乙女ゲームの主人公ですが私の恋が門前払いされています
R15は念のためです。
コメディれたかは分からないけど、コメディりたかったの
ついにこの日がやってきた!
と歓喜したのも束の間、貧乏男爵令嬢ユリアはぴっちりと閉められた門の前に立ちはだかる番兵によって、待ちに待った舞踏会の会場へ爪先程も入ることを許されずに締め出されていた。
何故このような事が起こるのか、と疑問符だらけで番兵を見るも、彼は怒りの籠もった目を向けるばかりで答え合わせを一向にしてくれない。こんなことはあり得ないしあり得てはならない。彼女がそう思うのには理由がある。
それは、此処がありし日のヨーロッパ感溢れる乙女ゲーム「恋するワルツ」の世界で、彼女はその主人公男爵令嬢ユリアに転生した元プレーヤーだと言うことを自身で把握しているからだった。
だから今ここで、運命の相手役との出会いは疎か、物語の始まりである舞踏会にすら参加できずに門前払いを食らっている、というあり得ない事態に困惑を隠せないでいる。
「えっ……と、何故、私は中に入れていただけないのかしら」
睨み続ける番兵にユリアは尋ねた。
「君が中に入る事で不幸に見舞われる方がいるからだ」
番兵のその返答をユリアは訝しむ。
このゲームでは所謂、悪役令嬢がざまぁされる系のシナリオが展開される。ユリアが今狙っているルートはこの舞踏会から始まり、婚約者のいる高位貴族である攻略対象者が主人公と出会い心移りしてしまったことで、嫉妬に狂った婚約者が悪役令嬢化して主人公を貶めようとするも、最後にはその悪行がバレて断罪から婚約破棄までされてしまう、という安心と実績のあるある展開のシナリオだ。
だがその展開は逆に言えば主人公の邪魔さえ入らなければ、嫉妬に狂う事も断罪され婚約破棄に至る事もないわけで、婚約者の視点からすれば結婚を誓った相手を掠め取った主人公こそ悪役であり、そのせいでざまぁされる彼女は不幸な被害者と言える。
その悪役側の視点に立った様な発言を、何故このモブとしてすら登場しない番兵如きがするのか、とユリアは眉根を寄せた。
「……何の事を仰っているのか。とにかく通して頂けませんか? 舞踏会が始まってしまうわ。招待状も、ほらここにありますから通し——」
「通せません! ここで君をあのルーベント公爵家のアホと出会わせる訳には行かないんだ!」
(なん……ですって?)
門の前で仁王立ちする番兵の口から飛びした公爵家のアホという言葉。それが指すのは正に今、この舞踏会でユリアが出会いを切望している攻略対象の事だった。
彼は乙女ゲームの相手役らしく抜群の容姿と声の持ち主だが、美しく聡明な婚約者(後の悪役令嬢)がいる身ながら素朴な主人公に目移りしてうつつを抜かし、あっさり乗り換えた挙句に皆の前で元婚約者を吊し上げるという、いや、元凶はお前の浮気やろがと一、二発殴らずにはいられない最低のアホである。
ユリアも彼に対しての認識はそうであるが、何故この番兵がそれを知っているのか。考えられる仮説は一つ。それももう仮説などという物でなく確信している。何故なら既に自らで実証されているのだから。
「ルーベント家のアホを知ってるだなんて……もしかしてあんたも……元プレーヤーの転生者?」
「……も、と言うことは、君もか?」
やはり、とユリアは番兵を睨む。アホの攻略対象者との展開を知っている、登場しない筈のこの番兵もまたユリアと同じく転生者であった。それを知ってユリアは怒りが湧きあがる。
「私と同じってわけね……ならどうして登場人物でもない、モブとしてすらも描かれない兵士のあんたが、主人公である私を会場に入れないのよ! 話が進まないでしょうが!」
