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神様と関係者と、形

 近年失われてきた信仰心を象徴しているのか、七人の中に毎日お祈りを欠かさない信者というものはいなく。

 ――まあ近年と言っても、ここ百年ぐらいの長いスパンの話ですが。千年も動きがないと歴史もスッカスカなので二百年ぐらいは近代です。

 この世界、グリフィールドでのお祈りは両手を握り合わせるクリスチャン的なものが一般的だと思うのですが、国にも属していないし既存の宗教観に囚われていたら私が悪魔になってしまうので……。


『いっそ新しい宗教を作ってしまおう!』


 という怪しい話がはじまってしまったわけです。はい。


「ボクは反対だ! 雷の神様なんて、高木さんだけで十分なんだよ!」

「誰さ、その人……」


 通じませんでした。当たり前です。


「どっちにしても、ボクは神様の関係者になんてなりたくない」


 『水の女神、アムール』や『大地の神、アリアナ』というように、電気の使い手を雷の神様に仕立て上げようというお話です。

 言うなれば『雷の神、リタ』――――強そうです……!

 でもそうなると、私は神の力を扱える人もしくは神そのものということになってしまい……。


「わえは良いと思いますよ。実際に世界を変える力をお持ちなのですから、遠慮をする必要はないかなと」

「遠慮じゃなくて本気で嫌がっているんだ!」

「うーん。でもこういうものって、主観ではなく客観で決まるのではないでしょうか?」


 何故(なぜ)でしょう。珍しくターシャの押しが強いです。続けて、「ね?」と周囲へ同意まで求めはじめる始末。


「うさも賛成ーっ」

「アルしゃんもー」


 あなたたち、割と楽しんでませんか?

 多数決で決めるわけではないにせよ、七人の中でニーナとターシャという精神的支柱である二人が賛成し、マイペースなウサリアにアルしゃんまで賛成となっては多勢に無勢です。

 あとは大人しい組のニコとマリメロのみ……。


「二人は、反対だよな?」

「……賛成です」

「お、同じく」


 おおぅ……。

 うー……、まさかの一対六。民主主義なら絶望的です!

 確かに私は前世の死後、神様的な()(かた)に出会い、図らずも雷の力を授かりました。

 その力で千年の時をひっくり返すかもしれない大改革をしようとしている真っ最中です。

 ――――客観的に見ると、これ、確かに……。


「リタ様は、人口増加という人類の危機を解決できる可能性を持っているのです。わえは時々、神々しく思うこともありますよ」

「やめてくれ……。いや、本当に……」


 困った末に、最近はスライム大家族のグランドマザー的な立ち位置も得ているエリカに視線を投げます。

 すっごい楽しそうに表情を崩しているかと思えば、なぜか偉そうに胸(?)を張ったりして、とにかく賛成だということはわかりました。


「ピンチに常識外の人間が現れたら、それはヒーローか神様のどっちかさー」

「それならまだヒーローで…………。いや、常識外の()()が現れたら……? そうか!」


 頭の上に電球ピコーンで(ひらめ)いた私は、エリカを抱きかかえて、高々と上に(かざ)します。


「スライム教! ネバネバの力を無視するわけにはいかないだろう!?」

「えー……。だってネバネバってぶっちゃけゲ」

「ネバネバだ」


 ニーナが言ってはいけないことを言いかけたので、制します。

 そういうのは心の中で!

 私は二の句を継いで説得を続けます。反論の隙を与えてはなりません。


「そもそもスライムというのは神の使いなのだろう? ならば人類がスライムを絶滅危惧種のようにしてしまったことに、間違いがあったんだよ!」


 この言葉に応じてくれたのは、古代物語に詳しいニコでした。


「……確かに、歴史を全て否定する必要はありません。スライムは正しく神の使者であり、人類がその扱いを間違えていた……。納得できる筋書きです」

「だろ!?」

「でも、ネバネバを吐かせているのは、リタだから……」

「うぐっ――」

「スライムを生み出したのも、リタですし……」

「はう……」

「充電するのも、リタ……」

「も、もういい。わかった」


 これでは多勢に無勢どころか、口でも負けてしまいます。ニコは淡々と事実を突き付けてくるので、強いです。

 遠慮が無くなっていることは喜ぶべきなのでしょうが、まさか敵に回してしまうとは不覚――っ。


「……ただ」


 しかしニコは、あくまで厳しい顔つきで言います。


「既存の宗教を大きく変えてしまうよりも、宗教ではなく歴史を――人類の間違いを指摘する。そちらのほうが周囲の反発は少ないのは確かでしょう」

「なるほど。周囲の反発ということも客観視の一つ、か」

「はい……。信仰心は人それぞれですから、悪戯(いたずら)に反感を買うことは得策になりません」


 ロメールは、いつか正式に国として認められるでしょう。

 その頃になれば急激に人口が増える可能性もあって、そこに宗教観の違いがあっては対立の可能性さえ生まれてしまいます。

 まさか私が信仰の対象になって一つにまとめ上げるなんて、難しいでしょうし。

 スローなDIYライフを心がけていたいので、そういう意味でもやっぱり、ちょっと違うかな。


「ボクはニコの話に賛成だ。みんなは――、……って、なんで笑っているんだ?」


 まず目をやったニーナとターシャが、必死に笑いを堪えていました。


「ぷくっ……、いや、だんだんリタが()(わい)く見えてきたさ」

「あははっ。リタ様って、ニコに弱いですよね」

「ちょっ、ボクは真剣にだな! ――――まったく」


 神様的な御方と会ったことがあるので、私としてはかなり本気で受け止めていたのですが。

 思っていたよりも軽いノリで話していたのかな。


「それにお祈りの作法って、地域差があるさー」

「そうなのか?」

「うん。私の家では手を地面に付けてた。ターシャが豊作を祈るときは、片膝を地面に付けて手を握り合わせていたけど、海の上であんなことできないさーね。地域とか職業でも結構違うんじゃないかな」

「漁業、農業、とくれば、やはり商業――。そういえばニコが神様に祈っている姿というのは、一度も見たことがないな」


 そう言って再びニコに視線が集まると、彼女は「えっ」と珍しく低い声で、(うな)るように反応しました。

 更に続け――。


「商家では、こう……。両手の親指と人差し指で丸を作って、大きく手を広げてから空を見ます」


 その指、お金を表していませんか……?

 なんというかこう、『お金よ、私に降り注げ!』と言わんばかりの雄大なポーズでした。

 私は領土がある家に育っているからかターシャと同じでしたが、お祈りの形なんて人それぞれで良いようです。

 大事なのは気持ちでしょう。

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