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恋愛小説まとめ

乳首コントローラー対策検証 ~乳首いじりた過ぎる秀才魔術師と幼馴染の青年~

作者: 白緑

幼馴染→幼馴染→幼馴染→魔王の側近→魔術師の順で視点が切り替わります。

 

「よく、勇者の乳首が魔王のコントローラーになってるって話あるじゃん。それ、俺にも付いてるって言ったらどうする?」

「そうか。いじってもいいか?」


 なんだ、こいつ。とりあえず殴っておこう。




「一応許可を求めたんだから、殴られる筋合いはないと思う」


 俺、その辺にありふれた村の青年だ。目の前のたんこぶ野郎は幼馴染。

 現在、犯罪者染みた視線でこちらを眺めている変質者だ。

 それが幼馴染の友人を見る目か。


「もっと普通のリアクションが欲しかった」

「え、おまえ勇者なのかよ!?」

「そういうの、そういうの」

「はあ? 何言ってんだ。寝ぼけるのも大概にしろよ」

「なんでできるのにやらないんだよ!?」


 幼馴染は呆れた顔のまま、器用に自慢げになる。

 ドヤァ……。うっとおしいわ、ぼけなす。


「男は本能で生きるもんだ。おまえもそうだろ?」

「理性的に生きたい」


 しかし、幼馴染は村で知られる秀才。

 なんでこんなアホみたいなやり取りをしなければならないのかは不明だが、本来もっと頭のいいやつなのだ。

 ちらっと視線を向けると、やつの表情はいつの間にか真剣なものになっていた。


「で、おまえはどうしたいんだ? 勇者になりたいのか」

「いや、平穏に生きられたらそれでいいよ。勇者とか似合わないし」

「だが、本当に魔王が現れたら、世界を救えるのはおまえだけなんだぞ」

「おまえこそ、世界の危機にかこつけて俺の乳首触りたいだけだろ」

「ははっ」


 幼馴染はいい笑顔で言った。ご名答!と。

 ふざけんな。まだ魔王なんて、倒されて5年も経ってない。

 そんなにすぐ復活されては困る。

 盛大なパレードを執り行った王宮の立場がないじゃないか。


「ところで、その能力は生まれたときからあったのか? それとも近年になって急に発現したのか?」

「昨日、夢に幸運の女神さまが現れて、教えてくれたんだ」

「そっかー。となると、本当に魔王が復活したのかもな、昨日の夜に」

「ええ……マジ困るじゃん……」

「と言っても、王宮からのお触れはないし、どうなってんだろうな。ちなみに、操作方法は女神さま何か言ってた?」


 操作方法……俺の乳首のいじり方か。

 俺はわずかに顔を赤くして答えた。知らない、言ってない、と。

 本当は言ってたけど、あんな恥ずかしいこと言える訳がない。


「なるほど、好都合だ。魔王の死ぬスイッチはおれがおまえを開発して探り出すしかないようだな」

「マジ嫌なんですけど」

「素で嫌って言われれると……ますます燃え上がるな!」


 なんだこいつ。俺はもう一発、幼馴染を殴っておいた。




 一週間留守にしていた幼馴染が、久しぶりに俺の家に顔を出した。

 しばらく見ないうちにすっかり精悍になり、大人の顔付きをしている幼馴染。

 でも、それが俺の乳首をいじるためだと思うと、なんだか釈然としない。


「やっぱり魔王は復活したらしい。今度はアメーバ型魔王だ」

「確かめた訳でもないのに、何言ってるんだよ?」

「それがさー、まあ色々あって、魔王城に行ったんだけど、あやうく魔王の側近に命狙われかけてさ。けど、大丈夫だった。おまえは、勇者じゃなかった」

「ちょっと何言ってるか分からない。順を追って説明して」


