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それぞれの成果と、青果 3

 とんでもないことが起こりました。


「これっ、さっき植えたばかりだぞ!?」


 思わず声も大きくなります。


「はぁーっ、見たことのない実さー」

「わえも知りません。農家でも育てていない種類かと」

「……興味深い」


 土に種を()き、上からココの果汁を注いだところだけ、(わたし)たちが火(おこ)しをしている間にニョッキニョッキと成長し――。

 感覚的には僅か一時間足らずという程度で、トウモロコシの実を付けました。


「命の巡りが速いから、成長も速い……のか?」

「さっき()いたばかりの種がすぐ実を付けるなんて、聞いたこともないさー」

「わえも……。どんなに少なくとも、これだけ育つには三十日ぐらいはかかると思いますよ。場合によっては半年、一年――」

「…………ココに秘密があるかも」


 言うとおり、大地を耕した土とレコの崩れた軽い土、どちらに対しても、ココの果汁を注いだ部分だけが急成長しました。ココに秘密があると思って間違いなさそうです。

 逆に言えば、土に関しては軽さ以外には違いが無い、ということでしょうか?

 でもココはレコの崩れた土の中で育つので……。

 うーん、結論を出そうとするにはまだ、時期尚早すぎるのかもしれないです。まだまだ情報が足りていません。というか、(ほか)にもこの世界には秘密がありそう。

 ニコが語ります。


「でも、古代物語には急速に成長する植物の話が沢山あります。中には雲を突き抜けるほど育った豆の木があるとか」


 それ、どこのジャックさん?

 ただ――


「確かに。ボクの読んだ簡易版でもそういう話はあったな」


 似たような話は私も読みました。木を植えたらどこまでも成長して巨大樹になったとか。


「昔はよくあったことなのかなー?」

「んー。でも農家では、具体的なことは何も伝わってないですよ。そんなに(すご)いことができるなら、農家としては革命なのですが」


 この世界の昔というと、転換期が千年前にあります。日本で言えば明治維新の文明開化が千年前とかそういう感じなので、どれだけ時代が止まったままなのかという気もしますが。

 でも建築に技術進歩がいらなくて、のほほーんと平和で、作物が豊かで、衣食住には困らない国でしたから。

 移動手段が馬車ですから、そこを発展させる開発は一応進めていたみたいですし、医療は必要なので割と進歩しています。

 ただ……。


「そういえば千年前と現代では、平均寿命にそれほど差が無いんだったか?」

「あー、その話は最初の頃の授業で習ったさー」

「千年前の建築ラッシュ直後は寿命が短くなったのですが、そこから徐々に伸びてきて今に至る――と」

「……千年前が七十八歳。現在が七十七歳程度……まだ、完全には戻りきっていないです」


 さすが飛び級少女ニコ! 具体的な数字が出てきました。日本が八十歳ぐらいだったと思うので、文明文化を考えると割と長いほうでしょうか?

 いえ、日本の千年前とこの世界の千年前で比べるなら、確実にこの世界のほうが長いでしょう。


「千年前に何があったのか――」


 (わたし)のつぶやきに、ニコが答えてくれました。


「それから百年ほどは建築が盛んだったので……、事故などで下がった――という見方が、一般的……です」

「なるほど。事故死が増えた――ということか」


 でもレコは軽い土のブロックです。押し潰されて亡くなるような危険性は無いと思いますが。

 それに建築ラッシュが終わって既に九百年。未だ完全には戻っていないというのも、おかしいです。


「わえの家にあった古代物語には、栄養失調と記されていました。農家用の古代物語ですね」

「農家用のものがあるのか?」

「はい。農業のことを中心に抜粋して(つづ)られています」


 応じて、ニコは「商家用もあります」と続けた。

 農家用と商家用があるのなら、領主用もあるのでしょうか?

 でも(わたし)が読んだものには、そういう記載はありませんでした。そもそも領主なんてほんの一握りの人口ですから、わざわざ作りはしないのかもしれません。

 じゃあ、ニーナの出身である漁村には漁業用があるのかな? 漁師なら一定数いますし、一度沖へ出れば命がけと言うこともあって今でも信心深いかたが多いと聞きますから、神様が沢山出てくる古代物語には馴染(なじ)みが深い可能性もあります。

 ただ……。

 お日様のように明るいニーナが、この話題になってからどこ知らぬ顔をし続けているので、きっと読んでいないのでしょう。

 そうやって(とぼ)けるところは、年上なのに、ちょっと可愛(かわい)く思えます。


「とりあえず、収穫して食べてみようか」

「どうやって食べるさー?」


 食べ物の話となると即座に食い付いてくるところも、わかりやすくてチャーミングです。


「あしらえたように火が()けているからな。焼きトウモロコシができる」


 (わたし)たちは皮付きのトウモロコシを火の中に放り入れて、皮が焦げるまで待ち、良い感じに黒くなってきたところで小枝を駆使して救出。

 少し冷まして、そのままガブリと(かぶ)りつきました。

 うーっん! 美味しい! あとは生ビールが一杯ほしいです!!

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