#8,長谷川さんVS芽衣 後半戦
「まぁ、こんなことしてる場合じゃないわね。」
桃子がやっと口を開いた。
「そうだね。裕、大丈夫なの?」
先程までの空気は一応緩和された。
「朝よりは良くなったけどまだちょっと熱っぽい。」
あくまでもこの2人は裕のお見舞いに来ているのだ。
「少しずつでも回復できてるなら良かった…。本当に心配したんだからね。」
そう桃子が言う。
「それだったら私の方が心配してたんだから!」
芽衣が張り合うように言う。
桃子は鋭い視線を芽衣に送る。
「なに?」
「なんでもない。」
また2人の間に険悪な雰囲気が漂う。
「わかった。」
しばらくの沈黙のあと桃子が切り出す。
「じゃあこの際、青木君に白黒つけてもらいましょ?」
「いいよ。裕は私を選んでくれるもん。」
「それじゃ青木君、私と日野さんのどっちの方が青木君のことを想っていると思う?」
2人のヘイトが裕に向く。
「え、えぇ…。」
「どっち?」
芽衣も聞いてきた。
「いや、どっちと聞かれましても…。」
「まぁそれもそうね。…じゃあ日野さん、私と勝負しましょ?」
「いいよ。それで?何するの?」
「そうね…青木君、何かしてほしいことってある?」
「してほしいこと…じゃあちょっと腹減ってきたから何か作ってくれる?」
「じゃあそうね…お互い何か作って青木君にどっちの方が美味しいか決めてもらうってのはどう?」
「いいよ。絶対に負けないから!」
「ということで青木君、ちょっとキッチン借りてもいい?」
「いいよ。」
それから時間は経ち桃子と芽衣、どちらとも出来上がったようだ。
「おまたせ。熱いから気をつけてね。」
まずは桃子が作った卵粥。
「うん、美味しい。」
次は芽衣が作った煮込みうどん。
「はい、裕。」
「うん、こっちも美味しい。」
「「それで、どっちの方が美味しかった?」」
「えっと…。」
2人が裕の答えを待つ。かなりの緊張感だ。
「同じくらい…。」
「「はあ!?」」
「どっちか白黒つけてって言ったよね?」
「だいたい裕は昔からそうやって誤魔化して…。」
このあと2人の説教は数時間にも及んだ。