっている!?ひっ、瞳の奥に♡マークが見えている・・・分かります、アオイさん。今の小っちゃい円寿くんには、人の理性を狂わす程の愛くるしさがありますよね!可愛いくて仕方がないんですよね!普段の円寿くんも愛くるしいけどね!
「・・・はいおしまい」
「!?ちっ、ちょっとぉ!どうしてエンくんをまた背中に隠すのよ?!」
「こっからは有料だ」
「どうしてお金を取るのよ?!てか、そもそもどうしてエンくんが小さくなっているのよ?!」
「それに関してはアキナが悪い」
「はわっ!?」
このタイミングであたしですかサクネアさん!?まっ、まってぇ~違うんですぅアオイさん・・そもそも円寿くんに毒を飲ませた悪しき魔導士がどうのこうの・・・
「えっ?アキナちゃん?どういう事かしら?」
「えっ!?あっ、ちょっ・・ちがっ・・えと、そっ、それは・・ですね・・その・・・」
「まぁまぁアオイお姉~さん。細かい事は気にしないで・・ほら、エンくん可愛いですよ~!」
シュリナちゃん!?・・だよね?うん、そのはず・・しれっとサクネアさんから円寿くんを奪い、アオイさんに前につき出すシュリナちゃん。シュリナちゃん、あたしの事をフォローしてくれたのかな?だとしたら、感謝しなきゃ・・・円寿くん、まだ寝てるな・・・
「っあぁ♡やだもぉエンくん、ずるいわ。そんな幸せな夢見てます、て寝顔を見せるなんて♡」
「ん?あっこら、シュリナぁ!なに勝手にエンジュ取ってんだぁ?!あと、エンジュをそう雑に持つなぁ!返しやがれぇ!」
「んぎゃっ・・・」
ーー円寿を取り返そうと、シュリナに掴みかかるサクネア。思わず情けない声を出し体制を崩すシュリナーーー
「あっ・・・」
ーーサクネアがぶつかった衝撃で、シュリナの手から円寿が空中に放りこまれる。部屋にいる全員の目線が、宙を舞いながらも寝顔を崩す事のない円寿に向けられる。このままでは、無防備な円寿が床に叩きつけられてしまう・・皆そう思った。だがしかし、皆がそう思うよりも先に身体が動いた女がいた・・サクネアである。円寿が落下する前に、持ち前の反射神経と跳躍力で円寿を掴もうとした・・したのだがーーー
「よっ・・・(エンジュに怪我させる訳あるかよ・・・ん?)」
ーー動いていたのはサクネアだけではなかった。いや、正確にはサクネアの様なダイナミックな動きをせず指一本も動かしていないのだが・・今にも落下しようとする円寿と、その円寿を助けようとするサクネアの伸ばす手の間に魔方陣が展開されたーーー
「んなっ・・・」
ーーそのまま円寿は魔方陣に吸い込まれる様に落ち、一瞬にして魔方陣を展開した女の腕の中に転移されたーーー
「・・・・・」フンスッ
「とっ、トゥモシーヌ・・・」
「あれま・・・(うへぇ・・サク姉の超絶反射神経よりも早く魔法使うなんて・・トゥモシーヌさん、やっぱえげつないなぁ・・・)まぁ、ドンマイ、サク姉」
「チェル・・・」
トゥモさーーーん!!良かったぁ、円寿くん無事だよぉ!ありがとうございますトゥモさん!サクネアさんも助けようとしてくれてたみたいだったな・・・なんか、凡人の目からは、円寿くんが宙を舞った瞬間には既にトゥモさんの腕の中にいた位凄く一瞬だったな・・・
「こっ、こらっ、シュリ!なにエンくんの事手放してるのよ!危ないじゃない!」
「えぇー?だってサクネアさんがぶつかってくるからー」
「てかさぁ、エンくんて女神の加護があるんでしよぉ?なら、床に落ちても怪我とかしないんじゃないのぉ?」
「だからって、眠っているエンくんを床に落ちるのを見過ごす訳にはいかないでしょ!」
「そうだぞジュリアぁ!それにだ、その・・なんだよく分からんが、その眼鏡のタコて奴が働かん可能性だって、あるかもしんないだろ!」
「いやサク姉・・その言い間違いは、流石に無理があるよ・・・(ん?てか、何?女神の加護?なんの事?)」
そっ、そうです!サクネアさんの言う通り!・・・なんですか、眼鏡のタコて?まいっか・・そうですよ!現に円寿くんが小さくなっているのも、女神の加護が働いていないからこうなっている訳だし・・すやすや幸せそうに眠る円寿くんが、床に落とされるなんて想像するだけで・・・いやあぁぁぁぁ!?円寿くんが酷い目に合う位なら、あたしが身代わりになる方がマシだあぁぁぁぁぁぁぁ!!
「・・・ん・・んぅ・・・」
「あら、エンくん起きちゃったわ」
「・・・おはよ・・・エンジュ・・・」
「!おはよぉございます!トゥモシーヌさん!」
ナデナデーーー
「~~~~・・!アオイさん!来てたんですね!」
「ふふっ、エンくん、こんにちわ」
ぷにぷにーーー
「そうだわエンくん。エンくんどうして小さくなっちゃったの?」
「それはですね・・かくかくしかじか・・・」
「どっ、毒を飲んでって・・・」
「おうアオイ。さっきも言ったが、他の魔導士連中には絶対に言うなよ。エンジュみたいな特殊な獣人がいる事がしられたら、あいつらなにするか分からねぇからな」
「言わないわよ、別に。それで、この小さくなったエンくんを元に戻す方法は、分かっているの?トゥモ」
「・・・マイラスに・・・連絡・・した・・・」
「あぁ、マイラスに・・・てぇ・・もうすでに他の魔導士に伝えているじゃない!」
「・・・あっ・・・」
トゥモさん、今あっ・・て言いましたね・・・まぁ、あたしもアオイさんに言われて気がつきましたけど・・・
「ん?なんだ?トゥモシーヌの奴・・すでに他の魔導士に言っちまったのか?」
「いやサク姉・・さっきエンジュを元に戻せるかもしれない魔導士の話ししたでしょ・・・」
「あぁ、ん~・・そうだったか、チェル?」
「サク姉・・・まぁいっか」
「もぉ、トゥモったら・・まぁ、マイラスなら大丈夫でしょうけど・・・」
「トゥモシンヌ~、さっきの~魔法でおにい助けた奴~、凄かった~。もっかいやって~」
「!トゥモシーヌさん、何か凄い事したんですか!」
「・・・・・」
キラキラした顔でトゥモさんを見る円寿くん。トゥモさん、これは何か披露しちゃうなぁ・・・
ブオンーースゥーーカッーーパァーーー(円寿を転移魔法で椅子の上に転移させる)
「!!」
ブオンーースゥーーカッーーパァーーー(再び自分の腕の中に円寿を転移させる)
「!!!」
「わ~。おにいの連続瞬間移動だ~。すご~い」
ドヤァーーー
出ました、トゥモさんの無表情ドヤ顔。実に誇らしげだ。円寿くんも瞳をキラキラさせて楽しそう・・・と、ここであたしの素朴な疑問か一つ・・・
「あっ、アオイさん・・トゥモさんて、自分が触れていない物も転移させる事、出来たんですね・・・」
「うん、そうね。転移させる対象に、自分の魔力の残滓をつけておく必要があるけどね。」
「魔力の・・残滓?」
「そう。魔法を使うと、その場に放出された魔力が残り香みたいに漂うのよ。さっきのは、トゥモの転移魔法によって、エンくんにトゥモの魔力の残滓がついた訳ね。その魔力の残滓を再活用する事によって、トゥモは触れていないエンくんを転移させる事が出来たって訳」
はえ~。魔法てそんな遠隔操作みたいな事も出来るんですね~。魔法の残滓がつく・・マーキングて事かな?トゥモさんにマーキングされる円寿くん・・・いやいや、そんな如何わしい想像はしてませんよ・・・
「それにしても・・ふふっ、エンくん凄く愛くるしいわぁ。欲しくなっちゃう♡」
「そうですね・・自分の手で育ててあげたくなると言うか・・・てぇ・・ほっ、欲しい!?」
「アキナちゃんも欲しいでしょ?エンくんの事?」
「えっ?あっ、ん~、あっ・・まっ、まぁ・・欲しいか欲しくないと言われたら、欲しいよりですけど・・・」
「ふふっ、アキナちゃん正直・・ねぇ、アキナちゃん。耳、少し貸してくれるかしら?」
「えっ?あっ、はい・・・」
アオイさんに耳元で囁かれると、妙に緊張するんだよなぁ・・・
「(エンくん、今のままでも・・良くない?)」
「!?いっ、今のぉ!?・・・」
「(しー!声が大きいわよ、アキナちゃん)」