 情報過多である。

 何をしたら魔王城に着くのだ。

 人間が単身で魔王城に行ったのだから、側近に暗殺されかけるのは当然だが、こいつは何を確かめに魔王城に行ったのか。

 俺はすっかり混乱していた。


「まず、魔王城に行くだろ?」

「そこからおかしい。なんで一般人が魔王城に行けるんだよ」

「魔王城は世界の果てにあるというからな、この村の近くだろうと思って探してたらあった。すげえ近いからあとで一緒に行こうぜ」

「散歩のノリで誘うな。それから魔王の部下に襲われたんだろ、よく無事だったな」

「話し合ったら通じた。その経緯で、おまえの乳首コントローラーはアメーバ型魔王には意味がないことが判明したんだ。よって、おまえは勇者にならなくていい」


 なんだか、とんとん拍子で話が進んでいる。

 というかこの間ふざけて勇者になりたくないって言ってたこと、そんなに気にしてたのか。

 いや待てよ。じゃあ、こいつなんで一週間も留守に……?

 疑惑が頭の中でもくもくと沸き上がってきた。

 しかし、それも幼馴染の腕を見たことで消える。


「……って! おまえ、怪我してるじゃないか!」

「ああ、分裂した魔王にやられてさ。全治一か月の大怪我だったんだが、おまえが勇者にならないことを条件に傷を治してもらったんだ」

「治してもらったのか……。けど、まだ痛いだろ」

「平気だ。おまえの乳首を平和的にいじれることになったからな」


 なんでこいつ、こんな感動的なシーンでそういうこと言う訳?

 地味にイケメンで雰囲気にも合ってるのがムカつく。


「それで、俺が勇者にならないことがその、どう、平和的な――ち、乳首コントローラーにつながるんだ?」

「幼馴染の乳首触りた過ぎワロタ。死ねる」

「なんだって?」


 空耳が聞こえたぞ。

 俺は幼馴染を睨みつけたが、やつは素知らぬ顔だった。


「歴代の魔王の死因の八割が乳首コントローラーらしくって、魔王側も対策を進めてきたみたいなんだよ。人型や獣型の魔王だと容易く操れるから、今回は操れても問題ないような魔王を選んだってことなんだ」

「それがアメーバ型魔王だって?」

「そうだ。ただ、魔王側もまだ乳首コントローラーを用いた実戦は検証してないから、どこかで友好的な乳首コントローラー持ちと試してみたかったそうだ」

「それが俺か。勇者だと魔王と敵対してるもんな」


 そゆこと。幼馴染はよくできました。と俺を褒めてくれた。

 馬鹿にしてんのか。もっかい睨みつけてやったら、幼馴染は笑顔になった。


「そそる」

「はあ?」


 興奮冷めやらぬ幼馴染は、じっと俺の顔とその下を交互に見る。

 舌なめずりをしている様は、恐怖しか感じない。

 なんだこいつ。と思ったが、怪我をしてるらしいので、殴るのはやめておいた。




「ほら、あれが魔王だよ」


 魔王城は本当に村の裏手の山にあった。

 幼馴染に門番顔パスをしてもらって、玉座の間に行くと。

 水色のいかにもアメーバみたいなものが、玉座の上でふわふわ浮いていた。

 どの辺が魔王なのかはよく分からない。


「まさかここで試したりしないよな?」

「そのまさかさ!」


 幼馴染が飛びかかってきたので、うまいこと回避した。

 実は傷だらけの幼馴染が床に突っ込んだが、気にしない。

 癒しの魔法まで使って、ギラギラした目でこっちを見ている。


「いろいろと問題があるのを考えろよ」

「例えば?」

「その、ほら、見られるの嫌じゃんか!」

「防壁魔法と防音魔法を使えばいいじゃないか」

「そんな変なことに才能を使うな!」


 村一の魔術師が、私用に魔法を使いまくるなんて嫌だ!