「言っただろう! 不幸になる人がいるからだ!」
ああん? と顔を歪めたユリアに番兵は続ける。
「主人公である君は今日、舞踏会であのアホと初邂逅を果たす事になる。煌びやかで奢侈な着飾った令嬢達の中において、主人公は素朴で質素な装いだ」
「弱小貧乏貴族設定だからね」
「そこに物珍しさからあのアホが興味を惹かれる事で物語が回りだす。するとどうなる?」
「私が甘々幸せな日々を送れる事になる」
「違う! あのアホの婚約者である彼女が……捨てられるアメリアが不幸になるんだろうが!」
物凄い剣幕で怒り始めた兵士にユリアは驚くが、同時にやらんとしている事を理解する。
「ははーん、なるほどね。あんた悪役令嬢推しなんだ。素直に主人公に行かないあたり捻くれてるぅー」
「ひ、人の好みに口出しするなよ! 彼女は悪役を担わされているが家柄も良く美人で頭も良いんだぞ!」
「ついでにおっぱいも大きい上にホクロがあって絶妙にエロいのよね。最近のエロ担当のキャラは大体おっぱいにホクロがあるけど、あれ誰が始めたの? 昔からあった? あれに気付いた時には編み出した人天才かと思ったわ。それで、あんたアメリアをざまぁさせたくなくて、陰ながら奮闘する大人気のお話系の主人公気取っちゃってんだ」
ユリアは鼻で笑うと、番兵を下から睨めつけた。
「ふざけんな……私が今日のこの日をどれだけ待ったと思ってる。邪魔なんかしてみろ、何処とはあえて言わないけど捻じ折って口に突っ込んでやるからな」
乙女ゲームの天然系主人公が発したとは思えない脅し文句に兵士はたじろぐ。
「そ、そんな風に脅したって退かないぞ! 君には悪いがアホの事は諦めて別のルート——」
「諦めんわ! あいつが良いんじゃ!」
「な、そんなに彼が好きなのか……? でも——」
「微塵も好きじゃないわあんな浮気野郎のアホ野郎! 私はああいう自分の価値分かってる系の煌びやかな奴は好きじゃないのよ! 地味系素朴で木訥だけど良く見りゃ顔も悪くはないし、派手じゃないけど何事も真面目に堅実にこなして可もなく不可もなくを飛行出来るタイプが好きなのよ!」
想定外の返答に兵士は理解が追いつかずしばし固まった。
「……好きじゃないのなら、どうしてあのアホに拘る……?」
「そんなの決まってるでしょ? あいつが一番、財力があるからよ!」
悪びれる事なく寧ろ堂々と胸を張って言い切ったユリアに、番兵は衝撃のあまりぽかんとしてしまう。
「財……力」
「そうよ、いい? 僕ちゃん」
「俺の方が明らかに年上ですが」
「惚れた腫れただ日々騒いでるけどね、結局のところ恋も愛も一番大事なものは、金よ!」
「乙女ゲーのヒロインの台詞かな⁈ それ!」
「夢と理想の恋物語にキャッキャうふふしてられるのは、少女漫画に憧れられてる間だけよ! 読みながら心のどこかで、ねーよ、こんなことって冷静に思い始める様になったら、もうそんな夢と綺麗事だけじゃ生きていけないの! 酸いも甘いも噛み締める年齢になったら恋だ愛だよりも必要なものは、金よ!」
「身も蓋もないな!」
ユリアは剥き出しの欲望を番兵にぶつける。
「私は前世でそう学んだから、愛したこの世界に主人公として転生したと気付いた時に歓喜すると共に固く心に決めたの。絶対一番金持ちなあのアホと結婚しようって。それでもって前世でアイツに奪われまくって失った物の全てを取り返して溜飲を下げようって。だってどことなくアホとアイツって似てるし、つまりアホから毟り取るって事はアイツから毟り取り返すのとほぼ同義という事じゃない」
「アイツって誰だよ、そんで君は前世で何があったんだよ」
「時に貴方、記憶が戻ったのっていつでして?」