「(あっ、すっ、すいません・・アオイさん。えと、それはつまり、円寿くんを・・元に戻さなくても良いて事ですか?)」
「(うん。だって、今のエンくん、元々小柄なエンくんが、さらに小さくなったでだけでしょ?エンくんの中身が変わった訳でもなければ、周りからの扱われ方が変わった訳でもないでしょ。元々可愛いかったエンくんが、小さくなってさらに可愛くなった。マイナスじゃなく、むしろプラスになっているじゃない。だったら、別に元の大きさに戻さなくても、良いんじゃないかしら?)」
たっ、たしかにそう・・かも・・実際、円寿くん自身特に小っちゃくなった現状に不満を抱いている素振りを見せて無いし・・このままでも円寿くんは円寿くんのまま・・・
「たっ、たしかに・・今の小っちゃいままの円寿くんでも、支障は無いかもしれません・・・」
「うん」
「でも・・・」
「?・・でも?」
「それは・・円寿くんの、これまでの・・18年生きた人生を否定する事にならないでしょうか?」
「・・・人生を、否定・・・」
「はい・・たしかに、小っちゃくなっても、中身は元の円寿くんと同じ、18年生きた円寿くんです。中身がそのままだったら、それで良い・・と、あたしも一瞬考えました。でもそれは、円寿くんが身長156cmまで成長していく様を見届けてきた人達・・円寿くんの家族や友達、円寿くんと関わった人達の事を否定する・・それつまり、円寿くんの人生を否定する事にはならないでしょうか?」
「・・・」
「あたしは、円寿くんの人生を否定したくありません。だっ、だから・・あたしは、元の大きさの円寿くんに、戻って欲しい・・です・・・」
「先輩!」
「はわっ!?えっ、円寿くん!?」
「ぼく嬉しいです!先輩にそんな風に言ってもらえて!」
「えっ?・・えっ、えへへへへ・・そっ、そうかな・・・ん?あぁ、てか・・もっ、もしかして・・いや、もしかしなくても、聞こえてた?」
「聞こえてたってか・・先輩ちゃん。最初は、なんかこそこそ話してたみたいだけど、途中から普通のトーン・・いや、結構なボリュームで話してたよ、先輩ちゃん」
・・・はっ・・恥っっっずうぅぅぅーーーー///////////あっ、あたし恥ず過ぎるるるるるるう!?皆に聞こえる位の声で、あんな恥ずかしい台詞を・・しかも、円寿くん本人に聞かれているし・・・はわっ!?この部屋に皆の目線が全てあたしに!?いやあぁぁぁぁ///見ないでえぇぇぇぇ////そんな目であたしを見ないでえぇぇぇぇ//////
「ぼくに関わった人達を否定する事は、ぼくを否定する事になる・・・素敵な言葉です!先輩!この言葉・・しっかりと胸に刻みます!」
あっっひゃあぁぁぁぁぁぁぁ/////////いいんだよ円寿くん、リピートしなくてえぇぇ////分かってる・・分かっているよ円寿くん・・円寿くんがあたしを恥ずかしめる為に言っている訳では無いて・・円寿くんに誉められて嬉しいけど、今は・・今はその純粋な感情とキラキラした表情が、もの凄く痛く感じるのぉ・・・あっ、そこのイケイケ双子ギャル!ニヤニヤするんじゃあなぁい!ミサキリスちゃんも苦笑いしないでぇ・・・
「ところで先輩。アオイさんと、どんな話しをして先程の素敵な言葉が出たのですか?」
「素敵・・えぇと・・あぁ、その・・それは・・・」
「ごめんね、エンくん」
「?アオイさん?」
「エンくん・・あたし、エンくんの事を否定しようと思った訳じゃ無いの・・今のエンくんも、凄く素敵だから・・気の迷いで、つい・・・」
「?・・えと・・とりあえず、アオイさん、謝らなくて大丈夫ですよ。ぼく自身は、元の身長に戻れても戻れなくても、それはそれで・・それも人生かなぁと、思っています・・もちろん、戻れるなら戻りたいです!」
「・・・ふふっ、エンくん・・見た目の幼さに反して、言っている事がませてる。なんか面白い」
「!そうですか?」
「ふふっ・・あっ、ごめんねアキナちゃん。皆から注目させちゃって」
「えっ?あはぁ、いえ・・・」
「・・・それでさぁ、アキナちゃん」
「ん?はっ、はい・・・」
「エンくんて・・18歳だったの?」
「・・・えっ?」
「あたし、7歳て聞いてたんだけど・・・」
「・・・」
「・・・説明、してくれるかしら?」
「・・・はっ、はい・・・」
ごめんなさいアオイさん・・そういえばそうでしたね・・円寿くんは7歳の設定でした・・いや、本当はもっと早く本当の事を伝えても良かったのですけど・・・すいません、忘れてました・・はい、て事で説明しました・・・
「・・・本来なら、男の獣人は18歳にもなると背も高く筋骨隆々になる所、エンくんは幼く華奢な体型のまま成長したと・・・ふむふむ、成る程ね。魔法が使えるのも、普通の獣人と身体の作りが少しから・・ね。うん、エンくんの事情は分かったわ。でも・・・」
「?」
「もぉ、酷いわぁ、エンくん。あたしに嘘ついていたのねぇ!」
モニュウーーー(両手で円寿の頬を挟み込む)
「うぉ、うぉみぇんにゃしゃい~~~・・・」
「あっ、ごらぁ!アオイ!エンジュをモニュウすんじゃねぇ!エンジュは悪くねぇ!悪いのは、そう言えと言ったアキナだ!」
「はわっ!?」
「待ちなさいサクネア!アキナさんは悪くありません!エンくんの年齢の件に関して言えば、指示を出したのはあたしです!」
「あら、ミサちゃん違うわ。そう指示を出したのは、あたしよ~。ふふっ、駄目よミサちゃん。自分だけが責任を負えば良いて考えは」
「アズさん・・・」
「ふふっ、ミサちゃん、大丈夫よ。アオちゃん、嘘をついていた事はごめんなさいね。これはエンくんを守る為・・仕方がなかったのだと言う事を分かって欲しいわ」
「女将さん・・・」
「それと、サクちゃん。この件に、誰が悪いとか悪くないとか・・そんなのはいないわ。サクちゃんも、本当は分かっているはずよ」
「女将・・・」
「エンくんがきっかけで繋がった縁よ。喧嘩してたら、それこそ、エンくんが悲しむわ。そうよね~、エンく~ん!」
ぷにぃーーー
「!はい!あぁ、えと・・皆さん。その、今すぐにとは言いません。時間はかかると思います・・でも、ぼくは皆さんに仲良くしていて欲しいです!自分の意見を主張する事は大事な事ですが、それで喧嘩になるのは・・とても、悲しいです。皆さんが仲良くなれるよう、ぼくも頑張ります!よろしくお願いいたします!」
「・・・はぁ、なんだか、話しが纏まったみたいな雰囲気になっちゃったわね。まぁいっか」
「アオイさん!」
「すまん!エンジュ!もうエンジュの事を悲しませたりしねぇ!なんとか、エンジュが言ったように・・じっ、時間を、かけて・・なっ、仲良くなれる様・・がっ、頑張ってみるぞ!」
「サク姉!」
ナデナデーーー
「トゥモシーヌさん!」
サクネアさん、アオイさんの方をチラチラ見ながら少し言い淀んでいたけど・・大丈夫かな?まっ、まぁ・・円寿くんも時間をかけて、て言ってますし・・・
「パイセンパイセン!」
「顔真っ赤にしてたパイセン!」
「はわっ!?」
「こら、あんた達。アキナさんの事、茶化さないの。お疲れ様でした、アキナさん」
「あっ、うん・・お疲れ様、ミサキリスちゃん・・・」
「パイセン、格好良かったですよー。なんか無駄に壮大な音楽が流れてそうな雰囲気でしたー。」
「えっ?そっ、そうかな?」
「あっ、でもぉ、エンくんの身長・・156cmでしたっけ?あそこの所、正確に覚えているのちょっとキモかったです!」
「はわっ!?きっ、きも・・・」
「こぉらっ!キモいとか言わない!えと・・あっ、アキナさん・・気にしないでくださいね」
お気遣い、ありがとうミサキリスちゃん・・でもね、気にしないでと言われても気になる物なんだよ・・・いっ、いいもん!自分で自分の事、キモいて知ってるし・・・しっ、しょうがないじゃん!円寿くんの非公式ファンサイトに身長が書いてあったんだからさぁ!書いてあるんだから覚えるじゃんかぁ!推しのプロフィールを覚えるのは、ファンとして常識でしょお!