 幼馴染が急に立ち上がったので、俺はじりっと後退った。


「分かった。服を着たままでやろう」

「脱がすつもりだったのか!?」

「えっあ、うん……だって、ほら、その、色々あるかもしれないだろ」

「えっ、何。何があるんだ。おまえが言いよどむなんて何があるんだ!?」

「その汚れたりとか」

「なにする気だよ!!」


 まあ、そうやって抵抗したのだが。

 村の秀才に勝てる訳もなく、俺は玉座の間で乳首コントローラーを披露するはめになった。

 いつの間にか来ていたアメーバ魔王の神経質そうな側近も、同席すると言うから世も末だ。

 で、目の前にスティックが二本浮かんでいて。


「本気なのか?」

「本気と書いてマジと読む。タイミングが来たら言ってくれ。すぐとりかかる」

「こえーよ」


 それはこの幼馴染が作った魔法であるらしい。

 俺の乳首の動きと連動して動く仕組みだ。


 なんでこんなものが必要かというと、俺の要望を叶えて幼馴染が防壁と防音魔法を展開してくれることになったからだ。

 当然、俺たちは声も聞こえないし姿も見えない結界空間に取り込まれる。

 中で何やってるかも分かんない訳で。

 本当に魔王の動きとコントローラーが連動しているか確かめる術はない。


 効果のほどは、さっき幼馴染のやつの乳首で実証済みだ。

 なんでこいつ、恥じらいとかがないの?


「なあ。もう結界張ったのか?」

「いいよって言ってくれたら展開する。乳首は5秒後にいじるよ」

「なんだその決まり……はあ」


 さっき迷いもせずに上半身裸になった男は、魔法の準備をしている。

 あんまり放置してるのも悪いし、幼馴染だからそんな酷いこともされないだろう。

 俺は幼馴染だけに聞こえるように、ちょっと近寄って耳打ちした。


「……いいよ」

「っ……悪い。加減、効かないかもしれない」


 えっ。なに。なんで。えっ、待って。

 狼狽える俺に構わず、幼馴染は俺の服に手を突っ込んだ。

 とっさに身をよじって逃げようとしてしまうが、それよりも早く俺は床に押し倒された。

 顔を上げた俺が見たのは、珍しく真剣な顔の幼馴染で。

 好きだ。そう告げられたのを最後に、何も考えられなくなった。


 【とてもお見せしたいシーン】

 しばらくあなたの想像通りにお楽しみください。




 キシャン、と結界が展開される音がした。始まったのか。

 馬鹿みたいな話だと思うが、魔王の側近の男は二本のスティックを凝視する。

 視線はアメーバ型魔王とスティックを左右し、一時も落ち着かない。


 ふいに、スティックが動き出した。

 ちょうど結界魔法が展開してから5秒経った頃だった。

 あのよく分からない魔術師は、幼馴染の村人への約束を守ったらしい。

 程なくして、アメーバ型魔王の動きが鋭敏になる。


「魔王さま、体調はいかがですか?」

「……」


 アメーバ型魔王なので、言葉は返ってこないが、思念は伝わった。

 自分の意図しない感じに動いていて、不思議な感じがする、と。


 実際、魔王の八つある触手が伸びたり、縮んだり、膨らんだり、細くなったりしている。

 やはりそうだ。

 複雑なスティックの動きで、魔王の動きはコントロールされている。


 実は先代魔王の戦いも見ていた側近は、正直、先代魔王のときの乳首コントローラー使いは頭がおかしい精度だったことを思い出す。

 アメーバ型魔王の今、これがどれだけの精度で動いているかは定かでないが、あの魔術師の、平凡そうな幼馴染に対する並みならぬ執着は、他人の彼らから見ても異常であった。


 やはり、対策してよかった。

 魔王VS勇者の戦いで、魔王が操られ自死しているのではあまりに格好悪い。

 ほとんどの乳首コントローラー使いは、魔王の動きを鈍くする程度の効果しか持たなかったようだが、絶対有利を誇る魔王の戦いをひっくり返すことがよくあったのだから、その効果は侮れないものだった。