突然の質問に番兵は戸惑いつつ素直に記憶を辿る。
「半年前……かな? その時も門番をしてて、外出中のアメリアを見かけたんだ。そうしたら記憶が——」
「半・年・前! それはそれは転生ビギナーさんでいらっしゃいましたか、ああそうですか、乙女ゲーム転生の王道ですね、あぁ羨まし」
「なんだよビギナーとか王道とかって……」
ユリアは番兵を睨みつける。
「私はねぇ、チート能力貰って赤ん坊の頃から無敵無双のやりたい放題出来ちゃう系の主人公でもないくせに、生まれた時から前世の記憶があんのよ! 普通は物語が始まる直前かイベント中に記憶戻るもんじゃないの? それまでの間記憶あっても意味ないものゲーム始まってないんだから! なのに! 無駄に! 記憶があるもんだから衛生観念も現代と比べたらかなり低い国で毎日毎日ゾッとする瞬間がある中、底辺貴族として辛酸を舐めるような貧乏生活をして来たのよ! 今日この日まで! 赤貧なんてもんは散々味わい尽くして来世こそはせめて人並みにと思ったのに、またも! 貴族とはいえ! ド貧乏! 転生担当の女神様は私に何の恨みがあんのよ⁈」
「君、前世で物凄く苦労してたっぽいね」
「そんな日々を16年、ついに貧乏生活を抜け出せる日がやって来たって言うのに、たった半年前に前世を思い出したからってヒーロー気取っちゃう様な、名前もないお前なんかに邪魔されてたまるかぁぁぁっ!」
ユリアの咆哮に気圧されながらも番兵も食い下がる。
「き、君の、アホの財力への執着は分かったが、俺だってアメリアへの気持ちは負けてないぞ!」
「おっぱいだろうが! おっぱいのホクロだろうが! お前の気持ちの全てはあの女の両の胸に注ぎ込まれてるんだよ!」
「全てだなんて決めつけるなよ! 6割おっぱい3割ホクロですけども、彼女の美しく聡明で本来は淑やかな所も大好きなんだ!」
「ほぼおっぱいじゃないのよ! ただの脂肪の塊如きに私の貧乏脱出計画が阻まれてなるものか! そこを退けぇ!」
「馬鹿か! おっぱいに詰まってるのはそんじょそこらの脂肪じゃないぞ! 夢とロマンを纏った言うなれば高貴なるA-5肉のとろける脂肪だ! 特売肉で蓄えた贅肉と一緒にするな! 絶対退かん!」
睨み合って膠着状態に陥る中、突如ユリアはスッと怒りを収めて番兵に静かに語りかけた。
「ねぇ、門番さん」
「……退かないぞ」
「私達って啀み合う事ないと思うの。寧ろ利害は一致するんじゃないかしら? だって私があのアホと結ばれたら、アメリアはフリーになるのよ? しかも婚約破棄されて傷心、狙い目だと思わない?」
ピクッと番兵の身体が動いたのを見てユリアは畳み掛ける。
「貴方、アメリアが好きなのよね? 独りぼっちになって可哀想なアメリア。貴方の手で幸せにしてあげたらいかが? いい? Sランクの女を狙う時の極意を教えてあげる。傷つきドン底にいる所を狙って洗脳とばかりに優しくしまくり、この人無しじゃ生きられないと錯覚させてとにかく擦り込むのよ!」
「最低の助言だな!」
「ただしこの方法は元気になったらあっさり目が醒める可能性もあるから気をつけてね。恋は錯覚って言うけれど、混乱衰弱瀕死状態からのガチの錯覚の場合もあるからね、状態異常が回復したら通常戦闘どころかボス戦も余裕なポテンシャルを持ってるからこそSランクの女なんだからね」
「あれ、ここってRPGの世界……?」
「ね、どう? 手酷い振られ方をする彼女を見たくないと言うのなら、そこは上手い塩梅にあのアホに進言して調整するわ。だから、私達手を組まない? お互いの利益の為に」
ユリアは右手を差し出した。番兵は下を向いて考える素振りをした後ユリアの右手に手を伸ばし、ニヤリとしたユリアを余所に彼女の手を払った。