「ところでアオイさん。先程から気になっていたのですが・・・」
「ん?なぁにぃ、エンくん」
「どうして、箒をずっと手に持っているんでしょうか?」
「あぁ、これ?今日は飛行魔法でここまで来たの。トゥモったら、連絡しても返事返さないんだもん」
「!!飛行魔法・・飛んで来たて事ですか?!!」
「うん。そうよ」
「飛行魔法・・・」キラキラーーー
「・・・・・」じぃーーー
「ん?・・なっ、なによ、トゥモ・・・もお、そんな睨まないでよ、自分が飛行魔法使えないからって」
「・・・・・」じぃーーー
「ん?なんだトゥモシーヌ。お前、あんな一瞬で動けるすげぇ魔法使えんのに、飛ぶ魔法は使えねぇのか?」
「!?」
バンバンバンバンバンバンーーー(サクネアの右肩を何度も叩く)
「あだぁ!?痛い痛い痛い痛い!なんで叩くんだトゥモシーヌ?!それと、何度も同じ箇所を叩くなぁ!」
「!?トゥモシーヌさん!叩いちゃ駄目ですよー!?」
「あっ、トゥモは飛行魔法の事を指摘されると、もの凄く怒るわよ」
「それを先に言えぇ!!」
「ほらほらトゥモ。そこまでにしときなさい。エンくんも止めてるでしょ」
「・・・・・」
「つぅ・・・たく・・悪かったよトゥモシーヌ」
「それで、エンくん。もしかして、飛行魔法に興味あるのかしら?」
「はい!!あります!!ぼく、空を飛んでみたいです!!」
「そっかぁ・・・あっ、それじゃあ、飛行魔法がどんな物か・・体験してみる?」
「!!出来るんですか?!!」
「うん。基本的に、箒の2人乗りは危ないからしないんだけど、今の小さくなっているエンくんなら・・ふふっ、あたしの膝の上に乗せて飛ぶ位なら、問題無く出来るわ」
「!!本当ですか?!!」
「おい、なんでエンジュを膝の上に乗せんだよ」
「膝の上なら、エンくんをしっかりと持っていられるでしょ。箒の先端に乗せても良いけど、飛行魔法未経験者のエンくんだと、バランス崩して落ちる可能性があるの。危ないじゃない」
「てかよぉ、そもそもそんな危ねぇ物に、エンジュを乗せようとしてんじゃねぇよ」
「サク姉。心配してくれるのはありがたいけど、ぼく、空飛んでみたいよ」
「エンジュ・・・むぅ・・そうだ、エンジュ。空飛んでみてぇなら、あたしがエンジュを思いきりぶん投げて空を飛んでみるのはどうだ?人間大砲だ!」
「ちょっと、サクネア!エンくんを投げるですって?人間大砲て・・どう考えても、そっちの方が危ないじゃない!」
「あぁ?!危なくねぇよ!」
「どう考えても危ないでしょ!そもそも、投げられたエンくんは、どうすんのよ?!」
「んなもん、エンジュを投げた瞬間にダッシュして、エンジュが落ちる前にキャッチするんだよ!」
「滅茶苦茶よ!そんな事、出来る訳無いでしょ!」
「あたしなら出来る!」
「あなたね・・・エンくんも、何か言って・・・ん?」
ーーアオイがトゥモシーヌの腕に収まる円寿を見ると、 その表情を輝いていた。サクネアに投げてもらったら、もの凄い勢いで飛翔するだろう。そして、やがて勢いを失い落下していく自分にサクネアが追い付き見事受け止めてくれる。これまでのサクネアの活躍を知る円寿は、他の者が出来ない事でもサクネアなら出来ると信じていた。そして、飛行魔法で飛ぶのも体験してみたいが、サクネアの提案もそれはそれで楽しそうだと円寿は思い胸を高鳴らせたいたーーー
「えっ?ちょっとエンくん!?もしかして、安全に飛行魔法で空を飛ぶより、サクネアの人間大砲の方が良いの!?危ないわよ?」
「!いえ、そうじゃないですよ。両方とも凄く楽しそうだと思ってます!たしかに危なく見えますが、サク姉なら大丈夫です!ぼく、サク姉の事信じてます。」
「ふっふーん」ドヤァーー
「むっ・・・」
「でも、今回は・・先に提案してくれた、アオイさんの飛行魔法を体験してみたいよ。ごめんね、サク姉。」
「んなぁっ!?」
「エンくーん♡もう、やだ大好き♡」
「サク姉~、フラれた~」
「余計な事言わないの、ナミ」
「ふっ、フラれた訳じゃねぇ!えっ、エンジュ!何回でもやるぞ!人間大砲1人キャッチボール!エンジュが満足するまで何往復でもするぞ!」
「サク姉、いい加減もう諦めなよ」
「チェルぅ・・だって、エンジュがアオイに独占されちまうぅ・・・」
「・・・(うん、アオイさんに突っかかっていたのは、やっぱりそれが理由か)エンジュも、サク姉の人間大砲の事をイヤとは言ってないでしょ。サク姉のとんでも提案を、好意的に受けとってくれる相手なんてエンジュ位なんだから・・・(サク姉にぶん投げられるとか、考えただけで恐ろしい・・なんだよ、人間大砲1人キャッチボールて・・・)」
「ごめんね、サク姉・・・」
「ほら、サク姉がそんなだと、エンジュが心配しちゃうよ」
「・・・分かった、今日の所はアオイにゆずる・・・エンジュ!次はあたしと遊ぶんだぞ!絶対だからな!」
「うん!サク姉の人間大砲キャッチボール、楽しみにしてるよ!」
て事で、あたしがミサキリスちゃんと話している間に、円寿くんがアオイさんと飛行魔法体験をする事になったみたいです。なんだか、人間大砲キャッチボールとか不穏な言葉が聞こえてきた気もするけど・・・とにかく、円寿くん念願の飛行魔法!安全の為アオイさんの膝の上に円寿くんを乗せるのが、別の意味で不安だけど・・・円寿くんを楽しませる為だ、仕方がない・・そろそろ夕暮れだから、そんな長時間飛ばないだろうしね。暗くなると、なおさら危ないですし・・・
「それじゃあ、アオちゃん。エンくんの事、よろしくね」
「はい、女将さん、エンくんとの空中デート、楽しんで来ます。ねぇ、エンくぅん」
「!?こっ、これ、デートだったんですか!?////」
「おいこら、何言ってんだアオイぃ!デートじゃねぇぞ!あくまで、エンジュへのおもてなしだぁ!断じてデートではねぇ!」
「別にいいじゃない!デートでも!」
「デートじゃねぇ!・・・安心しろ、エンジュ!飛んでる間、あたしが地上から追いかけてやる。もしアオイにエロい事されたら、安心して飛び降りて良いぞ。あたしがキャッチしてやる」
「!?えっ、エr・・・////」
「しないわよ、エッチな事なんて!サクネアじゃあるまいし」
「んっだとごるあぁっ!」
「何よ!」
「けっ、喧嘩は駄目だよぉ・・・」
あぁもう、この二人隙あらば喧嘩するなぁ・・お二人で勝手に喧嘩するのは構いませんが、円寿くんの前では辞めて下さいよ・・円寿くんを不安にさせないで下さい・・・
「はいは~い、もうすぐ日も落ちそうだし、喧嘩している時間は無いわよ~」
「アオイさん、サクネアの事は気にせず、早く飛んできちゃって下さい」
「うん、分かったわミサキリスちゃん。それじゃ、行こうか、エンくん」
「はい!よろしくお願いします!」
納得言っていないサクネアさんを横に、アオイさんは手に持つ箒を指でなぞり、まるでエンジンをかける様に飛行魔法を起動させた。箒の下げ緒に魔方陣が展開されると、そのまま柄竹を通過して穂先で止まる。そして、アオイさんが空中に箒を手放すと・・・
「!!箒が浮きました!」
嬉しそうに円寿くんが声を出す。トゥモシーヌさんとサクネアさん意外の面々が、おぉ~・・と、声をあげる。そして、円寿くんを抱っこしたままアオイさんが中に浮く箒に尻を乗せる・・おぉ、完全に乗っていますね・・・
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってきます!」
そう言うと、そのまま勢いよく・・かつ滑らかに空へと飛翔するアオイさんと円寿くん・・えっ?そんな急発進なの?まるで某ハイランドのドド◯パみたいだ・・魔法仕掛けの一人用ドド◯パだ・・二人乗ってるけど・・・
