#3,どうしてこんなことを?
〜その日の放課後〜
「えっと、ごめんなさい。」
桃子は裕に呼び出しを食らっていた。場所は体育館裏。
「ほんとにもう…。なんであんなことしちゃったのさ?」
「もっと恋人らしいことしたいなって…。」
「だからってそんなに焦ることないのに。」
「で、でも先週も何もしてないし、それに林君にも暴露されちゃったから…。」
昼間の彼女の言動が全て嘘のようだった。
「プレッシャーみたいなの感じてたの?」
「うん…」
実際付き合いはじめてこの2人にはなんの進展もなかった。今日のように多少強引な手を使わないと裕が離れていってしまうような気がした。まだ付き合っているといっても仮でしかない。桃子にとってはとてもプレッシャーだった。
「私だって少しやりすぎたと思ってるけど、でもやっちゃったことだしそれであとにも引けない空気になっちゃったから…。」
流石に桃子もやりすぎた自覚はあった。でも一度始めたら周りの空気がやめさせてくれない。昼間の桃子の暴走にはそんな理由があった。
「ゆっくりでいいよ。俺もちゃんと考えたいから。」
「ありがとう。」
〜その日の夜。桃子の部屋では〜
「はぁ、私もまだまだ素直になれないなぁ…。」
そう言いながら桃子は、裕に告白した日のことを思い出していた。
『…あなたみたいな純粋な人は初めてだったから…。』
本当はそんな理由で好きになったわけじゃなかった。
「ああ、なんであんな嘘ついたんだろう。」
風紀委員である桃子はクラスメートのことを誰よりもよく観察している。もちろんそれはクラス自体をより良いものにするためだ。そんな中で目に止まった人物。それが裕だった。裕もそれなりに真面目で優しかった。何より素直だった。
1度だけ桃子は裕に身だしなみのことで呼び出したことがある。しかし、それは特に注意しないといけないというものでも無かった。ただ桃子は裕と話したかったのだ。
「私もちゃんと素直になりたいな。あと、アピールも頑張らなくちゃ!」
〜同時刻。裕の部屋では〜
「はぁ、俺も変わってないな…。」
裕は周りの目を気にするタイプの人間だ。親からの期待に応えるために勉強し、クラスに馴染めるように明るく優しく振る舞う。そのせいか、自分のことになると優柔不断になる。桃子からの告白への返しを白黒つけるでもなく、保留にもしなかったのはこれが原因だ。世間からすればただのヘタレだが本人はこれでも真面目に考えている。
「ああ、ちゃんとこたえなきゃな。真正面から向き合おう。」
この日2人は決意を固めた。しかし、それは同じように思えて少し違う。自分の気持ちを確かめるため純愛を求める裕。そして好きにさせるためアピールをする桃子。まさに今、この2人の恋愛は本当の意味で始まった。