「いた」
「断る。俺は彼女を悲しませたくないんだ」
「だから、そこはマイルドになるように上手く——」
「彼女は断罪されるから不幸になるんじゃない! あのアホの気持ちが自分から離れていくから心を抉られるんだ! アメリアは親に決められた相手であろうと、幼少の頃からあのアホを慕ってずっと結婚するその日を待っていたんだぞ! それを! 君が! 金の為に彼女の夢と心をズタズタにしようとしている! 心が痛まないのか!」
「痛まんわ、あんな悪女。階段から落っことそうとしたり、こちとら貧乏なのに人前で一張羅のドレス破いてみたり、飲み物に薬入れてみたり。痛むんか逆に、この凶悪ラインナップで」
「——……痛む」
「素直」
即答できなかった事で、ぐぬぬぬ、と番兵は返す言葉に詰まってしまった。ユリアは勝ったとばかりに手で髪を弾いて靡かせる。
「話はついたわね。じゃ、通らせてもらうから。大丈夫、あんたが弱った彼女を落としやすいように調整してあげるわよ。同じ転生者としてのせめてもの優しさで、ね」
ユリアがコツコツと歩き出すと番兵が止めた。
「……ダメだ。君が行かなければアメリアは悲しまないし狂わない」
「しつこいわ、舞踏会終わっちゃうからいい加減にして!」
「ダメだ!」
「あんたは今負けたでしょ! いいから通しなさいよ! 私が行けばアメリアはフリーになるんだからWIN-WINでしょ!」
「なってもダメなの! 全然勝ってないの! 俺じゃアメリアを幸せに出来ないの! だって……だって……」
ユリアの腕を掴んで下を向き、ぷるぷる震えながら番兵は言った。
「人は、一度上げた生活レベルを簡単には落とせない! 特に彼女は資金に余裕のある方の伯爵令嬢、生まれついてのお嬢様だ。一兵士の給料で満足出来る暮らしはさせられない! 俺のこの気持ちには、金が足りない! 認めよう、恋と愛に必要な物はホクロおっぱいと、金だ!」
「ほら見なさい! でもあんたがそれ認めちゃうとこの話破綻しちゃうからもうちょっと粘って欲しかったかも」
兵士はえぐえぐと泣き出す。
「だからお願い行かないで。あのアホに俺のアメリアを奪われるのなら耐えられると思うんだ、許婚だもん、決まってたんだもんって」
「そもそもアメリアはあんたのじゃないし奪われるって何よ、名もなきモブ以下め」
「でも、アホに捨てられてもしも俺じゃなくて別の人に救われたら? そいつと俺の差はなんだ? きっと金だろ?」
「なんで他の要素が全部消えるの! どんだけ自信あんの! 地味系素朴顔で、まぁ悪くはなさそうだけどパッとしなくてでも真面目そうで、仕事も薄給っちゃぁ薄給そうだけど堅実に兵士してコンスタントにお給金貰える、可もなく不可もなくな空気的存在の名もなきあんたの、どこにキラキラ貴族と渡り合う自信があんのよ!」
「耐えられないよ! 俺は確かめたく無いんだ、あの清く一途なアメリアも結局は大事にしてるのは金なんだって思い知らされたくないんだ! 夢を見たい! 金のない俺を選んでくれるんじゃ無いかって夢を見続けたいっ!」
「試す前から何言ってんの! いいから離しなさいよ! なんで私があんたの夢に付き合わなくちゃいけないの! いい? 夢じゃお腹は膨れないし心のもやも晴れないの! もやを晴らし全てを満たすのはアイツに持ち逃げされたコツコツ貯めた400万をアホから取り返す事だけ、つまりは金よ!」
「だからアイツって誰なんだよ、アホ完全にとばっちりだろ、そんで君はやっぱり何があったんだよ!」
「もう、いいから離して! 私はあのアホからじゃなきゃ……」
カーン、カーンと遠くで鐘の音がした。舞踏会の終了の時刻を告げる時計台の鐘の音だ。