「わ~。凄~い。も~あんな高くに~、アオインヌがいる~。楽しそ~。おにい~、良いな~」
「あれ?サク姉がいないっす」
「サク姉なら、アオイさんが飛び立った瞬間に、ダッシュで追いかけていったよ」
「あっ、本当だ。サク姉が、アオイさんに向かって走って行ってるっす」
本当に追いかけていったのかサクネアさん・・円寿くんが心配な気持ちは分かるけどね・・・う~ん、でもせっかくだから初の飛行魔法を楽しんでいる円寿くんの表情が見たかったなぁ・・なにかカメラでもあれば・・・
スッーーー
ん?トゥモさん、その水晶玉はもしや・・・
ポワァアーーー
「あー!エンくんとアオイお姉さんだー!」
「エンくん、顔キラキラさせてるー。ウケるー」
そうだ!トゥモさんの水晶玉を使った望遠魔法があるんだった!わぁ~・・・ん?う~ん・・なんだか少し画質が荒い様な気が・・いや、円寿くんの表情とかは普通に確認出来るんだけど・・交流会の時に見せられた奴は、もっと映像が鮮明に写っていた気が・・気のせいかな?まぁそれより・・うふふふ、円寿くん喜んでいる。凄く楽しそう・・・むむむ・・アオイさん、ちょっと円寿くんの事、抱きしめ過ぎじゃないですかね?いや、抱きしめていないと円寿くんが落ちる可能性があるんだけど・・・トゥモさんに抱きしめられている時は何も思わなかったけど、アオイさん相手の時は見ていてなんだかそわそわする・・・
一方、空を颯爽と駆けるアオイと円寿。標高はさほど高くなく、地上からも空飛ぶアオイが確認出来る程度の高さを飛行している。
「飛んでます!凄く高いです!空を飛ぶって、こんなに楽しかったんですね!」
「ふふふ、エンくんに喜んでもらえて、あたしも嬉しいわ」
「ありがとうございます!アオイさん!・・・?アオイさん、気になる事があります」
「ん~?何かな?」
「はい、先程地上から急発進した時や、今に至るまで、結構なスピードで飛んでいるのに、あまり風が身体に当たっていない気がします。何故でしょうか?」
「あぁ、それはね、風避けの結界をあたし達の周りに張っているからよ。」
「風避けの結界?」
「うん。まぁ、内容はそのまま、この結界を張っていれば、自身に向かってくる風を最小限に抑える事が出来るの。この結界を張れば、嵐の中でも風に負けず移動する事が出来るわ」
「!凄い!」
「まぁ、あくまで風避けだから、風は防げても雨の方は防げないけどね」
「傘は必要て事ですね」
「ふふっ、そうね。この風避けの結界は、基本的に飛行魔法とセットなの。風避けの結界を張らないと、せっかく飛べても強風に煽られて空からまっ逆さま・・て事になっちゃうからね」
「なるほど」
「エーーーーンジューーー!・・・」
「!」
「げっ・・・(サクネア、本当に追いかけて来てるのね・・結構飛ばしているのに追いつくなんて・・なんてフィジカル馬鹿なのかしら・・・)」
「エーーンジュ!大丈夫かーー?なんもされてねーかーー?」
「大丈夫だよサク姉ーー!サク姉もー、無理しないでねーー!」
「あっ、エンくん、手降ってるー。相手はサクネアさんかなぁ?」
「アオイお姉さん、凄く嫌そうな顔してるー。ウケるー。」
あぁ、サクネアさん、もう追いついたのか・・本当末恐ろしい体力・・・ん?円寿くんが、何やら何か思いついたみたいな表情をしましたが?・・・
「エンくん、ポケットをゴソゴソしてる・・・あぁ、スマホか~」
「写真撮ってるぅ。可愛いなぁ、エンくんは」
「あっ、スマホ落とした」
「手を滑らしちゃったのかな?アオイお姉さんは、気づいた無いみたいだけど」
うふふ、円寿くん撮影に夢中になってスマホ落としちゃうなんて・・ドジっ子さんなんだから、もう♡・・・てぇ・・スマホ落とした!?えらいこっちゃ!円寿くんのドジっ子具合に萌えている場合じゃないぞ!あたしぃ!
「あっ、エンくん慌ててるー」
「ウケるー」
「ちょっとあんた達!ウケるとか言ってないで、エンくんのスマホ探しに行くわよ!」
「とっ、トゥモさん!円寿くんがスマホを落とした辺りに、転移魔法・・お願いできますか?」
コクッーーー
「おっ、魔法で移動する感じ?そんじゃ、あたし達もエンジュのスマホ探し、手伝うよ」
「おにいのスマホを~、見つけるぞ~」
「「「「見つけるー!」」」」
「ありがとうございます、チェルシーさん、皆さん。それじゃあ・・また、大人数を転移させる事になりますが、よろしいですか?トゥモシーヌさん。」
コクッーー
「ありがとうございます。それじゃあ皆さん、集まって下さい・・・よし、トゥモシーヌさん、よろしくお願いします!」
ブオンーースゥーーカッーーー
「行ってらっしゃ~い」
アズさんに見送られ、あたし達が円寿くんがスマホを落としたと思われる付近に転移した。
「よっと・・さてさて、エンくんのスマホはどこだー?」
「壊れてなきゃ良いけど・・・?・・キャッ!?」
カアッ!ーーー(烏の鳴き声)
「ジュリ!?」
「ちょっ!?ジュリ、大丈夫!?」
「あっ・・ぶんなぁ・・何今の烏・・あきらかに、あたし目掛けて飛んできたよね・・・」
はわっ!?烏!?烏がジュリアちゃんに襲いかかってきた!?何故!?ジュリアちゃんのつけてるイヤリングに反応して?いやでも、それだったらシュリナちゃんやランシャの皆さんも着けているし・・・
アァー・・アァー・・アァー・・アァーーー・・・
「ちっ、チェルさん・・なんか、ヤバくないっすか?・・・」
「そうね、ウィネ・・・センパイちゃん達、ちとこれは・・・スマホ探しをしている余裕はなさそうだよ・・・」
アァー・・アァー・・アァー・・アァーーー・・・
「えっ?ちょっ・・何これ?」
「烏の大群に・・・囲まれてる?」
「シュリ、ジュリ、槍を構えて!理由は分からないけど、やらないとこっちがやられるよ!」
「おっけー!」
「・・・・・」
はわーーーー!?なんで!?あたし達どうして烏の大群に襲われそうになっているの!?襲われそうてか確実に襲われる奴!あたし達何か烏を怒らせる様な真似しましたか!?うわーーーん!円寿くんのスマホ、探させてよーーー!!・・・
場面は再び変わり、空駆けるアオイと円寿。
「あっ、アオイさん!ストップ!ストップして下さい!」
「えっ?どうしたの?エンくん?」
「すっ、スマホを・・落としてしまいました・・・」
「えっ!?やだ、大変!どの辺りで?!」
「どの辺りと言われましても・・空中だから目印とかも無いし・・・えと、落としたのは、ついさっきなので・・・あっ、あの辺り・・でしょうか?」
「う~ん、あの辺り・・か・・・とりあえず、戻ってみようか」
「ごめんなさいアオイさん・・せっかくの楽しい時間に、水を差してしまいました・・・」
「大丈夫よエンくん。スマホ落とした事に気がつかなかったあたしにも責任あるんだから。気にしない、気にしない」
そう言って円寿の頭を優しく撫でるアオイ。
「はい、ありがとうございます・・・(多分、もう地面に落ちているだろうなぁ、スマホ。最近のスマホは頑丈だから、多少の衝撃じゃ壊れないけど・・流石に、この高さだと・・・せっかく沢山写真撮ったのになぁ・・・)!・・・?」
「ん?どうかした?エンくん?」
「はい・・向こうから・・何か、こっちに・・・飛んでる?・・・あれは・・・!マイラスさん!」
「えっ?マイラス?・・・あっ、本当だわ」
二人の視線の先・・夕日を背に、箒の乗った三人の影がこちらに向かってくる。箒の柄竹に悠々と立つ男、マイラス・・と、部下のランゲとウィーグラフである。
「やぁ、アオイ。なんだ、連絡が取れないと思ったら、こんな所にいたのかい?」
「いやこんな所て・・ここ空中なんだから、所も何もないですよ、局長」
