商人
全町民が揃って会議です!
まあ人口は八人ですが。
焚き火を囲むには中々ほっこりする人数なので、今はこの感じを満喫するとしましょう。暖かい紅茶とかほしいなぁ。
議事録を取ることもなければ進行役がいるわけでもない、ざっくばらんなスタイルの会議です。
ただ、とりあえず『現状では無理に建物の規模を拡大する必要はなく、それよりも生活の質を向上させなければ――』ということで、意見が一致しました。
必要なのは建物だけじゃありませんから。
それぞれに知恵を出し合う中、ニコが挙手をしました。人前で発言するのが苦手だからか、少し手が震えていますけれど、頑張って!
「……あの、ええと、…………コップとかお皿を作ってみるのは、どうでしょうか?」
曰く、今の私たちが持つ商売上の武器は『土』と『木』だそうです。原始的すぎてちょっと泣けてきますけれど、これが現実です。
頑張ったニコに、ターシャが続きます。
「わえは賛成です。木工製品は割れたり欠けたりすることが滅多にないので、高価で取り引きされますよ。親子三世代とか四世代ぐらいに渡って使い続けるかたがいらっしゃるぐらいですから」
次いで、私の右隣に座るマリーさん。
「だがコップや皿は木を切るわけではなく、削って作るんだ。固いものを何日もかけて、じっくり削って、ようやく一つの製品が仕上がる。高いものには高いだけの理由があるぞ」
うーん。冷静な意見、さすがです。
「バァーってやって、バリバリーっで終わるようなのがいいさー」
ニーナは違う意味でさすがです。
何も考えていないかのような意見ですが、こういう子が一人いると発言が楽になります。まあ本当に何も考えていないと思いますけれどゲフンゲフン。
「バアーっとやって、バリバリ――か」
でも言っていることは、ごもっとも。
お金を手に入れるためには、製造工程に問題があってはいけません。
木工ノミの類いはいくらでもありますけれど、削るとなると確かに数日で一作が精々。一週間から二週間は見ておいたほうがいい感じです。
いえ、下手をすれば最初の数作は売り物にすらならないかもしれませんから、もっと……。電動工具を動かすことはできても、職人芸をいきなり身につけるのは不可能です。
「削る機械と言えばサンダーだが、あれはヤスリだから内側を削るには不向き。――となると、木工旋盤……か?」
木工旋盤は、木を掘削加工するための道具です。
横向きですが『ろくろ』のようにグルグルと高速回転させることができて、ノミなどの刃を少しずつ当てることで木に掘削加工を施します。
『木工ろくろ』と呼ぶこともあるほど、ろくろに近い仕組みです。
例えば長い木材を芯を残しながら外から削っていくと、木製バットが作れたりする代物。ノミさえ当てることができれば内側を窪むように加工することもできますから、食器作りにも、よく用いられるわけです。
ま、使ったことないですけれど! 全部DIY雑誌の知識です。
「何か、思いついたのか?」
マリーさんが問うてきます。
「そうだな。コップぐらいなら、もしかすると一日で数個作ることができるかもしれない。明日の朝、日が昇ったら早速試して見ようと思う」
「――きみは不思議な道具を沢山持っていて、それを使うための力も託されている。もし神様がそれを赦して与えたのなら、きみがこの世界に生まれた意味は、そこにあるのかもしれないな」
えーと、私はただ『集めた電動工具でDIYが満喫できる人生』を願っただけなわけですが……。まさか、神様の赦しなどという壮大な話になるとは。