「——……っ!」
無情に響き渡るその音にユリアは息を呑み、番兵は泣きながら天を仰いだ。
「守ったよ、アメリア。俺のこの君を想う気持ちを」
万感の思いに浸る番兵に腕を掴まれたまま、ユリアは地面にへたり込んだ。番兵は涙を拭うとユリアに声を掛けた。
「邪魔をした事は謝ろう。だが君が成したいことがあるように、俺も守りたい物があったんだ。この先は邪魔しないから、心置きなく別ルートに向かって他の攻略対象を落としてえげつなく毟り取るといい」
「……そんなことしないわ。私はアホからしかそんな事出来ない」
先程までの勢いを無くしたユリアの急な変化に番兵は戸惑う。
「えと……アホほどじゃないが、他の攻略対象もそこそこ金持ちだし、似たような悪役令嬢が出てきてざまぁ展開するじゃないか。だからアホとさほど変わりは……」
「アホだから意味があったのよ! アホとアイツが似てるから! 人から奪うしかない展開なら、アイツに似てるアホからなら奪っても心が痛まないと思ったの……まぁ、実際はアメリアから奪うわけだけど。私はアイツとアイツの女に毟られて奪われたから、その痛みが分かるから、誰かに同じ痛みを与えるなんてしたくない。でもこの世界のシナリオは全部奪った上でざまぁする系。だったらせめて、一番心が痛まなそうなアイツに似てるアホを利用してやりたかったのよ」
「……君、マジで何があったの」
ユリアはポロッと涙を零す。
「終わった……私の物語……。アホをアイツに見立てた復讐も、私の貧乏脱出計画も何もかも……」
両手で顔を覆ったユリアは今日一番の大声で泣き叫んだ。
「私のお金ーーーーーーーーーーっ!」
「何か同情し辛い叫びだな……」
番兵はユリアが泣き止むまで隣に座り込んで、落ち着いてきた頃に徐に声を掛けた。
「……落ち込むなよ、貧乏脱出計画に関してはまだ別の手段があるだろう」
「……他のルートに手を出す気は無い。私のゲームは終わりよ」
「だったらシナリオに囚われない新しい道を探せばいいだろう? ゲームの世界観ってだけで今日だってシナリオに逆らえたんだから、何だって自由に出来るさきっと!」
「逆らうつもりはなかったわよ、モブ以下に邪魔されたのよ、そこ正確に言って。でも……そうね、そうしなさいって言われたわけじゃ無いし、好きに生きていいのかも」
ユリアの顔に少しだけ明るさが戻った。それを見て番兵は笑った。
「そうさ! 俺もアメリアの攻略はすっぱり諦めて、新しいホクロおっぱいを探すよ!」
「元々モブ以下のあんたにはアメリア攻略出来る様になってないし。でも、そうね、私も誰かから奪うんじゃなくて自分で見つけるわ! 元々人並みの暮らしが出来れば良かったんだもの。だから探すわ! 地味系素朴で木訥だけど良く見りゃ顔も悪くはないし、派手じゃないけど何事も真面目に堅実にこなして可もなく不可もなくを飛行出来る……」
そこまで言ってユリアは番兵の顔をジッと見た。ジッと見られて番兵は何かを察して固まる。
「え……っと……?」
「ねぇ、貴方、年収いくら?」
ジッと瞳は動かさずそう聞いたユリアに番兵は狼狽る。
「や、え……それって……え? いやいや……え?」
慌てふためく番兵に、ユリアは狙った獲物にトドメを刺す狩人の様にキラーワードを投げ掛けた。
「ねぇ、私、貴方に言い忘れてたんだけど……ホクロおっぱい持ってます」
グイッとドレスの胸元を引き下げて、左胸の溢れるギリギリ盛り上がった内側にポチッとついたホクロを見せる。狼狽していた番兵の動きがピタッと止まって、真剣な目つきになった。
その後の展開は、ご想像にお任せしよう。
お読みいただきありがとうございました。