「ははははっ!そうだったね、ウィーグラフくん」
「マイラス、こっちに向かっているなら、連絡してくれれば・・・て、えっ?もしかして、連絡よこしたの?」
「そうだよ、気がつかなかったのかい?トゥモシーヌにも連絡したのだが、やはり返信はなくてね。何か、取り込み中だったのかな?」
「いや、特に何かあった訳では無いのだけれど・・・」
「マイラスさん!こんにちは!・・あっ、いや、こんばんは!」
「やぁ、クスノキ少年!今日も君の表情は輝いているね・・・んんん!?クスノキ少年!?」
「・・・まぁ、驚くわよね。そのリアクションが正しいわ、マイラス」
「この子が、連絡にあったエンジュ・クスノキ少年ですか?局長」
「うむ、そうだ。しかしまた、何故ここまで小さくなってしまったのか・・訳を聞かせてくれるかい?クスノキ少年。」
「はい!それがですね・・・」
ヒュンッーーー
「!むっ・・・」
パチンーーー
円寿が何度目かの現状に至る経緯を話そうと口を開いた瞬間、黒い鋭利な影が円寿に向かって飛んで来た。しかし、それは瞬時に気がついたマイラスにより阻止される。フィンガースナップを鳴らすと、円寿の前に水球が現れ、飛び込んできたその黒い影を包み込んだ。
「!?」
「えっ!?何?いきなり・・これは・・烏?」
「何故、烏がクスノキくんを・・・」
「構えろウィーグラフ。どうやら、考えている余裕は無いみたいだぞ・・・」
「先輩!?・・・なっ、これは・・・」
ウィーグラフが見上げると、そこにはおぞましい数の烏が自分達を囲む様に飛んでいた。そして、その視線は自分達に向けられていた。
「烏が・・沢山・・・なんだか凄いです!絶景です!」
「クスノキくん・・危機感とか感じ無いんですかね?」
「はははっ!実に肝が座っている。将来は大物になるな、クスノキ少年は!」
「局長・・あなたも大概ですよ・・・」
「ん?そうかな?ランゲくん。いやしかし、烏か・・・クスノキ少年。わたしは烏よりも白い鳩の群れも絶景だと思うぞ!」
「!それも素敵です!」
「もう!エンくんもマイラスも呑気な事言っていないで、この状況なんとかするわよ!」
「!そうでした。あっ・・来ました!」
群れから一羽飛び出してきた烏に、円寿が声をあげる。
その飛び出してきた一羽に続く様に、他の烏達も次々と円寿達目掛けて飛んで来た。即座に指を鳴らし、自分達を囲む様に水球の壁を展開するマイラス。
「!!・・・(水のバリアだ!綺麗だなぁ・・ぼくもいつか使える様になりたいな。)」
「・・・(エンくん・・この状況でも、瞳を輝かせているわね・・・)」
「あっ、ありがとうございます、局長」
「これで、なんとかなります・・かね?」
「いや、ランゲくん、ウィーグラフくん、安心するのはまだ早い。見たまえ。烏達の猛攻が激しく、既にこの水の結界に綻びが出来ている・・破られるのも、時間の問題だろう」
「こいつら、数に物言わせて無理矢理壁を突破する気なのか?!」
「うむ・・間もなく、この水の壁も破られるだろう・・各々、魔法発動の準備を!」
「はいっ!」
「了解です!」
「!・・・(ぼくも、何か出来る事は・・・)」
「・・・(もう、エンくんたら、そんなキョロキョロ周りを見渡しちゃって・・・)エンくん。エンくんが今この場で出来る事は、パッと浮かばない時点でありません」
「!?・・・(心が読まれた!?)」
「ふふっ、エンくんてば、本当に素直。大丈夫よ、エンくん。この烏達はあたし達に任せて、大人しく掴まってて」
「そっ、そうですか・・・」
「やん!エンくん、そんなしょぼんとした顔しないで!」
「クスノキ少年!君はそこに存在しているだけで、周りの力となっているんだよ!だから、今この時は我々を頼ってくれたまえ!」
「・・・(局長、クスノキくんに会って今回でまだ2回目なのに、もうそんなに信じているんだな。流石は親獣家・・・)」
「アオイさん・・マイラスさん・・・はい!それじゃ、よろしくお願いします!」
パアァンッーーー
水の壁が弾け、烏達が次々と襲いかかる。マイラスが指を鳴らし水魔法で動きを止め、アオイが事前に用意していた詠唱文に書かれたカードをなぞり氷魔法で凍らせる。ランゲが高速詠唱からの風魔法で広範囲を凪払い、ウィーグラフが長文詠唱からの火魔法で燃やしつくす。水、氷、風、火・・それぞれの魔法が上手く噛み合い、襲いくる烏の数も徐々に少なくなっていった。が、しかし・・・
「・・よし、あとちょっと・・・」
ピコピコッ「!アオイさん!」
「えっ・・・」
近づく凶音に円寿の頭の耳が反応する。立ち込める爆煙の隙間から、一羽の烏が弾丸の如くアオイの目掛けて飛んでくる。
バッーーバチィーンーーー
「・・・っ!・・・」
アオイの腕の中から瞬時に飛び出した円寿により、アオイを襲う烏からの強襲は防がれた。がしかし、烏と接触した衝撃により空中に放り出され、空中での移動手段を持たない円寿は言うまでもなく・・・
「!?エンくん!!」
「しまっ・・局長!クスノキくんが!」
「分かっているウィーグラフくん!・・ぐっ・・・」
烏からの猛攻を防ぎながら、今にも落下しようとする円寿を水球のクッションで確保しようと指を鳴らすマイラス。しかし・・・
カアッ!ーーバチィーンーーー
「!?」
一羽の烏が円寿を強襲する。そして、接触した衝撃で再び弾かれ、水球のクッションを反れ落下していく円寿。
「!?・・・(2度も烏に・・クスノキ少年は無事なのか!?)」
「!?不味い!アオイ!ここを離脱して、クスノキくんを!」
「でもっ、ランゲ・・烏達が邪魔で、離脱出来ない・・・」
「大丈夫でぇーーーす!!!」
「!?エンくん!?」
「ぼくは大丈夫ですのでぇーー・・皆さんは烏をーー・・・」
「エンくーーーーん!!!」
落下しながらも、徐々に遠のく声で自分の無事を伝える円寿。アオイの悲鳴にも似た声が円寿の名を叫びこだまする。
「・・・(アオイさん、マイラスさん。それと・・ランゲさんと、ウィーグラフさん・・だったよな・・とにかく4人とも、ぼくは大丈夫です!)」
ただただ地上に向かって落下していく・・空中での移動手段を持たない者なら絶望しかないこの状況。だが、円寿は一切慌てる事なく心は落ち着いていた。円寿が冷静である事には、理由があった。
「・・・(今こそ、サク姉から教わった事を実戦する時!)」
そう・・短い間ながらも学んだ、サクネアによる獣人の身体能力を活かした高所からの着地方法である。
「・・・(まずは、地面をしっかりと捉えて、身体のバランスを整えて・・・う~ん・・あの時の崖よりも地面が遠いな・・当たり前か・・そういえば、結局あの時は失敗してサク姉に助けてもらったんだよな・・それで失敗したまま終わっちゃったし・・それに、この高さからだと、流石に上手く着地出来たとしても、身体への負担とかありそうだな・・だっ、大丈夫かな・・・)」
冷静になって落ち着いてみたら少し不安になってきた円寿。
カアッ!ーーー
「!・・・(また烏っ・・・)」
バチィーン!ーーー
「うわっと・・・(また弾いた・・さっきも烏がぶつかる瞬間に、ご加護の力が働いて、烏を弾き返してくれたんだよな・・衝撃が強かったのか、ぼくもふき飛ばされちゃったけど。でも、ありがとうございます!デメティール様!おかげで傷一つありません!女神様のご加護て本当に凄いな・・・!そうだ!女神様のご加護!ご加護の力があれば、地面に激突しても大丈夫かもしれない・・・大丈夫・・だよね?)」
先程烏を弾いた衝撃で、一度整えた体勢が崩れてしまった円寿。地上に到達するまで、もう間もなく・・・
「・・・(でっ、デメティール様ぁ!信じていますからね!このまま地面に落ちても大丈夫だってことをぉ!・・大丈夫・・信じている・・信じているけど・・・すっ、少しだけ・・こっ、怖いよぉ・・・あっ・・・)」
