#2,間接キスじゃね?
「おはよ、長谷川さん。」
「おはよう、青木君。」
2人が付き合い始めて…と言っても仮だが、一週間が経とうとしていた。この2人だけのやり取りにも少し慣れ始めた頃だ。裕は彼女の表情がいつもと違うことに気づいた。
「何かいいことでもあったの?」
「…いえ、なんでもない…。」
「そう?」
「ほ、本当よ。」
「そっか。なんかいつもより嬉しそうっていうか…そんな感じの顔してたから。」
「そう。」
今朝のやり取りに少し違和感を感じた裕だったが、結局お昼までは何事もなくいつもどおりの日常を過ごしていた。そう、お昼までは。
4時間目も終わり生徒たちは各々自由な場所へと飛び出して行く。
裕と桃子は教室に残り弁当を食べていた。
「えっと…。長谷川さん?」
「どうしたの?」
「なんで隣にいるの?」
「なんでって、付き合ってるいんだよ。このくらいはいいでしょ?」
「ま、まあ、いいけど。」
「でしょ?はい、あーん。」
「あーん…。じゃないよ!みんないるから!」
先週はこんな事はしていなかった。
「みんな知っているのだからいいじゃない。林君には感謝しなくちゃ。」
「林の野郎…。あいつに相談するんじゃなかった。」
この2人が付き合っていることは林が先週の金曜日に大暴露大会を行ったため、みんなが知ることになったのだ。そのこともあってか、今日は裕にはベッタリだ。
「と、いうかそもそも長谷川さんってそんな性格だったの?」
「…ええ。もとからよ…。」
彼女はそう言っているが、裕はもとからだとは思えなかった。
「もっと冷たいイメージがあったのに。」
彼女はまたあーんと言いながらはミートボールを裕のもとまで運んできた。
「そんなこと言うとこれ食べちゃうわよ?」
「じゃあ……食べますよ…。」
そう言うと、裕はパクっと一口、その時気づいた。その途端から顔が赤くなっているのを裕自身感じていた。
――――これ間接キスじゃね?
「あらどうしたの?」
「い、いや、長谷川さん…こ、これって…。」
「気づいた?顔真っ赤だよ?」
「う、うん。」
「まさかほんとに引っかかるとは思ってなかったから。で、美味しかった?」
クスッと笑いながら桃子が聞いた。裕から見ても初めての表情だ。
「お、美味しかった。」
その表情にドキッとしつつも答えた。
「なら良かった。頑張って作った甲斐があったわ。」
作ってきてくれたことは嬉しかった。だが今はそれ以上に恥ずかしさが勝っている。裕はこのとき、今朝の妙な雰囲気の違いの理由がわかった気がした。