回る刃
再び交代でレコブロックを作る夜を過ごして、翌朝。
合計して三十八個もできあがりました!
これなら縦に二段積んだとしても
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内部寸法で三メートル×五メートル。今日中にこれぐらいの壁が作れます!
天井は、とりあえず電動工具を覆っていた丈夫な幌を使えば、後回しでも大丈夫なはずです。
『うげぇ――っ』
エリカにビリビリをして、もうちょっと吐いてもらったので、接着剤のネバネバも確保できました。
「よしっ、みんなで作るぞ!」
「「「はいっ!」」」
それからは四人と一匹で共同作業。
建物はシェルターのすぐ傍。元は私のお家があったところですが、今更、領主も何もあったものじゃありませんから。
ニコとニーナに直線を引いてもらって、まずはレコブロックを仮置きします。
「これ、なんで風で飛ばないんだろうか?」
私のふとした疑問に、隣にいたターシャも頷きます。
「不思議ですよねぇ」
レコブロックとして固まった状態で、コップ一杯の水程度の重さ。だからまあ、二百グラムもない程度。
塊になる前のサラサラした軽い土であれば、風で舞飛んでしまうほうが理屈的には納得できるのですが。
土煙すら舞いません。
日本のあった世界と割と似ていると思っていたこの世界『グリフィールド』は、崩壊後、不思議なことだらけになりました。
「奥行き五メートル、幅三メートル――。これならなんとか八人、眠れるな!」
「ドアはどうしましょうか?」
これこそDIYの出番です! ドアぐらいなら、ちゃちゃっと作れるようになれるのが夢でしたから!
――と、言いたいのですが。
そもそも板がないわけで。
板から作る? そうなると森の木を伐らなければなりません。いくらDIYに憧れているからって、女の子がチェーンソーなんて持っているわけが、ねえ。
「よしっ、チェーンソーを使おう」
散財ブラボー!!
「ちぇーんそう?」
「木を伐採するための道具だ。扱いは難しいが、斧もない状況で使わない手はない」
ちなみにチェーンソーは専門の資格があるほどで、取り扱いは要注意です。
特に木の伐採なんて、間違えて自分のほうへ倒れてきたらまず死にます。
そして電動工具の刃物はほとんどに『キックバック』という跳ね返り現象があって、刃の当て方を間違えたり無理に急いで切ったり、切れないほど固いところに当ててしまうと、自分へ向かって跳ね返ってきます。これも、当たってしまえば大怪我か死ぬかの二択です。
キックバックによる事故は素人の日曜大工にとても多いことなので、DIY雑誌にもよく注意事項として書かれていました。私もド素人なので、十分に注意しなければなりません。
地下シェルターから電動チェーンソーを取り出して、しばらく説明書を読み耽ます。
「――――うん、よしっ。森へ行こう!」
チェーンソーのように馬力が必要な道具にはエンジン式と電気式があって、エンジン式のほうが圧倒的に強い力を発揮できます。持ち運びにも便利なため、プロの方々はエンジン式を愛用することが多いのですが、私の買ったものはあくまで素人も使うDIY工具の程度。
でも私という電源があるので、どこへでも持ち運べてしまいます。これは大きな利点でしょう。
「チェーンの緩みは適正範囲。刃の向きも合っている。チェーンオイルを投入口から入れて――。よしっ、離れていてくれ!」
「リタ様、楽しそうですね」
「うきうきしてるさーっ」
「……どうなるのでしょうか……?」
ふっふっふ。さあみんな、電動工具の力を思い知るが良いです!!
両手でしっかり構えて、中ぐらいの木に刃をしっかり当てるイメージで、いざ、スイッチオン!
ギュイィィィィッンと鳴って、斧で切るよりも圧倒的な速さで――っ。
「……ん? 思ったよりも切れないな」
おかしいなぁ。電動ではパワー不足なのでしょうか?
そもそもこの世界の木は、固いものが多いそうですし。
「すごっ、一気に刃が入っていったさ!」
あれ? これでも速いのかな。
それなら、ちょっと気を長くして、ゆっくり挑みましょう。
ギュイィィッ――と木を切り続け、中心を少し過ぎたところまで水平の切り込みを作り、今度はもう少し上から斜め下へ切り込みを入れます。水平と斜めの組み合わせで『∠』こういう形に切れたら、逆側からも水平に切断。
木は最初の切断面へ向かって倒れて、他の木の枝に衝突しながらバサバサバキバキと音を鳴らし、ズドンッ――と地面へ横倒しになりました。
「よしっ!」
「はぁー、格好いいさぁ」
「凄すぎです……っ」
「……これがあれば、木を売るだけでも商売に……」
みんなに褒められて、鼻が高くなった気分になります。まあ凄いのは私じゃなくて電動チェーンソーなんですけれど。
慣れてくるとスピードも速く感じられてきて、斧がない中で木が伐れるというのは、今後の生活に必ず役立つと確信できました。
「それじゃ、運ぼうか」
とはいえ全長四メートルぐらいはあって、四人で運ぶにしても重すぎです。そこで更にチェーンソーで四等分にして、その中の一つだけを持ち帰ることに。
帰ったら、ココの実でホッと休憩タイムです。




