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ケモ耳美少年のなすがまま異世界観光   作者: にがみつしゅう
3/13

大陸唯一の転移魔法使いによる異世界お・も・て・な・し

意図せず相成ったあたしと円寿くん、そして円寿くんがこの世界(アトラピア大陸)で出会った美少女やエッチなお姉さん達とのランチ会の一件から早二日後。ミサキリスちゃん達戦乙女(ワルキューレ)騎士団と魔導省の交流会当日の日の昼頃。あたしと円寿くんは、交流会に参加するにあたってアズさんから一日休暇を貰った。


コンコンーーー


「あっ、はーい」


ガチャッーーー


「アキナさん、おはようございます。支度はできましたか?」

「うん、できてるよ。えぇと・・よし、それじゃ行こうか」

ミサキリスちゃんが迎えにきてくれた。ミサキリスちゃんは、あたしがこの世界に来て会った人達の中で一番ちゃんとしている。あぁ、ナタリーさんもちゃんとしている人だ、もちろん。この()は本当にしっかりしている。だからこそ、どうしてあのイケイケギャル双子と上手くやっていけてるのが不思議というか・・いや、上手くやれてるのか、あれ。幼馴染みて言ってたっけか。長い付き合いになると、相反する存在でも上手く混じり合う事が出来ると・・・まぁ、それはいいとして。これから、魔導省の本部に行くのであるが、そこまでは馬車で向かうらしい。なんでも、魔導省の本部はこの国の王様が住むお城と五分張る程の大きさのお城を本部としている。そして、本部への安易な侵入を妨げる為に城の周りを巨大な水堀で囲っている。本部まで行くには二つの方法があり、一つは魔導士達が使う事が出来る浮遊又は飛行魔法で飛んで渡る方法である。そもそもこの水堀は、魔導士だけが渡れる前提で作られている為、飛行手段を持たない非魔導士が許可なく入る事を防ぐ為にある。そしてもう一つは、水堀の外側南側にある来客用の入口を使う方法。これなのだが、来客用の入口があるとしか教えもらえてないので、そこからどう本部のあるお城まで渡るのかは分からない。船の用な物で渡るのか、はたまた水堀の中に本部まで繋ぐトンネルの用な物がありそこを通るのか。デア・コチーナの入口の前で、迎えの馬車を待ちながらそうこう考えていた。すると、あたしを迎えに来た後に、もう一人この交流会に参加する人物を迎えに行ったミサキリスちゃんとその人物が入口から出てくる。あたしは、その人物が視界に入った瞬間、ほんの少しの緊張感が沸くのを感じると同時に別の感情も沸いた事を感じた。

「あっ、おっ、おはよう、円寿くん・・・」

「・・・おはようございます、先輩・・・」

あはあぁふぅあぁ!しょんぼり円寿くん!落ち込み顔の円寿くんも可愛いぃよおぉ!てぇ、そうじゃない、そうじゃない。昨日のとある一件から、円寿くんは少し落ち込みぎみなのである。円寿くんが落ち込んでいる理由。それは決して、一昨日のあたしの()()発言ではない。()()()それではない。そうはっきりと言える理由がある。


ーーーー

一昨日のランチ会の後、あたしは部屋で横になっていた。

「・・・・ぐぅ・・ぬあぁっ!・・あぅっ、くうぅ・・おおぉ・・・」

そして悶えていた。当たり前である。推しに対するあの様な発言。極刑物だ。死にたい。誰かあたしを殺して。殺して下さい。あぁ、円寿くんに嫌われちゃったかな。嫌われたに違いない。せっかく円寿くんと楽しい異世界ライフが送れると思ったのに。死にたい。等と悶えながら、その日あたしはずっと部屋に引き込もっていた。時折、ミサキリスちゃんやアズさんが扉をノックし声をかけてくれたがあたしは『今日はこのまま寝かせて下さい。』と言って、部屋から出ようとしなかった。そんなあたし対しても、ミサキリスちゃんとアズさんは優しい言葉をかけてくれた。さらに、あたしが部屋に引き込もった直後には、アズさんが作ったクッキーを、夕方頃には夕飯を扉の前に置いてくれていた。なんて良い人達なんだ、それに対してあたしは本当惨め・・と思いながらその日は部屋に引き込もったまま一日が終わった。翌朝、一日経ち時間があたしを前向きにしてくれていた。謝ろう、しっかり頭を下げて謝罪しよう。嫌われちゃったかもしれない。顔を合わせてもらえないかもしれない。この謝罪が自己満足と思われるかもしれない。それでも、あたしは円寿くんに謝らないといけない。部屋を出たあたしは、円寿くんの部屋へと向かった。向かったけど引き返し、まだ誰もいないホールへと向かった。引き返した理由はというと、円寿くんの部屋が何処か知らなかったからである。とにかくこのお店の中で円寿君がいそうな場所は何処かと考え、とりあえずホールにやってきた。すると・・・

「あっ・・えっ、円寿くん・・・」

いた。朝の準備中であった円寿君がそこにいた。円寿くんもあたしに気づき、あたしに顔を向ける。言え、言うのよあたし。円寿君に謝るのよ。額に汗が浮かぶ。もの凄く緊張している。唇が鉛の様に重い。早く、早く言わないと・・・

「!おはようございます!先輩!」

「!?」

なん・・だと・・・あたしは意表を突かれた。昨日の事を気にしていない?いや忘れてる?いやそんな筈は無い。だって、あんなに(うぶ)な円寿くんに、どっ、童貞なんて言葉を言ってしまったのにそれを忘れるなんて・・まてよ、もしかしたら円寿くん、実は童貞では無いのでは。たしかに、童貞じゃ無いのだとしたら、別に童貞と言われた所で何を思う訳でもない・・いや、その場合あたしの円寿くんに対するこの感情を一旦整理する必要があるのだが・・んな事はどうでもいい。とにかく、円寿くんが忘れていようが童貞じゃなかろうがあたしは謝らないといけないんだ。

「えっ、円寿くん・・あの・・・」

「!先輩!朝ごはん出来てますよ。食べますか?」

「えっ!?あっ、あぁうん。食べる。食べます、はい。」

言えない。言おうとする事が出来なかった。結局あたしは、その後も何度か円寿君に謝ろうとするものの謝る事が出来ずにいた。あたしがもどかしくしていた夕方頃、デア・コチーナにサクネアさん所のギルドの人がやってきた。

「すいませーん!エンジュは・・あぁ、いたいた。エンジュごめん!ちょっといい?」

「!ウィネさん!どうしましたか?」

円寿くんがウィネという人と少し話しをしていると、驚いた表情を見せた後に直ぐに落ち込む表情になるのを見てとれた。どうやら、サクネアさん所のギルドに急遽仕事依頼があったらしく、それが明日つまり魔導省との交流会の日と被りサクネアさんが交流会に参加できなくなった。という話しである。それを聞いた直後は落ち込んでいたものの、仕事に戻るといつも通り明るく接客をしていたので気にしていないのかと思っていた。けれど、仕事が終わると落ち込んだ表情に戻ったので、やはりサクネアさんの不参加は円寿くんにとって悲しいものというのが伝わった。


ーーーー

そして今日(こんにち)に至る、てな訳である。

「エンくん、そんなに落ち込まないで。しょうがないと言ってはそれまでだけど。せっかくなんだから、サクネアの分まで楽しまないと。エンくんが落ち込んでるて聞いたら、サクネアきっとショック受けると思うよ」

居た堪れなくなったミサキリスちゃんが円寿君を励ます。

「・・・うん、それは、分かってるんだけど、サク姉、この交流会楽しみにしてたのに、急にいけなくなっちゃって、そんなサク姉の気持ちを思うと・・なんだか、サク姉が不憫だなぁて・・・」

優しい!円寿くん優しいなぁ。サクネアさんが参加できなくなった事に落ち込んでいるんじゃなくて、参加できなくなったサクネアさん自身がきっと悲しんでいるだろうなと、それにたいして悲しんでいると・・円寿くん、本当に円寿くんて・・優しいが過ぎるよぉ・・・まぁ、サクネアさんの事だから、円寿くんと一緒の時間を過ごす事が目的であって交流会事態は重要では無いと思うけど・・まぁいいや。それよりも、そんな円寿くんの優しさに、比べてあたしは、クソみたいな理由で悩みやがって・・・

「えっ、円寿くん!ミサキリスちゃんの言う通り、サクネアさんの分まで沢山楽しもうよ!もっ、もしかしたら、サクネアさん、直ぐに仕事終わらせて、途中から参加出来る可能性もあるかもしれないし。その時に、円寿くんが落ち込んでたら、それこそ、サクネアさんが悲しむよ。だからっ、その、元気出して!円寿君!」

「!?せっ、先輩・・・そう・・ですよね。サク姉だったら、あっという間に仕事を終わらせる事位、出来ますよね。分かりました!ぼくもう落ち込みません!全力で交流会を楽しみます!」

それまでヘニャンと落ち込んでいた円寿くんの表情と頭の耳が、ピコンと勢いよく立ち上がるのが見てとれる。良かったぁ、円寿くんの元気になって良かったぁ。推しが落ち込んだままでいるのは心臓に悪すぎるからなぁ。

「おまたー!三人共まったー?」

「あれ~?三人共、何話してるの~?もしかしてぇ~、一昨日の・・ハブッ・・・」

「さっ、さあ!全員集まった所だし行きましょうか!近くに馬車を呼んでますよ」

円寿くんに元気が戻り、良い感じになってた雰囲気の所を壊すかの如くやってきたイケイケ双子ギャルの二人。慌ててジュリアちゃんの口を塞ぎ、口角をヒクヒクとさせながら出発しようとするミサキリスちゃん。その左手は、ジュリアちゃんの腕をつねっていたのであった。


「ねぇねぇエンくん!もし魔法が使えたら、どんな魔法が使いたい?」

「!どんな魔法!えぇとねぇ・・・」

予定の時刻通り、あたし達五人は馬車に揺られて魔導省の本部に向かっている。馬車内は、あたしとミサキリスちゃんか隣り合わせに座り、対面は円寿くんを挟む様にイケイケギ双子ギャルが座っている。あはぁ!円寿くん!蝶ネクタイ着けてる!おめかししてる!可愛いぃなぁ・・・にしても、近い。双子二人の距離がだいぶ近い。話しが盛り上がってて円寿くん気づいてないけど、おっ、おっぱい当ててる。盛り上がってるから円寿くん気づいてないけど、この双子さりげなくおっぱい当ててる!円寿くんが気づかなくてもそれで良し。気づいた場合は円寿くんをイジれるのでそれも良し。ぐうぅ、これがイケイケギャルの成せる技・・陽キャ恐るべし! 

「う~ん・・沢山あるけど・・やっぱり一番は、人を守れる魔法が良いな」

「人を守れる・・・」

「魔法?」

「うん!ぼくが大切に思ってる人達や、これから大切になる人達、ぼくが認知していないけど、世界中にいる様々な人やその人の大切な人を守る事が出来る魔法が使えたら良いな」

真っ直ぐな目でそれを話す円寿くんを、あたしは疑う事などしない。それは円寿くんの事を推してるからとかそういう事ではない。そのあまりにも純粋(ピュア)で壮大な思いは、場合によっては無知な子供の戯言だと笑う大人達がいると思う。自分は善人とでも思われたいのか、この偽善者が!と言う人もいると思う。でも、多分これが円寿くんの本音何だと思う。どうしてかと言われると、あたしも分からない。でも、円寿くんはこういう事を本気で言える子だって事は、ハッキリ言える気がする。

「え~、エンくんつまんな~い」

「!?」

「もっとこう、魔法使ってお金持ちになるとかぁ、神様みたいな魔法を使って史上最強になるとかぁ・・・」

やはり、面白さ重視の今時ギャルのこの双子には通じていなかったか。残念円寿くん。

「あんた達!人の純粋な思いをつまんない何んて言うんじゃないの!まったく・・ごめんね、エンくん。嫌な気持ちにさせちゃったよね?」

「ん~ん、大丈夫だよ!う~ん、たしかに、せっかく使える魔法にしては、回りくどかったかもしれないな・・!そうだ!分かりやすく、皆を無敵にする魔法はどうかな?」

本当に分かりやすくなっただけで、さっき円寿くんの言った人を守る方向からは変わっていなかった。ただ、双子ギャルの言ったつまんないて言葉は円寿くんには何となくズレて伝わっている気がする。

「イェーイ、エンくん無敵ー!」

「無敵、無敵ー!」

「!うん!無敵にするよ!」

あぁこの陽キャ特有の中身の無いただただテンションが高いだけのノリ・・苦手だ。凄いなぁ円寿くん。双子ギャルのノリにちゃんと合わせられてるなんて。陽キャにもあたしみたいな陰キャにも訳隔たりなく接する事が出来る人がモテるて本当なんだなぁ・・・と、そうこう考えている内に、馬車は目的地にたどり着いていた。外を覗いてみると、おそらくミサキリスちゃん達の同僚であろう装いをした美少女達が集まっているのが見てとれる。そして、そんな彼女達の目の前に広がっている風景こそが話しに聴く魔導省本部を囲む巨大な水堀である。

「水堀・・というか、これもう(みずうみ)だよね?この大きさは・・・」

「やっぱパイセンもそう思います?あたし達も、初めてみた時マジビビりしましたもん」

「魔導省て、かなり待遇が良いみたいなんですよ。お金があるから、これ位の規模の作りが出来るって言ってましたよ。知らんけど」

なるほどね・・て、知らんのかい。まぁ、それはいいとして。いやぁ、流石の異世界クオリティ。これはなかなかに()えますなぁ。写真撮っとこ。あぁもうさっきから円寿君が目をキラキラさせちゃっているんですよぉ。ん可愛(がわ)いぃなぁもう。

「お城!先輩、お城があります!東京D-z2ランドにあるお城よりも大きいです!はぁあぁ・・・」

うんうん、そうだねぇ。D-z2ランドのお城は本物じゃないからねぇ。こっちは、本物お城だから大きいねぇ。うふふふ、なんて素直な喜びなのだろうか。あぁ、推しの純粋(ピュア)さが尊い・・・

「さて、そろそろ降りましょうか。エンくん。これからもっと凄い物が見れるよ。ふふっ、楽しみにしてて」

「!本当!」

円寿くんがさらに目を輝かせる。推しの笑顔を見ながら一緒に観光。元いた世界では考えられなかったなあ・・あたし異世界に来て本当に良かったあ!異世界最高です、ありがとうございますデメティールさん!そして、馬車を降りるといるはいるは・・ミサキリスちゃんと同じ制服の美少女騎士様達がいっぱい!

「!先輩方お疲れ様です。あっ、エンジュくんもいらっしゃったんですね」

「リンジアさん、こんにちわ!」

「お疲れ様リンジア。皆はもう集まってる?」

「はいっ、全員揃っています・・・あの、そちらの方は?」

「リンジア、紹介するね。この方はアキナ・ミズツラさん。エンくんと同じ大陸から来た人で、デア・コチーナに最近従業員として働いているの」

「明奈先輩は、ぼくと同じ大学の先輩なんです。ですよね、先輩」

「えっ、あっ、はいぃ!お初にぃ、お目にかかりますぅ、アキナです!よろしく、お願いいたします!」

「なるほど、エンジュくんの通う学校の・・リンジア・カルネイロです。以後、お見知りおきを」

「いっ、いえ、こちらこそ・・・(イケメン女子!あとイケボ!カッコいい!女の子にモテそうな雰囲気・・握手されちゃったぁ・・手、洗いずらくなっちゃったなぁ・・・)」

「!案内人の方がお見えになりましたね。そろそろ時間のようです」

ふと見ると、美少女騎士達の前にいつの間にか姿を現している丸眼鏡の女性が一人。うっは、どちゃクソ美人。いかにも魔導士といった服装をしてる。

戦乙女(ワルキューレ)騎士団の皆様、本日は魔導省との交流会に参加いただき、誠にありがとうございます。わたくし、本日皆様の案内役を勤めます、シフォン・ディキンスと申します。以後お見知りおきを。今日(こんにち)は第2、第3、第5、第7、第10部隊の皆様の参加ですね。早速ではありますが、皆様をあちらに見えます魔導省の本部にお連れいたします」

シフォンという人がそう言うものの、向こう岸に見える本部までの移動手段らしき物が見えない。船も無ければトンネルらしき物も無い。どうやって向こう岸まで渡るのか・・と、考えていると、

「来るよ、エンくん」

「?」

「びっくりしますよ、パイセン」

「声出しちゃうかもですよ、パイセン」

えっ?何?何なの?いったい、何が始まるんです?

「それでは皆様、これより、()()()()()()します。揺れは一切ありませんのでご安心を」

えっ?浮上?浮上て言いました、あの人。ん?なんだか視界が上に登っていってるようなぁ・・て、本当に登ってる!?てか浮いてる!さっきまであたし達が立っていた()()()浮いてる!?おぉ、本部の方に向かって行ってる。何この魔法感バリバリのギミックを施した異世界式クオリティエレベーター兼モノレールは!?・・あれ?円寿くんは?

「凄いです!飛んでます!吊り上げてる鎖とか無いのに!何もないのに浮いて飛んでます!」

あぁ、推しがあんなにも無邪気にはしゃいでる・・尊い・・て、円寿くん!?はしゃぐのは良いけど、周りに柵とか壁とか無いんだからあんまし端の方に行ったら危ないよ!落ちちゃうよ!!

「?これって・・・」

あれ?円寿くんが何も無い所をコンコンて叩いてる。何だろう?

「こちらですが、万が一の落下防止の為、皆様を()()()()()結界で囲んでいます。安心して風景をお楽しみ下さい。」

しっ、質量のある結界、ですと!?ほっ、本当だ、何も無い空間なのに触れる。足下や上の方も、限りなく透明の壁で覆われている。たしかにこれだったら落ちる心配は無い・・ん?質量のある透明な壁・・これすなわち・・・

「バリアーです!!」

「!?ばっ、バリアー?」

「エンくん、ばりあー・・て、何?」

「これの事だよ!!」

円寿くんがバンバンとバリアーと言っている結界を叩く。うんうん、そうだねぇ、バリアーだねぇ。バトル物でお馴染みのバリアー。円寿くんも小さい頃、ごっこ遊びとかで使ったのかなぁ、バリアー!て。うふふ、小さい頃の円寿くん可愛いんだろうなぁ。まぁ、今も小さくて可愛いんだけど・・・それにしても、この短時間で浮遊魔法に結界とか、ようやく異世界感出てきたなぁ。興奮してきたなぁ。

「さて皆様。まもなく魔導省本部に到着します」

そうシフォンという人が言うと、あたし達の乗っていた足場が一切の振動無く地面に降り立った。まだ少しふわふわしてる感覚がある。凄かったなぁ。まさに魔法だ。異世界ぽかった。あぁ、円寿くんまだ目をキラキラさせてる。もう一回乗りたい、て文字が浮かんでいる。可愛いなぁ。大丈夫だよぉ、帰りにもう一回乗れるからねぇ。さてさてと振り返ってみるとそこには・・いやぁ、遠くから見ても大きかったのに近くで見ると迫力パないですねこのお城。

「それでは皆様。これより、魔導省本部に入ります」

目の前に何かもうバカデカい扉がある。巨人用の扉かな?て位デカい。その扉がゆっくりと開かれる。どうやってこの扉を開けているのだろうか?やっぱり魔法の力?それとも人力?はたまた謎ギミック?まぁどれにしろ流石は異世界。扉が開くだけでも迫力が凄い。いやそれにしても、あたしの隣りに立つ我が推しは、ここまで来るのに既に何度目を輝かせている事だろうか。大丈夫かな、円寿くん。この交流会で感動し過ぎて爆発とかしないだろうか?少し不安だ。

「先輩!写真!写真撮っておきましょう!」

「はっ、はいっ!撮ります!撮らせて頂きます!」

撮っちゃうよぉ!いっぱい写真撮っておくからねぇ。沢山思い出作ろうねぇ、円寿くん!扉が開いてく瞬間を連写で撮る。そして、扉が開かれると広大な中庭が広がっており魔導士らしき人達がいるのが見えた。いかにも魔法を使いそうな見た目をしている。おぉ、ファンタジー感強まって来ましたよぉ!・・・ん?何か違和感が・・魔導士の方々の表情が、最初は穏やかな表情だったのが急に、驚いたり、唖然としたり、不思議そうにしてたり、何だか不穏・・もしかして・・いや、もしかしなくても・・・

「?どうしましたか?先輩?」

うぅむ、やはり魔導士の方々の視線は円寿君に向けられてる気がするなぁ。やっぱり、円寿くんが()()だからなのかなぁ。あたしはここで、昨日の夕方の出来事を思い出す。


ーーーー

「いいかぁ、絶対(ぜってぇ)にエンジュから離れるんじゃねぇぞ」

その日の夕方頃、あたしは交流会の為に来ていく服を探しに、この世界に来て初めての街の散策をしていた。言っておくが、あたしだってそれなりに服に金をかけている。みすぼらしい格好で推しを応援していると、推しの品位まで下がる気がするからだ。てな訳で、良い感じの異世界クオリティの制服を買い上げ帰路についてると、ミサキリスちゃんの姿が見えた。

「あっ、ミサキリスちゃ~・・ん?」

声をかけようとしたが思わず躊躇った。なぜなら、ミサキリスちゃんの話している相手が相手であった。

「さっ、サクネアさん!?何故ミサキリスちゃんと?う~ん、何話しているんだろう?」

あたしは、あたしなりに上手い工合バレない様に二人に近づいて聞き耳を立ててみた。

「昨日も言ったが、この大陸の獣人は()()()に魔法が使えねぇ。あぁ、使えねぇつうかぁ・・体質的に使い辛いてのが正しいな」

「はい、それはあたしも昨日聞いたのが初めてでした。たしかに、魔法を使う獣人は見た事が無いですね」

「この獣人が魔法を使いづれぇてのは、当たり前だが獣人(かん)では常識も常識だ。だが、他の種族で()()()知ってるのはそうはい()ぇ・・て、あたしも最初は思ってたんだがよ・・・」

「?思って、いたとは?」

「あたしが今の活動を初めて少し経った頃、誘拐犯(ごみ溜め)共の顧客の資料を調べてたら、何人かそん中に魔導士がいる事がわかった」

「なんですって!?」

「お前もよく知ってると思うが、魔導士て連中は追求て奴が大好きだろ。何でもかんでも魔法の為だか何だか知らねぇが、追求追求とバカの一つ覚えみたいによぉ。んでそん中には、どうして魔法を使う獣人がいないのだろうかと疑問に思ったクソがいたんだろうなぁ。あいつら、自分達のその追求如きの為に、ガキの獣人に手出しやがった」

「!?それって、もしかして・・・」

「あぁ、そうだ。ガキ共使って、実験材料にしやがった。チッ、クソが・・まぁ、あたしが把握してる限りのクソ共は全員ぶん殴ってやった。んで豚バコにもぶちこんだ。そんなとこだ」

「・・・サクネア、あなたが魔導士を毛嫌いしている理由は、もしかして、そういう事があったから・・・」

「・・・チッ、分かってんだよ。あたしだって、魔導士て呼ばれる連中全てがクサレ外道じゃ()ぇて事位よぉ・・まぁ、あたしの事はいいんだ。それでだ、ここまで話せば分かるかもしんねぇが、明日の交流会、エンジュには細心の注意をはらいやがれ。クソな連中がエンジュを狙ってくる可能性が無いとは言いきれねぇ。あたしがエンジュについてりゃ良かったんだがよ・・知ってるかもしんねぇが、あたしは行けなくなっちまった・・滅茶苦茶不本意だ!不本意なんだが、きっちり仕事をしてやんねぇと、あたしの連れ達に示しがつかねぇんだ。一応、あたしがリーダーて事になってるみたいだからなぁ」

「・・・(どこからどう見てもサクネアがリーダーでしょ。良い意味でも悪い意味でも・・・)うっうん。サクネア、一つ聞いてもよろしいですか?あたしからエンくんを誘っておいて何ですが、何故、エンくんに危険が及ぶ可能性があるかもしれないのに、エンくんの交流会への参加を止めなかったんですか?」

「あぁ?!・・あぁ、だって、それはよぉ・・・」

「それは?」

「えっ、エンジュの、あんな顔見ちまったら!魔法を使ってみたいっつぅ期待しまくってる顔見ちまったらよぉ!・・参加するなって言えねぇだろぉ・・・」

そうですよねえーー!!円寿くんに悲しい顔してほしく無いですよねえーー!!分かります、分かりますよサクネアさん!!