バッーーー
「よっと」
「!!」
ズザザァーーー(円寿を片手で掴み地面に着地する)
「しゃあおらぁっ!エンジュ、捕ったぞぉーーーー!!!」
「サク姉!!」
「よぉ、エンジュ。へへっ、大丈夫か」
わしゃわしゃと円寿の頭を撫でるサクネア。
ブオンーースゥーーカッーーパァーーー
「えっ、円寿くn・・ぶべっ・・・」
「エンくーーん!」
「おにい~、無事~?」
「シュリちゃん、ジュリちゃん、ナミミナさん!皆さん!」
痛ぁい!こらぁ!イケイケ双子ギャル!今あたしにぶつかっていったでしょ!もぉ~、円寿くんに駆けよろうとしたら邪魔された・・・
「サク姉、エンジュ、お疲れ様」
「お疲れ様、チェルシーさん!」
「おう、チェル!ん?なんだお前ら、髪が乱れてんな。喧嘩でもしたのか?」
「あぁ、いや・・喧嘩ってかね・・・」
「エンくーーん!!」
「!アオイさん!」
「クスノキ少年!良かった!無事だったんだね!」
「まっ、マイラス補佐官!?・・・(到着してたの!?)お久しぶりです!戦乙女騎士団所属、ミサキリス・コルンチェスターです!この度は、トゥモシーヌさんを介した連絡に答えてくれて、ありがとうございます!」
「やぁ、コルンチェスターくん、久しぶりだね。そう固くならなくても大丈夫だよ」
「補佐官、乙でーす!」
「でーす!」
「こら、あんた達!流石にノリが軽過ぎるでしょ!」
ありゃ?マイラスさんと・・見慣れぬ魔導士の方がお二人・・男の人の方は、この前の交流会の時にマイラスさんと一緒にいた人かな?只でさえ大人数なのに更に増えたな。て事で、各々今に至るまでの経緯説明です。まずはああたし達。烏の大群からの襲撃は思っていたより早く終わりました。だいたいの烏をトゥモさんの雷魔法による広範囲攻撃で倒してくれました。あとは、ミサキリスちゃんとイケイケ双子ギャル、ランシャの皆さんが各個撃破という形です・・・ナミミナさん、サボっていませんでしたか?いや、短弩を撃っている所はちゃんと見てましたよ。ただ途中で弾の弓が切れたのか、撃っているフリをしたいた様な・・・あたし?あたしはですね、トゥモさんの背中にいました・・・いや、違うんですよ。あたしみたいな素人が入り込むよちとか無いと言いますか・・てかあたしが戦う手段といったら、静電気程度の威力しかない雷魔法だけだし・・・あっ、指示・・そう、指示を出していました!皆さんに!2時の方向から来ます!みたいな事言ってましたよ、うん。それで、烏を撃退してトゥモさんの水晶玉を確認したら、空にいたはずの円寿くんが地上でサクネアに抱っこされていたので何事かと思いここに来た次第です、はい。続いて円寿くん達。ふむふむ、マイラスさん達と合流しまして・・えっ!?そっちも烏に襲われたんですか!?それで円寿くんが落ちて・・・ん"に"ゃ"!?落ちた!?円寿くんあの高さから落ちたの!?ぎゃ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!想像しただけで生きた心地がしないいいいぃぃ!!パラシュート無しのスカイダイビングとか・・怖かったよね、円寿くん・・・
「助かった今だから言えるんですが、怖かったんですけど、なかなか出来ない経験だったので、実は結構楽しかったです!」
「わ~。おにい~、クレイジ~」
「ぬっふっふ、流石エンジュ。肝が座ってんな!流石獣人だ!」
「いや、獣人でもあの高さから落ちたら死んだと思うよ、サク姉・・・」
楽しかったと言えちゃう円寿くん・・恐ろしい子!!で、落ちた所をサクネアさんに助けられと・・なるほどね。
「!そうだ、ぼくスマホを落としたんだった。探さないと!」
「むっふっふっふっ・・・」
「?サク姉?」
「エンジュ。エンジュが探しているのは・・・これか?」
「!僕のスマホ!サク姉が拾ってくれたの?!」
「そうだぞエンジュ!!ちなみにな、拾ったんじゃなくてな、落ちて来た所を空中で捕まえたんだぞ。エンジュの事は地上からしっかりと見てたからな。だから、ほれ!傷一つついていないぞ!」
「凄い!サク姉!ありがとう!」
怪しい笑い声からの不適な笑みで円寿くんに視線をやり、胸の谷間からシュッとスマホを取り出すサクネアさん・・・ふふふっ、良かったねエンジュくん。スマホが無事で!ついでにサクネアさんも、キラキラさせた目の円寿くんに褒められて凄くご満悦だ。あたしからも礼を言っておきます・・心の中でね。口に出して言えない理由があるんですよ・・それはね・・・円寿くんのスマホをご自身の胸の谷間に挟んでいた事です!円寿くんのスマホをなんて場所に入れとるんですかぁ、サクネアさん!?円寿くんはそのスマホをこれからも使うんですよ!?むぐぐぐ・・円寿くんが気がついていないのが幸運か・・・
「エンジュ~、あたし凄いか~?」
「うん!凄いよ、サク姉!」
「はっはっはぁーーー!!!そうだろ?そうだろエンジュ!やっぱ最後に頼りになるのはアオイでもトゥモシーヌでもなくあたしなんだなぁ~!なぁ、エンジュ~~~~。」
「むっ・・・」
「・・・・・」プクー
サクネアさん、そんなあからさまに言わなくても・・ほら、アオイさんが訝しい表情で見てますよ。トゥモさんなんか、可愛らしく頬っぺをふくらませちゃって・・・ほわっ!?頬擦り!?円寿くんの超絶柔らかモチモチ頬っぺたに頬擦り!?(触った事無いけど・・・)顔が近い所か零距離接触している!?ぬぐぐぐぐ・・なんて羨ましい事をおおおおお・・・
バンバンバンバンバンバンバンバンーーー(執拗にサクネアの右肩を叩く)
「あだぁ!?痛い痛い痛い痛い痛い!ははっ、すまんてトゥモシーヌ!今のは嘘だ!あだっ・・だから叩くなぁって!」
「トゥモシーヌさん!?叩いちゃ駄目ですよー!」
ほらトゥモさん怒った・・あれ?サクネアさん・・叩かれながらも少し笑ってる?なんか面白くなっちゃってます?
「はははっ!こんなに感情的なトゥモシーヌを見る事が出来るとは・・・うむ、見た所、この人の繋がりは・・クスノキ少年、どうやら君が中心となっているみたいだね。うん、素晴らしいよ、クスノキ少年!」
「!マイラスさん!ありがとうございます!」
「あぁ?!んだってめぇ・・なに気安くエンジュに話しかけてんだぁ!この魔導士がよぉ・・・」
「おっと、これはすまないね」
「!?サク姉!マイラスさんは凄く良い人なんだよ。この前も、トゥモシーヌさんを助けてくれたんだ。だから、乱暴な口調は使わないで」
「むぐっ・・・そう、なのかエンジュ・・すまねぇ、つい・・・」
「はははっ、大丈夫、わたしは気にしていないよ。改めて、魔導局局長・・マイラス・ウールニッチだ。サクネア・バサロー。あなたの働きの事は聞いている。世の獣人の為の活動・・尊敬に値する。わたしはあなたに敬意を払います」
「・・・むぅ・・・」
サクネアさん、滅茶苦茶警戒している・・円寿くんに言われた手前、威嚇はしなくなったけど・・まぁ、サクネアさんの性格的にすぐに信頼しろてのは無理か。
「・・・でぇ、マイラスつったっけか?トゥモシーヌが言ってたがよ、エンジュの事、元に戻せんのかよ?」
「あぁ、そうだったね。まずは、どうしてクスノキ少年がこの状態になったのか、話してくれるかい?クスノキ少年」
「はいっ!」
て事で、本日何度目かの円寿くんが小さくなった経緯説明です。円寿くんも何回も同じ事話すのお疲れ様です。そして予想通りの、マイラスさんとお連れの方々によるびっくりリアクション。さて、小さくなった理由は説明しましたが・・どうなんですかマイラスさん?円寿くんは元に戻れるのでしょうか?!
