#6,恋敵
「前にも聞いたけど今の長谷川さんは焦っているの?」
「そりゃ焦ってるよ。だって青木君の周り、可愛い子いっぱいいるもん。」
そんな2人の様子を少し後ろから眺めている人物が1人。彼女は日野 芽衣。裕の幼馴染であり、桃子の恋敵だ。と言っても桃子はこの事を知らない。芽衣はいつも、この2人がいちゃつく姿を後ろから眺めている。
「でも、まだ俺は恋愛感情とかわかんないから…。」
その言葉で芽衣は立ち止まった。
「私にもまだチャンスが…。」
そう呟いて芽衣はほくそ笑んだ。
学校について芽衣が真っ先にすること。それは、林に裕と桃子の近況報告をすることであった。いつも裕がホームルーム後に林にからかわれているのはこれが原因だ。
「それで、今日は相合い傘したんだってな?」
「うぅ…したよ。というか思ったんだけどなんでお前がそんなこと知ってんだよ。通学路も別々なのに。」
「あぁ、日野に毎朝聞かされてんだよ。」
「芽衣に?」
「呼んだ?」
会話の全貌を聞いていた芽衣がわざとらしく介入してきた。
「呼んでない。」
そう言うと裕が芽衣に軽く手刀を入れる。
「イテっ。」
「どうせ全部聞いてたんだろ?」
裕が問いただす。
「えへへ、バレた?」
「バレてる。」
幼馴染だからこそ裕には分かったのだろう。
「なんだよ青木、二股か?」
「馬鹿言えよ。」
冗談と分かっている裕は笑いながら受け流す。
「えぇ〜、私はどうでもいいの〜?」
冗談っぽく言うが芽衣の本心としては8割方本気で聞いた。
「どうでもいいってわけじゃない。どっちも大切だよ。」
「お前鈍いな…。」
「林、それどういう意味だよ?」
「やっぱり鈍いなぁ。」
林がそう言ってこの会話はうやむやになったまま終わってしまった。だが芽衣は今朝感じた可能性を一層強く信じるようになった。
その日の放課後。裕は、また今朝と同じ様に桃子と相合い傘をして帰っていた。
「それにしても雨っていいわね。」
「どうして?」
「だってこうやって好きな人と相合い傘できるんだもん。」
「…ありがと。」
「て、そんな話してたらもうこんなとこまで…」
「本当だ。早いな。」
「それじゃまた明日ね。」
そう言って桃子は自分の傘を取り出す。
「うん。また明日。」
そう言って2人はお互い自宅のある方向へ歩いて行った。
「ハ、ハクション!」
裕のくしゃみは桃子まで聞こえていなかった。