「魔王さま、もしかして慣れてきました?」

「……」


 逆らわなければ、マッサージみたいで少しおもしろい。だそうだ。

 魔王さまが楽しそうでなによりだ。

 しかし、それもスティックが珍妙な動きをして、魔王が脈打つまでのことだった。

 二本のスティックのうち、一本が沈むような動きをしたのだ。

 すると、魔王は大きくドクンと脈打って、分裂した。


「魔王さま!?」

「……」「……」


 それは同じ力を持った魔王の誕生だった。

 まったく同位体といっていい二つの魔王は、互いに睨み合う。

 そして、スティックの動きに邪魔されながらも戦いを始めた。

 激しい戦いの末、一体の魔王は敗れ、もう一体の魔王に喰われた。

 再び静かになった玉座の間に、アメーバ型魔王が浮かぶ。


「もしかして魔王さま、少し強くなられました?」

「……」


 同じ強さの敵と戦ったのがよかったかもしれない。

 それに自分と戦うことで自分の弱点にも気づけた。

 強い敵を取り込むことで私は強くなれる。


 魔王はさきほどと比べると、速いスピードで多くの思念を話せるようになっていた。

 側近の男は気付く。

 もしや、これは人間の勇者たちに見られた「成長」なるものではないかと。


 本来、魔王は完成された存在。新たな要素など、入り込む隙間もない。

 しかし、今回のアメーバ型魔王は、ほぼ赤ん坊のような状態で生まれた。

 これからさまざまな物や者を取り込むことで、無限に成長して強くなるだろう。

 魔術師の男の誓約がなくても、勇者如き、たいしたことはなさそうだ。

 側近は、今回の結果にひどく満足して検証を終えた。




 一通りの操作方法を試して、結界を解くと、幼馴染はまだ赤い顔をして座り込んでいた。

 ここまでお膳立てしたのは自分とは言え、この場に男しかいないのは悔やまれる。


 こんな顔、おれ以外に見せて欲しくない。

 醜い独占欲に駆られて、幼馴染を抱き寄せた。

 まだ自力で立ち上がる力も、おれを突き放す力も取り戻していない幼馴染は、ひどく素直に従った。

 無防備にもおれを信頼していることが分かる。いいことだ。


 ただ、息を荒くして、扇情的に見上げるのはやめてほしい。

 もう一日ぐらい欲しくなってしまう。


「十分な検証結果だっただろ?」


 おれが奥にいる魔王と魔族の男に話しかけると、腕の中の幼馴染が身動きした。

 何かしゃべりたいらしいが、まだ駄目だ。

 腕の拘束を強くして、幼馴染の周りだけに防音魔法を展開する。

 これで、あいつの声はおれにしか聞こえないし、意識しなければおれの声だってあいつに届かない。


「はい。魔王さまもご満悦で、非常に得難い検証結果でした」

「……」


 魔王もいい運動になった、と検証を始める前よりもはっきりした思念で応じた。

 生まれたばかりの魔王も同族を喰って少し強化されたようだ。

 側近の魔族も、言葉通り満足しているようで、誓約は守られそうだ。

 せっかく魔法の才能を授かったのだ、幼馴染の願いはできるだけ叶えてあげたかった。


「また、検証を頼むことがあってもよろしいでしょうか」


 魔族の男が、魔王への敬愛をにじませながらそう言った。

 魔族は人間に懸想しないし、アメーバ型魔王にはまだ恋情という概念が育っていないだろう。

 そういう意味では、彼らは幼馴染に安全な存在だ。


 有事の時のために、味方はなるべく残しておきたい。

 おれはいつの間にか腕の中で気を失っている幼馴染を見て、それでも防音魔法を解かずに魔王たちに言った。


「こいつが望んだらな」


 またおれを欲してくれるのなら、ここでやろう。

 おれは、幼馴染のためだけにその力を振るうのだ。

活動報告にあとがき的な裏話あり。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/273207/blogkey/2513688/

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