「だからよぉ、()()()にエンジュを任せる。エンジュを全力で楽しませてやれ。もしもエンジュに何かあったら承知しねぇからな」

「言われなくても分かっていますよ・・・(ん?お前ら?)エンくんの事は任せて下さい。そして、エン君からあなたへ沢山土産話が出来る様、努力してみますよ」

「おぅ・・おい()()()とか言ったっけかぁ!エンジュに悲しい思いさせんじゃねぇぞ!!」

「!?・・・(ひいぃぃい!?きっ、気づかれてたぁ!?)・・・はっ、はいぃ、頑張りますぅ・・・」

「アキナさん!?いたんですか?」

「はっ、はいぃ、わりと最初の方から・・」

ーーーー


「(みっミサキリスちゃん!何だか、魔導士の人達、円寿くんの事滅茶苦茶見てる気がするんだけどぉ!?やっ、やっぱり、サクネアさんの言ってた事て・・・)」

「(大丈夫ですよアキナさん。サクネアは、ああは言ってましたが、あたし達騎士団と魔導省は同じ国家機関同士、長い付き合いがあります。獣人の子供に危害を加える様な人達はいないと思います。おそらく、交流会に獣人が参加する事が今まで無かったので、珍しくて見てるんだと思いますよ。安心して下さいアキナさん。エンくんの事はしっかり守ります。だからアキナさんも、そんなに緊張しないで交流会を楽しみましょう。ほら、エンくんみたいに)」

ん?円寿くんみたいに・・てっおわっ!?円寿くん!?魔導士の人に近づいてる!?

「こんにちは!あのすいません、まどーし・・の方ですか?」

「えぇ、そうだけど・・君は・・獣人だね」

あわわわ円寿くん!初対面の相手にいきなり突貫コミュニケーションするなんて・・・コミュ障のあたしには絶対無理・・それに、大丈夫かな、あの人。獣人に変な偏見とか持っていないだろうか・・・

「はいっ!この度、ミサちゃ・・()()()()()()()の紹介で、この交流会に参加させていただきます!エンジュ・クスノキです!よろしくお願いいたします!」

「ミサキリス・・・あぁ、戦乙女(ワルキューレ)騎士団の部隊長の()の招待なんだね。なるほど。わたしは、ドリュース・ディキンス。君達をここまで案内した、シフォン・ディキンスの兄だよ。よろしく、クスノキ君」

「はい!よろしくお願いいたします!」

円寿くん凄いなぁ。早くもイケメン眼鏡お兄さんとお知り合いに・・がっちり握手もしちゃって・・でも良かったぁ。あのお兄さん、獣人の円寿くんに対しても親身に接してくれてる。まっ、まぁ、そうだよね。ここは魔導省の本部だし、獣人に手を出すような悪い魔導士はいないよね。

「あの、ドリュースさん。少しお願いしてもよろしいですか?」

「うん、なんだい?僕に出来る事なら、なんでも言ってくれ。」

「はい!あの、魔法を見せてもらってもいいですか?」

あっそれあたしも見たい。異世界の醍醐味みたいな(もん)だからねぇ、魔法は!ちょっと近づいてと・・・

「魔法が見たい?なんだそんな事か。良いよ、見せてあげようじゃないか・・・うっうん。ーー氷よーー結晶と成りーー我が()に咲けーーー」

えっ、詠唱ぉ~~~!やっ、やっぱり、詠唱とかするんですね!わぁ、凄いぃ。漫画だぁ。アニメだぁ。ゲームだぁ!・・・おわっ!?こっ、氷が!?何か良い感じにまとまって手の平に浮いてる!?これが、魔法!?・・・

「まぁ、簡単な奴だと、こんな感じかな」

「はぁあぁ・・・凄いです!!氷が!氷の結晶が出てきました!魔法みたいです!!」

魔法みたいじゃなくて魔法その物だよ円寿くん!いやでもこれは、円寿くんじゃなくても魔法初見勢はテンション上がりますよ。いやぁ、何かようやく異世界に来たって感じになってきましたよ・・・ん?何やら、ドリュースさんが耳に手を当てて何かを話してる?何だろう?

「・・・うん・・うん・・わかった、そちらへ向かうよ。すまないクスノキ君。これから大ホールで行う報告スピーチの打ち合わせがあって、そっちに行かないといけなくなってね。もっと見せたい魔法が有ったんだが、また今度にしてくれるかな。」

「いえ!こちらこそ、急なお願いを聞いてくれて感謝しかありません!魔法の披露はいつでもお待ちしております!打ち合わせに遅れるといけないので、早く行って下さい。あと、素敵な氷でした!」

「ははっ、それじゃ、また今度」

手をスッと上げ、背中を向け歩いていくドリュースさん。なんだぁ、サクネアさんが()()()()言ってたから不安だったけど、魔導士て良い人じゃん。これは心配して損したパターンかな。

「アキナさん。大ホールの方で報告連絡会がありますので、そろそろ向かいましょうか。エンくーん、ほら、そろそろ行くよ!」

「!うん、分かったよ。ミサちゃん!さっき魔導士の人が魔法見せてくれてね、こぉ、手の平から氷の結晶をシャキーンて!」

そうだねぇ、シャキーンて出てたねぇシャキーンて・・・あっ、動画撮っておくの忘れた・・・まっ、まぁ、これからも魔法沢山見れると思うし、また今度でいっか。

「氷魔法見せてもらったんだ。氷魔法て、魔法の中でも珍しい方の魔法何だよ」

「!そうなの?!」

「うん、氷魔法を使える人事態が結構貴重なんだよ。それにね、さっき聞いたんだけど、今日は氷魔法よりも貴重・・というか、この国、いやこの大陸で唯一の()()()()使()()に会えるかもしれないよ!」

「!転移魔法!・・てぇ、どんな魔法?」

「そのまんま色んな所に転移する魔法だよ。あれ?そういえばエンくんて、デメティール様の転移魔法でこっちに来たんじゃなかったっけ?」

「?・・・!そうだった、忘れてたよ。転移魔法て、どこで○ドアみたいな魔法だよね」

「?どこで○・・ドア?」

「ああぁあぁあ!あのねっ!そのぉ・・・おぉ、デメティールさんの転移魔法は特別製で、ドアとドアを繋ぐ、みたいな感じでね、そのぉ、とっ、特殊なドアを開くと、こっちの大陸のドアから出るぅ、みたいなぁ。もしかしたら、ミサキリスちゃんの言ってる転移魔法とは勝手が違うかもしれないな・・てぇ、アズさんが言ってたよ」

「なるほど。女神式の転移魔法はそういうタイプなんですね。いやぁ、実はあたし転移魔法が存在してる事は知っているんですが、直接その転移を見た事は無いんですよ。転移魔法使いにも会った事も無ければ見た事も無いし。だから、具体的な事は分からなくて」

「そうなんだ・・ミサキリスちゃんが会った事無いって事は、これまでの交流会には参加していないんだ」

「そうなんですよ。何度か、参加するて話しが有ったんですが、結局来ないまま今日(こんにち)に至る、てな訳でして」

「ひっ、人見知りな魔法使いさん、なのかな・・・(あたしも人の事言えないけど・・・)」

「はははっ、そうかもしれないですね。さて、それじゃあそろそろ、大ホールに向かいますか」

「?ミサちゃん、シュリちゃんとジュリちゃんは?」

「あれ?まったく、あの二人何処に・・・あっ、あんな所に・・てっ・・はぁ~・・()()()・・・シュリー!ジュリー!行くわよー!」

「!はいはーい、今行きますよー!・・それじゃまたねっ」

「また夜にね~・・ふふっ・・呼んだ、ミサ?」

「呼んだ?じゃないわよ。あんた達、交流会で男漁りするの辞めなさいて言ってるでしょ。騎士団全体に品位に関わるんだからね」

「えぇ~、だって~」

「お兄さん達の方から声かけられたら~、断れないじゃ~ん。ねー、シュリ~」

「ねー、ジュリ~」

「あんた達ねぇ・・・」

怒らないでぇミサキリスちゃん!しかし、ナンパされていたのかこのイケイケ双子ギャル。滅茶苦茶ナンパ慣れしてるんだろうなぁ、この二人。それにしても、魔導士もナンパするんだなぁ。まぁ、魔導士と言えど人は人だからね。ナンパ位するかな。まぁ、あたしはされたらテンパるけど・・・とりま五人揃ったので、あたし達は大ホールに移動した。大ホールへの移動中、円寿くんは双子二人に先程見せてもらった氷魔法の話しを一生懸命していた。なんて微笑ましいんだろうか・・・うぅむ。それにしてもこの双子二人、隙あらば円寿君に茶々を入れてくる。『またエンくんお姉さんに上目遣いでお願いしたのー?』とか、女性じゃなくて男性だと円寿君が伝えると、『お兄さんも落とすなんてエンくん節操無いなー』とか。その度、ミサキリスちゃんに怒られているんだけど、多分懲りずにまたやりそうだな。まっ、まぁでも、円寿くんには申し訳ないけど、顔真っ赤にして慌ててる円寿くんは可愛い。それはもう可愛い。ごめん円寿くん。疚しい感情を持ってしまって。とまぁ、なんやかんやあってあたし達五人は大ホールについた。その中はというと、うん、もうこれ完全にパーティー会場だねこれ。もう二次元で良く見る、お金持ってそうな人達がよくやる奴だこれ。あたし聞いてないよ、こんな豪勢な奴やるなんて!良かったぁ~、昨日それっぽい制服買っておいて。ギリこの会場の雰囲気にあってる・・・はず。

「先輩!こういうホテルパーティー?て、言うんでしょうか?ぼく、こういうのに参加するの初めてです!」

あたしも初めてだよ~。一緒だねぇ円寿くん~。にしても、沢山並ぶ豪勢な料理。コスプレではないモノホンのウェイターとメイド。デカデカと主張しまくるシャンデリア。あっやばい、よく分かんないけど、なんか緊張してきた。

戦乙女(ワルキューレ)騎士団・第七部隊の皆様、この度は、魔導省主宰の交流会にご参加いただき誠に感謝いたします。僭越ながら、この場で(わたくし)めが乾杯の音頭をとらせていただきます」

いかにもナイスガイな魔導士が、壇上で挨拶をしている。ん?あっはい、このグラスを持つのね。ウェイターさんの動きがとてもスムーズだ・・・う~ん、これ、シャンパンかな?つまりお酒かぁ。あたしお酒飲めないんだよなぁ。あっ、円寿くんまだ未成年じゃん。お酒飲ませちゃ駄目じゃん。あっでも、異世界のお酒事情てどうなってんだろ?元いた世界でも、未成年がお酒飲んじゃいけないて法律は日本とかしか無くて、海外では飲めちゃったりするからなぁ。

「(すいません。これはアルコールですか?)」

「(はい、左様でございますが)」

「(申し訳ありませんが、僕お酒が飲めないので、ノンアルコールの飲み物に変えていただけますか?)」

「(かしこまりました)」

円寿くん偉い!ちゃんとお酒断ったねぇ。良かった~、円寿君不良じゃなかった~。あぁそだ、あたしも変えてもらおう・・・

「あっ・・すいま・・・」

「それでは皆様方、お手持ちのグラスをご用意下さい・・・それでは、乾杯」

『乾杯』

「!?・・・(えっ?ああぁあぁ乾杯~・・・ん!?)こっ、おほっおほっ・・・」

「!?先輩、大丈夫ですか!?」

「アキナさん、お酒飲めかったんですね。すいません、あたしが気をきかせてれば良かったんですが・・・」

「おほっ・・だっ、大丈夫だよ。ミサキリスちゃんは悪くないよ。ははっ・・・」

なんではあたしはこう間が悪いのだろうか。交換してもらおうとしたタイミングで乾杯始まっちゃうし、飲めないなら飲んだふりとかしてれば良いのに、周りに流されて飲んでしまうとは・・・何やってんだろうか、あたし。

「先輩、お水どうぞ!」

「あぁ、ありがとう円寿くん・・・んはぁ。うん、落ち着いた」

「あれ~、パイセ~ン、お酒飲めないんですか~?今は弱くても、飲んでいけば強くなりますよ~。ほら、飲んで飲んで!」

「はわっ!?いぃいらないよシュリナちゃん!?」

「あ~っ、エンくんもそれノンアルじゃ~ん。え~、あたしエンくんが酔ってる所見たかったのに~!」

「ごめんねジュリちゃん、でもお酒飲めない代わりに、沢山食べるよ」

「こらあんた達!飲めない相手に無理強いしないの!それにこういう場なんだから、少しは()をわきまえなさい!」

は~~い(は~~い)

うぅぅ、陽キャギャルのアルハラ怖いぃ・・円寿君は全然怖じ気づいてないな。逞しい。

「まったく。すいませんアキナさん、うちのアホがうざ絡みして。それで何ですか、あたしこの後、騎士団の活動報告のスピーチの準備があるので、少しこの場を離れます。それ何で、エンくんの(こと)見ててもらっても良いですか?」

「そう、なんだ・・・(えぇ!?ミサキリスちゃんいなくなるの!?それじゃあこのイケイケ双子ギャルは誰が止めるの~?)えっ、円寿くんの事は大丈夫だよ。ちゃんと見てるから・・・」

「ありがとうございます。無いとは思いますけど、もし荒事があったら、このアホ二人を盾にして逃げて下さいね」

「こらー、誰がアホだー」

「あたし達は捨て石じゃ無いぞー」

「あんた達は、あたしがいないからってエンくんとアキナさんにちょっかい出さないでよ。頼んだからね」

「あいっす~」

「了解でっす~」

「それじゃあエン君、アキナさん行ってきますね」

「うん!頑張って来てね!ミサちゃん!」

「がっ、頑張って~」

ミサキリスちゃんはふふふと笑いながら円寿くんの頭を優しく撫でた。もの凄く自然に撫でた。アズさんもそうだけど、どうして皆そんな簡単に円寿君に触れる事が出来るの?円寿くんもすんなりと受け入れるし。これが異世界スキンシップ!いや、異世界関係無いか。まぁ、美少女や美女に頭なでられて嫌がる人なんていないと思うけど。むむむっ、むず痒いぃ・・・

「皆様、楽しんでいらっしゃりますか?」

「!シフォンさん!」

「シフォンさん、ウェ~イ!乾杯しましょ!」

「ふふふっ、賑やかですね。はい、乾杯」

「シフォンさん、彼氏はいますか?」

「いえ、今は独り身です」

「どういうタイプが好みですか~?」

「そうですね・・・」

しっ、シフォンさん強い!イケイケ双子ギャルの絡みに全然対応出来てる!大人だ。大人の余裕て奴だ。

「シフォンさん、エンくんみたいなタイプはどうですか?」

「!」

ちょっ!?何故そこで円寿くんを!?

「ふふっ、可愛いらしいと思います。もし付き合うとしたら・・そうですね・・・もう少し大人になってからでしょうか」

「!ありがとうございます!」

円寿君、その()()()()()()()()()()は返しとしてあってるのかな?円寿くんなりの大人の対応なのかな?

「えぇと、クスノキ君、でしたっけ?ふふっ、獣人の子がこの交流会に参加するのは初めてなんですよ。魔法に興味があるんですね」

「はいっ!興味あります!ぼくも魔法を使ってみたいです!」

「あらあら、それは魔導省としても大変喜ばしいです。獣人が魔法を使ったという話しを聞いた事がありませんので、獣人であるクスノキ君が魔法を使えれば、今後獣人の間でも魔法が広まるかもしれません」

サクネアさんが言ってた、獣人が魔法を使い辛い体質て事はやはりあまり知られていないんだ。

「あの、シフォンさん。魔法が使えるかどうかが分かる方法とかてありますか?」

「ありますよ。そうですねぇ、魔法の適性が有るかどうかが分かる儀式の用な物があるんですが、その為の準備が必要ですので、少しお時間いただけますか?」

「はいっ!いつでも待ちます!」

「あらあら、それでは少々お待ちして下さい」

そう言うとシフォンさんは、奥の部屋へと歩いて行く、ていうか、もうそれわかっちゃう感じの奴なんですね。たしかに、あたしもデメティールさんに魔法の適性見てもらった時もすぐ分かったしなぁ。女神だから出来たんだろうて勝手に思ってたけど・・うふふふふっ、円寿くんワクワクしてる。本当素直で可愛いなぁもう。でも大丈夫かな?円寿くんの事ガッカリさせたくないからあえて言わなかったけど、円寿くんが魔法の適性が無い可能性の方が高いんだよね。これで円寿くん、魔法が使えないて分かったら落ち込むかな・・いやぁ!円寿くんの悲しい顔はもう見たくないーー!うぅ、頼みます、デメティールさん!円寿くんに何か異世界転移特典みたいな奴で、魔法を使える様にして下さい~。

「あっ、そだそだパイセン!あの事どうなったんですか?」

「えっ?あの事?」

「ほらぁ、エンくんの事を童貞だって言った件ですよぉ」

「!?///」

シュリナちゃーーーん!!何故今それをーーー!?良い感じに忘れていたのになんで蒸し返すのーーー!?

「えぇ・・そっ、その・・件は・・その・・まっ、まだ・・そのぉ・・・」

「パイセン気絶する程ショック受けてたのに、いつの間にかエンくんと普通に喋ってるから、あぁ解決したんだぁ・・つまんないなぁて」

つまんないって!つまんなくない!いやあれは、ちゃんと謝ろうとしたんだけど、円寿君が気にしてる素振りが無くてタイミング逃したて言うか・・・

「エンくんはー、あの件気にして無いのー?」

「あっ、あの件、は、そのぉ、気にして無いというか・・・//」

あぁあぁあぁ、円寿くん顔真っ赤に!己イケイケ双子ギャル!あたしと円寿くんの純情をもて遊びようてからにーー・・・


ブオンーーースゥーーーカーー・・・


「?」

「ん?魔方陣?」

「何だろう?なんかの余興?」

突如、あたし達の前に青緑色の魔方陣が浮かび上がる。えっ?何これ?えっ?何か召還される系の奴?てか、この場にいて大丈夫な奴!?


スゥーーーパッーー・・・


「・・・・・」

その魔方陣から光が放たれ、あたし達が思わず目をつぶりゆっくりと目を開くと、そこには美しく長い黒髪を棚引かせた長身の美女が立っていた。周りの唖然とした表情が気にならないのか、言葉も発さず無表情で立ちつくす美女。もしかして、この人が例の・・・?

「・・・・!」


キラキラキラキラーーー


美女が少し視線を下げると、そこには目を輝かせて美女を見る我が推しの姿があった。そして、この美女の登場の仕方を見て円寿くんの頭に浮かんだ言葉はおそらく・・・

「!・・・(ワープだ!ワープしてきた!この人ワープ出来るんだ!)」

「・・・・・」


キラキラキラキラーーー


目を輝かせ見つめる円寿くんとは反対に、まったくの無表情で見つめている長身美女。これは、一体どうなるんだろうか・・・

「・・・・・」


スゥッーーー(右手を上げる)


ぷにっーーー


「!」

つっ、突っついたー!一切表情を変えず、円寿くんの物凄く柔らかそうな頬っぺたを突っついたー!円寿くんも一切抵抗しない!触れた、この人円寿くんに触れた!うぅ・・初対面でいきなり頬っぺたを突くとは・・あたしですら、まだ触れて無いのに・・まっ、まぁ、あたしが触れて無いのは、意気地無いだけなんだけどね・・にしても、この美人さん、いったい何者・・・?

