表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/106

馬車

 木工(せん)(ばん)を使い始めて三日目。

 初日で八つ、二日目で十二、三日目で十五個もの木製コップができあがりました。全て合わせて三十五個というのは、そこそこの量だと思います。

 商家出身のニコからも「この量なら」と(りよう)(かい)を得られました。

 私たちはその夜、馬車での移動を開始。


 ――目的地は(となり)(まち)、リオネロ領!


 まずは『お断り』のお返事と、衣料品にタオル、そして馬車も返さないといけませんからね。

 馬車で一日の(きよ)()という話でしたが、実際に馬を歩かせてみると、なんだかすこぶる調子が良いようで……。


「マリー、馬車ってこんなに速かったか?」

「いや。私がロメール領へ(もど)ったときには、この半分ぐらいの速度だった。重い荷台を引いているんだ。人が歩くのと、そう変わらないはずなのだが」


 町を(はな)れたのは、四人。

 代表者の私。そして商家出身のニコは外せません。

 売り子役には快活なニーナが適していると判断して、マリーさんは救助(よう)(せい)時の事情を知る人として同行。

 (かい)(たく)班の四人からは、ターシャが町に残りました。(かの)(じよ)は農作物の管理があるので、離れないほうがいいでしょう。お母さん的な存在でもありますし。

 そして救助要請班だった、残りの三人。


 (やさ)しくて温和な、マリメロ=アンダース。

 いつかは衣料品デザイナーになりたいと語ってくれた、最年長のアルテミシア=キャスパー。

 手先が器用で将来は物作りをしたいという、ウサリア=アンコート。

 

 (かれ)女たちは隣町へ行くメンバーから外れることを知って、それならば少しでも多くの商品を――と日夜を問わず(がん)()ってくれました。

 なので、私たちが帰るまでは(きゆう)(けい)です。

『私発電機』なしで使えるのは、バッテリー式のLEDライトとか電動ドリルぐらい。他のほとんどの電動工具は動きません。

 ()()を絶やしてしまうと(はん)()ごてでの火起こしができないので、その管理だけはお願いしましたけれど。小枝と落ち葉の保管量も増えましたし、一日や二日森との往来をしなかったところで、問題にはならないでしょう。


「そうか……。それなら単純に、馬が元気なのかもしれないな。ボクたちと一緒にいてそうなってくれたのなら、嬉しいことだ」

「リオネロはコスト管理の厳しさで有名だ。十分なエサを馬に(あた)えていなかった可能性は高い。そしてココの実――。もしかすると、今の速さがこの馬の本来の力なのかもしれないな」


 私とマリーさんの会話は、なんだか男の子同士みたいで、ちょっと面白いです。


 馬のエサは本来、マズくて人間は食べない『飼料』。食味が悪い代わりに栄養価は豊富なはずなのですが、量が少なければ結局栄養は不足するわけで。

 今のロメール領では飼料なんて作れないので、みんなと同じココの実やトウモロコシを与えていました。短い間でしたが()やしのペット的な感じで()(わい)がることもできたので、身も心も(じゆう)(じつ)してくれたのなら、何より(うれ)しい話です。


「……恩返し、してくれているのかも。馬にも心があるから」


 ニコが(ひか)えめな音量で語りました。

 この世界の馬と元の世界の馬が全くの同種かはわかりません。

 でもまあ、見た目的にはどう見ても『馬』です。サラブレッドの肉付きとは言いませんが、骨格はそれなりに大きいほうで、(ばん)()らしくあります。


「そうだと嬉しいな」


 ひょっとして千年前の馬は、これぐらい速かったのかも? とか。

 そういう話をしようと思いましたが、一番古代物語に(くわ)しいニコが歴史考察ではなく『馬の気持ち』を語ったのですから、馬に感謝しつつしばらく()られたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