エリカ、進化する ②
丸太を縦に挽き割って――。数分ほどの時間で、ニコが地下室の扉を開けて中に入ってきました。
「戻りました」
「ありがとう」
ココの実を受け取って、試しに電気を流してみます。
「うぁわっ、熱ッ!」
瞬間的に熱さが増して、床に落としてしまいました。
ココの実は卵に近い感覚で割れるので、立った状態から地面に落とせば割れて――。
「大丈夫ですか?」
「……ニコ、ココの実がおかしい」
「え?」
割れたココの実から、果汁がこぼれていません。
中は茹だったようにモクモクと煙を上げて見えませんが……しばらく待つと煙も収まって、露わになりました。
「固形化しているようだな」
ツンツンと突いてみると、指先にまだ温かさが伝わってきます。
「ジャガイモみたいです」
「確かに……。焼き芋みたいだ」
「食べられるのでしょうか?」
うーん。美味しそうな匂いですし、あれだけ栄養豊富なココの実が熱せられて固形化したから食べられませんなんてことは、無さそうです。
暖かいまま拾って、中身をぱくり。
「――美味しい。本当に焼き芋だ」
「わ、私も食べてみていいですか?」
「もちろんだ」
半分に割れたもう片方を、ニコに手渡します。
彼女は控え目な性格ながら好奇心が旺盛なので、こういった新しいものに対する興味も強いのでしょう。
「美味しい……。これっ、凄く美味しいですよ!」
「あとでみんなにも食べさせたいな」
「はいっ。ニーナなら四つぐらい食べてしまうと思います!」
いやあ、六つは食べるんじゃないかな。
……って、違う違う。
本題は電力問題でした。焼き芋おいしいですーっ♪ で締めくくりかけていましたよ、私!
「エリカ、ちょっと相談なのだが。ビリビリのあとに吐かないでいることって、できないか?」
私の問いかけに、隣のニコが一度首を傾げ、しかしすぐに頷きへ変えました。
「……なるほどです。スライムと電力を結合した結果がネバネバなら、ネバネバを出さないでいられれば電力は――」
察しが良くて助かります。
そしてエリカは少しだけ困ったような顔をしながら、ツノを傾げました。「やってみないとわからないか?」と問うと、うんうんとツノで頷きます。
「なら――。行くぞ!」
エリカを持ち上げて、ビリビリ開始!
徐々に電流を上げていき、いつもはここで白目をむく――というところでエリカがググググッとつぶらな瞳を中央に寄せ、もの凄く頑張って堪えていることがわかります。
そのまま十秒ほど続けてビリビリを止めると、エリカは『おぷっ』と一言だけ漏らしたものの、どうにか耐えきってくれました。
表情は……苦しそうと言うより、エネルギー充電完了! という感じでむしろ凜々しいです。
「ビリビリをやっても、なにも起こさないことができる。――エリカ、電源プラグを体内に取り込んでくれ」
言ったとおりにエリカが、手近にあったコンクリートハンマードリルの電源プラグを体内に取り込みました。
私はそのドリルを両手で抱えて、試しにレバーを引いてみます。
ギュィン! と回転しました。
「エリカ、凄いぞ!!」
私は思わずエリカを抱き上げて、わーっしょい、わーっしょい、と放り上げながら称えました。
「これ、革命的です!」
ニコの言うとおり、これは大きな発見になります。
私がいなくても電力が使える――。
そうなれば町の発展スピードも、防衛も、進化するでしょう。
「もう一回ビリビリ、やってみよう」
エリカが頷き、ビリビリ開始――っ。
しかし次の瞬間。
急にエリカが真剣な顔になり、こう……、『うーん』と踏ん張っているような雰囲気を醸し出しています。もう汚い話は無しでお願いしたいかな!?
――と、思ったのですが。
エリカの体が一瞬大きく膨らんで、ぽよんっ、と分離しました。
「……増えた?」
「水に雷を落としてスライムが生まれたので、それと同じ反応が起こったのでは……」
分離したほうのスライムを見ると、エリカスライムにあるフレミング家の紋章がありません。
どうやらコピーが生まれたわけではなく、完全に違う個体のようです。
表情も少し違うような。
――――ひょっとしてエリカ、お母さんになっちゃった?