「お待たせしました~、て、あら()()()()()()、ようやく来たのですね。あらあらいけませんよトゥモシーヌ。初対面の相手の頬を突っつくなんて。失礼ではありませんか」

「!大丈夫ですよシフォンさん。慣れてますから」

「エンくんの頬っぺたて、無性に触りたくなる頬っぺたしてるから、しょうがないですよねー」

確かに触りたいなぁ、円寿くんの頬っぺた。これにはあたしもシュリちゃんに賛成だ。それにしても、この人トゥモシーヌさんて言うんだ。さっきの登場の仕方、出会って五秒で突っつく豪胆な所、つまる所この人が・・・

「しっ、シフォンさん。もしかして、この人が、あの・・・」

「はい、この()こそが、この大陸只唯一の転移魔法使い、トゥモシーヌ・ネア=カミックです。ほらトゥモシーヌ、ご挨拶」


コクッーーー(頷く)


「・・・アッハハッ、申し訳ありません。この()、無表情に加えて極端に無口でして・・あたしは、この()と付き合いが長いので馴れているのですが、おそらく皆様にはご迷惑をかけると思いますので、先に謝っておきます。ほら、トゥモシーヌも頭を下げて」


コクッーーー


なっ、なるほど。これまたキャラの濃いお人が・・美人で無口キャラか・・・うん、有りだな。

「実はこの()、今回の交流会が初参加なんです。何度も参加しなさいと言い続けてまして・・去年も、二十歳(はたち)になるのですから今年こそは参加なさいと言って結局参加せず、今年も諦めていたのですが・・・この()もようやく、大人になったのですかね」

「トゥモシーヌさん!ぼく、エンジュ・クスノキて言います!よろしくお願いします!」

「・・・・・」


ぷにっーーー


「!」

まっ、また突っついた。気に入ったのかな?円寿くんの頬っぺた。

「・・・トゥモシーヌさん、ワープ使えるんですね!凄いです!魔法て色んな事が出来るんですね!ぼくも、魔法の勉強をすれば、ワープを使える様になりますか?」

「・・・・・」


フンフンーーー(首を左右に降る)


「!?そっ、そうなんですね。やっぱり、そんな簡単には使えない物何ですね・・・」

あぁー!?円寿くんのテンションがちょい下がりー!?トゥモシーヌさん、安易に夢を見させない正直な人だった・・・

「トゥモシーヌ、真っ向から否定するんじゃなくて、遠回しに伝えるのが大人というものですよ。さて、クスノキ君。準備が出来たのでいつでも()()()()()()が出来るのですが・・あぁ、スピーチが始まってしまいますね。スピーチや諸々が終わったら行いますか」

「分かりました!よろしくお願いします!」

魔法適正審査・・・うん、そのまんまだな。これで、円寿くんに魔法の適性があるか分かるんだ。ああっ、早く初めて欲しいよぉなー、欲しく無いよぉなー・・円寿くん、凄いワクワクしてる・・うっ、トゥモシーヌさんの登場で有耶無耶になったけど、さっきのイケイケ双子ギャルの件、円寿くんどう思ってるのかな?今は気にしてる素振りは無いけど・・・えっ、円寿くんが気にして無いならこっちから無理に聞く必要は無い・・よね・・・あっ、スピーチ始まった。

「トゥモシーヌさん、あたし、戦乙女(ワルキューレ)騎士団のシュリナ・パスティオルです!」

「同じく、ジュリア・パスティオルです!質問しちゃいますね、トゥモシーヌさん!」

やや!?このイケイケ双子ギャル、スピーチ聞かないでトゥモシーヌさんへの質問を!?えっ!?良いの?スピーチ聞かなくて?聞かなくていい奴なの?

「トゥモシーヌさん、彼氏いますか?」

「トゥモシーヌさんて有名人だから滅茶苦茶モテそうですけど、そこん所どうなんですか?」

「どんな人がタイプですか?」

「やっぱり付き合う相手は、自分と同じ位凄い魔導士じゃないとアウトオブ眼中ですか?」

「ていうか恋愛に興味あります?」

「それとそれと~・・・」

「・・・・・」

なんという怒涛の質問責めだ。あぁもう、そんなに叩き込む様に質問したらトゥモシーヌさん答えるにも答えられないじゃん。ほらぁ、トゥモシーヌさんさっきから無表情のままだよ・・・て、最初から無表情だったか。イケイケ双子ギャルに視線も合わせて無いし・・まぁ、あたしもあの()達に目を合わせるの結構しんどいけど・・にしても、トゥモシーヌさんあんなに無口だと日常生活に支障出るレベルなんじゃないかな?トゥモシーヌさんのプライベート・・うぅむ、想像出来ないな。

「・・・あの、トゥモシーヌさん」

「!」

おっ、円寿くんがいった。円寿くん、イケイケ双子ギャルが質問してる横で、自分も凄く質問したそうにそわそわしてたからなぁ。

「トゥモシーヌさんは、何歳の時から魔法を使える様になったんですか?」

「・・・・・」


スッーーー(指を二本出す)


「!二歳からですか?!凄いです!小さい頃から魔法の才能があったんですね!」

「・・・・・」


ぷにっーーー


「!」

また突っついた。三回も突っついた。あれかな、トゥモシーヌさんなりのコミュニケーション方法なのかな?

「ああ!トゥモシーヌさん、あたし達の質問は無視でエンくんの質問には答えるんですかぁ?!」

「えこひいきですか?ズルいですよ!」

「・・・・・」

「あんた達が遠慮しないでグイグイ質問してくるから、相手にしないのよ」

ミサキリスちゃん!良かった~、帰って来てくれた~。

「あっ、ミサ」

「戻ってたんだ」

「あんた達はいつもそうやって、相手の気も使わず下世話な事しか話さないんだから。その手の話しが苦手な人もいるって事をいい加減覚えなさい!」

ふぇ~い(ふぇ~い)

「すいませんトゥモシーヌさん、うちの騎士団の者がとんだご無礼を・・・」


フンフンーーー(首を左右に降る)


「あはは・・改めまして、ミサキリス・パスティオルです。大陸唯一の転移魔法使いにお会いできて、とても光栄に思います。よろしくお願いします。」

おお、ミサキリスちゃん、凄く大人っぽい。もの凄く爽やかだ。そして握手の為に手を出してる・・とてもスマートだ。トゥモシーヌさん、握手してくれるかな?

「・・・・・」


スゥーーー


「!うふふ」

ちゃんと握手してくれた。良かった~、これで握手してくれなかったら空気が最悪になってここにいれなかったよ~・・・ん?なんだろう、いつの間にかあたし達の周りを人が・・いやこれは、あたし達というよりもトゥモシーヌさんに人が集まって来てる気が・・・

「お初にお目にかかるトゥモシーヌ殿、(わたくし)準一級魔導士の・・・」

「トゥモシーヌ様、(わたくし)魔法道具の特許を持つ者でして・・・」

「私はバルニオンと魔法に関するビジネスをしておりまして・・・」

わあぁー!?あっという間に人集りがぁー!?色々な偉そうな人達がトゥモシーヌさんを囲っていったー!あたし達も外側においやられちゃったなぁ~。そうだよねぇ、大陸唯一の転移魔法使いて事は、魔法が関わる業界ではとんでもなく凄い人。つまり有名人て事だもんね。交流会にも今まで来てないって言ってたし、お話ししたい人達が沢山いてもおかしく無い、か。

「流石がはトゥモシーヌさん、やっぱり有名人なんだねぇ」

「こりゃ、あたしらがまたお話しできるのは大分(だいぶ)先かな?」

「残念だね、エンくん」

「うん・・でも、それよりも、トゥモシーヌさん大丈夫かな?あんなに、大勢の人に囲まれちゃって。あれだと、一人一人対応するの大変だよね・・・」

円寿くん、ここに来ても自分よりもトゥモシーヌさんの心配をするんだね。円寿くんだってトゥモシーヌさんに聞きたい事沢山あっただろうに・・ぐぬぬ、あの有象無象共、お偉いさんだか何だか知らないけど、あたしの推しを心配させるんじゃないよぉ!!まったくぅ!!

「エンくん、このままトゥモシーヌさん待ってても(なん)だから、他の魔導士の人の所にお話し聞きに行こうか。美味しい料理も沢山ある事だし。この際だから、色々な人と知り合いになっておこうよ」

「!うん!分かったよミサちゃん!よしっ、え~~と・・・すいません!僕この交流会に参加するの初めてでして、お聞きしたい事があるのですが!・・・」

円寿くん切り替え早い!どうして円寿くん、あんな積極的に知らない人に話しかけられるんだろう?あっ、あたしは、トゥモシーヌさんが開放されたら円寿くんに知らせる為にここで待ってよう・・・ん?あれ、イケイケ双子ギャルがいない・・あっ、またイケメン魔導士さんとお話ししてる・・・て、あたし今一人!?いつの間にか取り残されてる!?ボッチじゃん!!あたし異世界の交流会ですらボッチ!?あぁ、円寿くん知らない魔導士の人と楽しくお話しきてる・・うぅ、世知面い・・・トゥモシーヌさんもまたわ時間かかると思うし、どうしよう・・・とっ、とりあえずトイレ行ってこよう・・・はぁ、やっぱ陰キャは異世界に来ても陰キャか・・トホホ・・・まぁそうだよね、あたし円寿くんと同じ世界に来れてしかも同じ屋根の下に住む事でもう満足してて、こっちの世界の人とコミュニケーション取ろうとして無かったし・・いやいや、推しと同じ屋根の下で住むなんてそうは出来ませんよ!?元いた世界じゃ到底無理な話しですよ!?円寿くんの色々な表情見れてるし、満足するに決まってるじゃないですか!!あぁ後、一応ミサキリスちゃんとはコミュニケーションは取れてると思うし・・・さて、トイレで用は済ませてけど、これからどうしよう?戻っても一人だしなぁ・・・!そうだ、せっかくだから、このお城探索してみようか。こんなお城、滅多に入る事出来ないし。魔導士のお城だもん、もしかしたら何か凄い物が見つかるかも!そして、もしも何か見つけたら円寿くんに教えてあげよう。円寿くん喜んでくれるかな?目を輝かせてあたしの話しを聞いてくれる円寿くん・・・うへへへっ・・・て、まだ何も見つけて無いのに何舞い上がっているんだ、あたしは。見つけてから喜びなさい。さてさて、どこかにないかなぁ。凄い物がありそうな()()()()て所はないかなぁ・・・うぅむ、無いな。同じ用な気色しか出てこない。まぁそう簡単には見つからないか。てか、仮に凄い物があったとして素人がそんな簡単に見つけられる訳なくないか?ここ魔導士の総本山みたいな場所でしょ?てかみたいな場所て何だよ?総本山その物だよ!ここ!・・むむむ、流石に軽率だったなあたし。しょうがない、一旦戻ろう・・・あれ?ここどこ?あっやばい、探索し過ぎた!?うへぇ、同じ気色ばかりで目印らしき物が何も無いよぉ・・どうしよう、異世界の初めてきた場所で迷子とか洒落にならないんですけどぉ!?そだ、スマホの地図アプリで・・・てぇ、ネットは繋がるけどこの世界の地図なんてある訳無いやんけ!!あっても紙の地図だよ!!この世界にネット地図は無い!!やばいぃ・・どうしょお・・・あっ、ベランダ!とりあえずベランダから外の気色を確認すれば、元いた場所が分かる・・かも。ベランダの扉を開くと、少し強めの風があたしの顔に吹きかかる。目を開くと、気色はすっかり夕方になっていた。てか、ここ何階だろ?探索してる時、結構階段登ったけど・・結構高いな。にしても、あぁ・・このほぼ湖の水堀と夕陽のコントラストがまた絶妙だ。綺麗だなぁ。円寿くんが見たらまた目を輝かせるんだろうなぁ。写真撮っときましょっと。パシャりパシャりと・・・


ブオンーーースゥーーーカァーー・・・


あれ今何か音が・・んお!?魔方陣!?何故(なにゆえ)こんな所に!?ん?この魔方陣、さっきみたな・・て事は、つまり・・・


スゥーーーパァーー・・・


「・・・・・」

「とっ、トゥモシーヌさん!何故ここに!?さっきまで、お偉いさんみたいな人達に囲まれてたのに・・あっ、もしかして・・・」

「・・・・・」

「・・・逃げて来ました?」

「・・・・・」


コクッーーー


「やっ、やっぱりそうだったんですね・・・わかります!あたしも、人付き合い苦手なので、あんな大勢の人に囲まれたら逃げたくなりますよね!」

「・・・・・」

「・・あぁ、あれ?そういえばトゥモシーヌさん、あたしが誰だかわかります?」

「・・・・・?」(首をかしげる)


ですよね!ちゃんと自己紹介してないですもんね!

「あぁあの、誰だか分からないのに馴れ馴れしく話してしまってすいません!あっ、あたし、水つr・・あぁアキナ・ミズツラと申します!よろしくお願いします!」

「・・・・・」


コクッーーー


よっ、よし!とりあえず名前を知ってもらえたぞ。はあー!やっぱし初接触は緊張するなぁ・・・ん?あれこれトゥモシーヌさんがここにいるって事は、下の大広間は今頃パニックに?大丈夫かな、あたしトゥモシーヌさんと一緒にいて・・・いやっ、でもこれはチャンスよ、あたし!トゥモシーヌさんが目の前にいるんだもの。トゥモシーヌさんとお話ししないと損じゃない!せっかくの異世界、()()凄い人と友達になるのも醍醐味みたいなもんでしょ!それに、何となくトゥモシーヌさんにはシンパシーを感じる。仲良くなれそう・・な気がする・・・

「あっ、あの、トゥモシーヌさん!きっ、聞きたい事があるんですが!」

「・・・・・」


コクッーーー


はっ!?良かったぁ、聞いてもらえるぅ!よしっ、落ち着けぇあたし・・・ええとぉ・・どうしよう、聞きたい事が多すぎて何から話して良いかわからないぃ・・う~んと・・そだ、これにしよう。

「とっ、トゥモシーヌさん!これまで、交流会には不参加だったとお聞きしましたが、どうして今回の交流会には参加してくれたんですか?」

「・・・・・」

「・・・ん~・・・」

「・・・・・」

あっ、あれ?沈黙が、長い・・あぁ~これ聞いちゃいけない質問だったかなぁ?不味い。早速質問の選択肢ミスったか?トゥモシーヌさん、気難しいタイプの人だったのかな?あぁ!だとしたらどうしよう!せっかくの友達になれるチャンスがぁ~、あたしのバカぁ~・・・

「・・・・・ぇ・・」

「?・・え?」

「・・・エンジュ・・・」


・・・・・


しっ・・喋ったあぁ!!登場してから口を開いている所が一切無かったトゥモシーヌさんが・・喋ったぁ!てか良かったぁ!あたしの質問答えてくれたぁ!良かったぁ~、地雷踏んでなかったぁ~・・て、エンジュ?今もしかして、もしかしなくても円寿くんの名前を口にしましたか?う~む、あたしはトゥモシーヌさんに『どうして今回の交流会には参加してくれたんですか?』と聞いて、その答えが『エンジュ』ときましたか。つまり円寿くんがいたから今回の交流会に参加したと・・・まてよ、何故トゥモシーヌさんは円寿くんが交流会に参加する事を知っているんだ?・・・あれちょっとまって、これ別の地雷を踏んだのでは?えっ?やだやだやだ考えたくない!サクネアさんの言ってた子供の獣人を実験動物にする悪い魔導士・・・もしかして、それがトゥモシーヌさん・・・いやっ!違う!トゥモシーヌさんはそんな人じゃない!・・・多分!魔導士なんだから、何らかの手段で円寿くんが参加する事を知ったのよ、何らかの手段で!そうよ、それを聞いちゃえば良いのよ!不安が消えるまでとことん質問すれば良いのよ!

「あっ、あの!トゥモシーヌさん!どっ、どうして、円寿くんが交流会に参加している事を知ったんですか?」

「・・・・・」


スッーーーブオンーーースゥーーーカァーー・・・


ん?トゥモシーヌさん、両手の平を上に向け前に出したと思ったらそこから魔方陣が出て・・・ん~・・これは・・水晶玉、か。水晶玉が魔方陣から出てきた。占い師の人がよく占う時に使う奴だ。

「・・・・・」


スッーーー


ん?これを、見ろって?う~ん、たしかに水晶玉に何か写っている用な・・てか写ってる・・・えっ?写ってる!?写ってるの!?どういう仕組み!?えっ、この水晶玉()()で出来てるの!?・・・んな訳無いか、魔法の力ですよね。そうですよね。いやでも魔法てやっぱ凄いなぁ、何が写ってるんだろ・・・円寿くん、円寿くんだ。水晶玉に写る円寿くんも可愛いなぁ。それと・・ミサキリスちゃん?何か、二人で何処か走ってる。あれ?この二人が走ってる場所、何から見覚えが・・・まぁ、これはいいとして、えとぉつまりこの水晶玉を使って円寿くんが交流会に参加するのを知ったと。なるほど。よし、それじゃあもう次は確信に迫ってしまえ!

「あっ、態々(わざわざ)見せてくれてありがとうございます。それでですね、あのぉ~、それで何で円寿君に会おうと思ったんですか?そのっ・・えっ、()寿()()()()()()・・どっ、()()()()()()()()()()()()

「・・・エンジュ・・・」

「はっ、はい!円寿くんを、どうにかしたい、とか・・・」

あれ?この言い方だと、何かやましい事するみたいな感じになってない?いや実験するのはやましい事だよ。うん、そうだそうだ・・・

「・・・()っちゃい・・・」

・・・・・ズゴッ!小っちゃい・・か。たしかに円寿くん、同年代の男の子に比べたらだいぶ背は低い方だけど・・トゥモシーヌさんも背が高いから余計円寿くんの事が小さく見えるんだと思うけど・・でも、背が低い事は円寿くんの魅力の一つ!背が低いからあの小動物みたいな愛くるしさが生まれてるんですから!つまり背の低い円寿くんは・・・

「可愛い・・・」

「そう!可愛い・・・て、トゥモシーヌさん、今、可愛いて言いました?」

「・・・///・・・」

あっ可愛い。えっトゥモシーヌさん、頬を染めてるじゃないですか。えっまってまって、可愛いて言って頬赤くなってるトゥモシーヌさんが可愛いんですけど?いやまって下さいトゥモシーヌさん。登場してから一切無表情だったあなたがいきなりそんな表情するのは反則ですよ。落ちます。あたしが男の子だったら落ちます。てか落ちました。今もうキュンキュンしてますよ。お約束ですけどね。無表情キャラの照れ顔は世の女性男性関係無しにキュンときますよ。古い言葉だけど萌えですね、はい。でも、照れてしまう位に円寿君の事を可愛いて思ってるて事は、やましい実験の為に円寿くんに会いに来たて訳じゃない・・のかな?だとしたら安心・・・じゃない。また別の問題が発生するよその場合ぃ!今まで参加しなかった交流会に可愛い男の子が来たから参加を決めたって事は・・・それ円寿くんに惚れたって事ですよね!一目惚れでしょうか?!あぁもう分かりますけど!あたしも同じですから!うぅ・・・強い・・円寿くん強いよ・・・モテまくりじゃん円寿くん・・完全に異世界でハーレム作る流れだよこれ・・・ライバルが・・ライバルが多いよこの世界・・・あたし勝てる自信無い・・助けてここちゃん・・・

「・・・かいたい・・・」

かいたい・・あ~そうそう、円寿くんの小動物感はまさに家で飼うペットみたいな可愛いさがあるから飼いたくなるよねぇ・・・て、飼いたい!?飼う!?えっそれとも・・解体?いやぁ!!そんなスプラッタな奴はあたしNGですぅぅ!!飼う方の()()()()ですよね。そうであって下さい・・て、いやいや・・

「あっ、あの、トゥモシーヌさん、そのぉ、飼いたいと言いましたが、飼うのは色々な意味で駄目だと思いますよ・・?」


ガーーン・・・ーーー


えっ?ショック受けてる。ショック受けましたて顔してる。えっ本気だったんですか?本気で飼いたかったんですか?トゥモシーヌさんの頭に、飼えないんだ、て文字が浮かんでいる、用な気がする。凄く残念そうな顔してる・・・

「あぁあの、トゥモシーヌさん、飼うのは駄目ですけど、そのぉ、普通に友達になるてのはどうですか?それなら、何の問題も無いと思いますよ・・・」

そう友達!円寿くんと友達の関係なら全然OK!それならライバルが増えずに済むし、あたしも心置き無くトゥモシーヌさんと友達になれる!

「・・・・・」

ポンッと両手を叩くトゥモシーヌさん。なるほど、その手が有ったかといった顔をしている。う~む、円寿くんを本気で飼おうとしてたといい、友達になる事を考えて無かった事といい、もしかして、もしかしなくてもトゥモシーヌさんて不思議系キャラ何ですかね?・・うふふ、トゥモシーヌさんて面白い人だ。やっぱりあたし、この人とお友達になりたい!

「あのっ、トゥモシーヌさん。もし良ければ、円寿くんと友達になる為に()()でお話ししませんか?あたし、円寿くんと同じ大陸から来てて、円寿くんの事この大陸の人達に比べたらかなり詳しいです。円寿くんの魅力を沢山話せます!そうですね、ここだとまた偉そうな魔導士の人達が来てしまうかもしれないので、何処か別の場所に移動できたら、良いんですが・・・」

「・・・・!」

「先輩!トゥモシーヌさん!」

はっ!この鼓膜に響き渡る凛とした可愛い声は・・・

「先輩達、こんな所にいたんですね!」

円寿くん!と、ミサキリスちゃん。あぁなるほど、さっきの水晶玉で見た走ってる円寿くんとミサキリスちゃんは、あたし達を探しまわってる所だったんだね。

「えっ、円寿くん達、よくこの場所が分かったね」

「エン君の()のおかげだよね」

「鼻?」

「はいっ!ぼく、先輩とトゥモシーヌさんの匂いを覚えているので、それを追ってここまで来ました」

「ふふっ、エンくん凄いんですよ。他の凄い魔導士の人達を出し抜いて、トゥモシーヌさんの所に一番乗りしたんですから。まだあの人達、トゥモシーヌさんの事探していると思いますよ」

なるほどそっか、円寿くん獣人だから嗅覚が鋭くなっててあたし達の匂いを追えたと・・・匂い?えっまってまって匂い?えっ大丈夫?あたし臭くない?臭くないよね!?昨日はちゃんと湯船に浸かったから大丈夫・・なはず。てか、円寿くんあたし達の匂い覚えてるの!?どどどどうしよう・・これ匂いのケア怠ると円寿くんに臭いて思われるじゃぁん・・いやあ!匂いで円寿くんに嫌われるなんてそんなのいやぁ!・・トゥモシーヌさんは絶対に大丈夫。絶対に良い匂いしてるはずだから。もう見た目が良い匂いしそうだもん。

「・・・・・」


ススッーーー(円寿に近づくトゥモシーヌ)


「?」

「・・・・・」


ぎゅっーーー


「!」

「なっ!?」

えっ!?ちょっ、とととトゥモシーヌさん!?どうしたんですかいきなり!?円寿くんを片腕で抱き締めるなんて!?ミサキリスちゃんもビックリしてますよ!?やってる事がイケメンの()()ですよ!?トゥモシーヌさん!!


