深夜工事
三日目の夜。
隣町へ向かった四人が帰ってくるとしたら、最短で明日。
トラブルや遅れがあった可能性を考慮するなら、明後日よりも後――ですが。
いつでも受け入れられる体勢を作っておかなければなりません。
「二人一組で交代しよう。動けるボクと野生の勘が働きそうなニーナは別々にしたほうがいい」
「ちょっ、野生の勘ってなにさー」
本当。女の子に向かって、失礼な物言いだよ。この私め!
「働くだろう?」
「……少なくとも、ターシャとニコよりは、自信ある」
「あとはターシャとニコ、どちらのほうがニーナが片腕である点をカバーできるか……だが」
私たちは型枠でレコを作る作業を、丸一日、絶えず繰り返すことを決定しました。硬化時間が一時間なら、二十四時間あれば二十四個作れるはず!
まあ、一時間が『だいたい』でしかわからないので、二十三個できたら上出来でしょう。
でもね、一メートル四方のブロックが二十三個もできあがったら、結構凄いことです。地上に安息の場があれば休むにも適しますから、一気に作ってしまいましょう。
「……ごめんなさい、体力がなくて……」
ニコがシュンと俯いてしまいました。
「謝ることじゃない。ニコに知識があって体力がないように、ニーナには体力があって知識がない。みんなそんなものだよ」
「ちょっ、さっきから私の扱い酷くないかな? 傷つくさーっ」
不満を言っていますし、一見すると口を尖らせて不満そうですが。どことなく楽しそうな雰囲気で、ニーナのその態度も、私たちを暗く沈み込ませないためだとわかります。
こうして心を明るくすることが大切だと、誰より理解しているのでしょう。だからこそ私も、そろそろ遠慮なく毒舌をゲフンゲフン。
――でもまあ、体格と体力的には、ニーナと組み合うのはやはりターシャでしょうか。
なんとなく、私とニコ、ターシャとニーナという組み合わせが定着してきているような気もします。
レコは『めちゃ軽ブロック』なので、腕力はいりませんけどね。なんならココのほうが重たいわけで。
すでにニコは型枠から仕上がったレコを一人で取り出していますし、どちらでもいいような気もしますけれど。
「わえとリタ様――、というのは、ダメでしょうか?」
小さく挙手をして、控えめにターシャが言いました。
「もちろん、構わないよ」
むしろターシャから距離を縮めてきてくれてすっごい嬉しい! 本音、出て!
「ボクもターシャと二人で話をしたかったんだ。君と、もっと親密になりたい」
「ふ、ほぇ!?」
おーい。本音を勝手に飛び越えるんじゃありませんよー。
変な意味だと誤解されていたらどうするんですか、全く!
……でも、自分でも気付かないぐらいの心の奥では、そういう風に考えていたのだと思います。自分でも気付いていない本音がうっかり言葉に出ることって、たまにありますから。それでしょう。
「よし。じゃあボクとターシャが先になる。四つのレコを作ったら、交代だ。ニコとニーナは、ボクたちが起こすまでゆっくり休んでいてくれ」
これで四時間ずつ眠れます。
ちょっと無理をしてしまいますが、前世は二十四時間戦える国の民だったわけで、私は多分、大丈夫。………………多分。
まあ重労働ではないですし、二人の内どちらかが起きていればどちらかは仮眠ぐらい取れるわけで、どうにかなるでしょう。
「それじゃ、エリカ。やるぞ」
エリカスライムが愛らしく、こくりと頷きました。
気合いの入った目です!
愛しきエリカを包み込むように両手で触れて、いざ、電撃!
『おぼぉぅ……べぇぇぇぇぇぇぇぇー………………っ」
……あれ? 強すぎた?
めちゃんこ吐いてます。呑んだくれたおじさんが電柱に向かって――という勢い。
音もなんというか、最初の時よりこう……、迫力があります?
「……だ、大丈夫か?」
問うて数秒。白目をむきながらネバネバをはき続けたエリカの目に瞳の黒が戻って、シャキーッとした表情で応じてくれました。大丈夫そうですね。
呑んで吐くとスッキリする人もいますけれど、その感覚なのかな?
「もうちょっと弱いほうがいいか?」
スライムの生態がわからない以上、こうして直接伺うほかありません。電撃が体に悪影響を与えていないか、心配になります。
しかしエリカは、わざわざ少し斜めを向いてから、キリリとした目で格好よくこちらを見ました。……大丈夫そうですね。
エリカのネバネバ大サービスで、二十三個のレコもきっと、頑丈に接着できることでしょう。




