戯れの神
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ヒヤリとした、冷たい大地の感触を受け、オレの意識は少しずつ覚醒していく。
周囲は雑木林のような、それでいて葉も枯れおちたように侘しい、殺風景ともいえる場所だった。
(なんでオレはこんなところで寝転がっている?)
曖昧だった意識がその疑問を思い浮かべたとき、先ほどまで友人と過ごしていた記憶が甦ってくる。
(オレはあのときアガろうとして、そこで急に。。そうだ、急に胸がおかしくなって。。。)
『やぁやぁ、ようやくお目覚めかなぁ』
静まりかえった、枯れ木しか見当たらないこの場で、唐突にオレの背後から声が響く。
意識が急速に覚醒したオレは、思わぬ声に反射的に振り向いた。
『お、びっくりさせちゃった?あー、ごめんごめん』
声の主は女性ともいえるほど中性的な、形容しがたい整った輪郭で、ややトーンの落ちた低い声でオレに声をかけた。
『キミが目覚めてくれるの待ってたんだけどさ、なかなか起きてくれなくてね、ついついこっちまでウトウトしてしまったよ』
声の主はそういうと、気怠げに目を擦りながら近づいてきた。
『んー、では、はじめましてアキくん。ボクの名は戯れの神エルメース、キミをこの地に呼び寄せたのがボクだ』
急に自己紹介を始めた目の前の男(?)は、よく分からないことを言いはじめた。
「呼び寄せた?呼び寄せたってのはなんのことを言っている?そもそもここはどこなんだ?」
『オーケ~、そだね、まずはそこからだよね。まずキミがいるこの地、いやこの世界はキミのいた地球じゃないよ。別の次元を越えた先にある、水と緑の豊かなサンガという星だ。』
『ここはサンガの中でも神域に繋がると言われる、霊峰の麓の中心さ』
「、、よく分からないが、そんなところになんでオレがいる、そもそも呼び寄せたってのはどういうことだ!」
目の前の神は、やれやれとでも言いたそうに
『まぁ、気持ちは分からなくもないけど、理解してもらえると助かるなー。
うん!まぁ一声でいえばキミは死にかけてここに来た、命を延命生き永らえさせたお礼に働いて返して!だよ?』
、、、は?。。。
『キミが友達と遊んでた、キミの世界の卓上ゲーム“麻雀”だけど、あれが原因でキミは死ぬ直前だったのさ。』
、、、何を言っている?。。。
『キミは意識を失う直前、役が揃って宣言しようとしたろ?』
「...たしかにそうだ、あのときオレは確かに四暗刻が、、、」
『それだけじゃないんだよ~。キミはあのとき、親という立場で配牌で揃っていた、しかも大三元というバグまでついて』
たしかに言われてみればそうだった、、、のかもしれない。
、、、それがなぜ、、、
『キミはあのとき、図らずともとんでもない運気が廻ってきていた、それも人の身に余るほどのそれをね。耐えられなかったのさ、キミのか身体が。キミがコールを宣言した瞬間、それはキミの身体を荒れ狂うように逆流し、死んでたはずだよ。そこをボクがキミを瞬時に力場を含めて固定・隔離し、呼び寄せた。その身に危険な“覇運”を宿らせたままね』
、、、言わんとしていることはなんとなく分かってきた気がする。。。それでも
「助けてくれたことはありがとう、エルメース、様?けどなぜそこまでしてオレを、、、」
『ふふっ、エルメースでいいよ。キミは本来ボクらの子ではないわけだからね。こちらとしても思いがけない出来事だったんだよ、それにこの世界を守り、解放するためにはキミのような力をもったものが必要だったのさ』