スッーーー(左手を上げる)


「・・・あの、トゥモシーヌさん?どうしましたか?あたしの服の裾を摘まんで・・・」

「・・・・・」


ブオンーーースゥーー・・・


ありゃ?トゥモシーヌさん?何故魔方陣の展開を?うーーん・・・これは、もしや・・・


カァッーーー・・パッーーー


・・・・・


「おっ・・おぉ・・マジ・・か・・トゥモシーヌさん、エンくんとアキナさん連れて、転移しちゃった・・・」


ブオンーーースゥーーーカァーーーパッーーー


「!」 

「んっ・・んん・・・ん?こっ、ここは・・いったい・・・?」

トゥモシーヌさんが魔方陣を展開して光に包まれたと思ったその刹那の間に周りの風景が変わっていた。さっきまでお城のベランダにいたのに。ここは・・・お屋敷?の門の前にあたし達は立っていた。う~~ん、どうやらトゥモシーヌさん、あたしが三人で別の場所に移動できないかなて言ったから、転移魔法を使って本当に移動したみたいだ。なるほど、転移魔法て便利だなぁ・・本当に便利・・・て、転移!あたし達今さっき凄い体験したんじゃないのぉ!?

「はあーーーワープ!ワープしました!先輩!ぼく達今ワープしましたよ!一瞬で知らない所に来ました!凄いです!魔法みたいです!!」

にゃあっはっはぅ!もう円寿くんそんなに目を輝かせちゃってぇ!魔法みたいじゃなくて魔法その物なんだぞ!うふふ、円寿くん今日(いち)ではしゃいでるよぉ・・可愛いぃ・・・

「トゥモシーヌさん!ぼく、もっとワープ・・転移魔法を経験してみたいです!そのぉ・・よっ、よろしいでしょうか?」

うわあぁぁぁ!!円寿くんの上目遣いいぃぃぃ!!破壊力が限界突破あぁぁぁ!!はっ!?トゥモシーヌさん、ポーカーフェイスのままだと!?強い、トゥモシーヌさん強い。だがしかし、あたしには分かる。顔には出てないが、内心滅茶苦茶キュンキュンしている事を!!円寿くんのあの目でおねだり何かされちゃあ答えは、そう・・・


コクッーーー


YES!ですよね!わかっていましたとも・・あっ、魔方陣展開した・・・

「あぁあたしも行きますぅ、行かせて下さい!」


ブオンーースゥーーカァーー・・パッーー


おぉ・・やっぱし一瞬だ・・一瞬でぇ・・・えええぇぇぇ!?たっ、高いぃ!やっ、屋根の上!?何かお城っぽい所の屋根の上にいるんですけど!?柵とか無いよぉ!?おぉ落ちたら死ぬ奴これえぇ!!??てか何処のお城ですかここ?魔導省のお城とは何か雰囲気が違う・・これは、あたし達がいて大丈夫な所に何ですか?色々な意味で・・円寿くんは・・うん、目を輝かせてるね。円寿くんの変わらない反応で落ち着いている自分がいる。円寿くんは高い所大丈夫な子なんだね・・・

「とっ、トゥモシーヌさん!次ぃ!行きましょ次ぃ!」


コクッーーー


ブオンーースゥーーカァーー・・パッーー


つっ、次は・・うっ、海・・てか船ぇ!?どこの船!?あたし達は乗って良い船なんですかこれぇ!?

「・・あっ?おっ、おい!(なん)だてめぇら!どっから入って来やがった!」

ひいぃぃぃ!?いかにも荒くれ者て見た目のおじさんに見つかったぁぁ!!


ブオンーースゥーーカァーー・・パッーー


はっ!?よっ、良かったぁ荒事になる前に転移してくれたぁ。う~む、さっきの船、乗っていたおじさんの雰囲気からして、もしかしてぇ・・・

「とっ、トゥモシーヌさん、さっき乗ってた船て、もしかして()()()ですか?」


コクッーーー


ひいぃぃぃ!?やっぱしぃぃぃ!?海賊とかいつの時代の話しでしょうかあぁぁぁ!?てここ異世界だったぁ!海賊位いますよねぇ!てかサクネアさんが前に海賊をぶっ飛ばしたとか言ってた気がするぅ・・・そっ、それでここは・・・


ブワッーーー


少し強めの風が、あたしの顔に降りかかり通り過ぎていく。その風を受け、瞬間的に瞼を閉じそしてその瞼を開けあたしと円寿くんの視界に移った光景、それは大地に隙間なく咲き誇る花畑であった。

「すっ、凄い・・綺麗・・・」

綺麗という言葉を口にしたが、はたしてこの光景を『綺麗』という言葉一つで表せる物なのか。赤、青、黄、緑、白、紫、ピンク、オレンジ、紺色、黄緑、水色・・・ありとあらゆる色の花が遥か彼方まで・・地平線の先まで咲き誇っている。これは・・元いた世界では見れない光景だ。()()()()()()なんて聞いた事無いよ。なんて幻想的なんだろうか。まるでこの世の物とは思えない・・・ん?この世の、物・・・まってまって、ここもしかして()()()じゃないんじゃ・・あの世なのでは?!死んだ?あたし達死んじゃった!?いつ?いつ乙ったの!?実はさっきの海賊さんたちに襲われて死んでしまったとか!?

「とっ、トゥモシーヌさん!こっ、ここって、ちゃんと生きてる世界ですよね?!あたし達、死んでませんよね?!」

「?」


コクッーーー


よっ、良かったぁ、死んではいなかった・・トゥモシーヌさん、何を言っているんだお前は?て顔してたな。すみません、被害妄想が過ぎました。本当に申し訳ありません。にしても、本当に凄いなぁこの花畑。ふふっ、円寿くんもさぞ目を輝かせているのだろう・・・

「・・・ーーッーーー」

「!?」

「!?えっ、円寿くん!?どうしたの!?どうして泣いてるの!?

トゥモシーヌさんもびっくりしてる!?わなわなしてる!

「!あっ、あれ、何でぼく涙なんか・・うぅ・・どっ、どうしましょう、止まってくれません・・・」

あわわわわわどうしよう、円寿くんが泣いちゃったぁ。とっ、とりあえず・・・

「えっ、円寿くん!あたし何かので良かったら、ハンカチ使う?」

「はいっ・・先輩ありがとうございます・・すいません、この花畑があまりにも綺麗過ぎて、感極まってしまって涙が出てしまったみたいです。お騒がせしてしまってすみません」

「そっ、そうなんだ・・たしかに、この花畑凄く綺麗だもんね。感動するのも分かるよ・・・」

「・・・・・」

あはぁあ!もう(なん)て円寿くん尊いのかしら!感動して涙が止まらなくなるなんて本当に円寿くん純粋(ピュア)!あぁ、円寿くん目を輝かせ過ぎて爆発するんじゃないかと思ったら本当に爆発したよ。円寿くんの感情という名の爆弾が・・・うへへっ、円寿くんの泣き顔可愛いなぁ。泣いてる円寿くん初めて見たけど、やっぱり可愛い。もぉ~、さっきから母性本能(ボセホン)がキュンキュンしまくっててあたしの感情爆弾も爆発しちゃいそう~~!!それに・・うへっ、しれっと円寿くんにあたしのハンカチを渡す事が出来た。あたしのハンカチで円寿くんが涙をふいている・・・うへっ、うへへへへへ・・・

「・・・・・」


スススッーー・・・ポンッーーー


「!」

なぬっ!?トゥモシーヌさんが円寿君のふわふわサラサラの頭に手を乗せた?

「・・・・・」


ナデナデーーー


「~~~」

撫でた!円寿くんの頭を撫でた!くっ、くぅ~~~トゥモシーヌさん、会って早々円寿くんの頬っぺたを突っつく所といい、見た目の割に相手に触れる事に対して何でそう積極的なんだろうか!いや、トゥモシーヌさん()というよりも、この世界の人達()そうなだけなのでは?現にアズさんもミサキリスちゃんも円寿くんの事を撫でてる所見るし・・・あれかな、外国の人がスキンシップでハグしたりキスするのと同じ感覚なのかな?

「~~・・・(トゥモシーヌさんにも心配かけちゃったな)あっ、トゥモシーヌさん、慰めていただいてありがとうございます。もう大丈夫です。涙も止まりました」

「!」


ナデッーーースゥーープニッーーー


「!・・トゥモシーヌさん、お城の天辺や、海賊船、そしてこの一面の花畑、色々な所に連れてってくれてありがとうございます!ぼく、凄く感動しました!それに、ワープを体験出来るなんてこれまでの人生思ってもいなかったので、凄く楽しかったです!本当にありがとうございます!」

「・・・・・」


スゥッーー・・モニュッーーー


「!」


モニュモニュモニューー・・・


!?トゥモシーヌさん、頬っぺたを突っつく、頭を撫でるの次は円寿くんの顔を両手てサンドイッチ!そして揉みしだいていらっしゃる!すっ、凄く柔らかそう・・何てさわり心地良さそうなのだろうか・・てか、トゥモシーヌさん今どんな心境何だろうか?お礼を言われて、お礼を言った相手の顔を揉みしだく・・・あんま聞いた事が無いコミュニケーション方法だな。照れ隠し、なのかな?トゥモシーヌさん、やはりあなたは不思議系のキャラです・・・にしても、本当円寿くん一切抵抗しないな・・顔を揉みくちゃにされるなんて、人によっては凄く嫌に思う行為だと思うんだけど・・・


モニュモニュッ・・!ーーチョイチョイーーー


ん?トゥモシーヌさん、あたしを手招きしてる・・まっ、まさかっ!お前も触れというのですか!?せっかくだし円寿くんの柔肌を揉んでみろとおっしゃるのですか!?いいいいやいや、出来ません!出来ませんよぉ!推しにそんな雑に触れる何てぇ!


スゥッーーー(明奈の服の裾を摘まむ)ブオンーースゥーー・・・


あっ、なるほどまた転移するんですね。だから近づけと。


カァーーパッーー・・・


ここは・・部屋?どこの?・・・ほうほう、洋風のインテリアに壁にびっしりと本棚が並んでいる。その本棚に入りきれていないのだろうか、床にも本が積んである。いつの間にソファに腰を下ろしているトゥモシーヌさん。なるほどなるほど、ここはもしかして・・・

「あの、トゥモシーヌさん、もしかして、ここトゥモシーヌさんの部屋ですか?」

「・・・・・」


コクッーーー


やはりそうか。て事は、この部屋にあるいかにも難しそうな本達はつまる所()()()て奴でしょうか?かぁー!良いねぇ良いねぇ!実に運命(ディスティニー)幻想(ファンタジー)っぽいよぉ!

「トゥモシーヌさんの部屋て事は、ここはトゥモシーヌさんの家・・でしょうか?」


フンフンーーー(首を左右にふる)


「・・・魔導士の・・女子尞・・・」

魔導士の女子寮?魔導士て尞住まいだったんだ。あっ、もしかして最初に転移してきた時に見たお屋敷が、その女子寮なのかな?


スゥッーーー(手を出す)


ん?あぁ、座れて事ですね。てな訳であたしと円寿くんはトゥモシーヌさんの対面のソファに座った。自然とあたしの隣に円寿くんが座る形になり、あたしは内心高揚感に満たされていた。

「・・・・・」

「・・・?」

ん?んんん?これは・・・

「・・・・・」

「・・・?」

何だ、何だこの()は!?何の沈黙だ!?誰か何か喋ってぇぇ!!・・てか、そもそも何でトゥモシーヌさんはあたしと円寿くんを連れて転移したんだっけ?う~ん、あたしが何か言ったんだっけか?何か言ったとしたらトゥモシーヌさんと魔導省のベランダで話してる時、だよね。う~~ん・・・

「・・・ェ・・・」

「!」

「・・エンジュの・・お話し・・・」

「!!」

円寿くんの、お話し・・あぁそうだ。あたしトゥモシーヌさんに円寿くんと三人でお話しをしようて言ったんだっけ。それで、トゥモシーヌさん態々転移魔法を使ってくれたと・・そっかそっか、そうだった。てぇ、何やってんだあたし。言った本人が忘れてんじゃないよ。

「すっ、すいませんトゥモシーヌさん。転移魔法の感動で、すっかり()()を忘れてました。申し訳ありません・・・」


フンフンーーー(首を左右にふる)


「あっ、ありがとう、ございます・・それじゃあそうですね、まず、あたし達が元いたせかi・・たっ、大陸の話しでもしましょうか」


・・・コクッ・・・ーーー


「!」

ん?今の、コクッ、は肯定の意味での、コクッ、じゃない・・あれトゥモシーヌさん、もしかしてぇ・・・

「トゥモシーヌさん、もしかしてお疲れですか?」

あっ円寿くんも気づいてた。うわぁ、トゥモシーヌさん滅茶苦茶眠そうだ。コクッコクッしまくっている。これはお話し聞かせるのは酷だな・・・なんちって・・・

「あのぉ、トゥモシーヌさん、もし起きているのが辛ければ、あたし達の事は気にせず、横になってかまいませんよ?」


・・・コクッーーー


あっ、今の、コクッ、は肯定の、コクッ、だった。そのままトゥモシーヌさんは横になると、スイッチが切れたかの様に眠りについた。美人さんの寝顔・・眼福じゃ・・拝んどこ・・南無南無・・・

「!(先輩、何か毛布みたいな物とか無いですかね?)」

「(そっ、そうだね円寿くん。探してみようか)」

と、寝ているトゥモシーヌさんを気づかい小声で円寿くんの話しに乗ってみたけど、ぶっちゃけトゥモシーヌさんの来てる服・・魔導士感MAXのダボッとした服・・寒くは無いよね?むしろちょっと暑そう・・・いやいや、円寿くんの善意を無下にはできないわ!そうよ、きっと円寿くんはトゥモシーヌさんが冷え性の可能性を考慮してくれたのよ。お腹と足先が冷えるのは辛い事よ。そうに違いないわ!さてさて、そうと分かれば毛布毛布~・・・

「(先輩!)」

「あっひゃあぁい!!」

「!?」

「(はっ!?ごめんごめん円寿くん!驚かせちゃったよね?)」

「(いっ、いえこちらこそ驚かせて申し訳ありません!)」

びっくりしたぁ。不意打ちで推しが側に現れるのは心臓が止まりそうになる。

「(それでぇ、円寿くん、どうしたの?)」

「(はいっ、そのですね・・すいません、先輩!ぼく、()()()()気づいてしまったのですが・・・)」

「(あっ、ある事?)」

「(はい・・・その、ですね・・・)」

えっ?なになに?何なの!?そんな深刻な顔で言う様な事なの!?

「(ぼっ、ぼく、トゥモシーヌさんが()()()である可能性を考えていませんでした!)///~~~・・・」

・・・・えっ?・・暑がり?

「(そっ、その、女の人は冷え性の方が多いと聞いた事があるので、トゥモシーヌさんも冷え性かなと思い毛布を・・と思ったのですが、女の人全員が冷え性な訳では無いのではと・・暑がりの人もいるのではと、毛布探している時にふと気づきまして・・トゥモシーヌさんが暑がりだった場合、せっかくのトゥモシーヌさんの睡眠を毛布を被せて邪魔をしてしまう事になるのではと・・思いまして・・・)」

えっ、円寿くん・・それは流石に・・・優しいが過ぎる!気づかい過ぎだよぉ!あぁもう、あまりにも深刻な顔しているから何事かと思ったら・・・

「(だっ、大丈夫だよ円寿くん。暑がりな人が、()()()暑苦しそうな服着る訳無いよ)」

「!(そっ、そう・・なんでしょうか?)」

「(うん、でもそうだね。暑がりの可能性も有るし、冷え性の可能性も有るから、(あいだ)とってお腹の所に毛布かけてあげよっか)」

「(はいっ!そうしましょう!)」

てな訳で、毛布を見つけたあたし達はそれを言葉通りトゥモシーヌさんのお腹に被せてあげた。円寿くんも、これでよしっ、て顔をしている。

「(先輩!ぼく、さっきトゥモシーヌさんが喋ってる所を初めて見ました!)」

「(そうだねぇ、円寿くん)」

むふふ、円寿くん、実はあたしは先にトゥモシーヌさんの声を聞いているのだよ。

「(トゥモシーヌさんの声、凄く綺麗でした!妖精みたいな・・・)」

「(そうだねぇ、円寿くん)」

むふふ、トゥモシーヌさん、今あなたの事を円寿くんが褒めておりまするよ。

「・・・」

「(ん?どうしたの円寿くん?そんなソワソワしだして?)」

「(はいっ・・そのぉ・・先程、毛布を探している時に()が沢山あるなと思いまして・・どれか一冊、読んでみたいなぁ、と・・・)」

「(?読んでみればいいんじゃない?)」

「(ですが、ここはトゥモシーヌさんの部屋です。置いてある本もトゥモシーヌさんの私物です。それを、許可無しに勝手に読むのは、失礼だと思います・・・)」

確かにそうだ!うわあたし、読んでみればいいんじゃない、て何をそんな無責任な事を言っているんだ。駄目に決まってるじゃん!あぁ、あたしの育ちの悪さが出てしまった・・・

「(ごめん円寿くん、円寿くんの言う通りだよ。そうだよね、トゥモシーヌさんにちゃんと許可貰わなきゃ駄目だよね。トゥモシーヌさんが起きるまでちゃんと待とうか)」

「(はいっ!)」

そしてあたし達は、トゥモシーヌさんが目を覚ますまで待つ事にした。トゥモシーヌさんには申し訳ないが、この待っている(あいだ)の時間があたしにとっては天国だった。

「(先輩、もしかしてトゥモシーヌさんが眠くなってしまったのて、ワープを使い過ぎたからじゃないでしょうか?)」

「(ワープ・・転移魔法の使い過ぎで、疲れちゃったて事?やっぱり、魔法も体力を使うのかな?だとしたら、トゥモシーヌさんにだいぶ無理させちゃったね。トゥモシーヌさんが起きたら、一緒に謝ろうか)」

「(はいっ!謝ります!)」

「(そういえばさ、お城?の・・天辺に転移した時、円寿くん全然怖そうにしてなかったけど、円寿くんて高い所大丈夫なタイプなの?)」

「(はいっ!大丈夫なタイプです!遊園地の絶叫系のアトラクションとか大好きです!あとぼく、将来的にスカイダイビングを経験したいです!)」

「(そうなんだぁ、あたしは高い所苦手だから、スカイダイビングは難しいなぁ・・でっ、でも、円寿くんと一緒に飛べるのなら、しても良い・・かな。円寿くんと飛べば、安心・・出来るかも・・・)」

「!(大丈夫ですよ先輩!インストラクターさんが一緒に飛ぶから事故になる可能性は低いです!安心して下さい!)」

う~ん円寿くん、そうじゃ無いんだよなぁあたしが言いたい事は・・・でも、あたしにしては結構攻めた質問が出来たんじゃないかな?伝わってないけど・・・

「(そっ、そうだね、安心だね・・・あぁそうだ、円寿くんてよく頬っぺた触られる事が多いけど、そのぉ、あれ嫌だったりしないのかなて・・結構皆、遠慮無しに突っついたりしてるけど・・・ああぁトゥモシーヌさんの事を悪く言ってる訳じゃ無いよ!えとぉ、円寿くんは、どう思っているのかなて・・・)」

「(嫌じゃ無いですよ。ぼく、昔から頭を撫でられたり頬を触られる事がよく有るので、全然馴れっ子です。それに、皆ぼくの頬を触ると喜んでくれるんです。ぼくの頬を触って、少しでもその人に一時的にでも幸福感を与える事が出来るなら・・少しでも嫌な事を忘れる事が出来るなら、いくらでも触ってもらって構いません!)」

!?なっ・・何ですと!?天使・・いや、神か?神の子なのか!?あぁでもたしかに、筋肉好きな人が良い筋肉触ると幸せになるのと同じ感覚・・・なのかな?筋肉触られている人も満更じゃないリアクションしている事有るし・・つまり円寿くんも、頬っぺた触られて満更じゃないて事?えっ?じゃああたしも触ってみたい!円寿くんの・・すべすべで・・さらさらで・・ぽよぽよの・・頬っぺたぁ・・・触りたい、けどぉ・・・やっぱり駄目ぇ!触ろうと思っただけで心臓が爆発しそう・・やはりあたしにとって推しに触れるという行為はハードルが高過ぎる!ぐぬうぅ・・疚しい・・疚しいぞあたし!推しにこんな疚しい事を・・・疚しい・・疚しい、事・・・はわわわわわっ、思い出しちゃったぁ!何で思い出しちゃうのよあたし!・・いやっ、違うわ、違うのよあたし。この先もこうやってふとした瞬間に思い出して悶えてしまうのであるなら、もういっその事このもやもやを解決してしまえば良いのよ。今あたしは、物凄く円寿くんとスムーズに会話できている。話すなら今!解決するなら今!・・・あぁでも、円寿くんは気にして無さそうだしこの話しをほじ繰り返すのはどうなんだ?せっ、せっかく円寿くんと良い感じに仲良くなれたのに、嫌われたらどうしよう・・・嫌われる位なら言わない方が・・・でも今後も羞恥に悶えるのも嫌だし・・ええい!南無三!!

