飲泉
温泉は地中の断層などを通って、地上へ出てきます。
もちろん地中というのは、ただの土ではなく、岩盤層のような固いところを通ってくるわけですが。
「はい注目。ここに新しい温泉の湧き口、一つのレコブロック、そしてエリカの吐いたネバネバがあります」
ニコ、ターシャ、ニーナ、エリカが、揃って座り私の話に耳を傾けてくれます。エリカの耳がどこかはわかりませんが。
「接着したレコは岩盤層と同じ強度。――ということは、湧き口の上にレコを接着して更に上まで温泉を引き上げることができれば、飲泉にも手洗いにも便利なことこの上なし!」
おおーっ、という声と同時に拍手が打ち鳴らされました。
「でも、丸い穴を掘るのは大変さー」
「今回もあの、コンクリートハンマーというものを使うのでしょうか?」
「……わくわく、わくわく」
ニコ、感情が声に漏れて、とんでもなく可愛らしいことになっていますよ。
「いや、今日使うものは少し違って……、これだ!」
私はスクリュー型の『穴掘り用ビット』を取り出して、コンクリートハンマーの刃先に交換、装着。
こういった電動工具は、刃先を変えることで色々な用途に使い回すことができるのですっ。
ギュインギュインと回して、どうでしょうか! と無言で表情を決めました。
「なんか、よくわからないけれど。リタが楽しそうとしか……」
「――わ、わー、格好いいですー」
女の子がドリルに憧れちゃダメなのかな!? ギュインギュインって回したら格好いいと思うのに……。
でもまあ、理解はされないですよねぇ。ええ、わかっていましたよ。前世の高校時代にも、女子校で電動工具のことを熱く語ってドン引きされましたから。
「……わくわく、わくわくっ」
ニコだけは私の味方? それとも商人魂が働いて、これの価値を見定めているとか――。どちらかというと後者っぽいですね。
「――あっ、リタ様。接着する前のレコに穴を開けるのはどうでしょうか?」
「え?」
「レコは接着前から頑丈です。けれど、軽ければ軽いほど作業は楽になるのでは――」
「……ふむ。先に加工することができれば、今後の円滑な作業に繋がる。――よしっ、ターシャの案でやってみよう!」
それから私は、めちゃ軽ブロック『レコ』を、接着前に穴開け加工しました。ギュイイイインと唸る私のドリルがザックザク掘り進めてくれる快感は、病みつきになりそうです。私、来世はドリルになってもいいかも……!
垂直に穴を開けて、上面を器の形に掘って整えます。ある程度は温泉水が溜まってくれたほうが、手洗いなどに使いやすいでしょう。
「接着してみよう!」
私がレコを持ち上げて、ターシャとニーナがネバネバを塗り塗り。
温泉の湧き口に垂直穴がぴったり合うように、ニコがすれすれまで顔を地面へ寄せて、手で指示をしてくれます。
「ここでいいか?」
「――はいっ」
そして接着!
シュピーンと光の線がレコの外周を伝い、上部の垂直穴へ入り込むと、ブワァッと光の束が天高く放たれました。
次いで、ドボドボドボという音と共に温泉水が迫り上がってきて――。
「成功だ!」
「――これ、飲めるのかな?」
ニーナの疑問に、ターシャが遠慮がちに手を上げます。
「実は。わえはもう、飲みました……」
「あ、私も……今朝」
おおぅ。慎重派のように見える二人が、まさか率先して飲泉を試みるとは!
「どうだったさー?」
「普通に、美味しい水でしたよ。少し暖かいですけれど、白湯だと思えば」
「はい。……とても美味しかったです」
それから私とニーナは温泉水を手で掬って、ズズッと口へ吸い込み、ゴクリと飲み干し――。
「「うまい!」」
声を揃えました。
飲料水に手洗いに洗濯物に、お風呂――。生活がどんどん文化的になっています!




