爆発の原因?
井戸から生還した私は、中の状態を三人に伝えました。
地下水道になっていることは情報通のニコですら知らず、驚きで迎えられます。
「これは、あくまでもボクの仮説――なのだが」
みんな、あの爆発で大切なものを失っています。あれを思い起こさせることは慎むべきかと悩みましたが、でも、それよりも隠し事をするべきではないと考えました。
「空気よりも重たい可燃性のガスが地下水道に充満して、何かの切っ掛けで爆発した――。そういう可能性が考えられる」
この世界にも可燃性ガスは存在します。
鉄製の容器に密閉されたものが流通していて、これのバルブを少しだけ開けて火を灯すと、ガス製の灯りが完成です。
持ち歩ける携帯性で、旅をする貿易商人や、馬車で人や物を運ぶ運送業者、そして沖へ漁に出る船乗りにとっては、必須道具だとか。
「うちは漁村だったから、よく使っているのを見たけれど……。確かガスは、空気より軽いはずさー」
ニーナの言うとおり、この世界に可燃性ガスは存在しているけれど、全て空気よりも軽い。空気よりも軽いから、間違って漏れるようなことがあっても空へ舞い上がって消えてくれるわけで。
仮に井戸の中にガスが発生していたとしても、軽ければ上へ上へと移動するので、地下水道で発生したなら被害に遭うのはより標高の高い地域になるはずです。王都とか。
重いガスというのは、足元で広がって危険なことこの上ないでしょう。井戸の中の地下水道なんて、下のほうからどんどん充満していって――――。今回のように、辺境の海抜が低い地域が、被害に遭います。
「ニコ、古代物語に重たいガスの話はなかったか?」
「……すみません。記憶している限りでは、ない……です」
んー。見当違いなのかなぁ。
でも爆発の中心地はここに間違いなさそうで、その上、謎の地下水道――。怪しさ満点だとは思うのですが。
「ただ……。地下水道については、少し思い当たる記述が……」
「どんな話だ?」
「古代人が高低差を利用した水路を作って、田畑が実り豊かになった――という、だけのお話、ですが……。でも、その水路は『現在も使われている』と。どこかの地方での話……だと、思っていましたが」
「地下水路がそれという可能性がある――ということか」
日本にいた頃、学校の授業で習った覚えがあります。
数千年前に作られた地下水道が現在も使われているという、お話。
確か名前は、『カナート』だったかなーと。……ゲフン。ふざけている場合ではないですね。
「……あと、これはとても言いづらいことなのだが」
そして私は、憶測としては可能性の高すぎる説を、三人へ説明します。
「この町は大陸の端のほうにあって、海に近いぶん、標高が低くなっているはずだ。そして王都はなだらかな丘の上にある。王都からゆっくり標高を下げながら町が点在して、辺境へ行くほどに標高が下がっている」
恐らく、火山でできた大陸なのでしょう。
山というほどではないですが、王都や周辺市部へ行くには緩やかに坂を登っていく必要があります。急斜面はありませんが。
「この地下水路は斜面を利用して上から下へ流れている。ならば、王都が始点となっていると考えても不思議ではない」
「なるほどさー。地下に川が流れてる感じだ」
「考えたこともありませんでしたね」
ニーナとターシャは、そう答えてくれましたが。
…………さすが、飛び級少女のニコだけは、私の話を聞きながら黙って俯いて、思索を巡らせているようです。
「――ひょっとして、上から流れてくる水に土が混ざっていた……?」
そして正解に辿り着くのですから、この子は凄いです。
「ああ。最悪なことに、な」
ターシャとニーナは不思議そうに軽く上を向きました。
ゆっくり待って、二人の言葉を待ちます。
「あっ、じゃあ隣町も!?」
「崩れているから、土が上から流れてきている――、ということですね」
本当に最悪の展開でしょう。
「確かなことはわからない。地下水道で爆発があっても、地下だけに留まって隣町に被害は出なかったという可能性も考えられる。――――ただ、マリー達がここへ戻ってくる可能性は高くなったと受け止めていいだろう。いつでも迎え入れられるよう、準備を整えよう」
重く放った言葉に、三人は静かに頷きました。