「えっ、円寿くん!あたしね、円寿くんにどうしても謝らなくちゃいけない事があるの!」

「!?はいっ、何でしょうか!」

「そのぉ・・あぁ、あの・・・一昨日のランチ会の後の事、何だけど・・円寿くんの事を・・大変、無礼な呼び方をしてしまった件について・・なのですが・・・」

「一昨日、ですか?」

「はいぃ・・そのぉ・・せっ、()()に、()()()()()()をさす言葉を・・言ってしまい・・・たっ、大変申し訳ありませんでした!!」

「!?・・せっ、性的に・・純潔・・・////」

「そのっ、ちゃんと謝ろうと思ったのだけど、円寿くん、次の日になったら気にして無さそうだったから、謝るタイミングが無くて・・気にしていないなら、いっそこのままで良いのでは?て思ったけど、それじゃあ一生このもやもやを抱えて生きていく事になるじゃん、そんなの嫌だと思い、今この場で謝罪を、と・・・ごっ、ごめん、なさい円寿くん。こんなの、只の自己満足だよね・・本当に、ごめんなさい・・・」

「・・・」

うぅ・・円寿くん引いたかな?ドン引きしてるかな?気持ち悪いよね。こんな疚しい事を言う女の人、円寿くんは嫌いだよね、そうだよね。あふぅ・・あぁもうこの際だ!開き直ってしまえ!円寿くんに嫌われてもあたしと円寿くんの異世界生活は続くのだから、時間をかけてマイナスになった円寿くんの好感度を上げて行けば良いのよ!そうよ!そうすれば・・・

「それ・・なら・・円、寿君と・・また・・・うっ・・ぐすっ・・ひっぐぅ・・・」

「!?せっ、先輩!?どうしましたか!?泣かないで下さいぃ!」

「えっぐぅ・・あっ、あたし・・円寿くんに・・・きっ、嫌われ・・嫌われた・・・うぅ・・」

「先輩・・・分かりました・・ぼく、先輩の思いにちゃんと答えます!」

「ひぐっ・・・うっ、ん?答え・・る?」

「はいっ!先輩が心を痛めてまで謝ってくれたので、ぼくもちゃんと答えます!」

「・・・うっ、うん。お願い、します」

「はいっ、それでは・・・えっ、えっと、まず、ですね、ぼくは先輩の事を嫌いになってはいません!」

「!?・・・ほっ、本当?」

「はい、なので先輩もう泣かないで下さい!」

「うっ、うん、分かった・・・大丈夫、涙止まったよ」

「良かったです!・・それで、ですね、一昨日の件ですけど、そのぉ、気にして無いと言われると、嘘になりますね」

「えっ!?じゃあ円寿くん、何であんなに平然としてたの?」

「!平然と、してましたか?それなら、僕も少し大人になったて事ですね!」

「?」

「その、ぼくも十八年生きていて楽しい事や嬉しい事が沢山経験してきましたが、それと同じ位嫌な事や恥ずかしい事も経験して来ました。最初は、何でこんな思いをしなきゃいけないんだろうと嫌になった事もあります。そんな時にですね、ぼくの父さんが『人生は良い事悪い事全部含めての人生だ。良い事はそのまま自分の糧にしなさい。悪い事はひっくり返して自分の糧にしなさい。良い事をされたら、素直に喜びなさい。悪い事をされたら、一歩引いてみてその悪い事をしてきた相手の事を考えてみなさい』そう教えてくれたんです。それで、ぼくなりに考えてみたんです。先輩の()()発言を聞いて、僕はどう対応すれば良いのかを・・・//」

はうっ!?えっ、円寿くん、何て真面目なんだろうか。()()()()を態々真面目に考えるなんて・・・

「それで考えた結果、先輩の()()発言はその場の雰囲気で不本意で言ってしまったのだろうなと。ぼくに伝えるつもりは無かったのだろうなと。()()発言の後、先輩が部屋に引きこもってしまったのを見てそう思いました。じゃあぼくはどうすれば良いのか?その結果が、いつも通りに先輩に接しよう、平然としていよう、だったんです・・・あれ?先輩?」

「/////」

円寿くん・・ごめんなさい・・あたしからこの話しをふっておいてなんですが・・・もうやめて・・もうこの話しはしないで・・あたし幼稚過ぎる・・円寿くん滅茶苦茶大人・・・

「・・・先輩、それでぼく、今回の一件で思ったんです。()()()()じゃ駄目だなって。」

「?このまま?」

「はい、今回の一件は、日頃ぼくが先輩含めた周りの人達に、その・・せっ、性的に純潔な男と思われているから起きてしまった事なので、このままそう思われたままでいるのは良くないなって・・いい加減、()()()()話題になっても取り乱さない男にならなきゃなって・・そう、思ったんです」

「・・・性的な話題で、取り乱さない・・・」

「はっ、はい、十八にもなってこれじゃあ、今後の人生支障をきたすと思うので・・・」

「・・・ままで良い・・・」

「?」

「このままで良いよ!円寿くんは!」

「!?」

「円寿くんは!このままの・・純潔なままの円寿くんが良い!無理に大人にならなくていい!あたしは・・性的な話題で取り乱す円寿くんが良い!!」

「・・・」

「はぁ・・はぁ・・はっ!?えっ、あっ、いや、そのぉ・・・あぁあたし、何を言っているの・・・ごっ、ごめん!円寿くん!」

「いっ、いえっ、謝る必要はありませんよ先輩・・そう、ですよね、むっ、無理に自分を変えようとしても仕方がないと思いますし・・分かりました先輩。このままでいるのも良くないと思う自分の気持ちと、先輩の気持ちの(あいだ)をとって、ぼく、焦らずゆっくり自分のペースで成長して行きたいと思います!」

「うっ、うん、それが良いと思うよ、円寿くん」

「・・・はぁ、何だか凄く頭が暑くなりました。先輩、ぼく女の人と()()()()話題で真っ向から話し合ったの初めてです。何だか・・心がむず痒い感じがします」

「あっ、あたしも、男の子とこういう話しはした事無いよ!あたしも初めてだったよ!」

「そうなんですね!えへへっ。ぼく、先輩が相手ならどんな話題でも話せそうです。あの先輩、これからも先輩の都合が良ければ、何か悩み事があった時話しを聞いてもらっても良いですか?もちろん、先輩の悩み事があった時は、ぼくがちゃんと話しを聞きます!・・よっ、よろしいでしょうか?」

かぁっっっはあっっっっ!!・・・えっ、円寿くんの・・おねだり上目遣い・・さっきはトゥモシーヌさんに向けられたのを横で見てただけだったけど、今回はあたしに向けて・・直撃・・・うっ、ふぅ、危ない危ない、何とか致命傷で済んだわ・・・

「よっ、よろしいです・・・こちらこそ・・よろしく・・ね・・円寿・・くん・・・」

「はいっ!よろしくお願いします!先輩!」

あひゃあぁ~あ~・・頭がふわふわするぅ~・・推しの上目遣いが強力過ぎる~・・・それに・・・ふふっ、ふふふふふふふふ、円寿くんの中のあたしの好感度がレベルアップした音が聞こえたわ。円寿くんの中で特別な女になった感触をたしかに感じた!ふふっ、ふふふふふ、ふふふふふふふふふ。これは円寿くんの異世界ハーレムヒロインレースのメインヒロイン枠に一歩リードといった所ではないでしょうか!!

「・・・・・」

「!」

「ん?はっ!?とっ、トゥモシーヌさん!?おぉ起きていたんですね?!」


コクッーーー


いいいいいつから起きてたのぉトゥモシーヌさん!?まっ、まさか、あたしと円寿くんの際どいトークを全て・・・いやあぁぁぁ!恥ずいぃぃい!!

「ごめんなさいトゥモシーヌさん、話し声うるさかったですか?起こしてしまい申し訳ありません。」

「あっ、とっ・・ちぃ違います!円寿くんは悪くありません!悪いのは、無駄に声を荒げたあたしです!」

「・・・・・」


フンフンーーー(首を左右にふる)


「!」

「だっ、大丈夫て、事ですか?」


コクッーーー


「あの・・トゥモシーヌさん。どの辺りで・・お目覚めになりましたか?」

「・・・起きた時・・よろしくお願いします・・て・・エンジュが・・・」

「!」

よっ、良かったぁ、話し終わった頃だった。聞かれて無かったぁ、あの際どいトーク。

「トゥモシーヌさん!トゥモシーヌさんの声て凄く綺麗ですね!とても聞き心地が良いです!」

のわっ!?円寿くんトゥモシーヌさんが起きて早々お褒めの言葉を!?トゥモシーヌさんの反応は?

「・・・・・////」

照れたぁーーー!!トゥモシーヌさんの照れ顔!本日二度目でございます!目の保養になります!ありがたやありがたや・・・にしても、円寿くん何て天然ジゴロ・・恐ろしや恐ろしや・・・

「!トゥモシーヌさん、起きたばかりで喉乾いていませんか?ぼく、お茶いれてきます。キッチンお借りしてもいいですか?」


コクッーーー


いやぁ、本当に円寿くんは気がきくなぁ。可愛くて気がきくもんだから、デア・コチーナでも実質看板マスコットになってるもんなぁ・・・ん?


ジーーー・・・


「お待たせしました!お茶っ葉沢山あったので、とりあえず無難にアールグレイを入れてきました。どうぞ!」


ジーーー・・・


「そだ、トゥモシーヌさん、トゥモシーヌさんの部屋て沢山本がありますね。あの、トゥモシーヌさん。本、読んでも良いですか?」


コクッーーー


「はあぁ!ありがとうございます!それでは早速選んで来ます!」


ジーーー・・・


「・・・この本は・・うん、面白そう・・あっ、こっちの本も良いかな・・・」


ジーーー・・・


トゥモシーヌさん、さっきからずっと円寿くんの事を視線で追ってる。円寿くんに声を褒められてからか?いや転移魔法で色んな所に行っている時も視線は常に円寿くんに向けられていた、気がする。いやその前から、交流会であたし達の前に姿を表した時から視線の先は・・円寿くんだったような・・・

「(あっ、あのっ、トゥモシーヌさん、ちょっとよろしいでしょうか?)」

「?」

「(その、ですね、円寿くんの事が気になるお気持ちは凄い分かるのですが・・そのぉ、あんまし円寿くんの事を見続けていると、円寿くんも困ってしまうかと・・・)」

まぁ、円寿くん気づいて無いんだけどね。

「!?」

あっ、トゥモシーヌさんショック受けてる。そっそうなの!?て文字が浮かんでいる顔してる。

「・・・・!」


スゥッーーブオンーースゥーーカァーーパッーーー


トゥモシーヌさん、また手の平に魔方陣を展開して何か出した。これは・・あら、美味しそうなロールケーキ。

「お待たせしました。面白そうな本が沢山あったので悩みましたが、搾りこんで()()三冊にしました!・・!けっ、ケーキ!」

「・・・食べよう・・・///」

「!良いんですか!ありがとうございます!紅茶にも合いそうです!」

なるほど、トゥモシーヌさん餌付けですか。このロールケーキは、今まで見つめ続けてごめんねの意味なのか、はたまたこれからも見つめ続けるからこれで許しての意味なのか・・まぁ、円寿くんが幸せそう食べているから良しとしますか。それからあたし達は、円寿くんの持ってきた本を交えながらトークに花を咲かせていた。ちなみに円寿くんが持ってきた本は、一冊目がアトラピア大陸に存在したとされる架空のヒーローによる伝記物、二冊目があたし達のいるティリミナ王国に存在するありとあらゆる料理を収録したグルメ本、そして三冊目が魔法を一から勉強できる魔導書であった。

「トゥモシーヌさんも、この魔導書を見て魔法を勉強したんですか?」


フンフンーーー(首を左右にふる)


「!?ちっ、違うんですか!?」

そういえばトゥモシーヌさん、二歳の頃から魔法使えた天才児だっけ。そりゃ初心者向けの魔導書とかは見ないよね。


「伝説の勇者・イリャイソン・・剣と魔法の聖騎士・アッセウス・・はあぁあ・・・」

むふふふ、円寿くんヒーローが活躍する系の物語好きなんだぁ~。後で円寿くんが好きそうな作品ピックアップしておこ~。


「・・・?あれ?この料理・・あっこれもだ・・・この本に乗ってる料理、八割アズさんの名前が使われています!」

何ですと!?アズさんて、もしかしてもしかしなくても物凄い人・・なのかな?


「・・・!すいませんトゥモシーヌさん、お手洗いお借りしてもいいですか?」


コクッーーー


「ありがとうございます・・えと、場所はどこですか?」


スッーークイッ・・クイッ・・クイッ・・クイッ・・クイッ・・・・ーーー


「・・・」

うっ、うん・・トゥモシーヌさん、指差しで表してくれてますがそれじゃ分からないです・・・

「あの、トゥモシーヌさん・・よろしければ、この紙に簡単に地図を書いてくれた方が分かりやすいと思いますよ?」

本日2度目のとなるポンと両手を叩くトゥモシーヌさん、頭滅茶苦茶良いはずなんだけどなぁ・・こういう所を思いつかない辺り、やっぱり不思議系キャラなんだなぁ・・・


カキカキカキーー・・・スッーーー


「!態々(わざわざ)書いてくれてありがとうございます!それじゃあ、少し席を外します。」

行ってらっしゃい円寿く~ん。トゥモシーヌさんも小さく手降ってる。見送ったのはいいけど、大丈夫かな円寿くん。迷子になったりしないかな?まっ、まぁ見た目が幼いてだけで中身はちゃんと十八歳の大学一年生だからね円寿君。大丈夫だろう・・多分。


「~~~~(円寿の鼻歌の声)・・・(トイレ綺麗で使いやすかったなぁ。水回りがしっかり清掃されてる所は良い所・・えと、トゥモシーヌさんの部屋は・・・あれ?よく見たら部屋(ごと)に文字が書かれてるな。え~と、トゥモシーヌさんの部屋の文字は・・・あっ、トゥモシーヌさん、地図に文字書いてない・・もっ、文字は書いて無いけど、地図に書かれてる位置的に・・・こっ、この三部屋の内どれかがトゥモシーヌさんの部屋のはず。どれかな?そだっ、先輩に連絡を・・・スマホ、電波繋がって無いんだった・・う~ん・・・!あの部屋の扉、少し空いてる・・明かりが漏れてるし、あの部屋かな?)失礼しま~・・・」

「・・・・!・・・?・・あら?」


「・・・トゥモシーヌさん・・何か、円寿くん遅くないですか?」

「・・・・・」


コクッーーー


「やっぱり、迷子になっちゃぅたのかな?トゥモシーヌさん、あたし少し円寿くんの事見て来ます・・あっ、あのトゥモシーヌさん、あたしも迷子になったら元も子もないので、ついてきてもらって良いですか?」


コクッーーー


むむむっ、やはりついていけば良かったかなぁ?迷子か・・・流石に、何かトラブル巻き込まれたて可能性低いよね。いやでもここ魔導士の人達の尞なんだっけ?可能性は、無くも無いな。とにかく、円寿く?を見つけないと。

「トゥモシーヌさん、とりあえずトイレ行きますか」


コクッーーー


あれ?まって、ここたしか女子寮だったよね?て事は、トイレは女子トイレしか無いよね・・てか、女子寮に男子て本来入っちゃいけないよね・・・まずい、いくら円寿くんが女の子みたいに可愛いといっても、女の花園に男の子を解き放つのは色々ヤバい。円寿くん!お願いだからトラブル的な奴に巻き込まれていないでー・・・

「・・・!」

あっ、いた!円寿く・・ん!?ちっ小さい円寿くんがさらに小さく縮こまっている!?顔も両手で覆っている?どうしたんだろぉ?赤面してる・・・これは、何か見ちゃいけない物でも見たか?

「えっ、円寿くん!?どうしたの?何かあった・・よね?」

「・・・先・・輩・・・」

ふぐぅぅっ!!・・ぐっ、はぁ・・・しっ、しまった・・円寿くんのアングル的に上目遣いの直撃を食らってしまったぁ・・しかも今回は不安そうな瞳と赤面した表情のおまけ付き・・・あたしの体力(ライフ)が零を越してマイナスに・・いや逆にプラスになりました、ありがとうございます。

「先輩・・その、トゥモシーヌさんに聞かせるのは何か気まずいので、耳を近づけてもらっても良ろしいですか?」

「?」

「うっ、うん・・良い、よ・・・」

何だろう?トゥモシーヌさんに聞かせたら気まずいって・・・はっ!?ちっ、近い!?円寿くんの小さくて可愛い顔がこんなに近くに!?あたしの人生史上もっとも男の人の顔が近づいた瞬間!!推しがその相手で良かった!!・・・あっ、父さんの事忘れてた。ごめん父さん。

「(その・・ですね、先輩・・さっき、お手洗いから戻ってきた時、トゥモシーヌさんの部屋であろう所まで来たのですが、どの部屋だったか少し迷いまして・・・)」

「(うん、それで?)」

迷子にはなってなかったね。

「(それで、扉が少し開いている部屋があったので、その部屋を確認したんですが・・・)」

「(うっ、うん、それでそれで?)」

何を見たの円寿君!?もっ、もしかしてマッドサイエンス的なグロテスクな何かを!?

「(そしたら・・そのぉ・・おっ、女の人が・・・)」

「(おっ女の人が・・・)」

「・・・」

「・・・(ゴクリッ)」

「きっ、着替えていたんです!//」

「きっ、着替えていたですって!?・・・てえっ・・えっ?着替えていた、だけ?」

「はっ、はい・・そのぉ、ふっ、服を、一枚も・・一糸(いっし)纏わぬ姿を見てしまいましたぁ!・・ぼく、覗きをしてしまいました・・・~~////」

・・・そっかぁ・・女の人の全裸を見ちゃったんだねぇ・・あれ?何であたし安心しているんだろ?いやいや、何を安心しているの。円寿くんにとっては(いち)大事ですよ?!うぶで可愛い円寿くんが女の人の全裸を見てしまうなんて大事件ですよ!?もっと真剣になりなさいあたし!推しが不安になっているんですよ!顔を真っ赤にしながら話してくれたんですよ!?超絶可愛いかったですありがとうございます!

「どうしましょう先輩・・覗きは犯罪です。ぼく、犯罪者になってしまいました・・逮捕されてしまいます・・父さんと母さんに申し訳ないです・・・」

「ちょっ!?まってまって円寿くん、落ち着いて。えっ、円寿くんは犯罪者じゃないし逮捕されないしお父さんとお母さんにも申し訳なくなんかないよ!それに、その女の人は円寿くんが見た事には気づいたの?」

「いえ、そっ、その・・女の人ですが、背中をこちらに向けていました・・それで・・ぜっ・・いぃ一糸(いっし)纏わぬ姿が目に入った瞬間にその場を離れたので、その女の人が気がついたかどうかは分かりません」

「なるほど。つまり、気づかれていない可能性があるって事だね」

「そう、かもしれません・・でも、覗いてしまったていう事実はたしかにあります・・・」

「謝ろう!」

「!?」

「もうここは素直に謝るしかないよ!その人が気づいていなくても、気づいていたとしても関係無い。ちゃんと謝っちゃえば良いんだよ!安心して円寿くん!あたしも一緒に謝るから!」

もしも円寿くんが非難される様な事になってしまったら、その時はあたしが全ての罪を背負ってやるんだから!あたしが円寿くんを守る!

「・・・!」

しかし、いくら女子寮で女の人しかいないから見られた所で関係無いのかもしれないけど、部屋の扉を開けておくとは何と無用心な。その無用心のせいで、推しが不安な思いしているんだ。もしも・・うぅ、何だろう・・こぉ人として駄目な人だったらぁ、いっそこっちが怒ってやろうか。いや謝りますよ、ちゃんと謝ります。謝るけどぉ、こっちもこっちで言ってやりますよ。円寿くんの事を不安にさせた罪は重いですよぉ!

「あら、()()()。ここで何をしているの?」

「・・・・・」

「!?」


ススススッ・・・ーーー


ん?どちら様?・・・おっほぉ~、超絶大人色っぽい眼鏡美人お姉さんキターー!!髪も綺麗な瑠璃色でセンター分けの前下がりボブヘアー。滅茶苦茶仕事出来そうな雰囲気。この尞にいるって事は、このお姉さんも魔導士て事だよね。にしてはだいぶラフな格好しているな。スタイル良いなぁ~・・・ん?あっひゃあい!円寿くん!?いつの間にあたしの背後に!?かっ、隠れている・・のかな?可愛い・・えっ、円寿くんがあたしの後ろで顔を赤くしながら隠れている・・・何か良いな・・・

「(せっ、先輩!こっ、この方が・・その・・さっき言ってた・・・)」

「(えっ?・・・えっ、えぇぇぇ!この、どちゃクソ美人なお姉様がさっき話してた・・・あれ?でも円寿くん、その人の後ろ姿しか見てないんだよね?)」

「(はい・・後ろ姿しか見てませんが・・髪型と、その・・・匂いがその人に一致してるので、この方で間違いありません・・・)」

髪型と匂い・・か。たしかに、この綺麗な瑠璃色は見間違わないし獣人の円寿くんなら一度嗅いだ匂いも忘れないか。うん・・たしかにこのお姉さんも滅茶苦茶良い匂いしそう・・・

「(どっ、どうしましょう先輩!覗いた事がこの方に知られたら、僕訴えられてしまいます・・・)」

「(おっ、落ち着いて円寿くん!とっ、とにかく今は、この人がどんな人なのか様子を見てみようよ)」

「・・・ねぇ、トゥモ。この()は?」

「・・・知り合い・・・」

「へぇ、トゥモ、あなた魔導士以外で知り合い何ていたのね。初めまして。あたしはアオイ・セブンストール。トゥモと知り合いになれるなんて、あなた中々面白い()ね」

「いぃいやいや、それほどでも・・あぁ、あたしは、アキナ・ミズツラと言います。よろしくっ、お願い致しますぅ・・・」

さて、どうやって誤魔化そうか?よし・・ここは円寿くんは女の子何です作戦で・・・

「うん、よろしく・・・あら?・・うっふふ、ねぇ~え()、お名前、聞かせてくれるかな」

あれ?今円寿君の事、()て言った?ぐぬぬ、早くも作戦失敗・・・

「!?はっ、はいっ!・・えと、くすn・・えっエンジュ・クスノキと言います!・・」

「クスノキ・・エンジュ君・・か・・ねぇエンジュ君、さっきから、どうしてアキナちゃんの後ろに隠れているの?」

「いやあの・・これは・・そのぉ・・・」

「顔真っ赤にしてるけど・・何か、お姉さんに言いたい事でもあるのかな?」

「あぁいや・・えと・・あぁの・・・」

はっっ!?このお姉さん・・いやアオイさん・・もの凄く・・とてつもなく・・・エッチな雰囲気がする!!円寿くんを見る目が獲物を見つけた肉食獣の目をしている!!とっ、とにかく、あたしが円寿くんを守らないと!