「なるほど・・何故毒を飲んで小さくなったのか・・そもそも何故毒を飲んでクスノキ少年が無事なのかは分からないが・・とにかく、毒が原因と言うならば、毒の成分を抜き出せば元に戻る可能性はあるね。ほら、この前のトゥモシーヌにした時みたいにね」
「!あの、水で身体を包み込む魔法のことですね!」
「あぁ・・んで、つまり・・エンジュは元に戻んのか?」
「うむ、過去に前例の無い事態だからね・・100%元に戻せるかと言われたら、難しいかもしれないね」
「あぁ?!戻せねぇのかよ!んじゃ駄目じゃねぇか!」
「さっ、サク姉ー!怒らないでー・・・」
「だが・・・」
「!」
「それは他の魔導士では難しいという話しだ・・・」
おや?マイラスさんの雰囲気が・・変わった?
「わたしなら出来る!」
「!?」
「いや出来るじゃない・・かならず元に戻す!自分が魔導士だから助けるのか?いや違う!敬愛する獣人相手だから助けるのか?いや違う!獣人や魔導士等関係ない・・わたしは、一人の信念ある者として!他でもない友を救う事に対して!戻す事は出来ない等と!言うものかっ!!」
「!!」
「わたしは誓う!愛する我が国我が女王の名の下に・・クスノキ少年!君を必ず元に戻す!100%だ!!!」
「!!!」
うわあぁぁぁぁ!?マイラスさんが熱血モードになってらっしゃるーー!?完全にスイッチ入っているよこの人ーー!?
「せっ、先輩・・局長、あんな事言ってますけど・・本当に元に戻せるんですか?」
「・・・いやまぁ、局長の事だ・・確信があるのだと・・思われる・・・(おそらくはクスノキくんへの思いの強さだろうけど・・・それにしても局長、あのサクネア・バサロー相手に一切怯む事が無かったな。それ所か・・今の熱弁でむしろサクネアを圧倒している・・・いや、というよりも・・・引いてる、のか?あれは・・・)」
マイラスさんの圧倒的熱弁に、あたし含め若干引いてる中・・円寿くんだけはマイラスさんの思いを真っ正面から受け止めていました。あとでこの時の円寿くんの心境を聞いたら、『あの時のマイラスさんは凄くカッコ良かったです!熱い台詞が、まるでヒーローみたいで・・感動しました!』て言ってました。あたしは、そんなこっ恥ずかしい台詞でも素直に受け入れてくれる円寿くんの事が好きだよ!て事で・・円寿くんを元に戻す為、戻って来ました我らがホーム、デア・コチーナ。例によってトゥモさんの転移魔法で一瞬で移動しました。さらに例によって今日も沢山転移魔法を使ったので、トゥモさんはおやすみタイムです。あたしの膝枕ですやすやと眠りに入りました。まさかあたしの人生初の膝枕をする相手がトゥモさんとは・・少し緊張するな・・ごめんなさいねトゥモさん、円寿くんの膝枕でなくて・・今の円寿くんは、マイラスさん協力の下、元に戻る為の魔法を受ける為に部屋に入りました。元に戻るとはつまり小っちゃくなった身体が大きくなるという事。なので、そのまま大きくなったらきつきつの服を着る状態になってしまうので円寿くんは現在下着姿になっています・・そう、円寿くん今半裸なんです・・パンツ一枚の姿なんです・・・あっっひゃあぁあぁっっ!!円寿くんの、半裸ぁ!そっ、想像しただけで・・・ふっっ、ふぉぼぉっひゅうっっ・・・いっ、いかんいかん・・これ以上想像すると、鼻血が出そうだ・・また周りから変な奴だと思われる・・そんな、半裸の円寿くんが・・マイラスさんと、二人きりで密室にいるんです・・美少年と美青年が、二人きり・・・ほぉ・・ほほほほほほほほ・・二人共、そういった感情が一切無いのもまた良き良き・・ふふふふふふ・・・
「わ~。先輩ちゃ~ん、なんだかすごく楽しそうな顔してる~。えいえい(明奈の頬をつつく)・・・反応無~い」
「こぉら、ナミ。先輩ちゃんで遊ばないの・・・(先輩ちゃん、また明後日の方向向いて笑ってる・・・)」
「あらあらうふふ、ナミちゃん。アキちゃんは、今自分にとって大切な事を頭に描いている所だから、そっとしておいてあげて」
「なるほ~。先輩ちゃんはアーティストだったのか~」
「・・・(アキナさん、なんだかボォ~っとしてるけど、大丈夫かな?)」
「ミーサー!どうしてあたし達はエンくんが大きくなる瞬間に立ち会え無いのー?」
「シュリ、言ったでしょ?エンくんが、下着姿を異性に見せるのは恥ずかしいからだって」
「エンくんの下着姿見せろー!」
「パンツ一丁のエンくんを見せろー!」
「そういう所も含めて駄目だって言ってるのよ!仮にエンくんが良いと言っても、あんた達は入れないからね!」
「ブーブー。」
「あたしは見られても恥ずかしくないぞ!」
「あなたの話しはしていません、サクネア!」
「・・・(あまり騒がしいと、局長が魔法に集中しずらいのだが・・大丈夫だろうか?)うっうん・・アオイ、少しよろしいですか?」
「すぅー・・はぁ♡・・・ん?なに、ランゲ?」
「・・・先程の烏の件、あなたはどう考えますか?」
「そうね・・二ヶ所同時に烏の大群に襲われる・・偶然な訳無いわよね。明らかにあたし達を狙った何者かの仕業よね。今思えば、トゥモへの連絡やマイラスからの連絡が届かなかったのも、魔力による妨害だとすれば納得がいくわ」
「やはりそうですか・・・アオイ、やはりその何者かの狙いは・・クスノキくんだったのでしょうか?」
「・・・その可能性はあるわね・・・」
「その、あたしは今日初めてお会いしたので、詳しくは分からないのですが・・クスノキくんは、人から恨みを買う様な真似をする子、なのでしょうか?あたしには、そう・・見えないのですが・・・」
「大丈夫よランゲ。少なくとも、あたしの知るエンくんはそんな子じゃないわ・・まぁ、あたしもエンくんに会ってほんの数日だけど・・・おそらくだけど、エンくんが小さくなった原因の毒を飲ませた魔導士しかり、烏を使役した魔導士しかり、エンくん個人への恨みではなく、エンくんの周りにいる者への嫌がらせが理由だと思うわ」
「周りへの・・嫌がらせ?」
「ええ。この大陸唯一の転移魔導士のトゥモ。獣人に害をなす犯罪組織や魔導士を撃退して回るギルドのリーダーであるサクネア。戦乙女騎士団所属のミサちゃんにシュリちゃんジュリちゃん。精根の腐った連中から、嫉妬や自分達の仕事を邪魔されたとか、個人的な恨みをもたれてもおかしくない者達が、エンくんの周りに集まっている。直接彼女達を叩く事が出来ないのなら、その中心にいるエンくんに目をつける者もいるでしょう。エンくんが酷い目に合えば、彼女達への報復になるのだからね・・本当、最低よね・・・」
「なるほど・・・それでは、襲撃した者を特定するには・・候補が多すぎるという事ですね」
「そうね。あたしが恨みを買っている可能性もあるし・・ランゲ、あなたかもしれないわね」
「はは、そう思いたくありませんね・・・それで、アオイ。もう1つ、よろしいでしょうか?」
「ん?なにかしら?」
「はい・・・それ、なんですか?」
「えっ?それ?あぁ、これは、さっきまでエンくんが着ていた制服だけど?」
「いや、それは、分かるのですが・・・何故、あなたが持っているのです?」
「何故って・・・貸した物を返してもらっただけだけど?ほらあたし、魔導学園の教師だから。臨時だけど」
「はい・・それは、存じています・・・」
「この制服は、エンくんが1日着ていた訳でしょ。ちゃんと綺麗にしないと返せないじゃない。だから、あたしが持ち帰って、ちゃんと洗濯してから返そうと思って♪ふふっ。」
