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立場と姿勢

 (ひと)(しき)り泣いたあと、私とニコを更に泣かせてくるような出来事がありました。

 床屋『ルンダ』の()()(さま)()()(さま)。――その他にも、なんと百を大きく超える旅行者がロメールの出身で、復興後のロメールへ『定住』を希望して今回の旅行へ参加している、と。

 それだけ私の両親やご先祖様は、領民に信じ、慕われる存在であったということでしょう。

 こんなに(うれ)しいことは、そうありません。


「みんなのお陰で、今日を無事乗り越えることができた。よく頑張ってくれた――」


 領主邸の居間で、私は全員へ(ねぎら)いの言葉をかけました。

 すると、限界まで疲れた様子ではあるものの、みんな口角を上げてニッと笑ってくれます。

 そしてそれぞれが果実を搾ったジュース入りのコップを手に持って、かかげます。


「お疲れさま!」

「「「「「「かんぱーいっ」」」」」」


 あと何年か経てば、ジュースじゃなくてお酒になるのかなぁ。


「楽しかったさーっ」

「緊張しましたけど、わえも最後は楽しめました」

「……すごく、良いことが沢山ある日でした」


 ニーナ、ターシャ、ニコ。


「みんなー、わーって来てー、わーって帰っていったねぇ。満足してたよー」

「木のお皿やコップ、それに『お箸』――。うさは沢山褒められてしまいました」

「久しぶりに小さなお子さんを沢山見られたので、やっぱり私、子供が好きなんだなあ……って。この町にまた子供がたくさん居ると思うと……嬉しくて。泣いちゃいそうです」


 アルしゃん、ウサリア、マリメロ。

 本当にみんな大忙しで、でも充実して。素晴らしい一日でした。

 そして最後にロメールの出身者が集まって、言ってくれた言葉。

 ある家族連れの中年男性は


『僕たちは育ててくれた恩を、まだ返していないんだ』


 と言い、ある妙齢の女性は


『一番大変な時期はもう過ぎたかもしれない。けれど、今からでもできることをやらせてほしいの』


 ――と。

 それは本当に、(すご)く凄く嬉しいことで、私は皆さんに『いつでも待っています』と伝えて、感謝を示すために頭を下げました。


「ねー、リタ。もし一気に人が増えたら、私たちの立場ってどうなるさー?」

「ふむ……。今まではボクたちしかいなかったから、それぞれに担当を割り振っていたわけだが」


 ニーナの疑問は当然でもあり、考える必要のあることです。


「年上の大人が沢山住むようになっても私たちが偉そうにしてたら、変じゃないかなぁ? って」

「どうだろうか。ダリア領のマルシアはボクたちよりももっと幼い。ボクとしては、今のままでいいと思うのだが」

「うーん。でもこういうのって、その道で一番優れている人が上に立つものじゃないかとも思うさ」

「上に立つ、という考えをしなければいいのではないか?」


 私の返した言葉に、ニーナは首を(かし)げました。

 説明を追加します。


「元々ロメール領は、領主と領民の間にある壁が薄かったように思うんだ。そしてボクたちは、もちろん未熟だ。まだ沢山のことを教わる立場であり、先生や師匠が必要になるかもしれない」

「うん。だから上には――」

「そこを逆に利用しよう。ボクは国家元首になんてなりたくないけれど、それは一般的なイメージの国家元首象があるからだ。だが父のように領民と積極的に関わるような――、いや、国民から色々なことを教えてもらえるような国家元首ならば、家督として受け継いでいきたい。そしてそんな国家元首がいれば、国の雰囲気も良くなると思う」


 ニーナは納得してくれたようで、「なるほど。なんとなくわかったさー。つまり私たちが偉そうにしなければいいんだよね?」と返してくれました。


「そういうことになる。対外的には強い態度に出なければならないこともあるだろうけれど、内向きには、普通に――――とはいかなくても、それなりに年齢に見合った言動でいい」


 そして私は、もはや私の右腕と表現しても一切差し支えのないニコを()()ります。


「……賛成です。下手に手放せば地位を争うようなことになるかもしれませんし、新しい国家の形……、小さいからこそできる国の運営方法が、あると思います」


 そうして私たちは、国家元首とか大臣とか偉そうな名前をひっさげつつも、新しく入ってくる人々から色々なことを教わりながら国を運営していこうと決めました。


「よしっ。それじゃあ明日からは、今日出てきた問題点を一つずつ改善していくぞ! まずは温泉施設の数を増やそう!」

「「「「「「」おーっ!」」」」」」


 温泉は今日の日に備えて巨大化していましたが、一気に人がやってきたので、一人一人がお湯に()かる時間が短めでした。

 旅行者がゆっくりとくつろげない観光地なんて、成り立つはずもありません。

 他にも細かな問題がありましたので、一つ一つ改善を積み重ねれば、第二弾の受け入れではもっと満足してもらえるはずです!


「…………ところでニコ、こっちのほうはどうなった?」


 私は親指と人差し指で丸を作って、小声で問います。

 観光も収入源ですから、ここでがっぽりと(もう)けられれば……。


「一人の欠員もなく、予定通りの参加人数でしたから。……神様に感謝しなければならないほど、です」


 するとニコは私と同じ指の形を両手で作って腕を広げ、小さな体で雄大な表現をして『商人が神様にお祈りするポーズ』をしました。

 うーん。相変わらず『お金よ、降り注げ!』という感じで、とても儲かりそうなお祈りです。

 なんとなく、全員でやってみました。

 ……肩甲骨がグイッと開く感じで、やってみると思ったよりも健康によさそう。というかこれ、ヨガ?

 商人は肩がこりそうですから、ストレッチにも良いのかもしれません。

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