「あっ、あのですね。この子は・・円寿くんは・・そのぉ・・・ひぃぃ人見知り!でしてっ、初対面の方が相手だと緊張してしまい、こういう風にあたしの後ろに・・隠れてしまう・・そんな感じでして・・・」

嘘です!円寿くんは人見知りじゃないです!むしろ逆です!初対面の方にもガンガン話しかけていくタイプです!超絶人懐っこい子です!可愛いなぁもう!

「人見知り・・ねぇ・・うっふふ・・ねぇトゥモ、アキナちゃんと知り合いて聞いたけど、エンジュ君とも知り合いなの?」


コクッーーー


「へぇ・・もしかして、今日の交流会で会ったの?」


コクッーーー


「ふ~ん・・・」

「!?」

むむっ?なっ、何ですかその目は?円寿くんが怯えているでしょうが!そっ、そんなエッチな目で円寿くんを見ないで下さい!

「・・・どっ、どうか、しましたか?」

「いやぁ、人見知りなのに、今日会ったばかりのトゥモの部屋まで来れるんだなぁて」

たしかにぃ!・・人見知りが初対面の相手の部屋までその日中に行くなんてハードル高過ぎますよねぇ!・・あたしもここちゃんの家まで行くのに半年かかったしな・・・アオイさん鋭い・・はっ!?もしかして、もうばれているのでは?円寿くんが部屋を覗いてしまった事に気づいているのでは!?まっ、まさかそれを理由に円寿くんを脅すつもりなのでは!?はぁっ!?もしやアオイさんこそがサクネアさんの言っていた悪い魔導士なのでは!!それで円寿くんを実験体に・・・なんだろう、アオイさんがする実験て何かとてつもなくエッチな実験な気がする!純粋(ピュア)な円寿くんにエッチな実験何て女神様が許してもあたしが許しません!

「あっ、あたしがトゥモシーヌさんと仲良くなりまして、お部屋に呼ばれたのですが、一緒にいた円寿くんを置いて行く事は出来ないので一緒に連れてきたんです!」

「ふ~ん・・ねぇ、アキナちゃんとエンジュ君てどんな関係なの?凄く、仲が良さそうだけど・・・」

どっ、どんな関係!?仲良さそうに見えますか!?逆にアオイさんから見てあたしと円寿くんてどういう風に見えてるの!?・・・付き合っている・・カップルに見えるかな・・・あぁあぁはあぁあっすいませんすいません!調子に乗りました!おおおお推しとあたしがカップルに見えるなんてそんな事ある訳無いじゃないですかぁ!良くて親戚のお姉さんと男の子です、悪いと不審者と男の子です本当に申し訳ありませんんん!

「あっ、あたし達は同じ学校の先輩と後輩です・・そっ、それ以上でもそれ以下でもありません・・・」

「同じ学校・・なるほどね、そっかそっか。あぁごめんなさい。このまま立ち話しもなんだし、あたしの部屋で話しでもしましょうか」

「はっはい、そうさせていただきます・・・」

どうしよう・・覗いてしまった件を言う事が出来ない・・てか言ったら話しが悪い方向に行く気がする・・円寿くんの不安な気持ちを和らげさせる為に謝ろうて言ったけど、これは中々にハードルが高い。でも言わなきゃ。円寿くんを守れるのはあたししかいないんだから!そして、あたしと円寿くんはアオイさんの部屋に通された。アオイさんの部屋はトゥモシーヌさんの部屋の隣だった。部屋の内装はトゥモシーヌさんの部屋とそんなに変わらない。まぁ同じ尞だからそりゃそうか。あたしと円寿くん・・と、しれっとついてきたトゥモシーヌさんが同じソファに座る。円寿くんをあたしとトゥモシーヌさんで挟む様に座る。その対面にアオイさんが座った。アオイさんには色々質問された。この尞に来た経緯、交流会の事、あたし達がそもそも何者なのか・・アオイさんと話している間、円寿くんはかなり緊張している面持ちだった。普段は、どんな相手にも臆すること無く目を見て話す円寿くんがアオイさん相手だと目を合わせられないでいた。そんな円寿くんを、アオイさんは小悪魔みたいな表情でどこか面白がりながら見ている。むむむっ、何でしょうか、このむず痒い感触は・・アオイさん駄目ですよ。円寿くんみたいな幼い外見の子をそういう風に見るのは物凄くよろしくないですよ!完全におま言うですありがとうございます・・・そういえば、アズさんから前に円寿くんの年齢の事で言われた事がある。この世界の獣人は身体の成長が早くて十歳前後で大人の身体になる。その為、子供の外見でいる期間が短いから子供の獣人は珍しい存在として見られる。そのせいで、悪い人達の間で子供の獣人は希少価値のある存在として人身売買の場で高値がつき誘拐の対象にされやすい事。そんな世界で円寿くんは、子供の外見の獣人にも関わらず年齢が十八歳。そんな獣人は本来この世界には存在しない。なので、辻褄を合わせる為に信頼できる相手以外には、円寿くんの年齢は七歳位と伝える様にする事。そう言われた。何でそんな難儀な世界に円寿くんを獣人の姿で送り込んだのかと、少しデメティールさんに怒りが沸いたけどアズさんは『エンくんが獣人になったのは、ちゃんと意味があるてデメティール様が言ってたわ』と言っていた。まぁ実際、獣人になった事に対して当の本人の円寿くんは全然マイナスに感じておらず、それ所かプラスにしか捉えていない。それに、獣人になった事で円寿くんの魅力が何倍にも膨れ上がった事はあたし自信滅茶苦茶感じている。もう本当に可愛い。可愛過ぎる。てな訳で、この世界では円寿くんの年齢の話しはデリケートな問題何だけど・・・

「ね~え、エンジュ君。エンジュ君は、今何歳なの?」

「はっ、はい、十はt・・・」

「あぁああぁあ!・・なっ、七歳、七歳です!」

「七歳・・そっか」

「(えっ、円寿くん!駄目だよ。一応円寿くんの年齢は七歳て事になってるんだから!)」

「(ごっ、ごめんなさい!忘れていました・・でも、自分の為とはいえ、嘘をつかなきゃいけないのは、何だか心苦しいです・・・)」

ぐっ・・そうだよね。自分の為につく嘘は何とも思わないけど、円寿くんの為とはいえ推しに嘘をつかせるのは辛い、辛いよ。でも、しょうがないんだよ円寿くん。大人てのは時にどうしても嘘をつかなくてはいけなくなる時があるんだよ。今は、今は我慢だよ円寿くん・・・

「七歳なら・・まぁ大丈夫よねトゥモ」

「・・・?」

「あらトゥモ、分からないの?」


コクッーーー


「あっ、あの、何が、大丈夫何でしょうか?」

「ん?いやほら、ここて女子寮じゃない?一応男子禁制て事になってる訳・・・(隠れて連れ込んでる()もいるけど・・・)だから、男の子がここにいる事が知られると少し面倒な事になるんだけど・・まぁ、エンジュ君は七歳だし、ギリギリ誤魔化せられなくもないかなぁて。まぁでも、なるべくは他の尞の()達には見つからない様にしてね。間違っても、一人で出歩かせる何て事はしない様に」

すいませんんん!すでに一人で出歩かせてしまいましたぁ!あぁもう、あたし円寿くんの事全然守れていないじゃぁん・・・

「・・・ふふっ」

「!?どっ、どう・・しましたか?・・・」

「ん~ん、ダ~メっ、だからね。エンジュ君」

「!」

!?なっ、何ですか今のはアオイさん!?円寿くんの鼻の頭を指でチョンて・・・エッチ・・エッチだ・・思春期の男の子が落ちる奴だ。てかぁ、アオイさんも円寿くんに触ったぁ・・ううぅ、会う人会う人皆にどこかしら触れられる円寿くん・・・

「うっふふっ、そういえばエンジュ君、ここ女子寮だからトイレやお風呂も当たり前だけど女子専用何だけど・・大丈夫かな?」

「?・・・!?////そっ、そうでした・・//どっ、どうしましょう・・///(せっ、先輩・・ぼす、もう一つ罪を重ねてしまいました・・・///)」

あああぁ円寿くん気づいちゃったぁ、女子トイレに入った事に気づいちゃったよぅ・・どうしよう、このままだと円寿くんが罪の意識で不安に押し潰されちゃうぅ・・・ええぇい!円寿くんを守る為だぁ!とことん誤魔化してやる!

「(えっ、円寿くん!あっ、あたしが何とかしてみせるよ!)」

「(!先輩・・・)」

「あっ、あの!トイレの件何ですけど、実はすでに使わせていただきました!」

「あらあら・・・」

「でっ、ですがっ、女子トイレを普通に男の子の円寿くんには使わせられないので、あたしが付き添いトイレの中に人がいないのを確認した上で円寿くんを中に入れその間はあたしが見張りをしていましたので見られてはいません!これはあたしの判断です。なっ、なので円寿くんは悪くありません!攻めるならあたしを攻めて下さい!」

殆ど嘘ですぅ・・でも、少しでも円寿くんの不安を取り除く為仕方がない事なのよ・・・てかトゥモシーヌさん本当の事知ってるじゃんトゥモシーヌさんがそれは嘘だと言ったらおしまいじゃん・・・トゥモシーヌさ~ん・・・チラッ・・・


ジィーーー・・・


滅茶苦茶見てる!トゥモシーヌさん気まずそうにしてる円寿くんをじっと見てる!可愛いからね!仕方がないね!・・てそうじゃない。トゥモシーヌさん、さっきのあたしの嘘ちゃんと聞いてたかな?

「ふ~ん、本当なの?トゥモ。」

「!・・・・・」


チラッーーー・・・


!トゥモシーヌさんこっち見た!察してトゥモシーヌさん!


フンフンフンフンフンーーー(首を激しく縦に上下に降る明奈)


「・・・・・」


コクッーーー


!!トゥモシーヌさ~~ん!!良かったぁ、察してくれたぁ!!

あっトゥモシーヌさん円寿くんの頭撫でてくれてる。トゥモシーヌさんなりに円寿くんの不安を取り除いてくれてるのかな。ありがとうございますトゥモシーヌさん!

「そっか・・・大丈夫よアキナちゃん。別に誰も攻めようなんてしないわ。それよりも・・・ねぇえ、エンジュ君。今回は人に見られなかったけど、次またトイレ行きたくなった時もアキナちゃんに付き添ってもらうの?」

「!?えっと・・それは・・・せっ、先輩が大丈夫でいる内は、付き添ってもらおうかと・・・」

「大丈夫じゃなくなったら?」

「!?その場合は、がっ、我慢します!」

「大丈夫じゃない時何てありません!円寿くんに我慢何てさせません!いつでも付き添います!」

「・・・そっか、アキナちゃんて、円寿くんに対して過保護なのね」

「はいっ!円寿くんの事をちゃんと守れと、あたしと同じ円寿くんを大切に思う人から脅さ・・・いっ、言われてますので!」

「!それって、サク姉の事ですか?先輩」

「そうだよぉ円寿くん」

「大切に・・ねぇ・・・ねぇえエンジュ君、エンジュ君ていろんな女の子に気にかけられてるみたいだけど、エンジュ君は好きな()とかいないの?」

「好きな・・人・・ですか?ええと・・今は、いないです。あぁでも、気になってる人は・・います」

えっ!?いるの?円寿くん気になってる人いるの!?えっえっ誰誰誰誰誰!?サクネアさん?ミサキリスちゃん?それとも・・あたs・・な訳ないでしょおぉ!!・・・まって下さいトゥモシーヌさん。何故に顔の周りをそんなキラキラと輝かせているんですか?あたし?あたし?て文字が浮かんでいる・・もしかして気になっている相手は自分だと思っているんですか?いやたしかにトゥモシーヌさんは美貌と名声両方持っている人ですけど・・・自分に自信があるトゥモシーヌさんが羨ましい・・・でも、本当に誰何だろう?円寿くんの気になっている人・・・

「そっかぁ・・それじゃあ、付き合ってる相手とかもいないんだね・・・」

「はっ、はい、いない・・ですけど・・・」

「ふ~ん・・じゃぁあ、キスしても問題無いね」

「はいぃ・・・・!?」

はっ?・・・はあああああぁぁぁぁぁぁ!?こっ、この人、今なんつったぁ!?キス?キスて言いましたぁ!?駄目ぇ!駄目に決まっておろぉうがぁ!!

「意義あり!話しが唐突過ぎます!アオイさんは円寿くんにキスをして良い理由がありません!なっ、何故円寿くんにキスする何て言ったのでしょうか?!」

「?だってぇ、エンジュ君フリー(彼女無し)何だし、()()()しても誰にも文句言われないでしょ?おかしいかしら?」

「おかしいです!あと、キス()()っしゃってますが、人によってはキスに対する重みに違いがあるので決して軽く出来る様な行為では無いと思います!」

「なるほど・・エンジュ君も、キスは軽く出来る物じゃないと思ってる?」

「はっ、はいっ、その、キス・・とかはやはりちゃんと時間をかけて関係を気づいた相手とする物だと思います・・・//」

「ふむふむ・・・トゥモは?」


ブブーッーーー(両手で×マークを作る)


「あら、多数決で負けちゃたわ。残念」

「あぁぁあ当たり前です!それに・・・(一応)七歳の子に、きっ、キス何て・・・色々アウトです!アオイさんは考えを改めて下さい!そもそも、どうして円寿くんにキスしたいなんて・・・もっ、もしかして円寿くんの事・・・」

「う~ん?だってぇ、エンジュ君のそのどこか呆気ない表情と雰囲気、それにうぶな反応見てると・・・うっふふ・・・」

なっ・・何ですか!?なん何ですか!?うっふふ・・じゃ無いですよぉ!

「それにぃ・・キスと言っても、()()()するかは言って無いわ・・頬とか・・おでことか・・その辺りにキスするつもりだったんだけど・・・ふふっ、エンジュ君・・どこにキスしてもらえると思ったのかな?」

「!?/////」

あああぁ円寿くんがからかわれている。良い様に弄ばれている。円寿くんの事守ってあげたいけど、あたしもこういう話題は得意じゃ無いからなぁ・・・トゥモシーヌさん助けてっ!・・・円寿くんの頭撫でてる。何だろうか。さっきは、円寿くんの不安を和らげる為に撫でてたのかと思ったけど、円寿くんの為にと言うよりも(ただ)撫でたいから撫でてるだけ・・な様な気がする。トゥモシーヌさん・・本当マイペースだな。


コンコンッーーー


「トゥモシーヌ!トゥモシーヌはいますか?」

こっ、この声は!たしか・・・


ガチャッーーー


「!トゥモシーヌ、アオイの部屋にいたんですね!・・はぁ・・まったく、トゥモシーヌあなたという人は・・・話しは本当だったですね」

シフォンさん!が・・ここにいるって事は、交流会はお開きになったて事?えっ?もうそんな時間・・・外が暗い・・・ひええぇ!もうそんな時間だ!ミサキリスちゃんに何も言わずに転移しちゃったからなぁ・・心配してるだろうなぁ、どうしよう・・・

「いけませんよトゥモシーヌ!人様のお連れの方を勝手に連れ出すなんて!よりにもよってその相手が戦乙女(ワルキューレ)騎士団コルンチェスターさんのお連れのクスノキ君とミズツラさんだなんて・・・反省なさいトゥモシーヌ!」

「・・・・・」

「ああぁちっ、違うんです!トゥモシーヌさんは悪くありません!あたしがっ、トゥモシーヌさんに円寿くんと三人でお話ししませんかて提案して、それをトゥモシーヌさんが承諾して転移魔法使ったんです。なので、もし攻めるならあたしを攻めて下さい!」

「あの、シフォンさん。トゥモシーヌさんは、ぼくと明奈先輩をワーp・・じゃないや、てんいまほう、で色々な場所に連れてってくれました。どの場所も、日常では味わえない様な素敵な場所でした。てんいまほう、て使うととても疲れるんですね。そんな使うと疲れるてんいまほうを立て続けにトゥモシーヌさんはぼく達の為に使ってくれました。トゥモシーヌさんにしか出来ない()()()()()、ぼく凄く嬉しかったです!なので、トゥモシーヌさんを攻めないであげて下さい。お願いします!」

「・・・そうですか。お二人がそこまで言うならば仕方がないですね。トゥモシーヌ、あなたがそこまで人様の事を思って行動を起こすなんて・・・ふふっ、よほどお二人の事を気に入ったのですね。ですがトゥモシーヌ、楽しませてあげるのは構いませんが、せめて連絡しなさい!今回の件、端から見たらクスノキ君とミズツラさんを誘拐した様に見られてしまいますよ。まったく、あなたという人は・・今後もしこのような行動を起こす時は、かならずあたしに一言いれなさい。コルンチェスターさんも心配していました。人に心配をかけてはいけません。わかりましたね」


コクッーーー


あぁやっぱりミサキリスちゃんに心配かけてた。もうちょっとしたら戻らないと・・・

「それと、男の子であるクスノキ君を女子寮に入れたんです。ちゃんと責任もってクスノキ君を見ている事。いいですね」


コクッーーー


シフォンさん、結構女子寮に男の子がいるて大変な事だと思うんだけどそこはあっさりだな・・ん?シフォンさん魔導省の本部にいて、あたし達がいなくなったの聞いてこの女子寮に来たんだよね。魔導省本部の周りに建物らしいのは無かったから、この女子寮は離れた所にあると思うんだけど・・・そもそもこの女子寮てどこにあるの?

「あの・・シフォンさん、質問よろしいでしょうか?」

「はい、どうかしましたか?ミズツラさん」

「この女子寮て場所的にどこにあるのかなぁて思いまして」

「あぁ、この女子寮の場所ですね。魔導省本部から北の方にあります・・そうですね・・・距離的には・・馬車で3~4時間位走る距離ですね」

「ばっ、馬車で3~4時間!?それ滅茶苦茶遠いじゃないですか?!」

「そうですね。ですが、あたしは()()()()があるので、だいたい1時間位でここまでこれますね」

「そっ、そうなんですね・・・ん?飛行・・魔法?飛行魔法とは、つまり・・・」

「はい、空を飛んで移動する魔法ですね」

「!?」

出たあーー!!創作作品でよく見る魔法の定番にして王道!空駆ける飛行魔法!

「シフォンさん!空飛べるんですか!はぁあ・・・凄い!凄いです!ぼく、空を飛ぶのが夢なんです!」

円寿くん食いついたー!そうだよねぇ、飛行機とかに乗らずに飛ぶのって凄くロマンがあるよねぇ・・・あぁでも、あたしは高い所苦手だから飛べるとしても程々が丁度良いかも・・・

「あらあらクスノキ君、飛行魔法に興味があるんですか?」

「はい!あります!ひこう・・まほう、使ってみたいです!」

「そうですか。飛行魔法は、魔導士の扱う魔法でも上位の魔法なので、習得するのにはそれなりの努力が必要です。ですが、もしクスノキ君に魔法を使う素質があれば、クスノキ君の努力次第で飛行魔法が使える様になるかもしれませんね。」

「!本当ですか!」

「はい、本当ですよ」

「はぁあ・・・僕、頑張ります!」

「ふふふっ・・・ん?トゥモシー・・ヌ?どっ、どうかしましたか?」

「・・・・・」

あれ?何かトゥモシーヌさん、シフォンさんの事を・・・睨んでいる?何か目元が暗い・・気がする。

「あらトゥモ、あなた、エンジュ君がシフォンの飛行魔法に興味持ったもんだから・・妬いてるのね?」


フンフンーーー(首を横にふる)


そういう訳じゃ無いと否定してる。物凄く不本意な顔してる。トゥモシーヌさんそれ完全に嫉妬(ジェラシー)です。そうですよね、さっきまで自分にむけられていた待望の眼差しが他の人にむけられてるんですもの。納得出来ないですよね。ですけどトゥモシーヌさん、円寿くんは・・その、色々な物に物凄く素直に興味を湧かせるので円寿くんに悪意はまったく無いです、はい。

「・・・あっはは、あらあらトゥモシーヌ・・・(この()がこんな表情をするなんて・・・ふふっ、トゥモシーヌ・・クスノキ君の事をよほど気に入ったのですね)あっ、あぁそうでした。あたし()()()()()()の準備をしようと思っていたんです。たしか、来客用の部屋があったと思うんですが・・・少し、確認してきますね」

「ああぁあいえいえそんな!お構い無く・・・ん?あのぉ・・まって下さいシフォンさん。その・・お二人の部屋の準備てぇ何ですか?」

「?お二人が、今夜一泊する為の部屋の事ですが?」

・・・・はは~ん、なるほどなるほどなるほどですね。そうですか・・・一泊!?あれ!?あたしと円寿くんいつの間にかこの尞に泊まる流れになってる!?何故だ!?いつそうなった!?ていうか、二人の部屋て・・あたしと円寿くん一緒の部屋て事ですかぁ!!まってまってまってまってまってまってそれは不味い!具体的にあたしのキャパシティが不味い!いやだって、推しと・・円寿くんと相部屋とか・・・おっひゅあ!こっ、こここ心の準備ががががが・・・

「?ぼくと先輩、今日この尞に泊まるんですか?それじゃあ、ミサちゃんに連絡しないといけませんね」

「あぁそこは大丈夫ですよクスノキ君。ここへ来る前に、コルンチェスターさんにはお二人が我が尞に一泊する事を伝えてあります」

「!そうだったんですね!それなら大丈夫ですね!」

大丈夫・・なのかな・・・魔導士の人しかいない尞、しかも女子寮に円寿くんを一泊させる何て・・・サクネアさんが聞いたらぜったい怒るだろうなぁ・・てかサクネアさんの事だからここまで殴り込んできそう・・・駄目だ。絶対にサクネアさんの耳に届いちゃ駄目だ。この件は内緒にしておこう。

「それでは、あたしは部屋の準備を・・・」

「あぁまってシフォン。態々部屋を用意しなくても、あたしとトゥモシーヌの部屋に泊めてあげればいいじゃない。」

「!」


コクッーーー


えっ?あっまってそれだと円寿君との相部屋が・・推しとの夢の時間が・・・

「あぁあの・・ちょとまっ・・・」

「あぁたしかに・・そっちの方が良いかもしれませんね。それでは、クスノキ君とミズツラさんの事は任せましたよ、アオイ、トゥモシーヌ」

あぁぁぁぁぁ言い出せ無かったぁ・・・陰キャ特有の急に声が出せなくなる奴がこのタイミングで・・くぅ・・・

「あっ、そうだクスノキ君。せっかくですし、ここで魔法適正審査をやりましょうか。会場では色々あってできませんでしたが・・この尞なら落ち着いて審査ができますよ」

「!できるんですか!やります!審査受けます!」

「ふふっ、あらあら。それでは準備してきますので、適当に時間を潰してて下さい。それでは」

「はいっ!適当に潰してます!」

そうだった。円寿くん、魔法適正審査受ける予定だったんだっけ。そういえばそうだった。さて、適当に時間を・・どう潰そうか?

