交代
レコブロックを四つ作って、せっかくだから火を囲うように置いてみます。
接着は明日、日が出ている明るい時間にやってしまう予定です。場所とか大きさをじっくり決めないといけないので。――――建物を作るという行為に凄くワクワクしているのは、内緒です。まあ漏れ出ていると思いますけれど。
だからまあ、接着前のレコなんて、軽すぎて背もたれにすることもできず。
焚き火の反射板として囲うことで、よりポカポカ感を向上させます。
「二人を起こしに行こうか」
「はいっ」
ちなみに二人とも、少しずつ仮眠をとることができました。基本は待つだけで、注意しなければならないのは野獣の類い。
いざとなれば枝に火を付けて追い払うつもりでしたが、とりあえず野獣は出ず。
そもそも町に野獣が出ることも少なかったので、人は町に、動物は森に、とかなり棲み分けができています。まあ、町がなくなってしまったのですが。
だからと言って動物がわざわざ森から出てくる理由には、ならないのでしょう。
寝ている二人にはバッテリー駆動のLEDライトを使ってもらっています。私がいなくても電気が使えるというのは物凄く便利です。
「おーい。交代だぞーっ」
中に入りながら呼びかけるも、帰ってくるのはグゴー、ズバー、ズババー、という豪快なイビキのみ。ニコは赤子のようにすやすや寝るのですが、ニーナは日中と変わらず睡眠中でさえ豪快です。
「――――なんで、こんなことに?」
「さあ……。ニーナの寝相の悪さ――ですかね」
ニーナの足がニコの上に乗っかって、ニコ、ちょっと苦しそう。さすがに怒っているのか、寝ているのに眉根が寄っています。
更に私たちの目の前で、ニコが腕を上げて、肘をゴッ――とニーナの後頭部に落としました。
「応戦しているな」
「ですね」
ニコは案外、戦える子なのかもしれません。
かといって二人のバトルは無用な消耗。私がニコの、ターシャがニーナの体を揺すって起こします。
「うにゃ…………ココはさー、カラも食べられるって、婆ちゃんがさー……」
「ニーナ、寝ぼけてますよ」
「……うう……野獣……うう…………」
「可哀想に。ニコは野獣と戦っていたみたいだぞ」
まあ寝込みを襲ってくるなんて、獣扱いでいいのかもしれません。
「今まで、ニーナはターシャの横で寝ていたよな。ターシャの時は大丈夫だったのか?」
「いえいえ。一度『もう片方の腕、折りますよ?』と言ったら、それ以来は一度も」
「そ、そうか……」
一番怖いのはターシャでした。ニーナに言った台詞の再現が、低音ボイスで普通に怖いです。
「わえ、六歳からこの町で暮らしているじゃないですか」
「ああ――。うちの父さんに連れられて――と」
「十三歳になるまでは、そういう子が沢山集まる場所で暮らしていたんです」
「この町や隣町には、子供を預かる場所が多いからな」
お隣の町も、それほど離れているわけでもなく、資源は乏しいわけで。
人材を育成するという点では、ロメール領と同じ。けれど、うちは学問的で向こうは専門技術を学ぶことが多いようです。
人数もお隣のほうが圧倒的に多い。
一つだけとはいえ炭鉱を持っていることと、大陸の端っこではないので貿易商もここよりはかなり多く訪れ、そこで馬車のメンテナンスを請け負ったりするわけです。その専門職になれば、町の中で生きていけます。
最近では生産業まではじめていて、仕事は沢山あるみたい。
…………ただ、少なからず、よくない噂も耳にしますけれど。
「だいたい、五歳ぐらいから十二歳の子供一人一人に高いベッドなんて、使わせてもらえませんから。雑魚寝なんです。――あっ、不満があったわけじゃないですよ! ベッドなんて普通、持ってないですから」
この世界は木工品の価値がやたらと高いです。そして凄く丈夫。
レコのように千年とは言いませんが、百年越えぐらいならゴロゴロ転がっている状況でした。
「だから寝相の悪い人への対処は、慣れているんですよ」
「具体的には?」
ちょっと怖い気もしますけれど、後学のために聞いておきましょう!
「叩くか脅すか本気で叱るかの、どれかです」
ニッコニコの笑顔で言われてしまいました……。むしろそのギャップが怖いよ……。
「人間だって動物です。本能的に危ないと理解できるものには、寝ていたって近づきません」
「……そういえば、ターシャは農家の出身と聞いてるけれど」
農家と言えば野菜や果実と、勝手に思い込んでいました。
「ひょっとして、酪農もしていたのか?」
「はいっ」
ニーナ、牛とか馬の扱いをされていますよ……。




