罪と罰
復讐を狙ったドナテルドの手により、馬車の中で身動きの取れない三人。
「どうやって経歴を偽ったのか――、死ぬ前に教えてほしい。そもそも捕まったのではなかったのか」
死ぬ前に……。
『ボク』が私の存在に気付いているのなら、入れ替わってしまえばまだ勝機が残っているはずですが。
でも表情を見ると、それほどは動じていない様子。こんな状況でも『ボク』なりの勝算があるのかな。
「クックック。半年で自由になれたぞ。俺への罰は貴族階級の剥奪だからなァ。あとは人の多い王都で似た顔を探して――」
「殺して本人を名乗った……か?」
「ご名答」
平和すぎるこの世界で貴族階級の剥奪というのは前例のないことで、ある意味では一生罪を背負うことになります。
でも平民の犯罪者には通用しないことですし、万の命を奪った罰としては釣り合わないでしょう。
王族はしっかりと統治をしている。だからこそ千年も平和な世界が続いた。――その弊害で貴族階級の剥奪という罰を評価しすぎです。
日本の記憶を持つ私とは価値観がズレているだけなのかもしれませんが、こうして被害者が復讐される状況を作ってしまったことが間違いを証明しているでしょう。
「復讐するほどボクたちのことが憎かったのか」
ですが……少し妙です。
このボクっ子は慎重なのに、どうして私が保留にしたドン=コールという人物の審査を通した上に、警護なんていう重大な任務を任せたのでしょうか。
怪しい人は外せばいいだけで、そもそも病的な感じがしていましたから警護に向いているとも思えません。
――――そしてドン=コールを名乗ったドナテルドは、意外な言葉を口にしました。
「いいや。本当に憎いのはダリア領のマルシアだ」
マルシアちゃんが……?
彼は更に言葉を続けます。
「あいつが『俺たち』を国に売った」
確かに国へ通告したのは彼女ですが――。
逆恨みにもほどがあるでしょう。
「ならばボクたちは見逃してもらえないだろうか。……必要とあれば、あなたの復讐に協力すると約束する」
なっ――――!
何を言っているんですか、この人は!!
マルシアちゃんが狙われているのに、それに協力!?
「――――ふむ、悪くない話だ。……だがお前は妙な力を持っているからな」
「信用できない――か?」
「いや……、一つだけ訊いておこう」
「なんでも答えよう」
「領土崩壊の方法を各地の貴族領主へ伝え回ったのは、リタ=ロメール……。お前で間違いないな?」
――――――――――え?
今は違う人格が入っている自分の顔を見ると、特に驚くこともなく、その言葉を受け止めているようでした。