「ねぇえぇエンジュ君・・」

「!?はっ、はいっ、なんでしょうか?」

そこぉっ!そこのアオイさん!スキ有りといわんばかりに円寿君に近づけない!耳元に口が近いですよ!それだと・・息が・・吐息が耳にかかります・・唯でさえ円寿君の耳は大きくて、人間の耳よりも吐息を感じやすいんですから・・

「エンジュ君、今日お泊まりする訳だけど・・お風呂はぁ・・どうするのかなぁて・・・」

「おっ、お風呂・・ですか?」

「うん、ここって女子寮だから、トイレもそうだけど・・お風呂も女子風呂しかないから、エンジュ君どうするのかなぁ~て」

「じっ、女性のお風呂には、当たり前ですけど男であるぼくが入る訳にはいきません。なっ、なので、今日の所は仕方がないので・・お風呂には入らないです・・・」

「えぇ~駄目よぉエンジュ君。それだとせっかくのエンジュ君の綺麗で柔らかいお肌が汚れたままじゃない。お風呂は最低でも一日一回は入らなきゃ駄目よ。外出したのなら尚更。それにぃほら・・・」


スンスンーーー(円寿の首元の匂いを嗅ぐ音)


「!?」

「エンジュ君てぇ凄く良い匂いするからさ・・お風呂に入らなくて、せっかくの良い匂いが臭くなっちゃったら・・お姉さん嫌だなぁ・・・」

「でっ、ですが、ここには男が入れるお風呂がありません・・・」

「入っちゃえば良いじゃない」

「!?・・それって・・もしかして・・・」

「うん、入っちゃえば良いのよ。()()()()()。」

「!?」

はっ!?・・・はいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!?


一方その頃、時は戻り交流会当日の太陽が丁度真上に来ている位の時間帯。とあるすじからの情報を得て、新たな児童獣人誘拐組織の存在を認知したラング・ド・シャットの面々。例によってその組織を問答無用で壊滅させ、組織の建物内のありとあらゆる物を()()として物色していた。

「おったっかっらっ、おったっかっらっ、どぉ~こだぁっ!」

ウキウキで物置き部屋を漁るウィネとナミミナ。その隣でチェルシーが何かを見つけニヤッと笑う。

「宝石見ぃ~けっ、はいこれあたしの~」

「チェルに先越された~」

「あんたが遅いのよナミ」

「いやぁ、それにしても、今日のサク姉いつにも増して暴れてましたねぇ」

「それなぁ~」

「本当は行く予定だった魔導省の交流会がこの仕事で行けなくなったからねぇ・・・」

「仕事が入ったと聞いた時のサク姉・・・ぶちギレてましたね・・・」

「キレた後~、仕事行かな~い、エンジュと交流会行くんだ~て、子供みたいに駄々こねてさ~あ。ま~、チェルが説教したら大人しくなったけど~」

「いや説教て・・あたしは単純に、ラング・ド・シャットの使命よりもエンジュを優先させて交流会に出た何てエンジュが知ったらエンジュ本人が悲しむよ・・て言っただけ。サク姉がそんなカッコ悪い奴だったなんて思われたく無いでしょ・・て」

「あの時のサク姉、それは嫌だぁ~!叫んでましたね」

「正直ちょっと笑った~」

「それで今日、交流会に参加出来なかった鬱憤を晴らすかの如く暴れたと・・・」

「で、そのサク姉はと・・・サク姉ーっ、サク姉は何か見つけた・・・サク姉?」

「・・・」

何やら紙の束に目を通しているサクネア。

「何見てんのさサク姉?・・・!?サク姉、それって・・・」

「あぁ・・(ゴミ)共の顧客リストだ。見ろよ、ご丁寧に名前や住所、職業に収入全部書いてあんぜ」

「なるほど・・・やっぱマフィアや貴族とかが多いねぇ・・・てっサク姉、()()()の職業・・・」

「まぁ何となく予想はしてたさぁ・・おいお前らぁ!行く(とこ)ができたぁ。今すぐ向かうぞぉ!!」

「えぇ~サク姉、まだお宝探し終わって無いんだけど・・・」

「そんな(もん)よりもっと大切な宝がピンチかもしれねぇんだ!早く行くぞ!」

「サク姉~、どこ行くの~?」

「んな(もん)決まってんだろ。元々この仕事が終わったら行く事にしてた場所・・・魔導省本部だ!」

「あぁ~やっぱしサク姉~、交流会の事諦めて無かったんだね~」

「たりめぇだぁ!待ってろエンジュ!今助けに行くぞ!」

「いやまだエンジュが危険な状況になったって訳じゃ・・・てもう走ってる!?・・はぁ、本当しょうがない女だよサク姉は・・・ほらっ、あたし達も気合い入れて走るよ!」

「りっ、了解っす」

「あたしは~、ちょっと休憩してから・・・ぐえっ・・・」

ナミミナの首根っこを捕み走り出すチェルシー。そんなチェルシーの表情は、どこか清々しい物であった。


そして、再びは話しは魔導省の女子寮。そこには、顔を赤くし慌てふためく円寿と明奈と余裕な笑みのアオイ、そして無表情で円寿を見つめるトゥモシーヌの姿があった。

「じっ、女性のお風呂には入れません//犯罪です//捕まってしまいます//だっ、だいいちぼくが入った場合、このお風呂を利用するこの尞の人達に迷惑がかかってしまいます///あと、僕がこの尞にいる事もバレてしまいます///」

「あら、それは大丈夫よエンジュ君。ここのお風呂、夜中の(れい)時から一時の時間帯は利用者が殆どいないの。その時間ならぁ、入っても問題無いかなぁ・・・」

問題無いかなぁ・・・じゃないですよ!問題大有りです!円寿くんはそもそも女子風呂に入る事事態が問題と思ってますけど、あたし的には円寿くんが女子風呂を利用する事事態はそこまで問題では無いのです。問題なのは・・・裸の円寿くんがっ!裸の知らない女の人とっ!エンカウントしてしまう可能性に問題があるんです!えっ、円寿くんの・・はだっ、裸が・・見られてしまうという事は円寿くん本人が一番恥ずかしいと思うし大変っ由々しき事態・・であるからして、それに加えて純粋(ピュア)な円寿くんが女の人の裸何か見ちゃったら・・・駄目ぇぇぇ!!純粋(ピュア)な円寿くんが汚れるぅぅぅ!!絶対駄目ぇぇぇ!!

「問題有ります!利用者が殆どいないと言っても、人が入る可能性が零では無い限り、円寿くんは入れさせません!」

「う~ん・・じゃぁあ、()()()()()()()()()()()な様にすれば、問題は解決するかしら?」

「ひっ、人が入って来ても・・大丈夫?」

「えぇ、それならエンジュ君をお風呂に入れても良いでしょ?」

「・・・あの・・具体的に、何をどうするんですか?」

「簡単よ。()()()()も一緒にエンジュ君とお風呂に入れば良いのよ」

「!?」

・・・はっ?・・・えっ・・いやいや、この人は何を言ってるんでしょうか?円寿くんをこれ以上驚かせないで下さいよ。あたし達が円寿すんとお風呂に入る?いやいやいや駄目ですよそんなの。円寿くんに女の人の裸を見せる事が駄目なんです。あたし達も女なんですよ?てか、男の子が女三人と一緒にお風呂入る何て・・・エ○ゲーじゃないですかそんなの。それにですよ、一緒に入っちゃっら・・・あっ、あたしのも見られちゃうし・・・いやあたしごときの裸体何て誰得だよって話しですけど・・推しに裸体を見られる何て無理!円寿くんの視覚を汚したくない!・・・あっでもそっか・・一緒に入るて事は、あたしのも見られちゃうけど円寿くんのも見れるて事だよね・・・ブッハッアァ!いやいやいやいや何を考えたいるのよあたし!不純、不純よあたし!危ない、思わず鼻血が出そうになった。あぁもう、一度円寿くんの裸体を想像したら脳裏にこびりついちゃった・・我ながら最低だ・・すぐ隣にその本人がいるのに・・・

「あの・・アオイさん。何故あたし達が一緒にお風呂に入る事が、人が入って来ても大丈夫な理由なんでしょうか?」

「え?だって一緒に入ってれば、人が入って来た時にエンジュ君を隠す壁になれたり、誤魔化す事や隙を見てエンジュ君を逃がす事もできるじゃない」

「たっ、たしかに・・・」

て・・納得しちゃ駄目でしょあたし!

「それに・・アキナちゃんだってぇ・・・」

なっ、何故あたしに近づくんですか?!辞めて下さい、そんないやらしい目をあたしにも向けないで・・あぁアオイさんいけませんアオイさん!そんな耳元に近づかれては・・・あふっ・・・

「(実は・・エンジュ君と一緒にお風呂入りたいんでしょ?)」

「はうっ!?」

「?」

あっ、円寿くん・・不思議そうな目であたしを見てる・・うぅ、円寿くんごめん・・あたし今、エッチなお姉さんにエッチな声でエッチな事つぶやかれてる・・・あたしの中で抑えていた欲望という枷が、アオイさんのエッチ(りょく)によって外されちゃう・・・ごめん円寿くん・・エッチなお姉さんにはかなわなかったよ・・・

「ふぁ・・ふぁい・・」

「ふふっ、素直でよろしい・・・それじゃあエンジュ君、零時頃になったらお姉さん達と一緒にお風呂入ろうね。はい決まり。」

「!?きっ、決まっちゃったんですか!?」

「うん、アキナちゃんも入りたいみたいだし・・トゥモ、あなたも入るでしょ?」


コクッーーー


「あっ、あの、そもそも男が女性のお風呂に入る事事態がいけない事だと思うんですが・・・//」

「ん~ん、それはエンジュ君が思ってるよりも些細な事だから、そこは気にしなくて良いんだよ」

「そっ、そうだったんですか!?」

「うん、そう」

「でっ、ですが、やはり・・その、先輩やアオイさん達の・・その・・・いっ、一糸纏わぬ姿を・・見る事は出来ません・・・//」

「う~んそっかぁ・・・それじゃあ、()()()()()良いんじゃない?」

「・・・?」


「はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・・」

いっ、今・・この扉の向こうで・・えっ、円寿くんが・・服を脱ぎ・・はっ、裸にぃい!一糸纏わぬ姿の円寿くんが、この扉の向こうに・・・良いの!?推しの・・円寿くんの裸、見ちゃって良いの!?これは元いた世界の円寿くんファンの皆様と最近生まれつつあるこの世界の円寿くんファンの皆様に申し訳ない・・・いや・・申し訳なくなんかない!これはっ!・・円寿くんを守る為の行い・・正しき行いなのです!決して、円寿くんの裸が見られて嬉しいとかそういう疚しい物では無いのです。だから・・・はよ・・はよぉこの扉を開けて・・・

「アキナちゃん、息が荒くなってるけど・・大丈夫?」

「はぁ・・はい・・お構い無く・・・」

アオイさん・・あたしがこの人のエッチな吐息混じりのウィスパーボイスの呟きを耳にくらって放心状態になってる間に、円寿くんがアオイさんの提案を受けてしまったらしい・・何やらお風呂に入るにあたってアオイさんが円寿くんに何か提案を出して円寿くんが一応納得したみたいだけど・・にしても・・・迂闊・・圧倒的迂闊・・このままじゃ駄目よあたし。ちゃんと円寿くんを守ってあげないと、ミサキリスちゃんとサクネアさんに合わせる顔が無いわ!円寿くんがエッチな目に会わない様にしっかりと守りぬくのよ!

「あっ・・あのぉ・・じっ、準備・・できました・・・」

「!?」

扉の向こうからか細く弱々しくも可愛らしい声・・円寿くんの声だ。準備が出来た・・それは、つまり・・今、円寿くんは・・はっ、はだっ・・はだだだだだ・・・

「裸なの?!円寿くん!」

「!?えっ?・・はっ、裸・・はっ、はいっ・・そう・・ですけど・・・あっ、タオルは巻いています」

あっそうなんだ。そうだよね、局部を見せるのは恥ずかしいよね・・・て、おいあたし今何て言った!?裸なの・・て何でどうしたそんな言葉を!?円寿くんに何て言葉を言っとるのだ!?くっ・・興奮して一瞬理性が飛んでしまったか・・・

「エンジュくぅん・・着替え終わった?ふふっ、それじゃぁあたし達も入るね」

ああぁぁアオイさん待って下さい!ドアノブに手をかけるのはまだ早いです!まっ、まだ心の準備ががが・・円寿くんのあられもない姿を眼に焼き付ける為の心構えがあぁぁぁぁ・・・


ガチャッーーー


「・・・/////」

ほぉっ・・ほっほっ・・ほほほほほっ・・おほおぉぉおっおぉぉぉぉおあぁっひゃあっっい!!!・・・すいません取り乱しました。扉を開けると、そこには腰にタオルを巻いてしっかりと局部を隠し恥ずかしそうに立たずむ円寿くんの姿があった(可愛い)タオルの長さは腰から膝の上辺りまで(絶妙)タオルの重なっている所からは獣人のしっぽが出ている(興奮するなぁ)そして、アオイさんが円寿くんに出した提案。あたし達の裸を見ずにすむその安が・・・

「ふふっ、()()()してる半裸の男の子とこれから一緒にお風呂入る・・・何だか凄くイケない事してるみたい。ねぇ、アキナちゃん?」

「ふぁ・・ふぁい・・・」

そう、円寿くんは視界を塞ぐ為に目元に布を巻いている。いわゆる目隠しの状態である・・・いやもうこれ、この状況かなりギリギリ・・いやアウトでしょ!?端から見たら完全にこれから円寿くんに如何わしい事しようとしてる痴女三人て絵面なんですけど!?

「それじゃエンジュ君、あたし達も着替えるね」

「はっ、はいっ//それでは、僕は先に入ってますっ//」

あっ、円寿くん・・そのままそっちに行ったら・・・


ゴンッ!ーーー


「!?」

あぁぁ!円寿君もろに扉にぶつかったぁ!言わんこっちゃない!

「だっ、大丈夫!?円寿くん!?」

「いてて・・・はい・・大丈夫です・・・すいません、目隠ししてて見えない事を忘れていました・・・」

もう駄目だよ円寿くん!恥ずかしくて頭に血が登ってて冷静でいられないのは分かるけども・・・

「やん、駄目よエンジュ君。ちゃんとあたし達が連れて行くから。あたし達が()()()()()()()待ってなきゃ駄ぁ~目」

「!?はっ、はいっ//そうして・・おきます・・・///」

ああぁ!()()()()()また鼻チョンした!エッチ!それエッチな奴!またやった!

「ふふっ、良い子・・・それじゃあ二人共、着替えちゃいましょ・・・あらトゥモ、いつの間にかもう脱いでいたのね」

えっ?もう脱いで・・うお!?トゥモシーヌさん・・・綺麗・・・いや待って滅茶苦茶綺麗何ですけどトゥモシーヌさんの裸。肌白いしお腹も引き締まってて手足が細くて長い!そんでもって・・・おっぱい!それにお尻!出る(とこ)ちゃんと出てる!トゥモシーヌさん来ている服がだぼっとした服だからスタイル分からなかったけど滅茶苦茶スタイル良いじゃないですか!背高くてスタイルも良いとかもし元いた世界だったら絶対トップモデルになれるよトゥモシーヌさん!・・・おっぱい、あたしと同じ位かな?てかトゥモシーヌさん、目隠ししてるとはいえ目の前に男の子いるのに全裸で堂々としてるなんて・・肝が座っていらっしゃる。

「ふふっ、エンジュ君、トゥモはもう裸になってて準備万端みたい。今からあたしも服・・脱いでいくから、もう少し待ってて」

「!?//はっ、はいっ//了解しました///」

そこぉっ!いちいち脱衣報告しないでよろしい!・・・ぐぬぬアオイさん、服の脱ぎ方もなんか凄くエッチ、男の人の前で脱ぐのになれている感が凄い・・なんてやらしい人なんだこの人は・・・

「・・・!何してるのアキナちゃん。あなたも早く脱がないと」

「!はっ、はい・・・」

くうぅ、分かっていたけどアオイさんも滅茶苦茶スタイルが良い。くそぉ!声もエッチ雰囲気もエッチでスタイルもエッチとか細胞全てがエッチで構成されてるのかこの人はぁ!・・脱ぎヅラい・・スタイル抜群の二人の前で服を脱ぐなんて物凄く抵抗がある・・おっ、おっぱいはあたしもそこそこ自信あるけど・・二の腕!太股!そしてお腹周り!・・・どうしよう・・ただでさえインドアで運動とかまるでしないのに、こっちの世界に来てからもまともに部屋からも出ていなかったあたしの身体・・ちょっとだらしない・・いやお腹の脂肪が乗っかっている訳じゃないし二の腕も太股もブルンブルンではないけど・・・この二人のスタイルが良すぎるから比較すると太く見えてしまう!それに・・・いくら目隠ししてるからとはいえ、おっ、推しの目の前で服を脱ぐなんて・・・えっ、ええいもう!腹をくくりなさい明奈!

「・・・ふふっ・・ねぇえエンジュ君」

「!?」

「あたし今、服・・脱ぎ終わって、エンジュ君の目の前にいるんだけど・・・」

「!?そっ、そうなんですか?///」

「うっふふっ・・・」

「・・・・・」


スススッーーー(円寿に近よるアオイとトゥモシーヌ)


「!?あっ、アオイさん!トゥモシーヌさん!すと・・ストップです!」

「あら。」

「?」

「///?」

「えっ、円寿くんに近づいては駄目です!」

「!?」

「ん~・・どうしてぇ近づいちゃ駄目なの?・・・」

「!?だっ、たから!近づいちゃ駄目です!」

「えぇ~?もぉ」

「あっ、あの、先輩。どうしてお二人が近づいてはいけないのでしょうか?」

「えっ!?あぁ、いや・・だって、()()()()で近づいちゃうと・・ほら・・・」

「その状態?」

「近づくと・・何が駄目なの?」

「?」

「いや・・その・・おっ、おぱ・・おぉ・・おっ、おっぱいが円寿君に当たってしまいます!!」

「!?///」

「・・・・・」

「おっぱい?・・・あぁ、たしかにぃあんまし近づいちゃうと・・・」

「?」

「!?ちょぉっ!だっ、駄目ですよアオイさん!あてっ、当てちゃ駄目です!」

お互い服を着ていているならともかく、すっ・・素肌に直に乳房(どころ)か乳頭なんかが当たっちゃったら・・うぶな円寿くんがパニックになっちゃうじゃないですか!

