土の下から湧き出るものは
さすがに遠くの森から木を運んでくるのは、重労働にもほどがあります。
全員疲れ果ててしまったので、長めの休憩タイムを設けました。
土の上で寝転んで晴天を見上げると凄く高いところを白い鳥が飛んでいて、手を伸ばしたら届きそうな、逆に吸い込まれてしまいそうな、不思議な気持ちになります。
「あったかいさー」
「そうだな。ニーナの故郷はここよりもっと温暖なのだろう?」
「そうさねー。冬がほとんどなくて、夏ばっかりさー」
ますます沖縄っぽい印象です。
同じく大の字で横になったターシャとニコは、眠気に襲われているのか、緩い調子で喋ります。
「わえの故郷は草原ばかりなので、よくこうして空を見上げていましたよー」
「……嫌な人と商売をした後は、空を見ると小さなことに感じられます……」
ニコ、話が重たいですよ。
でも気持ちはわかるなあ。私も転生前の人生では、自分が家の中に閉じ込められているような気分になると、窓から空を見ていましたから。
それに……。
「ボクたちも、時々こうして空を見上げていたな」
顔の隣にいるエリカスライムに言うと、にっこりと笑ってくれます。
領主の家の広すぎる庭は、全面が整った芝生。そこが遊び場でしたから、二人でゴロンと寝転がって空を見上げたことは何度もあります。
「しかし暖かいな。背中からジワジワと温められている感じだ」
「あー、私もさー」
「これもレコが崩れて土の力ですかねー」
「……あの、これ、本当に地面が温かくないですか?」
ニコの発した疑問に、ターシャが「ですからレコの土がー」と眠そうに答えます。
しかしニコは納得のいかない表情です。
「おかしいです。私は製図作業で土に沢山触れていますけれど、暖かいと感じたことは一度もありませんでした。それに土が温かいなら、ココの実も温かく掘れるはずです」
それを聞いて、私はガバッと上半身を起こし、そのまま「誰か、シャベルを持ってきてくれ!」と強い調子で発しました。
ニーナとニコが急いで取りに行き、ターシャはまだ不思議そうにしていますが、何かが起こっていることは認識してくれたようで。
「ターシャ、一番暖かいところを探すんだ!」
「あっ、はい!」
眠気も吹き飛んで、シャベルが届くまでの間に一番暖かい場所を探っていきます。
「ここか」
「かなり熱いですね」
掘る場所は決まりました。あとは――。
「シャベル持ってきたさーっ」
「三人で掘るぞ!! ニーナとエリカは他に暖かいところがないか、もっと探してくれ!」
それから私とニコ、ターシャの三人でシャベルを使い、ガンガン下へ向かって土を掘っていきます。
すると徐々に硬い土が湿り気を帯びてきて、更に掘ると透明な水が浮くようになります。
「湧き水ですか!?」
「……でも、暖かい……」
「温かい水が湧いてくる。つまり――、温泉だ!」
どんどん掘っていくと水の噴出量が増していき、気付けば足回りは温かな水でビシャビシャに泥濘んで、蒸気も立ち上りました。
「少し熱めだな。四十度台前半――といったところだろうか」
「わえは温泉を見たことがないのですが……。これ、飲めるんですか?」
「飲泉と言って、飲める場合もある。ただ、この水が飲めるかどうかまでは……」
この世界には温泉が少ないです。遠い地方に湯治場があるという話は耳にしたことがあっても、身近なものではありません。
まあ、日本が温泉大国すぎるだけかもしれませんが。
「飲めるかはわからない――が、これで風呂に入れるぞ! 少なくともレコが八個あれば、一メートル四方に湯を溜められる!」
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■湯■
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こういうことです♪ これはテンション上がります!!
エリカも含めて、みんなが弾けるような笑顔になりました。
お風呂に入りたいなんて、口に出したところで叶わない願いでしたから、みんな言わないようにしていたのでしょう。
でも、女の子ですから。お風呂に入れるというのは、これ以上ない癒やしになるはずです。
ただ……エリカ、どう見ても水分の塊ですけれど、お湯に溶けちゃったりしないよね?




