木の内装は高級の証
地下から大量の木板を、私、マリーさん、ニーナ、ニコの四人で運び出します。
目的地は私たちの家。
家の拡大はそれほどしていなくて、八人で寝るにはそう広くもなく、寂しくならなくて済む丁度良い程度の広さです。
「置いておけばいいさー?」
「ああ。あとの作業はボクができる。狩猟に行くのだろう?」
「マリーが旅立つ前に、もっと色々教わりたいんだ。今日はターシャも連れて行く予定だから、楽しみさーね」
狩猟を一人で行うのは、大変危険なのだそう。
なにせ相手も生き物ですから。
生き残るためには必死で動き回って、暴れて、攻撃だってしてきます。
それに武器は矢と斧――。銃で遠くから狙いを定めて、ズドンと一発。そういうわけにはいきません。
「ターシャは大丈夫そうなのか? あまり、こう……戦闘能力みたいなのは無さそうだが」
「実家で酪農をやっていたのもあって、血抜きは問題ないかなぁ。それに、確かに動くのは苦手そうだけど……。あの目は動物を『肉』としか見ていないさーね」
「な、なるほど……」
ターシャって肝心なところで強さを発揮するなぁ。
自然と一番共生できるのはきっと、彼女なのでしょう。大地との親和性が高すぎです。
「ま、解体はともかく仕留めるのは苦手そうだから、そこは私が頑張るさー!」
「ははっ。頼りにしているよ」
腕が治って以来、ニーナは体力仕事を買って出てくれています。
強くて明るくて積極的で――、本当に頼もしい存在です。
……さて、と。
「じゃあボクも、もうひと頑張りと行こうか」
八人で寝る家は、床も壁も天井も、レコブロックがむき出しの状態。
このままでは洞窟です。
それはそれで謎の安心感に溢れているのですけれど、もう少しぐらい、日常感が欲しいかな。
そこで『床だけでも木張りにしよう』というのが、今日の目標です!
「エリカ、やるぞ」
エリカスライムを抱き上げて、電撃ビリビリーっ。
『うげぇぇぇっ』
この酔っ払った親父のゲ○音だけ、どうにかならないかなぁ。
すでに木とレコブロックの接着は実験済み。ありがたいことに水平まで取ってくれるので、吐瀉物でペッタンペッタンするだけで板が張れていきます。
……ネバネバとか、呼称で苦悶しましたけれど……。私はもう吐瀉物でもゲ○でもなんでもよくなりました。慣れって怖い。
「……そういえば、エリカ。きみにビリビリをやって、吐かないでいることもできるのか?」
ネバネバは水分なので、密閉容器に入れなければ日持ちがしません。
バケツ容器におえええええええっとしてもらって簡易な蓋をしても、やはり保存は無理。
ジップ○ックのようなものがあれば一回分を小分けできて便利なのですが、完全に密閉できる容器というのは鉄でできていて重たく、更に言えば高価です。
――――ちなみにバケツ容器への放射は、中々のリアリティでしたよ。ええ。ボタボタボタっと音が響くんですよね……。色々苦しいので回想するの終わり!
私の問いかけに、エリカはツノを傾げて疑問を表します。
「やってみないとわからない……か」
そして角を縦に頷く――と。
エリカの中でも、スライムの体になっての不自由とかがあったのでしょう。最近はツノを使ったコミュニケーションが取りやすくなりました。
人間にツノをぐにぐに動かす感覚なんてないですから、徐々に会得したのかもしれません。
それから更に木板を張り続けました。
ペッタンペッタンペッタンコ――と。
………………このオノマトペはやめましょう。なにかやたらと胸が苦しくなります。胸が。
夕暮れが近づいてきて、なにやら良い匂いがしてきました。
肉と香辛料が使えるようになってから、食事にも彩りが出てきています。
「ふぅ……。思っていたよりも進んだな」
床への板張りだけを終わらせるつもりだったのですが、勢いで四面の壁まで板張りにしてしまいました。板を沢山作っておいてよかったです。
もちろん今日作ったものだけでは足りなかったので、在庫もかなり消費してしまいましたけれどね。
「リタ様ー、ご飯ですよーっ」
ターシャお母さんの声も聞こえたところですし、今日はここまでかな。お肉、捕れたかなぁ。
「今行くー!」
様変わりした家の中を見て、みんながどう思うか。楽しみです。