「・・・・・」


スゥーーーー(円寿に近づく)


「!?トゥモシーヌさん!だから駄目ですってば!」

「?(首をかしげる)」

あぁもう!どうして駄目なの?て頭に文字を浮かばせても駄目な物は駄目なんです!アオイさんは意図的、トゥモシーヌは無自覚・・・ぐぬぬ、どっちもやっかいだ・・・

「いいですか二人共!あっ、あたしの準備ができるまで円寿くんに近づかないで下さい!いいですね!・・・はっ、はいっ!準備出来ました!円寿くん!アオイさんとトゥモシーヌさんは全裸だけど、あたしはちゃんとバスタオル巻いているから安心してね!」

「!?はっ、はいっ!了解しました///」

「その報告て、いる?」

「いっ、いります!露出している人の数減る事で、少しでも円寿君の負担が軽くなる・・・はずです!」

「ふ~ん、そういう物なのね」

「それじゃあ行きましょう!はいっ、円寿くん」

「!」

「今握っているのは()()()()()だからね。よし、行くよ円寿くん」

「はっ、はいっ!よろしくお願いします」

「・・・あら、行っちゃった・・・ふふっ、本当過保護ねアキナちゃんて」


コクッーーー


「・・・(まぁでも、つけ入る隙はだいぶあるけど、ね)うっふふっ・・・」

「?」


カポー・・ンーーー


・・・うひゃー、お風呂広いなー。大○戸温泉物語ばりの広さ。(いち)女子寮にこんなデカイ浴場があるなんて・・・流石は異世界・・いやここは流石魔導省と言っておくべきか。いやそれにしても・・あたし・・今あたし・・・円寿んと手を繋いでいるーーーー!!!いっ、勢いで掴んじゃったけど・・とっ、とうとう・・ついに・・満を持して・・推しと手を繋ぐ事に成功いたしましたーーー!!あっはあぁ・・ファンファーレが・・あたしを祝福するメロディーが鳴り響いている・・気がする・・・あぁどうしよう。この握った手を洗いたくない・・けど、風呂場だから洗わざるおえない・・・いやでも、現実問題手を洗わないで日常生活送るのって結構不可能に近いよね。うん、こういうのは気持ちの問題だからね。たとえ石鹸で洗いアルコール消毒されたとしても、推しの手の感触はあたしの手の神経隅々まで記憶(メモリー)に残るのだから。

「あの・・先輩・・・」

「はっ、はいっ!?何かな、円寿くん?」

「とりあえず、身体・・洗いませんか?」

「あっ、うっ・・うん、そうだね。それじゃあ円寿くん、ここ座って」

「はい、ありがとうございます・・・あの・・先輩・・身体洗う時は、手を離してもらって大丈夫ですよ」

「!?ああぁあそっ、そうだよね!ごめんね円寿くん!・・・」

ああぁ、円寿くんの手が離れてしまう・・・あっ、離れた。うぅ・・またすぐ握れるとはいえ、やはり円寿くんとの初めての手繋ぎ(ホールドハンド)がほどかれる瞬間はとても切なく感じてしまう。さよなら・・初めての円寿くんの手の感触・・さよなら・・あたしの人生初の男の人の手の感触・・・あっ、父さん忘れてた。ごめん父さん。さてさて~、シャワーシャワー・・・無い。シャワーヘッドらしき物が無い。何故あたしは何も無い壁の所に円寿くんを座らせたのだ?イヤだって風呂椅子が置いてあるんだもの。座っちゃうじゃないですか。そうだった、ここは異世界。この世界の文明的にシャワーは存在していないんだ。公衆浴場だから、勝手に日本の銭湯みたいなのを想像してたけどそもそも作りが違う。そういえば、デア・コチーナのお風呂もシャワーは無かったっけ。桶でお湯を汲んで掛ける・・・まてよ、当分この世界にいるならシャワーを作ってしまうというのも有りなのでは?幸いあたしにはこの世界でも使う事のできるインターネットがある。インターネットをフル活用すれば、シャワーを作ろうと思えば作れなくもない。そして、作ったシャワーで何かしらのビジネスをする・・現代知識で異世界で大儲け・・・ふふふっ、なかなか夢のある話しじゃないですか。まぁ、この話しはデア・コチーナに帰った時に円寿君を交えながらゆっくり考えるといたしましょうかね。とにもかくにも今は、円寿くんとのお風呂時間(タイム)を満喫しよう!

「あっ、ごめん円寿くん。ここだとお湯を汲む事ができないから、少し移動するね」

「!はいっ、了解でs・・・」


ザバーーッーーー


「・・・?」

・・・えっ?何?お湯が降ってきた?どこから?天井から降ってきた・・・何か魔方陣が浮いてる・・さっきのお湯は、ここから降ってきたって事?

「ふふっ、お湯が必要だったんでしょ?お二人さん」

「・・・・・」

トゥモシーヌさんとアオイさん・・・おわっ!?全裸やんけ!エッロッ!・・・て、さっき見たじゃん。いやでも、すでに一回見たとはいえ美女二人の全裸は絵面の衝撃(インパクト)が凄いですな。あぁそっか、魔法でお湯も出せるのか。やっぱ便利だなぁ魔法・・・ん?あぁなるほど座るんですね。あたしの隣にアオイさん、そした円寿くんの隣にトゥモシーヌさんが座ると・・・トゥモシーヌさん・・やっぱり円寿くんの事、凝視してる・・・

「はいアキナちゃん、これ使って」

ん?コルクで蓋をしたビンに・・・何やらドロッとした液状の物が・・これって・・()()ですか?

「こっちが身体用の()()で、こっちが髪用の()()ね」

身体用と髪用の洗液・・・つまりボディソープとシャンプーですね、これ。良かった、お風呂場のどこにも置いて無かったから少し不安でしたよ。ありがたく使わせていただきます~。

「あっ、ありがとうございます」

よしっ!それじゃあ、心を落ち着かせて・・疚しい考えは捨てて・・平常心、平常心・・いざ!水連明奈・・参ります!!

「えっ、円寿くん。それじゃあ今から頭洗っていくね!」

「?はい・・よろしくお願いします・・・」


ワシャワシャワシャーーー


「えっ、円寿くん、痒い所とか・・無い、かな?」

「・・・はい、痒い所は無い・・です・・・」

あははぁはあ~・・あたし今、手に続いて頭も触っちゃってる~。円寿くんの髪分かっちゃいたけど凄く綺麗・・キューティクル、キューティクルが極まってる~。それに・・・耳!耳可愛い!本当にこの耳本物何だなぁ。ちゃんと円寿くんの頭皮から生えてる・・動物の耳その物だ。あっはぁ~、ピクピク動いてて・・可愛いなぁ・・・

「あぁあのっ・・先輩・・その・・・」

「?その?」

「あのですね先輩・・頭洗ってもらって、凄くありがたいのですが・・頭なら、目隠ししてても洗えます・・・」

「!?」

たっ、たしかに・・あたし勝手に、円寿くん目隠ししてるから何もかもあたしがやってあげなきゃと思ってた・・・全然平常心じゃ無いなあたし。もう最初からテンパってる・・・

「そっ、そう・・だったね円寿くん!ごめんね・・あはは・・・」

「あっ、あとですね・・その・・先輩、()・・なんですけど・・・」

「耳?」

「はい・・耳は、触られると・・凄く、くすぐったいと言いますか・・その、凄く・・敏感な所なので///」

「!?あっ!えあっ!?あはぁっ・・そっ、そうなんだ・・ごめん円寿くん!つっ、つい・・珍しくて触っちゃってた。本当ごめん・・・」

「いっ、いえ!こちらこそ、先に言ってなくて申し訳ありませんでした//」

あぁもうあたし何やってんのよぉまったく!無神経過ぎるぞもぉ・・・くすぐったい・・敏感・・・ごめん円寿くん。円寿くんの表情もあってか凄くエッチでした。ご馳走様です、申し訳ありません。

「ふ~ん、エンジュ君て・・耳が弱いんだ・・・」

!?なっ、何ですかアオイさん。そんな獲物を見つけた肉食動物みたいな目をしないで下さい!


ジーーーッ・・・


!?トゥモシーヌさん。だっ、駄目ですよ!そんな興味津々に円寿くんの耳を見ては!既に触っているあたしが言うのも説得力が無いけど、円寿くんの耳は触っちゃ駄目ですからね!

「あっ、あのっ、アオイさん。そろそろ、お湯を()()()()もらえませんか?」

「ん?あぁ、良いわよ。はい・・・」


ブオンーーーシャーーー・・・


わぁー、程よい量のお湯が分散されて噴出してるから満遍なく泡を洗い流せる~。魔法て便利だなぁ・・・て、これシャワーじゃん。魔法式シャワーじゃんこれ。ぐぬぬ、現代知識で大儲けの夢が早くも潰えてしまった・・・

「ふふふっ・・それじゃあアキナちゃん、アキナちゃんの背中・・あたしが洗ってあげるね。」

「えっ?あっ、はい・・よろしくお願いします・・・」

いつの間にかアオイさんに背中をとられてた!?・・あっ、円寿くんの後ろにもトゥモシーヌさんが・・トゥモシーヌさんが円寿くんの背中を洗うんですね・・トゥモシーヌさん?ん?・・えっあっちょっ、その距離は不味いですよ!

「トゥモシーヌさん!ストップ!ストップです!」

「?」

「さっ、さっきも言いましたけど、おっぱい!おっぱいが当たっちゃうので、背中を洗うとしても近づき過ぎないようにして下さい!」

「!?///」


コクッーーー


「ふふふっ、アキナちゃん心配症ね。トゥモだってそれ位分かっているわよ」

「いやまぁ、一応ですね・・あっひゃあい!」

「あら、ごめんねアキナちゃん。アキナちゃんの肌綺麗だから・・つい・・・」

「つっ、つい・・で脇腹を指でなぞるのは辞めて下さい!びっくりするじゃないですか!」

「ふふっ、ごめんなさいね。ほらほら、前向いてて。背中洗うから」

むぅ・・アオイさん、やっぱ油断出来ないな。いやいやあたしは別にどうなったって構わないんだけど・・・トゥモシーヌさんは普通に円寿くんの背中を洗ってる・・洗ってるんだけども・・・おっ、おっぱいがぁ・・乳頭が今にも円寿くんの背中に当たりそう!・・・あぁ、危ない!プルンて!今おっぱいがプルンてなってますよトゥモシーヌさん!背中を洗う動きでおっぱいがユッサユサ揺れてるんですってばトゥモシーヌさん!あぁもう、ちょっとした拍子で当たっちゃいそうでこっちも気が気じゃないよぉ・・・


ザバーーッーーー


「さて、身体も洗った事だし・・我が寮自慢の広大な湯船に入りましょうか」

「はっ、はいっ・・・」

あぁ・・結局ずっと背中洗っている間、トゥモシーヌさんのおっぱい見張るはめになってしまった。こんなにも他人のおっぱいを見るの初めてだ。何か頭に血が登ってる気がする・・・


チャプ・・・ーーー


「うっ・・・はあぁ~~・・・」

ああぁ、思わず声が出てしまった。いやでも、温泉に入るなんて久々だなぁ。最後に温泉入ったのて、高校の卒業記念でここちゃんと行った旅館で入った奴以来かぁ。いやぁ、やっぱ足の伸ばせるお風呂は良いですなぁ・・疲れが取れていく感覚が肌で感じる・・・しかも隣には、円寿くんがいるという最高のシチュエーション!推しと同じ湯船に浸かる事になるなんて、あの頃のあたしは想像もしてなかったなぁ。ありがとうございます!デメティールさん!


ピコッピコッピコッ・・ピコッーーー


ジーーーッ・・・


・・・トゥモシーヌさんがずっと円寿くんの事見てる。というか耳見てるねトゥモシーヌさん。やっぱ触りたいのかな?そんなに気になる!?・・うん、まぁ気になるか。さっきから円寿くん、落ち着かないのか耳が細かく動いているんだよなぁ。円寿くんにとって女の人とお風呂に入る・・しかも三人に囲まれていたら、尚更リラックスは・・出来ないよなぁ。

「・・・・・」


スッ・・ーーガシッーーー


「!?」

えっ!?トゥモシーヌさんが円寿くんの肩を両手で掴んだ?


ワッシワッシワッシワッシーーー


トゥモシーヌさん、円寿くんの肩を揉み始めた・・・円寿くん別に肩凝ってる風には見えないけど・・・


「うっふふっ、エンジュ君。トゥモのマッサージなんて、滅多に受けられないんだから・・ありがたく思った方が良いわよ。トゥモが人に気をつかうなんて、殆ど無いんだから」

「そっ、そうなんですね。あぁ、ありがとうございます、トゥモシーヌさん」


ワッシワッシ・・プニィーーー


「!」

あっ、トゥモシーヌさん肩を揉んでいた手でそのまま円寿くんの頬っぺたをぷにった。なるほど・・マッサージには、リラックスして・・頬っぺたをぷにったのは、気にしなくて良いよ・・て意味が込められている・・そういう事何ですねトゥモシーヌさん!

「ふふっ、じゃぁ~あ・・あたしは、エンジュ君の手・・マッサージしてあげようかな・・・」

「!あっ、ありがとうございます・・アオイさん」

はっ!?いつの間にアオイさん円寿くんの目の前に!?あたしの隣にいたはずでは!?

「・・・うふふっ、エンジュ君の手・・小さくて可愛い・・何だかキュンキュンしちゃうなぁ・・・」

「!?はっ、はいっ・・よく()()小さいて言われます。あっ、アオイさんの手は、指が細長くてとても綺麗です。憧れます!」

「あらエンジュ君、見えないのによく分かるわね」

「はいっ!マッサージされてる感触で、何となくアオイさんの手の形がわかります」

「へ~そうなのね・・・あっ、エンジュ君・・今、エンジュ君の手相見てるんだけどね・・・エンジュ君、家族とか身近な人の事・・大好きでしょ」

「!はい!父さん母さんに叔父さん叔母さん、トーr・・従兄弟の兄さん・・皆大好きです!」

へ~、円寿くん従兄弟のお兄さんいるんだぁ。なんだろう、円寿くんの親族皆美男美女な気がする・・・

「ふふっ、やっぱりそうだ。エンジュ君、感情線の先端が人差し指と中指の間に来てて、しかも五本に枝分かれしてるから・・そうかなて思ったの」

「なるほど・・アオイさん、手相にお詳しいんですね」

「そうね、魔法を学ぶ分野に占星術や風水があるから・・自然と詳しくなっちゃうのよね」

たしかに魔法使い・・魔導士て、占いとかもやるイメージ。うぅむ、こう占い関係がスムーズに出来る人て・・男女関係無しに凄くモテそうだ。アオイさんは間違いなくモテるタイプ、うん。

「アオイさん!何か・・他に分かる事とかありますか?」

「う~ん、そうね・・・ふふっ・・・」

むむっ?アオイさん今ニヤッとしませんでしたか?目付きが何かいやらしい・・何か面白い事を思いついたみたいな・・嫌な予感・・・

「それじゃぁ~あ、エンジュ君の手から()()気を感じて占う方法を試してみようかな・・・」

「直接?どうするんですか?」

「それはね・・・こうするの・・・」

アオイさんはそう言うと、掴んでいる円寿君の手をゆっくりと自分の胸に近づける・・・胸に近づく・・むね?


ムニューーー


「?」

「あん・・・」

「・・・・・」

いっ・・・嫌ああああああぁぁぁぁぁっっっ!!!なっ、何をしているの!?この人!?いやこの痴女!えっ!?おおぉ・・おぱ、おっぱい・・自分のおっぱい触らせているんですけどぉ!?エッッッッ///あっじゃないや・・えっっ!?手から感じるて、そっちの意味での()()()て意味ですか!?えっ、円寿くんは・・・何に触れているか気づいていない・・・そうだよね!!円寿くんは女の人のおっぱい触った事無いもんね!エッチな事なんてした事無いもんね!!

「・・・あの、アオイさん。その・・これは・・・」

「ふふっ、エンジュ君・・今、エンジュ君が触っている物・・何だか分かる?」

「・・・えぇと、何だか・・その、柔らかいといいますか・・・」

「せええぇぇぇい!!」

「!?」

「やん!もう、何するのよアキナちゃん」

「そっちこそっ!//円寿()んに・・なっ、何をやっているんですか!///」

「何て・・エンジュ君から伝わる気を、おっp・・・」

「だあぁぁ!//そっ、それ以上は言わなくていいです!//」

おっぱい触っていた何て円寿くんに知られる訳にはいかないんですよぉ!こっちはぁ!

「てっ、ていうか!//今ので何が占えるて言うんですか!///」

「えぇ・・言わせるの?そぉれ・・・」

はああぁぁぁ、何てスケベな顔してるんですかこの人は!?なっ、何ですか!?男女の身体の相性が分かるとでも言うんですか!?エッチ!そんなエッチな占いなんて円寿くんには()()必要ありません!

「・・・・・」


スッーーワッシワッシワッシーーー


ん?あぁ、トゥモシーヌさん・・マッサージ続けていたんですね。肩の次は頭ですか。頭皮マッサージ気持ち良いですもんね・・・待って下さいトゥモシーヌさん、マッサージによって円寿くんの目隠しがずり落ちて来てます!不味いぃ・・このままだと円寿くんの視界にあたしはともかく全裸美女の姿が写り混んでしまう!トゥモシーヌさんを止めなくちゃ!

「トゥモシーヌさん!すとっ、ストップです!そのマッサージを止めて・・・」


ズリッーーー


「あら・・アキナちゃん、バスタオルの結び目がほどけてきてるわよ?」

「えっ?・・・」

身体を覆うバスタオルの結び目が緩みずり落ちていく刹那・・あたしの思考回路がバチバチと閃光を放ちながら回転しているのが分かった。このままだと円寿くんの目隠しがずり落ち、うぶな円寿くんにとって刺激の強過ぎる光景を見せる事になってしまう・・いや、それだけならまだ良いのかもしれない。それ以上に不味いのは・・円寿くんの(まなこ)に・・あたしの・・あたしの裸体が・・男の人に見せた事の無い・・・あっ、お父さん忘れてた・・・お父さん以外の男の人に見せた事の無いあたしの全裸(すべて)が・・よりにもよって推しの目の前で披露されてしまう・・・いやあぁ!!円寿くんに裸を見せるなんてまだっ!まだ早い!今じゃ無いわよ明奈!いやそこじゃない・・ここで裸を見られたら、またあたしが今度こそ悶え死ぬ事になる・・いやこれも違う・・えぇと・・・そぉだ、あたし円寿くんに()()()()て言ったんだ。あたしはちゃんとバスタオル巻いているからって。その言葉を破る事になる。円寿くんに嘘をつく事になる。それだけは嫌だ!嫌だけど・・・でも・・止められない・・落ちていくあたしのバスタオルと円寿くんの目隠しを止める事が出来ない・・・あぁ、どうしようか。いっその事、ありのままのあたしを受け止めてもらおうか・・いやっ、駄目よ。裸見られたら確実にその後が気まずくなる・・円寿くんの顔見られなくなる。でも、あたしと円寿くんが今以上に距離が近づいている可能性・・そんな世界線であった場合、もしかしたら今の内に見てもらっていた方が良いのかも・・てぇ、有る訳無いそんな事無い・・あぁでも、円寿くんの初めての生の裸体があたしてのは悪くないかも。あたしも男の人に裸見られるのは円寿くんが初めてになるしお互い初めて同士・・・いぃやだから見せちゃ駄目何だって!不味い、円寿くんに裸見られたい・・と言うより見せたいて欲望が出てきている・・これじゃまるで痴女みたいじゃん!アオイさんに・・アオイさんの雰囲気に毒されている・・あたしの中で欲望と理性が混濁している・・若干理性が負けてきている・・こうなったら、誤魔化すしか・・円寿くんの(まなこ)に移った物は決して生おっぱい何かじゃありませんよと無理矢理誤魔化すしかない!うぶな円寿くんは、多分おっぱいとかよく分かっていないだろうから力づくで誤魔化せば何とかなるかもしれない!あっ、でもやっぱしずっと見られるのは恥ずかしいから・・・一秒、うん一秒だけ!一秒だけ見せたら隠そう!それなら円寿くんも誤魔化せられる・・はずっ!そして、安心してて言葉を破っちゃった事をちゃんと謝ろう!よし、覚悟は決めた。円寿くん・・これが、これがあたしの・・全裸(すべて)!・・・


バッーーー


「・・ッ・・・ァッ・・・ん?」

「・・・?」

「・・・あら」

「・・・・・」

バスタオルと円寿くんの目隠しは落ちた。あたしは一秒たったと思ったので、右腕で胸を隠し円寿くんに誤魔化す為の言葉を出そうとしようとした。したのである。しかし、その必要は無かった。なぜならば・・・

「とっ、トゥモシーヌさん・・・」

「・・・目隠し・・取れたら・・ダメ・・でしょ?」

円寿くんの目隠しがずり落ちそうになった瞬間、それまで頭皮マッサージをしていたトゥモシーヌさんが瞬間的に円寿くんの目を手で覆ったのである。

「あっ、ありがとう・・ございます、トゥモシーヌさん・・あの、円寿くんの目隠し直しますので、そのまま円寿くんごと後ろを向いてもらっていいですか・・・」


コクッーーー(首を縦に下ろす)ーーススススーーー


トゥモシーヌさん、ありがとうございます。あなたのおかげで円寿くんの純情な心が守られました。守られた・・守られたのだけれど・・・うぅ、やっぱしあたしは不純だ。円寿くんにあたしの身体を見せられなくて少し残念に思ってしまっている。ごめんなさい円寿くん。気の迷い、気の迷いだったんです。もうこんな痴女みたいな事しようとしません!


トントンーーー


「ん?」

「(ねぇねぇアキナちゃん)」

おわっ!?耳元でエッチな小声で呟くの辞めて下さいアオイさん!

「どっ、どうしました?アオイさん?」

「(ん~?・・ふふっ、アキナちゃんさっき・・エンジュ君にぃ・・・()()()()、見せようとしたでしょ。ふふっ、アキナちゃん、あんなにあたし達には駄目だって言ってたのに・・やらしいんだ)」

「っ~~~~~////////もっ・・・申し訳、ありません~~~////」



ー続くーーーーー










この度は、ケモ耳美少年のなすがまま異世界観光 第三巻を読了いただき誠にありがとうございます。にがみつしゅうです。魔導省編がスタートいたしました。この巻からこの物語が円寿を中心に動いているのを明奈の目線から語られ、明奈のいない所ではナレーションで語られる。そんな形で書いております。文章を書くのが不慣れなので分かりずらい所も多々あると思いますが、どうかご容赦を。さて、魔法が存在する世界なのに全然出てこなかった魔法がようやく登場したこの巻。魔法の細かな設定は次の巻で詳しく話したいと思っています。個人的にこの巻で好きなシーンは、魔導省の魔法を使った仕掛けや生の魔法にとにかく一喜一憂する円寿です。円寿は遊園地等のアトラクション関係が大好きなので、円寿的にはまさにパラダイス。手品等の類いも良いリアクションをするタイプな円寿なのです。そして、魔導士キャラも出てきました。個人的にトゥモシーヌは自分が創作したキャラの中でも一、二を争う個性的なキャラだと思います。話しも広げやすい設定なので、トゥモシーヌのシーンはスムーズに書く事が出来ます。そんなトゥモシーヌと何処と無く艶めかしい雰囲気のアオイと明奈と円寿、四人でお風呂に入るシーン。こちらで明奈が円寿は生の女性の裸体は見た事が無いと言ってますが、二巻を呼んでいただいた方ならわかると思いますが円寿は見ています。(すぐに目を隠したとはいえ)サクネアの裸を。まぁ、初めてにしろ初めてでは無いにしろ当面の間、円寿が女性の裸を直視する事に慣れる時は無いと言っておきます。円寿のうぶな所はこの作品の大事な要素なので。

そんなこんなで次の巻も楽しみにしてくださると幸いでございます。改めまして、第三巻読了いただき誠にありがとうございました

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