隣町のかかえる事情
店舗からお年寄りを『蹴り』出した男性に、詰め寄ります。
「おいっ、老人を蹴る必要がどこにある!?」
「ああ? なんだテメエ」
こういう時は男の子口調のほうが力強くて助かります。
んー? でもこの人、なんだか呂律が怪しいなぁ。
「暴力を振るったんだ。わけを聞かせてもらおうか」
「見ない顔だな。――ん、テメエ、ひょっとして女か?」
ひょ・っと・し…………て?
はいっ、ビリビリ決定でーす!
スタンガンのイメージで、電圧を高く電流を少なく――。親指と人差し指の間でバチバチっと。
「ぁぎゃッ」
うんっ。倒れてくれたけれど、痛いところを押さえる程度に意識はあるみたいですし、成功成功。
こんなこともあろうかと思って、ひっそり訓練したいたんです。殺してしまわないように威力を調整しないといけませんから。
どうやって調整したのか?
そりゃあエリカが実験台に決まっています。彼女なら喜んで引き受けてくれますから。ネバネバも出ますし一石三鳥です! ……いや、ビリビリをして『はぁ……はぁ……』という感じで恍惚とされるのはちょっと、やめてほしいですけれど。
雷は悪魔の力なんて言われているけれど、このぐらいなら女性として防犯に使えそうです。女性として。
一瞬で終わるから、そんなに目立ちもしないでしょう。
けれど……。
「おいっ、人が集まってきた。逃げるぞ!」
駆け寄ってきたマリーさんが、耳元で囁きました。
私の力と言うよりも、もめ事を起こした場所とか相手とか、そっちのほうで野次馬が集まってきたみたい。
この状況で商品の販売なんて、できやしませんね。
事情も知りたいところですし――。
「わかった――。お爺さん、荷台に乗ってください」
「わ、ワシか?」
「他にいないですよ。酷いことをされていましたけれど、立てますか?」
お爺さんは差し伸べた手をしっかり握って、どうにか立ち上がってくれます。
でも顔は苦痛に歪んでいて、痛そう。
あんなに思いっきり蹴られるぐらいなら、スタンガンのほうがまだマシかも……。
マリーさんが先に荷台へ乗って上から手を引っ張り、引き上げるようにしてお爺さんを乗せると、ニーナが馬車を走らせました。
この町へ来るまでの間、馬を操縦する馭者はニーナとマリーさんが務めてくれたので、馬とニーナの信頼関係はバッチリ。
お爺さんのあとに小さなニコが続いて「ん――しょ」と荷台に上がり、最後に私が飛び乗ると、何事もなかったように馬車は街道を闊歩。
さて、どこへ行けばいいのかな。