「・・・そう、ですか・・・(さっき、制服の匂いを嗅いでいた様な・・・アオイ・セブンストール。魔導士の名門、セブンストール家出身。幼い頃から頭脳明晰で、魔導士としての実力、実績も申し分無し。その才覚により14歳の頃には魔導学園を卒業できたがあえてそれをせず、共に歩んできた学友達と一緒に18歳で卒業。その後の勤め先は引く手あまただったが、彼女が選んだ道は後進の育成。つまり、魔導学園の教師。それも臨時。周りの者達は、何故アオイほどの魔導士が学園の教師に?彼女ならもっと上の研究機関に入れたのでは?と、疑問に持たれたとか。また、名門の出で、実力才覚もありこの美貌・・多くの殿方が彼女に婚姻の申し立てをしたそうな・・そしてそれを全て断ったそうな・・そんな彼女のお眼鏡にかなう殿方が・・・なるほど。アオイ・・あなたはクスノキくんの様な幼いタイプの子が好み・・つまりショt・・・これ以上は言うまい・・まてよ、彼女が学園の教師を選んだのって・・・アオイ、たしかにあなたも、恨みを買っててもおかしくないですね・・・)」
「ん?なによランゲ?そんな人の顔を、じぃーっと見て」
「あっ、いやなんでも無いです・・・」
「アオイお姉さん!」
「あら、なにかしら?シュリちゃんにジュリちゃん」
「それ、エンくんが来ていた制服ですよね?」
「うん。そうだけど」
「売りましょう!」
「えっ?」
「デア・コチーナのお客さんには、エンくんのファンになってる人もいるんです!」
「そういう人達に、その制服がエンくんの汗と匂いが染み付いた制服だと言えば、高く売れると思うんです!」
「だから・・・」
「売りましょう!!」
「えぇ・・・」
「お客さんが駄目なら、パイセンに売っちゃいましょう!パイセンならきっと高値で買ってくれるはず!」
「たしかにー!シュリ、あったま良い!」
「おいおいまてまて、エンジュの着てた服ならあたしが買うぞ!」
「マジですか、サクネアさん!まいどー!」
「まいどー!」
「あ・ん・た・た・ち・・・」
「ひいぃ!?」
「なんてゲスな発想を・・・あんた達!今日という今日は許しません!夜通し説教!!」
「いやー、助けてー」
「お許しをー」
「あはは、またいつものだ。ところでサク姉。エンジュの服を買うて、冗談でしょ?」
「えっ?」
「えっ?」
・・・・・
アァー・・アァー・・アァー・・・
場面変わり、デア・コチーナがある街一帯を眺める事ができる小高い丘。沈み行く夕日に照らされたローブの人影の肩に、一羽の烏が脚を下ろす。
「・・・ふむ、あれが彼が言っていた、エンジュ・クスノキか・・なるほど・・・少し、様子を見ておくとしましょう・・・・」
ーー続くーーー
この度は、ケモ耳美少年のなすがまま異世界観光、第七巻をお読みいただき誠にありがとうございます。にがみつしゅうです。今回のお話しですが、前回の後書きで短い接続章を書くと言いましたが、普通に一巻分書いてしまいました。今回のお話しは書いてて凄く楽しかったです。さて、円寿の本当の年齢がとうとうランシャの面々とアオイとトゥモシーヌに知られました・・そう、自分も書いている内に気がついたのですが、そういえばトゥモシーヌも円寿の本当の年齢知らなかったですよね。しかし、円寿が18歳と聞かされてチェルシーや一部ランシャの面々、アオイは驚いていましたがトゥモシーヌやサクネア等はそこまで驚いていませんでした。トゥモシーヌが驚いていない理由・・それは、年齢を知る前にすでに別の事で驚いていた事にあります。トゥモシーヌが円寿を初めて見た時・・交流会で浮遊する足場に乗ってはしゃいでいる円寿を水晶玉の望遠魔法で覗いていた時の事です。トゥモシーヌは思った、『獣人の子供がいる・・・女の子?男の子?どっちだろう・・・』と。そうです、トゥモシーヌはミサキリスが初めて円寿を見た時に女の子と勘違いした様に、トゥモシーヌもまた円寿の性別がどっちなのか分からなかったのです。そして、円寿と直接会って接していく内に、男の子かな?と思い初め、決定的に男だと分かったのが皆さまお分かりの通りお風呂に入った時です。あのくだりでトゥモシーヌは地味に驚いていました。トゥモシーヌが円寿を寮に女子トイレしかないのに一人でトイレに向かわせたのは、円寿の性別が分からなかったのと、うっかりです。ならしょうがないね。
さて、円寿の本当の年齢を聞いてそれぞれリアクションを見せたラング・ド・シャットの面々。サクネア、ミョリン、ケーギン以外の年齢が不明だった面々の年も判明しました。チェルシーは円寿と同い年の18歳。ナミミナが14歳。ウィネが最年少の12歳。そして、判明していなかったランシャの面々三人の名前も出ました。ざっくり説明します。
「あたしは15歳!」と言ったのが、チクレーチ。
「あたしは16歳!」と言ったのが、ピュマ。食事の時ジュリアの隣にいた娘です。
「あたしは13歳!」と言ったのが、メグです。彼女達の個性が分かるお話しも、いつか書けたら良いなとおもっています。ナミミナ含めたランシャの年少組が円寿に一瞬にしてなついたのは獣人の習性です。年上は頼りにし、年下はしっかりと面倒をみるというのが獣人の習性です。そして、そんな円寿ですが・・小さく・・いや、小っちゃくなりました。もともと見た目は小柄、中身も純粋無垢な円寿が小っちゃくなっても変わらないのでは?と、思った方もいると思います・・・変わります!変わるんです!身長156cmが107cmになるのは違います!これまでは、この作品をおねショタ(疑似)としていましたが、今回の話しははっきりと言えます。おねショタですと!!人それぞれにおねショタの定義があると思いますが、僕的に今回の話しは僕が一番好きなおねショタエピソードです。書いて楽しかった理由がこれです。おねショタについて色々と話したいですが、後書きの文字数に抑えられる自信が無いのでここでは断念させていただきます。続いてランシャのメンバー最年少のウィネの話し。もともと彼女はこの作品に登場予定の無かったキャラです。そもそもランシャは、サクネア、チェルシー、ナミミナ以外の面々はその他大勢位の設定でした。そのせいか、ウィネの口調が初登場時と今でだいぶ違います。しかし、書いていく内にウィネのようなポジションのキャラが必要になっていきまきた。また、「○○っす。」という口調が特徴のウィネ。実はこれ、彼女なりにルールがあります。年上には、「○○っす」と話し、年下には普通の口調で話します。その為、前回まで円寿に話しかける時は普通に話し、今回の話しで年上と分かった瞬間「○○っす」と使う様になりました。なので、現状ウィネの周りには年上しかいないので、基本的に「○○っす」口調で話すのがウィネです。ややこしくてすみません。そして、新たに登場したマイラスの部下で魔導局局員のランゲとウィーグラフ。ウィーグラフは作中明奈が言った通り、マイラス初登場の回でマイラスを呼んだ局員が彼です。そのウィーグラフの先輩で、作中アオイがショタコンなのでは?と思ったのがランゲ。高速詠唱を得意とし、ベリーショートの黒髪にキレ長の目が特徴的な女魔導士です。少し頼りない後輩と、少しズレている上司を支える優秀な局員です。
さて、次回こそは第三章に入ります。ちょっとだけシリアスです。シリアスを書くのって大変ですよね。どうして自分の考えたキャラ達を傷つけなきゃいかんのかと思います。でも頑張って書きたいと思います。
それでは改めてまして、ケモ耳美少年のなすがまま異世界観光、第七巻をお読みいただき誠にありがとうございました。