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木造

 今にして思えば、これは地下から出しておくべきだったなあ、というものが一つ。


『木工バンドソー』


 持ち運ぶものではなく、固定して使う電動(いと)(のこ)に近いのですが、糸鋸は()(つう)ののこぎりと同じく()し引きをして『引き』で切っていきます。

 ()には向きがあるので、ある方向へ動かしているときには切れるけれど逆方向へ動かすと切れません。

 しかしこのバンドソーは、大きな輪っかのようなブレード(刃)を常に一定方向へ回し続けて切断するというもの。

 構造としてはチェーンソーに近いです。あの楕円回転の真っ直ぐな部分を使って、ずっと切るターン。

 ただこれ、重さが百キロを()えていて、とても動かせません。雨に()らすわけにもいかず、それで地下室へ置いておくことになったのです。


「これがあれば、丸太から板を作り出せる」


 使う前にブレードを付けたり位置調整をしたりと色々大変で、取りかかってもう、かなりの時間が経過しました。

 入り口のところからニーナが降りてきて、呼びかけてきます。


「おーいっ、そろそろ(きゆう)(けい)しないと(たお)れるさー」

「大げさだなぁ。ボクなら大丈夫だ」

「手が(はな)せないなら、私が食べ物を持ってこようか?」

「ああ、助かる」


 ココと、焼きトウモロコシと、きゅうり!

 食器と調理道具と調味料がないのは困りものですが、食生活の(いろど)りは確実に増してきています。


「板、作れそうかな?」

「まだ動かしてもいないからな」

「そっかぁ……。私たちにも手伝えることがあったらいいんだけど、難しそうさね」

「エリカが結構手伝ってくれるし、ニーナもこうして食べ物を持ってきてくれて(いつ)(しよ)に食べてくれる。それだけで十分だよ。()やされる」


 簡単な会話を()わして食べ終えると、今度は()(みん)タイムです。

 食後は血糖値も上がりますし、血液が胃に回ってしまうので、脳が働きません。その状態で()(もの)や重たい工具を(あつか)うのは()()の危険性を上げてしまいますから、必ず仮眠休憩を取ります。

 うたた()から復帰して、再び作業開始。

 頭も()えているからか今度はスムーズに進んで、一気に使える状態まで進みました。

 説明書でメンテナンス方法も学びましたし、財務省散財部の私はしっかりと予備パーツも(そろ)えてあります!

 電源コードはスラックスの中で(はだ)()れている状態。足を大きく動かすと接触が外れてしまうのですが、固定された機械の前で使うならこれで何とかなるでしょう。人間発動機の準備も(ばん)(ぜん)です。


「行くぞ」


 エリカスライムに宣言して、ゴクリと(のど)を鳴らし、スイッチオン。

 ヴイィィィィィ――――と音が鳴りますが、思っていたよりも(はる)かに静かな印象です。

 でも確かな、工場の音。

 作業で結構なオイルに触れたので、なんだかこう、日曜大工! という感じがしてきます。

 ……いやまあ、日曜大工で百キロもある重量物を(こう)(にゆう)する人は、中々いないとは思いますけれど。

 木工バンドソーが電動(いと)(のこ)(ちが)う点は刃の動き以外にもあって、電動糸鋸に比べて切断面の『高さ』が、(あつ)(とう)(てき)にバンドソーのほうが大きく取れるんです。

 つまり高さ二百ミリの丸太をドンと置いて、そのままスーッと切断できるわけです。

 作業台に置いた丸太へゆっくり刃を当てると、ヴイィィィ、という音がギュゥイィィィィと(かん)(だか)くなりました。パワーがあるものを買っておいたので、固いはずのグリフィールド世界の木でも、かなり勢いよく切れていってくれます。

 あとは『直線切りガイド』を固定しておけば、同じ厚みの板が何枚も作成可能!


「これは(はかど)る!!」


 んーっ、テンション上がってきたぁぁぁぁっ!!


「一気に全部やってしまうぞ!」


 前に倒した木を四つに分けたので、丸太の数は四つ。

 ただ丸太を上から見ると○になっているわけで、これを同じ厚みにカットしていったところで中心部分は(はば)(ひろ)に、(はし)のほうは(はば)(せま)になってしまいます。

 しかし今度は板として横に置いて、左右をもう一度カットして整形すれば、なんの問題も無し! 綺麗な一枚板のできあがりです。

 そしてすでにハンマーで()()む『(くぎ)』や、ドライバーでねじ()む『ビス』は発見済み。ええ、そりゃあもう多種多様な種類を長さ別に、大量ですよ。散財大臣を()めないでいただきたいですね!

 この町が復興していって、お金を手に入れたら、私は全てをニコに(たく)します。自分を信じて? 無理無理。


 (せつ)(ちやく)(ざい)(たく)(さん)出てきましたけれど、これはまあ十五年も()っていると使用不可でしょう。あとで一応、(ため)してみますけれど。

 さてっ、板を作ることができれば、あとは『板で何を作るか』です!

 私は一枚の板と、専用に作った『木の(くい)』を持って、地上へ出ました。

 そして(ちよう)(こく)(とう)のような『木工ノミ』で文字を()り――。ちょっと木材が硬すぎですけれど、まあ、時間をかければなんとかなりました。

 更に釘を打って板と杭を(つな)げ、杭を地面に突き()します。

 トン、テン、カン、と釘を打つ音で、私以外の七人全員が集まってきました。


「できたっ」


 作ったものは、小さな看板。書いた文字は『ロメール』。


「ロメール領、復興の(しよう)(ちよう)だ!!」


 私のDIY第一号作品は、決意を表明するための看板となりました。

 (しゆ)()(まん)(きつ)できる人生を――とお願いしたときには、まさか丸太から板を作るところからやることになるとは想像もしていませんでしたが、達成感()()しで大満足です。

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