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TS令嬢、辺境の地で国をDIYする。 ~サバイバル環境でも、ゆるふわスローライフ!~  作者: 本山葵
第一章 世界はブロックとスライムのネバネバでできていた
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講義1 大地の女神

 ランチタイムを終えた午後の授業では、丸眼鏡をかけた女性講師から『世界の成り立ち』についてのお話をして頂けることになりました。今日のためにわざわざ、遠い他所の町から馬車に乗って来られたそうです。


「えー、この世界『グリフィールド』は、大地の女神と水の女神によって成り立っています」


 んー。ふぁんたじぃーっ♪

 こういうお話大好きだったから、その世界に飛び込めたのは幸運よね! 魔法学校とかが無いのはちょっと残念だけど、許容範囲だわ!

 日本の教育を受けた記憶をそのまま持ってきちゃったから、正直、十五歳までに習うことって結構気怠(けだる)い内容が多かったんだけど。

 ――これは惹かれますっ!


「まず大地の女神が『アリアナ』。――アリアナは守護を(つかさど)る女神であり、この世界に『レコ』を与えてくださいました」


 レコ……?

 あんまり聞かない言葉だなあ。

 気怠くても、人様が教えてくれることには真剣に耳を傾けていたつもりなんだけど。


「現代人にはあまり馴染みがないものですが」


 あ、なるほど。――となると、歴史的なお話かな?


「この校舎も、あなたがたの家も、町中の建造物全てがレコで作られたものです」


 この世界の建造物はやたらと長持ちするようで、私の家なんかは築千年を超えているそうです。

 本来なら世界遺産に囲まれている気分にでもなりそうだけど、大して老朽化もしないから、むしろ新築の家にずっと住み続けている感じかな。


「今日は特別に、レコの実物を持って参りました」


 はえーっ。

 先生が軽々と教壇(きょうだん)の上に置いたのは、一辺が一メートルぐらいの大きな立方体でした。見た目は土……なんだけど。持ち上げて重くなかったのかな……?


「貴重な機会です。皆さん、どうぞ近づいてご覧になってください」


 生徒が席を立ってぞろぞろと前へ行く中に、私も混ざる。


「土、だよね……?」

「これが家になるのかなぁ?」


 クラスメイトの疑問に、私もこくこくと頷く。

 ここまで興味を惹かれる授業は珍しいから、ついでに質問をしておこう。

 せんせーっ!


「……先生、レコの重さはどれぐらいでしょうか?」


 うん。なんか(はす)に構えたテンションだけど、訊きたいことは同じだったから、まあいい!


「水に対して、0.01程度の比重です」


 めちゃ軽っ!!

 軽い木材でも0.3ぐらいはある(DIY雑誌の知識)のに。

 そりゃ女性の力で軽々持ち上げられるよね。コップ一杯とか、その程度の重さかなぁ。


「持ち上げてみても(よろ)しいでしょうか?」

「ええ。もちろん」


 ちなみにこの先生とは初対面だけど、多分、スラックス姿の生徒は領主の娘なので――とか、先立って知らされていることだろう。

 領主の娘は、この三十人に満たない小さな集団の中でも、当然のように主役でいなければいけないみたいです。

 実際のところ、クラスメイトは私に遠慮しがちと言うか。……うーん、ザックリ言うと遠慮しすぎなのよね。良いところは全部、私に渡してくる。

 今だってみんなに混ざって前に来たつもりだったのに、自然と前に道、開いてたし。

 昭和のヤンキーじゃないんだから……。


「――うわっ、軽い――ですね」


 珍しく、驚きがそのまま声に出た。本当に、羽みたいな軽さだ。

 ただまあ、大きな土の塊なわけで。


「リタ様っ、お洋服が!」

「いけませんわっ」


 抱えるように持っちゃったから、思いっきり汚れてしまった。

 うーっ、さすがに土汚れじゃ着替えたいなぁ。でも授業中だし……。


「ありがとう。――でも、服を汚すことを怖がっていたら、何もできないだろう? ボクは服よりも、講義のほうが大切なんだ」


 いやっ、そりゃそうだけどね!?

 授業中だから後で着替えるしかないかぁ、というたったそれだけが、こんなキザな台詞に変わるのだから本当に困ってしまう。

 クラスメイト、キャーキャー言っちゃってるしなぁ。

 女子校に男装令嬢なんて混ぜちゃダメだよ、絶対!


「わっ、私も持ち上げてみても宜しいでしょうか!」

「私も私も!」


 でもまあ、私の行動が切っ掛けになってみんなで土に汚れるのは、そんなに悪くないかな。

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