初雪 ②
必死に雪下ろしをするターシャを含め、全員を領主邸へ集めました。
まあ全員がここに住んでいて、結局同じ部屋で寝ているのですが。
「記念すべき第一回! 新ロメール国、閣僚会議を開催する!」
私は声を張ったのですが。
「……むしろ、今までよく会議無しでやってこられたなぁ、と」
ニコにぽそりと呟かれてしまいます。
確かに……。
「閣僚ってなにさー?」
「国務大臣のことですよ。ニコは経済、わえが農林、ニーナが水産。みんな何かしらの
大臣になっているじゃないですか」
ちなみにウサリアが産業、マリメロは教育です。
まあ水産と教育に関しては今のところやることがないのですが。特に水産は港町の復興が鍵となるので、かなり遠い話になりそうです。
「みんなで知恵を出し合おう。まずは町作り推進大臣のアルしゃんから!」
「えーと、温泉のお湯をドバーッと」
「次、ニーナ!」
「みんなで力を合わせればなんとかなるさーっ!」
「ターシャ!」
「現実的に考えると、重要な施設から順に雪下ろしをして、他は諦めるしかないかと」
「ニコ!」
「えっ、……お湯をドバーっと?」
珍しく冗談を言ったニコに、全員が「ぷふっ」と吹き出して笑い出してしまいます。
でもニコはその状況が理解できないという顔で……。
……………………え?
「ニコ、もしかして良い方法があるのか!?」
「温泉水を領主邸まで引き上げて、そこから下流へ向けて屋根を伝わせると溶けていくと思います……たぶん」
「しかし、どうやって引き上げるんだ?」
「温泉水が湧き出た頃、手洗いが便利になるように『貫通穴を開けたレコブロック』でお湯を引き上げましたよね。あれを連続させることができれば……」
「なるほど! 給水管の代わりか!」
最後に議決を取って、私たちは大慌てで給水設備の作成に取りかかります。
まずは温泉の湧き出し口の一つ、例の手洗い場へ行って、状況を確認。
「延々と湧き出ているが、水圧が足りなくならないか?」
「近いですし、十分足りると思います」
案外と言えば良いのか、長く付き合って気付きましたが、ニコの計算能力は緻密さよりもセンスに頼っているところがあるようです。
物理的な計算も感覚でできてしまうタイプなのでしょう。
もちろん緻密な部分はしっかり突き詰めてくれていますが、その両方の力を持つからこそ飛び級少女なのだろうと感じられます。
そのニコにずっと頼りながらロメールは復興を遂げようとしています。
今回も彼女のセンスに頼らせてもらいましょう。
「よしっ、まずはレコブロックに穴を開ける。在庫はあるんだ。一気に行くぞ!」
ありがたいことに、電動工具は全員が扱えるようになりました。
それも――。
「じゃ、私がコンクリートハンマーを使うさー。重いのは私の出番さーね」
「わえは、普通の電動ドリルに長いビットを。貫通は無理ですが、途中までなら十分いけます」
「ボクは充電式のインパクトドライバーを使おう」
「私もーっ」
威力は随一ですが、重くて体力消耗の激しいコンクリートハンマーは最も体力のあるニーナが率先して。
電源式で軽い電動ドリルはターシャに。
そして充電式で少し重さのあるインパクトドライバーは、そこそこの体力がある私とアルしゃんが使うことになりました。
残るニコたちは腕力という面で心許ないですし、他にもやることはあります。
レコブロックへネバネバを塗り広げたり、重ねかたを考えたりしてもらわないといけません。
――――そして、お昼。
「できた……っ!」
「汲み上げは終わりました。……お疲れさまです。雪も少し止んでいますし、一度休憩を挟んでから、各戸の屋根に繋げていきましょう」
まったりティータイムに、お菓子を添えて休憩。こういう時だからこそ休憩は大切なんです。もちろん、解決へ向けての見通しがつき始めたと言うこともありますが。
ほっこり心が落ち着いたところで、領主邸から滑り台の要領でお湯を流すための最終手順に入ります。
とは言え、今度は貫通穴は必要なく普通に積んで、上面に水が流れる溝を少し掘るだけなので、一気に進んでいきました。
更に、作りながらもどんどん流していくので――。
「凄いな。想像以上のスピードで溶けていく」
「……下のほうへ行くとお湯が冷めて、スピードは遅くなると思います。でもこれなら、なんとかなると思いますよ」
「さすが。ニコの計算は確かだったな」
「そんな……ただの勘です」
言ってはにかんだニコの表情は、可憐さに頼もしさが加わりはじめていて、出会ってから随分と変わったと感じられるものでした。
「――――しかし、冷める……か」
「はい。冷めないで各戸へ供給できれば、完璧です」
「崩壊前のロメールでは各戸へ温水を供給していた。あれを温泉水だと仮定すれば」
「おそらく、汲み上げたのと同じ方法で各戸へ配水したのでしょう」
「似たようなアイディアはアルしゃんから出ていた。だがそれでは水圧が足りなくなるという結論になったんだ。温泉の噴出量は、とてもじゃないが数千人が同時に使えるものではない」
「同時に使わなければいい、というのもありますが、妥当な量をちゃんと貯水できれば困ることはないと思いますよ」
「なるほど。領主邸に巨大な貯水タンクを作れば良いのか」
「はい!」
使わない間に溜まっていって、水圧を上昇。使うときは一気にドバッと。これなら上水設備として完璧でしょう。
それから各戸へ温水を流す道が出来上がって、再びみんなで会議。
平たい屋根だらけの街並みというのは非常に珍しいので、今後は温泉水による除雪システムをより強化、洗練させて対応していくことに決まりました。




